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少年期~前編~

間に合いはしたが……本番はこれから

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 カイゼルに背負われつつ、皇城に到着すると……。

 物凄い勢いだったからか、門番達が慌てている。

「何事だ!?」

「待て!……カイゼル殿!?アレス様……」

「おい、確か……」

「皇帝陛下が、アレス様が来ても通すなって……」

 ……父上。
 そうまでして、俺を止めたいか……!

「皆さん、お願いします!このままでは……!あれ?」

 門番達が、道を開ける。

「お主達……」

「どうぞ、お通りください」

「我々は、何も見ておりません。アレス様と会ってもいませんってことで」

「どうしてですか……?」

「貴方様は、我々にいつも挨拶をして下さいます。おはようございますから始まり、お疲れ様です、ご苦労様です、ありがとうございます……どれも、我々の活力の源となっております」

「そんなの当たり前じゃないですか……!貴方達は毎日毎日、雨が降っても雷が鳴っても、いつだって城を守ってくれているのですから……!」

「それを言える貴方様が、どれだけ貴重なことか……いえ、我々とて職務ですから……お礼も何も求めてなどはおりません」

「ですが、我々とて人間です。お礼を言われたら嬉しいですし、その方を好きになっても仕方のないことです」

「さあ、お通りください。皇帝陛下は、真っ直ぐに皇族の居住区に向かいました」

「しかし……後で貴方達が……」

「アレス様、参りましょう。彼らの気持ちを無下にしてはなりませぬ」

「……わかった、カイゼル。二人共、クビになったら僕が必ず雇うからね!」

 カイゼルが門番達を通り抜け、皇城へと向かう。

「ハハ!良いですね!」

「その時はお願いしますぞ!」

 その後ろから聞こえる声を聞きながら……。



 城の中は騒然としていた……。

「おい!?どうなってる!?」

「わからん!皇帝陛下が!」

「侯爵家当主までいたぞ!?」

「皇子達は!?」

「ヒルダ様もいたぞ!?」

「何が起きているんだ!?」

 身なりや年齢からいって、恐らく下級貴族や下級仕官なのだろう……。
 理由も聞けずに、立ち入ることも出来ないでいるのかも……。
 皆がパニックになり、騒いでいると……。

「静まれぃぃ!!」

 カイゼルの一言だけで、辺りが静まりかえる……。

「か、カイゼル殿……?」

「元近衛騎士団長が何故……?」

「あれ?あれは……第3皇子?」

 まだ少し騒ついているが、これで注目を集めることができた。

「皆の者!騒がしてしまいすまない!この件は我々皇族の問題!少し騒動が起きるかもしれないが……国の要であるそなた達は、いつも通りに職務を全うしてほしい!」

「国の要……言われたことないぞ……」

「ああ……それに、やって当たり前だと……」

「代わりはいくらでもいるって……」

「そなた達がいるからこそ、滞りなく国が回り、民や我々が生活できているのだ!それが止んだ時……それこそ混乱が起きるであろう!もっと誇りを持って職務を全うしてほしい!」

 現代でもそうだ。
 下請け企業や、清掃業者、まじめに働く公務員など……。
 彼らがいるからこそ、生活が成り立っている。
 そのことに、皆が意外と気付いていないだけだ。

「わ、わかりました!アレス様!」

「我々に出来ることをいたします!」

「皆の者、感謝する!カイゼル!」

「御意!……お見事です……」

 後のことを任せて、居住区に向かう。



 その入り口では……間に合ったか!

「父上!」

「アレス!?どうして!?カイゼル……お前……!」

 そこには槍を構えた父上と横にはゼトさん、そして怯えているゲルマ。
 ゲルマを守るようにヒルダとライル。
 その横には、ゲイボルグ侯爵家当主であり、ゲルマの父であるターレス。
 少し離れたところに、宰相とノーラ、ヘイゼルがいる。

「ラグナ、すまんな。俺は、アレス様に忠誠を誓うことにした」

「なっ——!?……そう願っていたが……このタイミングか……」

「父上、その槍をおさめてください」

「何故だ!?こいつは、お前を殺そうと……!」

「わかっています。俺とて積年の怨みはあります。ですが、やり方がまずいです。それでは、禍根を残すでしょう」

「しかし……!」

「父上!貴方の、俺を大事に思う気持ち……とても嬉しく思います。ですが、元々はそれが原因でもあるのです……わかりますね?」

「そ、それは……」

「陛下、貴方の負けですよ。命を狙われた本人が言っているのに、貴方がそれをしてしまったら——ただの私情です」

「ゼト……アレスは、それでいいのか?こいつを許すのか?」

 父上は槍をおさめてくれた……とりあえず、第一関門をクリアできたな。

「それは……少し、お話をしても良いですか?」

「……わかった、この場はお前に預けるとしよう。俺は、ここで黙っている。お前の好きなようにするといい……ただし、もしもの時は……」

「わかっています。その場合は容赦なく。俺とて、そこまでは庇えないです」

 俺に害を与えるような真似は、カイゼルが許さないしね。

「カイゼル、もしもの時は許可する。いいね?」

「御意」

 カイゼルを伴い、第一王妃ゲルマと対峙する。

「……アレスゥゥ!!」

 俺を憎悪の目で睨みつけるゲルマ。

「アレス……」

 俺を心配そうに見つめるヒルダ姉さん。

「出来損ない……!」

 動揺しつつも、俺を睨みつけるライル。

 そして……。

「ふむ……風向きが変わりましたか」

 この状況にも動揺せずに、静かに佇む重鎮にして老臣ターレス-ゲイボルグ。

 さて……ここからが本番だ。

 この妖怪ジジイに、俺がどこまで立ち向かえるか……。

 だが……やってみるしかあるまい……!
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