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少年期~後編~
最終試験開始
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それぞれの兵士達が配置につき、いよいよ試験開始となる。
もし仮にオーガやトロール、ワイバーンなどがいれば騎士達が相手をする。
生徒達は、ゴブリンやオークを倒せば良いと。
ただ今回の目的はそれではない、大事なのは結界を見るということだ。
さらには、クラスのランクごとに進む距離が違う。
下のクラスは女神の結界さえ確認できれば良いが……。
俺達は、そうはいかないようだ。
「貴方達はSクラスです! 今年の卒業生の代表でもあります! なので、きちんと結界の前まで進んでもらいます! そして、魔物が出たなら自分達で判断してください! 私達に助けを求めるもよし! 騎士さん達に頼るのもよし! 自分達で倒すのもいいでしょう! 貴方達はいずれ、人の上に立つかもしれません! そのためには、実戦での迅速な対応を求められます! それらの判断も含めて、最終試験となりますっ!」
それぞれが、緊張感を持って頷く。
「皆さん、良い表情ですっ! それでは、準備をしてください!」
それぞれ、武器や防具の確認をする。
「それ、前とは違う刀ですよね?」
「ああ、身長が伸びたからね。カエラが新しいのをくれたよ」
刃渡り六十センチくらいの刀だ。
柄と刀身を合わせて九十センチってところか。
こうなると普通の刀サイズに近い。
「実は、僕もカエラに貰いまして……」
そう言い、荷物から鞘を取り出す。
「むっ、小刀というやつか?」
「いえ、カグラさん。脇差というらしいです」
「なるほど、槍では戦えない場所でもあるからな。それなら小回りが利く」
「カイゼル殿の稽古の合間に、少し手ほどきを受けまして……」
「凄いやる気ですねっ!」
あの大会から、オルガはカイゼルに稽古をつけてもらっている。
さらには、刀の鍛錬まで……よっぽど悔しかったと見える。
「なぜ、アレス様から教わらないのだ?」
「えっと、いや、その……」
「俺が教えない方が良いと思って。せっかくのカエラとの時間だし」
「アレス様!?」
「えへへー、分かりますよー。わたしもアレス様と鍛錬したいですもん」
「うむっ! 拙者もなのだっ!」
「もう、良いです……」
うん、俺を含めてリラックスしているな。
これなら、良い状態で試験に臨めそうだ。
そして……移動が始まる。
ある程度進んだところで、光の結界が目に入る。
「あ、あれが……女神の結界……!」
「す、すごい魔力……えっ?あれを維持するのは一体どれだけの……」
初めて見る二人は、呆然と眺めている。
「懐かしいのだ」
「そうだな、あれから三年以上か」
ん? ……気のせいか? クロスが反応したような?
……気のせいか。
先に進むにつれて、下のクラスの生徒達が引き返していく。
魔物に会うこともないようだが、別にそれが一番の目的ではないから良いのだろう。
個人的には、きちんと結界の確認をし、これからの時をどう過ごすかということを考えるのが一番大事なんだと思う。
「いよいよ、僕達だけになりましたね」
「ああ、そうだな。しかし、こうしてみるとすごいな……」
近づくと、その魔力の圧に腰が引けそうになる。
これでも結界が弱まってるっていうんだからな……。
「拙者も、ここまでくるのは初めてなのだ」
「瘴気も凄いよね……」
セレナの言う通り、結界の下から黒いモヤが漏れている。
「へっ! びびったなら帰ればいい!」
「そうだそうだっ!」
「どうでもいい」
「お、オイラは……」
やかましいのが、サガンとロレンソ。
無愛想なのが、子爵家のアスナ。
おどおどしているのがエルバか。
珍しいな、あいつらから寄ってくるなんて……。
「どうした? いつもなら無視しているのに」
「べ、別に! 関係ねえし!」
「足を引っ張らないように注意しに来ただけですよ!」
「私はどうでもいい、帰りたい……はぁーでも、帰ったら怒られる」
「お、オイラも……」
どうやら、彼らも緊張しているようだな。
それを誤魔化そうとしているのかも。
「皆さん! お静かに! こっからは、いつ魔物が来るかわかりませんっ! なのでこの方に来ていただきます! お願いしまーす!」
すると……クロイス殿が、こちらにやってくる。
「アレス様、馬上にて失礼いたします。そして、ご挨拶が遅れて申し訳ありません」
「気にしなくて良いですよ、クロイス殿。今の俺は、ただの一学生ですから」
「そうでしたな、貴方はそういう方でしたね。では、例のお話は後ほどということで……ここからは、私が案内いたします」
まさしく歴戦の勇士に囲まれ、俺達は結界へと近づいていく。
「さて……きますぞ」
クロイス殿の言う通り、あちこちから瘴気が溢れ出る。
「皆さん! 回復は先生に任せてください! 絶対に死なせないので安心して戦ってください!」
「皆の者! 陣形を整えろ! 次の世代を担う子達を守り抜け! そして—— 次世代の若者に我らの力を見せるのだっ!」
「ウオォォォ——!!」
俺達も四人で陣形を整える。
「カグラ、君が前衛だ——全てを粉砕しろ」
「任せるのだっ!」
「セレナ、君に言うことはない。自分がここだと思った箇所に魔法を」
「はいっ!」
「オルガ、君にはセレナの護衛を頼む。さらには俯瞰的に見て、俺達に声掛けをお願いしたい」
「わかりましたっ!」
「俺はカグラの背中を守るとしよう。色々と心配な子だからね」
「むぅ……複雑なのだ」
俺も武器を構えて戦闘態勢に入る。
カイゼルも言っていたが、実戦に勝る鍛錬はない。
どこまでやれるかわからないが——今が俺達の集大成を見せる時!
もし仮にオーガやトロール、ワイバーンなどがいれば騎士達が相手をする。
生徒達は、ゴブリンやオークを倒せば良いと。
ただ今回の目的はそれではない、大事なのは結界を見るということだ。
さらには、クラスのランクごとに進む距離が違う。
下のクラスは女神の結界さえ確認できれば良いが……。
俺達は、そうはいかないようだ。
「貴方達はSクラスです! 今年の卒業生の代表でもあります! なので、きちんと結界の前まで進んでもらいます! そして、魔物が出たなら自分達で判断してください! 私達に助けを求めるもよし! 騎士さん達に頼るのもよし! 自分達で倒すのもいいでしょう! 貴方達はいずれ、人の上に立つかもしれません! そのためには、実戦での迅速な対応を求められます! それらの判断も含めて、最終試験となりますっ!」
それぞれが、緊張感を持って頷く。
「皆さん、良い表情ですっ! それでは、準備をしてください!」
それぞれ、武器や防具の確認をする。
「それ、前とは違う刀ですよね?」
「ああ、身長が伸びたからね。カエラが新しいのをくれたよ」
刃渡り六十センチくらいの刀だ。
柄と刀身を合わせて九十センチってところか。
こうなると普通の刀サイズに近い。
「実は、僕もカエラに貰いまして……」
そう言い、荷物から鞘を取り出す。
「むっ、小刀というやつか?」
「いえ、カグラさん。脇差というらしいです」
「なるほど、槍では戦えない場所でもあるからな。それなら小回りが利く」
「カイゼル殿の稽古の合間に、少し手ほどきを受けまして……」
「凄いやる気ですねっ!」
あの大会から、オルガはカイゼルに稽古をつけてもらっている。
さらには、刀の鍛錬まで……よっぽど悔しかったと見える。
「なぜ、アレス様から教わらないのだ?」
「えっと、いや、その……」
「俺が教えない方が良いと思って。せっかくのカエラとの時間だし」
「アレス様!?」
「えへへー、分かりますよー。わたしもアレス様と鍛錬したいですもん」
「うむっ! 拙者もなのだっ!」
「もう、良いです……」
うん、俺を含めてリラックスしているな。
これなら、良い状態で試験に臨めそうだ。
そして……移動が始まる。
ある程度進んだところで、光の結界が目に入る。
「あ、あれが……女神の結界……!」
「す、すごい魔力……えっ?あれを維持するのは一体どれだけの……」
初めて見る二人は、呆然と眺めている。
「懐かしいのだ」
「そうだな、あれから三年以上か」
ん? ……気のせいか? クロスが反応したような?
……気のせいか。
先に進むにつれて、下のクラスの生徒達が引き返していく。
魔物に会うこともないようだが、別にそれが一番の目的ではないから良いのだろう。
個人的には、きちんと結界の確認をし、これからの時をどう過ごすかということを考えるのが一番大事なんだと思う。
「いよいよ、僕達だけになりましたね」
「ああ、そうだな。しかし、こうしてみるとすごいな……」
近づくと、その魔力の圧に腰が引けそうになる。
これでも結界が弱まってるっていうんだからな……。
「拙者も、ここまでくるのは初めてなのだ」
「瘴気も凄いよね……」
セレナの言う通り、結界の下から黒いモヤが漏れている。
「へっ! びびったなら帰ればいい!」
「そうだそうだっ!」
「どうでもいい」
「お、オイラは……」
やかましいのが、サガンとロレンソ。
無愛想なのが、子爵家のアスナ。
おどおどしているのがエルバか。
珍しいな、あいつらから寄ってくるなんて……。
「どうした? いつもなら無視しているのに」
「べ、別に! 関係ねえし!」
「足を引っ張らないように注意しに来ただけですよ!」
「私はどうでもいい、帰りたい……はぁーでも、帰ったら怒られる」
「お、オイラも……」
どうやら、彼らも緊張しているようだな。
それを誤魔化そうとしているのかも。
「皆さん! お静かに! こっからは、いつ魔物が来るかわかりませんっ! なのでこの方に来ていただきます! お願いしまーす!」
すると……クロイス殿が、こちらにやってくる。
「アレス様、馬上にて失礼いたします。そして、ご挨拶が遅れて申し訳ありません」
「気にしなくて良いですよ、クロイス殿。今の俺は、ただの一学生ですから」
「そうでしたな、貴方はそういう方でしたね。では、例のお話は後ほどということで……ここからは、私が案内いたします」
まさしく歴戦の勇士に囲まれ、俺達は結界へと近づいていく。
「さて……きますぞ」
クロイス殿の言う通り、あちこちから瘴気が溢れ出る。
「皆さん! 回復は先生に任せてください! 絶対に死なせないので安心して戦ってください!」
「皆の者! 陣形を整えろ! 次の世代を担う子達を守り抜け! そして—— 次世代の若者に我らの力を見せるのだっ!」
「ウオォォォ——!!」
俺達も四人で陣形を整える。
「カグラ、君が前衛だ——全てを粉砕しろ」
「任せるのだっ!」
「セレナ、君に言うことはない。自分がここだと思った箇所に魔法を」
「はいっ!」
「オルガ、君にはセレナの護衛を頼む。さらには俯瞰的に見て、俺達に声掛けをお願いしたい」
「わかりましたっ!」
「俺はカグラの背中を守るとしよう。色々と心配な子だからね」
「むぅ……複雑なのだ」
俺も武器を構えて戦闘態勢に入る。
カイゼルも言っていたが、実戦に勝る鍛錬はない。
どこまでやれるかわからないが——今が俺達の集大成を見せる時!
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