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少年期~後編~
それぞれの成長
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午前中の自習を終え、午後は鍛錬の時間に当てる。
もちろん、先生の監視付きである。
そうじゃないと、ザガン達が絡んでくるかもだし。
俺としては鍛錬くらいならしても良いが……中々そうもいかないな。
「さて、カグラからやろうか?」
模擬剣をお互いに構えて対峙する。
「ええっ! お願いいたしますっ!」
魔力により身体強化されたカグラが、一瞬で間合いを詰める。
そして、そのまま上段から剣を振り下ろす。
俺は慌てずに、身体を半歩ずらすことにより躱す。
「むぅ……相変わらず、避けるのが上手いのだ」
「まあね、模擬剣とはいえ、君のそれを食らいたくはないし」
カグラが剣を振り下ろした場所は、マンホールほどの大きさの穴があいていた。
カグラの身体強化は日に日に増していき、今ではこの有様だ。
現役ではないとはいえ、カイゼルが力だけなら自分並みだと言っていたから相当だろう。
「ですが……拙者とて、そればかりではないのですっ!」
再び間合いを詰めて来るが……。
大振りではなく、連続して剣を繰り出して来る……それも片手で。
模擬剣とはいえ、もう大人用のサイズを使っている。
カグラが、いかに力があるのかわかるというものだ。
「良いねっ! でもっ!」
剣を滑らせるようにして、その剣を受け流す。
「クッ! 拙者のがパワーはあるのに……!」
「それを手放したらどうかな?」
「いえっ! これは拙者の目指すべき場所に到達するために必要なのですっ!」
カグラの左手には盾がある。
俺たちを守ることを意識して、このスタイルを目指すようだ。
女性に守られるのはどうかと思ったが、それこそがカグラに失礼だと思い直した。
「なら——受けてみると良い」
拳に炎を纏い、盾に殴りつける。
「っ——!! ふふ……楽しいのだっ!」
俺の攻撃を食らっても、微動だにしない。
カイゼルでも、まともに食らえば下がるのに……。
いやはや、大したもんだよ。
「楽しいけど……この辺にしておこうか。本気になったらお互いに怪我では済まないからね」
「では、僕の番ですね?」
「ああ、オルガ。よろしくね……君にカエラを任せられるかな?」
「では、証明してみせましょう」
「セレナ! 拙者達も鍛錬するのだっ! 魔法を撃ってくれ!」
「うんっ! 遠慮しないからね!」
「そんなことしたら怒るのだ!」
二人はそんな言い合いをして離れていく。
すっかり遠慮もなくなり、本当に仲良くなったものだ。
……まあ、同時に迫られる俺としては複雑だけど。
「では——まいります」
「ああ——来ると良いよ」
連続した突きが繰り出される。
その一つ一つの突きは、洗練された突きだ。
芯がブレることなく、まっすぐに俺へと向けられている。
しかも……引きが速く、俺が攻撃に移れないほどだ。
「まいったなぁ……隙がないね」
負けないことを意識したオルガの戦法は、本人の性格もありハマったようだ。
時間はかかるが、普通の敵は焦って攻撃するだろうし。
そこを狙っていく戦い方で、地味だけど生真面目なオルガにはもってこいだろう。
「どうします? ザガン君の時のように掴みますか?」
「いやいや、こうも速いと難しいかな」
ザガンはパワータイプだったからそれを利用したけど、オルガはスピードタイプだし。
「では、降参しますか? アレス様の本領は魔法剣なので、気になさらないでください」
「ほう? 言うようになったね、オルガ。でも——まだ甘い」
オルガが槍を引いた瞬間に、俺は抜刀の姿勢をとった。
そして、次に槍が来る瞬間——槍の穂先を狙い、剣を繰り出す。
「なっ——!?」
「とった」
槍を弾かれたオルガが尻もちをつく。
そして素早く移動し、剣を突きつける。
「ま、まいりました……」
「いや、オルガも本気ではなかったしね」
「いえ、今できる本気でしたよ。やはり、僕は精進が足りないようです」
オルガの目は、落ち着いた言葉とは違い……ギラギラしている。
オルガの良いところは、相手の才能や強さを認めつつも、自分を見失わないことだな。
はっきり言って、才能は俺やカグラに劣るだろう。
だが、それがイコール弱いということではない。
絶え間ない努力により、俺たちが抜かれることもあるだろう。
そして、午後の授業も終わり放課後となる。
「アレス様は、今日はどちらへ行くのだ?」
「皇城に行くことになるな。父上が話があると」
「わぁ~いよいよですかね?」
「どうだろうね」
「では、僕がセレナさんを送っていきますね」
「ああ、頼んだよ。カグラは?」
「そ、その……エリナ様にお呼ばれしてて……」
「ん?そうなのか? まあ、良いや。じゃあ、帰ったらいるのかな?」
「良いですか……?」
「ああ、もちろんだ。ゆっくりしていくと良い」
「はいっ!」
「ふふ、今度はカグラちゃんの番だね」
どうやら、二人の中では協定?というものがあるらしい。
朝の稽古や帰りの時間はセレナと一緒。
基本的には、その時間にはカグラは現れない。
そして放課後や貴族の行事にはカグラが一緒。
こちらには、基本的にセレナは来ない。
そして、ごくたまに一緒になるという流れらしい。
……ちなみに、そこに俺の意見などない。
いや、良いんですけどねー。
もちろん、先生の監視付きである。
そうじゃないと、ザガン達が絡んでくるかもだし。
俺としては鍛錬くらいならしても良いが……中々そうもいかないな。
「さて、カグラからやろうか?」
模擬剣をお互いに構えて対峙する。
「ええっ! お願いいたしますっ!」
魔力により身体強化されたカグラが、一瞬で間合いを詰める。
そして、そのまま上段から剣を振り下ろす。
俺は慌てずに、身体を半歩ずらすことにより躱す。
「むぅ……相変わらず、避けるのが上手いのだ」
「まあね、模擬剣とはいえ、君のそれを食らいたくはないし」
カグラが剣を振り下ろした場所は、マンホールほどの大きさの穴があいていた。
カグラの身体強化は日に日に増していき、今ではこの有様だ。
現役ではないとはいえ、カイゼルが力だけなら自分並みだと言っていたから相当だろう。
「ですが……拙者とて、そればかりではないのですっ!」
再び間合いを詰めて来るが……。
大振りではなく、連続して剣を繰り出して来る……それも片手で。
模擬剣とはいえ、もう大人用のサイズを使っている。
カグラが、いかに力があるのかわかるというものだ。
「良いねっ! でもっ!」
剣を滑らせるようにして、その剣を受け流す。
「クッ! 拙者のがパワーはあるのに……!」
「それを手放したらどうかな?」
「いえっ! これは拙者の目指すべき場所に到達するために必要なのですっ!」
カグラの左手には盾がある。
俺たちを守ることを意識して、このスタイルを目指すようだ。
女性に守られるのはどうかと思ったが、それこそがカグラに失礼だと思い直した。
「なら——受けてみると良い」
拳に炎を纏い、盾に殴りつける。
「っ——!! ふふ……楽しいのだっ!」
俺の攻撃を食らっても、微動だにしない。
カイゼルでも、まともに食らえば下がるのに……。
いやはや、大したもんだよ。
「楽しいけど……この辺にしておこうか。本気になったらお互いに怪我では済まないからね」
「では、僕の番ですね?」
「ああ、オルガ。よろしくね……君にカエラを任せられるかな?」
「では、証明してみせましょう」
「セレナ! 拙者達も鍛錬するのだっ! 魔法を撃ってくれ!」
「うんっ! 遠慮しないからね!」
「そんなことしたら怒るのだ!」
二人はそんな言い合いをして離れていく。
すっかり遠慮もなくなり、本当に仲良くなったものだ。
……まあ、同時に迫られる俺としては複雑だけど。
「では——まいります」
「ああ——来ると良いよ」
連続した突きが繰り出される。
その一つ一つの突きは、洗練された突きだ。
芯がブレることなく、まっすぐに俺へと向けられている。
しかも……引きが速く、俺が攻撃に移れないほどだ。
「まいったなぁ……隙がないね」
負けないことを意識したオルガの戦法は、本人の性格もありハマったようだ。
時間はかかるが、普通の敵は焦って攻撃するだろうし。
そこを狙っていく戦い方で、地味だけど生真面目なオルガにはもってこいだろう。
「どうします? ザガン君の時のように掴みますか?」
「いやいや、こうも速いと難しいかな」
ザガンはパワータイプだったからそれを利用したけど、オルガはスピードタイプだし。
「では、降参しますか? アレス様の本領は魔法剣なので、気になさらないでください」
「ほう? 言うようになったね、オルガ。でも——まだ甘い」
オルガが槍を引いた瞬間に、俺は抜刀の姿勢をとった。
そして、次に槍が来る瞬間——槍の穂先を狙い、剣を繰り出す。
「なっ——!?」
「とった」
槍を弾かれたオルガが尻もちをつく。
そして素早く移動し、剣を突きつける。
「ま、まいりました……」
「いや、オルガも本気ではなかったしね」
「いえ、今できる本気でしたよ。やはり、僕は精進が足りないようです」
オルガの目は、落ち着いた言葉とは違い……ギラギラしている。
オルガの良いところは、相手の才能や強さを認めつつも、自分を見失わないことだな。
はっきり言って、才能は俺やカグラに劣るだろう。
だが、それがイコール弱いということではない。
絶え間ない努力により、俺たちが抜かれることもあるだろう。
そして、午後の授業も終わり放課後となる。
「アレス様は、今日はどちらへ行くのだ?」
「皇城に行くことになるな。父上が話があると」
「わぁ~いよいよですかね?」
「どうだろうね」
「では、僕がセレナさんを送っていきますね」
「ああ、頼んだよ。カグラは?」
「そ、その……エリナ様にお呼ばれしてて……」
「ん?そうなのか? まあ、良いや。じゃあ、帰ったらいるのかな?」
「良いですか……?」
「ああ、もちろんだ。ゆっくりしていくと良い」
「はいっ!」
「ふふ、今度はカグラちゃんの番だね」
どうやら、二人の中では協定?というものがあるらしい。
朝の稽古や帰りの時間はセレナと一緒。
基本的には、その時間にはカグラは現れない。
そして放課後や貴族の行事にはカグラが一緒。
こちらには、基本的にセレナは来ない。
そして、ごくたまに一緒になるという流れらしい。
……ちなみに、そこに俺の意見などない。
いや、良いんですけどねー。
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