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少年期~前編~

俺に出来ること

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 ……また、夢か?

 これは……伯父上の家か?

「ねえねえ、お父さん」

「どうした?」

「なんか……最近、変な夢見るの……」

「ん?どんな夢だ?」

「うーんと……知らない世界が見えて、そこでは魔法とかが存在して……」

「ハハ!」

「わ、笑わないでよ……」

「すまん、すまん。それで?お前が魔法少女にでもなってるのか?」

「もう!  ううん……知らない男の子がいて、その子が遊んだりしている夢……でも、何故か……」

「ん?」

「頭がおかしいと思うんだけど……姿も年齢も何もかもが違うのに——和馬さんに似てるの……」

「……お前……」

「か、可哀想な目で見ないで……もちろん、私だってわかってるし……お母さんには言わないよ……早く忘れた方が良いって言うし……でも……」

「いや……荒唐無稽な話だが……そういうのだったら素敵だな」

「え?」

「和馬が何処かで生まれ変わって、幸せに生きてくれたら……俺は、それを願っている……」

「お父さん……」

「母さんの気持ちもわかるがな……忘れたほうが、いや……思い出にしてしまった方が良いということはな……血が繋がっていない母さんが薄情なわけじゃないぞ?」

「うん、わかってる。私達のためにそう言ってくれてるんだよね……」

「わかってるならいい……1年なんかあっという間に過ぎるな……」

「和馬さん……貴方は……何処かで生きているのですか……?」

 映像が遠ざかっていく……。

 ……これは本当に夢なのか?

 あまりに鮮明でないか?

 会話も具体的だし……。

 ……だとすると……何故、こんな映像をみることが出来る?

 俺は死んでいるし、あっちの世界の映像が見れるのはおかしい……。

 それに……結衣が見た夢は……もしかして……。




「様、レス様……アレス様!」

「ん……?ああ、カグラか。それに、セレナも……何を泣きそうな顔をしているんだい?」

「アレス様が気を失うからですっ!」

「わ、わたしの所為で……ごめんなさい!」

「面目無い……セレナ、怪我はないかい?」

「は、はい……」

「なら良かった……カグラ、膨れてどうしたんだい?」

「むぅ……拙者にはないのですか?そ、そういうの……」

「君が怪我をするとは思ってないからね。僕は、カグラの力を信頼しているから」

「ず、ずるいのだ……」

「オルガは?というか……ここは?」

 ベットにいた俺は、起き上がってみると……。

「ここ……僕の部屋だな……」

「あっ!そうですよ!」

「忘れてたのだ!拙者が知らせてくるのだ!」

 カグラは部屋を飛び出していく……。

「えっと……?」

「あの後、皇帝陛下と近衛の方々で傭兵を退治してくれました。そのまま、一緒に皇都に帰ってきて、アレス様の自宅まで来たんですよ。それで、アレス様が目覚めるまで、皆で交代で様子を見てたんです」

「なるほど……そういうことか。父上は……?」

「何やら……怖い顔をして、皇城に向かっていきましたけど……」

「いつだ!?」

「ふえ?い、今さっきですけど……怖い顔をしてますよ……?」

「すまない!だが……!」

「動いちゃダメですよ!」

「行かなきゃいけない……!」

 父上は……ゲルマを殺す気だ……!
 もちろん、俺とて殺してやりたい気持ちはあるが……!
 姉上は……ヒルダ姉さんが悲しむのも嫌だ!
 それに……憎しみに任せて殺すのは、後々に響くことになる……!
 最悪殺すことになったとしても……そのやり方だけはダメだっ!

「わ、わかりましたから!手伝います!」



 セレナに肩を貸してもらい、階段を下りていくと……。

 オルガとカグラに……家族がいた。

「アレス!」

「アレス様!」

「母上に、カエラ、心配をおかけして申し訳ない。だが、話は後にしましょう。僕は、父上を止めなくてはいけない……!」

「そ、そうなの!ラグナが……物凄い怖い顔をして……」

「誰も止められなくて……」

 ……母上が止められないとなると、相当頭に血が上っているな。

「カグラ!オルガ!」

「はいっ!」

「なんでしょうか?」

「俺の家族を任せる。いいな?」

「はっ!」

「お任せを!」

「セレナは中にいて、様子を見てやってくれ」

「わ、わかりましたっ!」

「ありがとう、みんな……では、行ってくる」

 玄関を開けると、目の前でカイゼルが仁王立ちをしていた。

「カイゼル、退いてくれるかい?」

「皇帝陛下に言いつけられてまして……」

 やっぱりそうか。
 父上は……俺がくる前に、全てを終わらせる気だ。
 俺が止めることをわかっていたから……。

「カイゼル——俺を父上の元まで連れて行ってくれ」

 意識的に俺という言葉を使いつつ、意を持ってカイゼルを見つめる……。
 虚勢にしかならないだろうが、それでも俺の精一杯の意思を示す……!

「……良き目です。懐かしくもあり、寂しくもある……自分のためではなく、誰かのために本気になれる亡き先帝陛下にそっくりです……」

「カイゼル……」

 カイゼルが泣いている……。

「ククク……ラグナよ、お前の息子は手強いぞ……アレス様、覚悟はよろしいか?ここからは、大人の世界。様々な思惑が絡み合う魔境ですぞ?貴方が行ったところでなんの役にもたたないかもしれないですぞ?」

「……ああ!覚悟は出来ている!」

 俺にどこまで出来るかはわからないが……最悪の結末だけは回避してみせる……!
 そして……俺だけが持つ唯一の力で——楔を打つ!

「……では、ご命令を。私は、今から貴方に忠誠を誓いましょう。皇帝陛下でもなく、先帝陛下でもなく——アレス様……貴方だけに!」

「……感謝する、カイゼル……ふぅ……第3皇子アレスとして命ずる!カイゼルよ!俺を父上の元まで連れて行け!!」

「御意!」

 カイゼルに背負われて、俺は皇城へと向かっていく。

 頼む……間に合ってくれ……!
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