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少年期~後編~
いざ、最終試験へ
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それから数日が過ぎ、いよいよ最後の試験となる。
その間にクロイス殿に手紙を出し、試験が終わり次第挨拶に行くことになった。
何故なら、最後の試験会場は例の場所だからだ。
ちなみに帰ってきてから、セレナのご両親にも挨拶をするつもりだ。
「さて……では、行ってきます。1週間ほど家をあけます」
「いってらっさい!」
「違うぞ、エリカ。行ってらっしゃいだ」
「い、いってらっしゃい?」
「そうだっ! おおっ!えらい!」
その日々重くなる身体を抱き上げる。
「えへへー! 褒められたおっ!」
「はいはい、わかったわよ。ほら、遅れちゃうわよ?」
「アレス様、お気をつけて。お、オルガ君にもお伝えください」
「はい、母上。カエラもね」
エリカを優しく下ろす。
その頭ゆっくりと撫でる。
「ふにぁ……」
「アレス様、油断なさらないように。貴方の強さは、既に一兵士を凌駕しております……が、それでも死ぬ時は死ぬのが世の常です。優勝したからといっても驕ることなきように」
「ああ、わかってる。ありがとう、カイゼル。じゃあ、行ってくるよ」
「お兄ちゃん! いってらっしゃい!」
「おっ、全部しっかり言えたな! ああ、良い子でな」
子供の成長は早いものだ。
…… いかん、俺もまだまだ子供だった。
個人戦も終わったので、再び皆でワイワイと登校する。
「今日から一週間くらいは都市を出るんですよね?」
「ああ、集団で移動するから時間がかかるからね」
「拙者達生徒に護衛をつけなくてはならないですし」
「僕達は以前行ってませんし、少し緊張しますね」
そう、最終試験の場所は魔の森周辺となっている。
女神の結界を確認して、戻ってくることが俺達の試験である。
もちろん、下位のクラスには歴戦の騎士が護衛する。
上にいくにつれ、護衛の数は減るということだ。
「まあ、この国の要職に就くなら、見ないわけにはいかないからな」
文官になるにしろ、一兵卒になるにしろ、それを見ることは無意味じゃない。
実際に目にして、この国を守るという意識を芽生えさせるのが目的らしい。
「その恐怖心に打ち勝つことが試験みたいなものなんですかねー?」
「おそらく、その意味合いもあると思うのだ」
「あとは、実際に魔物と戦えるかですかね」
そんな会話をしつつ、学校へと到着する。
入り口には馬車と騎士たちが並んでおり、生徒たちが順番に乗り込んでいる。
「あっ、きましたね! こちらですよっ!」
先生が手を振っている。
そこには他の四人も集まっていた。
「はいっ! これで全員ですねっ! 今回は、皆さんに実際に馬に乗って、軍と同じような行動をしてもらいます!」
卒業試験は行軍の訓練も兼ねているらしい。
自分で馬に乗り、集団行動する訓練だ。
俺達生徒が走る周りを、騎士たちが囲む形だ。
「よっと……よし、よろしくな?」
馬の頬を優しく撫でる。
「ブルルッ」
すると、まるで任せろというような顔をする。
カイゼルに教わった通りだ。
馬は道具ではなく、相棒だと思って接しろと。
雑に扱えば、それを機敏感じ取ると。
「へ、平気かな? よ、よろしくね?」
「セレナ、この馬達は訓練されているのだ。恐れずに、安心して任せるといい」
「僕達もいますから」
「そういうことだ、セレナ」
「みんな……うんっ!」
セレナだけは平民なので、慣れていないのは無理もないことだ。
さて……俺も少し緊張してきたな。
何故ならクロスと会って以来、俺も行っていないからだ。
何も起こらなければ良いが……いや、この考えは良くない。
前世でいうところのフラグってやつになってしまう。
俺の不安をよそに、順調に進んでいく。
初めての行軍、馬での遠出に、生徒達は四苦八苦しているが……。
それでも周りの騎士達のフォローにより、何とか進んでいる。
ただ、難点は……。
「進むスピードが遅いってことだよな」
焚き火を囲んで、四人で食事をする。
俺は皇族なので、騎士達が気を使って部屋を用意するといったが……。
それは丁寧に説明して断ってある。
まあ簡単に言うと……皇族だからこそ、皆と同じようにやるべきだと。
「五百人くらいいますもんねー」
「それでも、三百人は減ったのだ」
「まあ、卒業するのも簡単なことではありませんから」
「俺達は努力もしているが、幸運なことには違いない」
そう……この四年間で、それだけの人数が辞めていった。
学費が払えなかったり、武力や知識が追いつかなかったり。
または、貴族に嫌気がさした者など……中には優秀な者もいただろうに。
やはり、制度そのものを見直さないといけないのだろう。
そして、2日かけて魔の森付近に到着する。
そして、そこで待ち構えていた人物が檄を飛ばす。
「学生諸君! よくぞ来てくれたっ! まずはここまで来れたことを誇りに思うと良い! 諸君らの中には、途中で脱落した者もいるだろう! しかし、それがわかることも大事なことだっ!」
まさしく、クロイス殿の言う通りだと思う。
今回の行軍で百人近くが途中で脱落した。
理由は馬に乗ることによる疲労、慣れない野営、それによる睡眠不足など様々だ。
だが、それがわかっただけでも意味がある。
「父上……」
「相変わらず、素敵な方だな」
「本当ですね!」
「僕の父上も言ってましたよ。あの方こそが本物の貴族だと」
「えへへ……嬉しいのだ」
「これから諸君には魔の森に近づいてもらう! はっきり言って安全は保障できない! 我々も全力で守ると約束はするが、予測不可能な事態も想定される! もし恐れる者がいたら遠慮なく手を挙げるといい! それを責めはしない! 己を知るということも大事なことだからだっ! 蛮勇振るえば良いということではない!」
すると、何十人かの生徒が手を上げていく。
それもまた、勇気ある行動だ。
それを責めることはできないし、させてはいけない。
「何より……この感じだと」
俺は行軍の様子や、クロイス殿の言葉を受けて思った。
おそらく、それらを含めての最終試験だと。
その間にクロイス殿に手紙を出し、試験が終わり次第挨拶に行くことになった。
何故なら、最後の試験会場は例の場所だからだ。
ちなみに帰ってきてから、セレナのご両親にも挨拶をするつもりだ。
「さて……では、行ってきます。1週間ほど家をあけます」
「いってらっさい!」
「違うぞ、エリカ。行ってらっしゃいだ」
「い、いってらっしゃい?」
「そうだっ! おおっ!えらい!」
その日々重くなる身体を抱き上げる。
「えへへー! 褒められたおっ!」
「はいはい、わかったわよ。ほら、遅れちゃうわよ?」
「アレス様、お気をつけて。お、オルガ君にもお伝えください」
「はい、母上。カエラもね」
エリカを優しく下ろす。
その頭ゆっくりと撫でる。
「ふにぁ……」
「アレス様、油断なさらないように。貴方の強さは、既に一兵士を凌駕しております……が、それでも死ぬ時は死ぬのが世の常です。優勝したからといっても驕ることなきように」
「ああ、わかってる。ありがとう、カイゼル。じゃあ、行ってくるよ」
「お兄ちゃん! いってらっしゃい!」
「おっ、全部しっかり言えたな! ああ、良い子でな」
子供の成長は早いものだ。
…… いかん、俺もまだまだ子供だった。
個人戦も終わったので、再び皆でワイワイと登校する。
「今日から一週間くらいは都市を出るんですよね?」
「ああ、集団で移動するから時間がかかるからね」
「拙者達生徒に護衛をつけなくてはならないですし」
「僕達は以前行ってませんし、少し緊張しますね」
そう、最終試験の場所は魔の森周辺となっている。
女神の結界を確認して、戻ってくることが俺達の試験である。
もちろん、下位のクラスには歴戦の騎士が護衛する。
上にいくにつれ、護衛の数は減るということだ。
「まあ、この国の要職に就くなら、見ないわけにはいかないからな」
文官になるにしろ、一兵卒になるにしろ、それを見ることは無意味じゃない。
実際に目にして、この国を守るという意識を芽生えさせるのが目的らしい。
「その恐怖心に打ち勝つことが試験みたいなものなんですかねー?」
「おそらく、その意味合いもあると思うのだ」
「あとは、実際に魔物と戦えるかですかね」
そんな会話をしつつ、学校へと到着する。
入り口には馬車と騎士たちが並んでおり、生徒たちが順番に乗り込んでいる。
「あっ、きましたね! こちらですよっ!」
先生が手を振っている。
そこには他の四人も集まっていた。
「はいっ! これで全員ですねっ! 今回は、皆さんに実際に馬に乗って、軍と同じような行動をしてもらいます!」
卒業試験は行軍の訓練も兼ねているらしい。
自分で馬に乗り、集団行動する訓練だ。
俺達生徒が走る周りを、騎士たちが囲む形だ。
「よっと……よし、よろしくな?」
馬の頬を優しく撫でる。
「ブルルッ」
すると、まるで任せろというような顔をする。
カイゼルに教わった通りだ。
馬は道具ではなく、相棒だと思って接しろと。
雑に扱えば、それを機敏感じ取ると。
「へ、平気かな? よ、よろしくね?」
「セレナ、この馬達は訓練されているのだ。恐れずに、安心して任せるといい」
「僕達もいますから」
「そういうことだ、セレナ」
「みんな……うんっ!」
セレナだけは平民なので、慣れていないのは無理もないことだ。
さて……俺も少し緊張してきたな。
何故ならクロスと会って以来、俺も行っていないからだ。
何も起こらなければ良いが……いや、この考えは良くない。
前世でいうところのフラグってやつになってしまう。
俺の不安をよそに、順調に進んでいく。
初めての行軍、馬での遠出に、生徒達は四苦八苦しているが……。
それでも周りの騎士達のフォローにより、何とか進んでいる。
ただ、難点は……。
「進むスピードが遅いってことだよな」
焚き火を囲んで、四人で食事をする。
俺は皇族なので、騎士達が気を使って部屋を用意するといったが……。
それは丁寧に説明して断ってある。
まあ簡単に言うと……皇族だからこそ、皆と同じようにやるべきだと。
「五百人くらいいますもんねー」
「それでも、三百人は減ったのだ」
「まあ、卒業するのも簡単なことではありませんから」
「俺達は努力もしているが、幸運なことには違いない」
そう……この四年間で、それだけの人数が辞めていった。
学費が払えなかったり、武力や知識が追いつかなかったり。
または、貴族に嫌気がさした者など……中には優秀な者もいただろうに。
やはり、制度そのものを見直さないといけないのだろう。
そして、2日かけて魔の森付近に到着する。
そして、そこで待ち構えていた人物が檄を飛ばす。
「学生諸君! よくぞ来てくれたっ! まずはここまで来れたことを誇りに思うと良い! 諸君らの中には、途中で脱落した者もいるだろう! しかし、それがわかることも大事なことだっ!」
まさしく、クロイス殿の言う通りだと思う。
今回の行軍で百人近くが途中で脱落した。
理由は馬に乗ることによる疲労、慣れない野営、それによる睡眠不足など様々だ。
だが、それがわかっただけでも意味がある。
「父上……」
「相変わらず、素敵な方だな」
「本当ですね!」
「僕の父上も言ってましたよ。あの方こそが本物の貴族だと」
「えへへ……嬉しいのだ」
「これから諸君には魔の森に近づいてもらう! はっきり言って安全は保障できない! 我々も全力で守ると約束はするが、予測不可能な事態も想定される! もし恐れる者がいたら遠慮なく手を挙げるといい! それを責めはしない! 己を知るということも大事なことだからだっ! 蛮勇振るえば良いということではない!」
すると、何十人かの生徒が手を上げていく。
それもまた、勇気ある行動だ。
それを責めることはできないし、させてはいけない。
「何より……この感じだと」
俺は行軍の様子や、クロイス殿の言葉を受けて思った。
おそらく、それらを含めての最終試験だと。
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