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少年期~後編~

覚悟を決める

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 こうして、試験を伴った大会は終了した。

 そして、現役の騎士との模擬戦は俺達にはないそうだ。

 俺達四人は、すでに実戦を戦える力があること。

 すでに、自分がすべきことをわかっているからだと。

 というわけで、それらが終わるまでは休暇で良いと言われた。

 しかし……それで休暇をとるような俺達ではない。

 だからこそ、免除されたのかもしれない。


 日差しが差し込む中、全員で俺の家の庭に倒れこむ。

「ハァ、ハァ……ここまでにしようか」

「あぁー! 疲れたのだっー!」

「ふぅ……堪えますね」

「つ、疲れたよぉ~」

「セレナ、よく付いてきた。正直言って、途中でへばると思ったが……」

「えへへ、頑張りましたー。先生にも、魔法使いには体力も必要だって言われましたし」

 ランニングからの体術の稽古。
 俺が学生時代にやっていた筋力トレーニング。
 特に足腰を鍛える訓練をしたが、それらに遅れながらも付いてきた。

「そうだな。行軍中なんかも歩き続けることもある。馬がやられたり、森の中に入ったりね」

「今度の最終試験にも必要なのだ」

「ええ、そうですね。ここから出発して、魔物を退治してから帰るまでを試験するみたいですから」

「みんなー! ご飯よー!」

「お腹がすいたおっ!」

 母上と、我が家の天使が呼んでいる。

「では、ご飯にするか」

「「「はいっ!!!」」」

 うむ、腹が減っては戦は出来ぬ。
 この場合は訓練だけど。


 シャワーを浴び終えたら、みんなで食事となる。

「お、オルガ君、どうぞ」

「い、頂きます」

 母上のいたずらにより、オルガとカエラだけ別の席にいる。
 もはや、お見合い状態である。

 しかし、人のことは言えない。

「アレス様、これ美味しいですね!」

「アレス様、拙者はこれが好きです!」

「はいはい、わかったよ」

 両隣に座って食事をしているのだが……。
 二人とも引っ付いて離れない。
 そして、あることに気づく。
    二人から甘い香りがする。

「二人共、シャワー浴びたよね?」

「く、臭いですか!?」

「ふえっ!? はわわっ!」

「ごめんね、そういう意味ではないんだ」

「ほっ……では、どのような?」

「何か匂いましたか?」

「うっ……さあ! 食べようか!」

「……変なアレス様なのだ」

「……うーん、なんだろ?」

「ママ! おにぃちゃんはどうしたの?」

「ふふ、アレスも男の子になってきたということね」

 流石に母上には見抜かれるか。
 いや、しかし……まさか、二人を女性として意識するとは。
 二人が女性として成長してきたから? 
    それとも……やはり、俺はそういうことなのだろうか。
    やれやれ、二人の女性を好きになるとか……。
    結衣が聞いたら怒りそうだな……怖い。
     

    だが、もはや俺の意識はアレスと言って良いだろう。
    前世の俺の認識では、この考えに至らないはず。
    ならば、あとは行動を起こすのみ。
  

 食事を終えた後は、再び鍛錬に励む。

 オルガとカグラは、二人掛かりでカイゼルと模擬戦。

 俺とセレナはそこから離れ、約束通りに真剣勝負をする。

    以前、父上に頼んで敷地の一部に建物を建ててもらった。

   広さは体育館くらいで、魔法を防ぐ素材で建てられている。

  そもそも皇族の住処なので誰も覗かないし、外から見えることもない。

 そこなら闇魔法も練習できるし、セレナと訓練に使える。

 なにせ、中級以上は危険なので場所を考えないといけない。

「ルールはどうする?」

「では、魔法のみでお願いします。そして、その場から動かないこと」

「わかった。使う魔法は?ランクはどうする?」

「私も風と水を使うので、アレス様も同じように。ランクは、中級クラスのみにしましょう」

「よし……セレナ、あとで話がある。  良いだろうか?」

「ふえっ? は、はい……なんだろ?」

 まずはカグラに伝えてから、セレナにも言っておかなくてはいけないな。

「まあ、今はいいから——セレナからどうぞ」

「では——アクアキャノン!」

 文字通り、水の大砲が発射される。

「フレイムランス——続けてファイアーウォール」

 水の大砲の真ん中を、炎の槍が突き刺す。
 それでも防ぎきれないので、炎の壁を作る。

「やっぱり、詠唱が早い……」

「そうだね。これだけはセレナよりも早いと言って良いかな」

 イメージが湧かない人は、魔法を長く唱える。
 それに、魔力を素早く移動させる訓練も必要になる。

「さて、こっちからいくよ——ファイアースネーク」

「出ましたねっ——アクアブレス!」

 威力は低いが、広範囲に水のブレスが撒かれる。

「やっぱり消されるか……」

 単純な魔法の打ち合いだと、俺はセレナに勝てないかもな。
 相性が悪いし、才能にも差がある。

「ウインドプレッシャー!」

「ダークランス」

 ウインドプレッシャーの影から、黒い槍が突き出る。

「か、掻き消されちゃった……すごい」

 これは、影のあるものから突き出る技だ。
 ただし、距離に難がある。
 三メートルくらいが限界かな。

「闇魔法は光以外に弱点はないからね」



 その後も魔法のみで攻防を繰り返す。

「えへへ、楽しいですねっ!」

「まあ、否定はしない。中々撃ちあえる人もいないからね」

「先生にも、本気で撃ってもいい人がいるって幸せなことって言われました」

「へぇ、たまに良いこと言うんだよな」

「どんなに才能がある人でも、それを競える相手がいないとダメだって」

「先生の言う通りだな。さて……俺は魔力が減ってきたが、それではつまらないよな?」

「はいっ! では、最後にを使いましょう」

「わかった……」

「では……」

 それぞれ集中モードに入る。
 流石に上級は、今の俺たちには扱いきれない。
 どうしても時間はかかるし、精度も落ちるであろう。
 それでも、最後の締めには相応しいと思った。

「全てを焼き尽くせ——インフェルノレイ灼熱の光

「全てを飲み込め——タイダルウェーブ大津波

 ほぼ同時に詠唱を終える。
 セレナは、五メートルを超える波を出現させる。
 俺は、いくつもの火の玉を空中に発射して、それらを隕石のように落下させる。

 それらがぶつかり合い——弾ける!

「くっ!?」

「きゃっ!?」

 爆音と暴風が吹き荒れる!
 や、やはり威力があり過ぎるか!

シャドウワープ影移動

 闇魔法である、影をから影に移動する魔法を唱える。
 条件は目視できる位置にいること、相手の許可を得ていることだ。
 これにて、セレナを受け止める。

「あ、ありがとうございます」

「いや、お互いに調子に乗ってしまったな」

 つい楽しくなって、上級を使用してしまった。
 こりゃ、後で怒られるな。


 すると……カイゼルが、慌ててこちらに来る。

「アレス様、セレナ殿」

「すまない、カイゼル。少し調子に乗ってしまった」

「ごめんなさい、私もです」

「いえ、若いうちはそういうこともあるでしょう。覚えた力を試したい時が……それが本題ではないのです」

「うん?」

「第二皇子が訪ねてきました」

 ……やれやれ、めんどくさいことになりそうだ。
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