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少年期~後編~

あっという間に時が経ち……

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 それからの日々はあっという間に過ぎていく。

 日々の生活や、皆との時間……今までとは違い、とても早く感じる。

 この感覚には覚えがある。

 中学や高校の最終学年を思い出す。

 あの頃も思ったが、卒業が近づくと……。

 どうして、こんなにも時が経つのが早いのだろうか?



「アレス様っ!」

「セレナ、おはよう」

「おはようございます!」

「ご機嫌だね?」

「えへへ~、わかります?」

「そりゃ、そんだけ笑顔ならね」

「実は……合格が決まりましたっ!」

「え……?  あれ? 試験の合格発表はまだじゃ?」

 今日の午後って聞いてたけど。

「実は……トップの成績だったので、表彰されることになりましたっ! 通知自体は、一昨日来たんです!」

 なるほど、だから事前通知が行ったのか。

「でも、それって言って良いのかい?」

「はいっ! 許可は得ていますっ!  アレス様に一番に伝えたくてっ!」

「そうだね、まずはこれだったね。おめでとう、セレナ。よく頑張ったな。君の頑張りを見ていた者として嬉しく思う」

 俺が頭を撫でてあげると……。

「あ、あれ……? う、嬉しいのに……アレス様の隣に立つために、強くなるって決めたのに……ふぇ~ん!」

 まるで子供みたいに涙が溢れてくる。

「それだけ頑張ったってことだろ。良いんだよ、そういう時は泣いても」

 俺は優しく抱きしめる。
 自分でも驚いたが、ごくごく自然に……。
 やっぱり、ヒルダ姉さん吹っ切ったからから?
 もしくは、ある程度の覚悟を決めたからか。

「グスッ…アレス様ぁ……」

「はいはい、良い子だ。ほら、尚更のこと鍛錬しないと。あとでカグラ達にも知らせないとね」

「はいっ!」

 その後鍛錬をした後、カグラ達もやってくる。

「おめでとうなのだっ!」

「おめでとうございます」

「二人共ありがとう!」

「さて……これで、全員の進路が決まったね」

 後は卒業試験を受けるだけとなる。

「なんか、あっという間に過ぎてしまったのだ……」

「ついこの間、もうすぐ卒業だねとか言ってたのに……」

「そうですよね……もうすぐお別れですから」

 ……いかん、みんなが暗くなっている。
 俺もみんなと同じ気持ちだが……。
 ここは、経験がある俺が何とかしなくては。

「確かに、それぞれに立場は違う。これからは、会うことも減っていくだろう」

 みんなの視線が集まる。

「でも、ここで過ごした時間の分だけ絆が生まれた。俺はみんなのことが大好きで大事だ」

 前世では照れ臭くて言えないけど、今世なら言える。
 何故なら、言おうと思った時言えるとは限らないからだ。
 俺は、それを誰よりも知っている。

「拙者も!」

「私もですっ!」

「僕もですっ!」

「なら、大丈夫さ。離れていても、その気持ちさえ忘れなければ。だから、前を向いていこう。月並みの言葉だけどさ……また、きっと会えるから」

「「「はいっ!!!」」」

 そう……この時代を共に過ごした人というのは一生の宝物だ。
 その時は気づかないが、後になって気づく。
 そして気づいた時には、もう手遅れのことが多い。
 だから、今の時間を大切に過ごそうと思う。


「結衣……」

 すまない、結衣。

 もっと、お前に向き合うべきだったな。

 今更ながらに思う。

 ヒルダ姉さんの時と一緒だと思った。

 俺は、多分……君が好きだったんだ。

 でも、血の繋がりや年の差を言い訳にしてごまかしていたんだ。

 綺麗になっていく君を見て、俺はそれを無意識のうちに封印した。

 俺は、未成年に手を出すなんて考えられないし。

 ただ……それと君の気持ちに向き合わなかったのは違う。

 きちんと話せば良かったんだ。

 お互いが納得いくまで。

 もう会えないけど……同じ過ちは繰りかえさない。

 今まで以上に自分の気持ちや、相手の気持ちと向き合っていこうと思う。

 結衣……君が前を向いて生きることを願っている……。




     —————————————————


 ~結衣の夢~

 また、あの夢を見た……。

 でも、不思議。

 何で、あんなに大きくなっているのかな?

「いや、夢の内容に突っ込んでも仕方ないよね」

 私は今、日記を書いています。

 あの少年の目を通した世界を記しています。

「何だが、そうしなきゃっていう使命感みたいのが湧いたんだよね」

 今では無料の小説投稿サイトとかあるし。
 もしかしたら、そこに投稿とかしちゃおうかな?
 なんか、生きた証のような気がするんだよね。

「いやいや、妄想だから……でも、そうとは思えないんだよね」

 アレスと名乗る少年は、優しくかっこよく家族想いの子。
 誰かのために一生懸命で、自分を顧みない子。

「まるで和馬さんみたい……」

 もちろん、見た目は和馬さんのがタイプだけど。
 アレス君は少しイケメンすぎるわね。
 もう少し肉をつけて、がっしりしないと。
 それで、あの可愛い女の子達を守らなきゃ。

「私は、あの和馬さんの男らしい顔が好きだった……」

 大きな手足、大きな身体。
 イケメンではないけど、不思議とかっこよく見える顔。
 きっと、自分というものを持っているからだと思う。

「そういう確固たるものが、表情や仕草に出ていたんだと思うなぁ」

 私は、あれから成長できたかな?
 自分というものを持ててるかな?

「一応、和馬さんに叱られないように勉強はしてるけど……」

 この間も学年トップだったし。

「来年には三年生になるし……」

 将来はどうしようかな?

「和馬さんが、私を助けて良かったと思ってもらいたい」

 和馬さんが、そんなことを望んでいないことはわかってるけど。

「お医者さんかな? それとも教師かな?  はたまた弁護士とか?」

 理系も文系も得意なので、進路にも迷います。

「何がやりたいのかなぁ……私って」

 お父さんもお母さんも、焦らなくて良いっていうけど。
 とりあえず大学に入ってから決める人も多いからって。

「でも、なんだが……私、焦ってる」

 理由はわからないけど、時間がない気がする。

「プレッシャー? いや、違う」

 自慢じゃないけど本番には強いし、もう怖いものなんてない。
 和馬さんを失うこと以上のことなんかないから……。

「あれ以降、あの真っ白い空間の夢は見ないけど……」

 ずっと、呼ばれてる気がする?

「こんなこと、誰にも相談できない……」

 ……今度、和馬さんに聞いてもらおうかな?

 よし! お墓掃除して、その後に聞いてもらおうっと!

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