39 / 257
少年期~前編~
俺に出来ること
しおりを挟む
……また、夢か?
これは……伯父上の家か?
「ねえねえ、お父さん」
「どうした?」
「なんか……最近、変な夢見るの……」
「ん?どんな夢だ?」
「うーんと……知らない世界が見えて、そこでは魔法とかが存在して……」
「ハハ!」
「わ、笑わないでよ……」
「すまん、すまん。それで?お前が魔法少女にでもなってるのか?」
「もう! ううん……知らない男の子がいて、その子が遊んだりしている夢……でも、何故か……」
「ん?」
「頭がおかしいと思うんだけど……姿も年齢も何もかもが違うのに——和馬さんに似てるの……」
「……お前……」
「か、可哀想な目で見ないで……もちろん、私だってわかってるし……お母さんには言わないよ……早く忘れた方が良いって言うし……でも……」
「いや……荒唐無稽な話だが……そういうのだったら素敵だな」
「え?」
「和馬が何処かで生まれ変わって、幸せに生きてくれたら……俺は、それを願っている……」
「お父さん……」
「母さんの気持ちもわかるがな……忘れたほうが、いや……思い出にしてしまった方が良いということはな……血が繋がっていない母さんが薄情なわけじゃないぞ?」
「うん、わかってる。私達のためにそう言ってくれてるんだよね……」
「わかってるならいい……1年なんかあっという間に過ぎるな……」
「和馬さん……貴方は……何処かで生きているのですか……?」
映像が遠ざかっていく……。
……これは本当に夢なのか?
あまりに鮮明でないか?
会話も具体的だし……。
……だとすると……何故、こんな映像をみることが出来る?
俺は死んでいるし、あっちの世界の映像が見れるのはおかしい……。
それに……結衣が見た夢は……もしかして……。
「様、レス様……アレス様!」
「ん……?ああ、カグラか。それに、セレナも……何を泣きそうな顔をしているんだい?」
「アレス様が気を失うからですっ!」
「わ、わたしの所為で……ごめんなさい!」
「面目無い……セレナ、怪我はないかい?」
「は、はい……」
「なら良かった……カグラ、膨れてどうしたんだい?」
「むぅ……拙者にはないのですか?そ、そういうの……」
「君が怪我をするとは思ってないからね。僕は、カグラの力を信頼しているから」
「ず、ずるいのだ……」
「オルガは?というか……ここは?」
ベットにいた俺は、起き上がってみると……。
「ここ……僕の部屋だな……」
「あっ!そうですよ!」
「忘れてたのだ!拙者が知らせてくるのだ!」
カグラは部屋を飛び出していく……。
「えっと……?」
「あの後、皇帝陛下と近衛の方々で傭兵を退治してくれました。そのまま、一緒に皇都に帰ってきて、アレス様の自宅まで来たんですよ。それで、アレス様が目覚めるまで、皆で交代で様子を見てたんです」
「なるほど……そういうことか。父上は……?」
「何やら……怖い顔をして、皇城に向かっていきましたけど……」
「いつだ!?」
「ふえ?い、今さっきですけど……怖い顔をしてますよ……?」
「すまない!だが……!」
「動いちゃダメですよ!」
「行かなきゃいけない……!」
父上は……ゲルマを殺す気だ……!
もちろん、俺とて殺してやりたい気持ちはあるが……!
姉上は……ヒルダ姉さんが悲しむのも嫌だ!
それに……憎しみに任せて殺すのは、後々に響くことになる……!
最悪殺すことになったとしても……そのやり方だけはダメだっ!
「わ、わかりましたから!手伝います!」
セレナに肩を貸してもらい、階段を下りていくと……。
オルガとカグラに……家族がいた。
「アレス!」
「アレス様!」
「母上に、カエラ、心配をおかけして申し訳ない。だが、話は後にしましょう。僕は、父上を止めなくてはいけない……!」
「そ、そうなの!ラグナが……物凄い怖い顔をして……」
「誰も止められなくて……」
……母上が止められないとなると、相当頭に血が上っているな。
「カグラ!オルガ!」
「はいっ!」
「なんでしょうか?」
「俺の家族を任せる。いいな?」
「はっ!」
「お任せを!」
「セレナは中にいて、様子を見てやってくれ」
「わ、わかりましたっ!」
「ありがとう、みんな……では、行ってくる」
玄関を開けると、目の前でカイゼルが仁王立ちをしていた。
「カイゼル、退いてくれるかい?」
「皇帝陛下に言いつけられてまして……」
やっぱりそうか。
父上は……俺がくる前に、全てを終わらせる気だ。
俺が止めることをわかっていたから……。
「カイゼル——俺を父上の元まで連れて行ってくれ」
意識的に俺という言葉を使いつつ、意を持ってカイゼルを見つめる……。
虚勢にしかならないだろうが、それでも俺の精一杯の意思を示す……!
「……良き目です。懐かしくもあり、寂しくもある……自分のためではなく、誰かのために本気になれる亡き先帝陛下にそっくりです……」
「カイゼル……」
カイゼルが泣いている……。
「ククク……ラグナよ、お前の息子は手強いぞ……アレス様、覚悟はよろしいか?ここからは、大人の世界。様々な思惑が絡み合う魔境ですぞ?貴方が行ったところでなんの役にもたたないかもしれないですぞ?」
「……ああ!覚悟は出来ている!」
俺にどこまで出来るかはわからないが……最悪の結末だけは回避してみせる……!
そして……俺だけが持つ唯一の力で——楔を打つ!
「……では、ご命令を。私は、今から貴方に忠誠を誓いましょう。皇帝陛下でもなく、先帝陛下でもなく——アレス様……貴方だけに!」
「……感謝する、カイゼル……ふぅ……第3皇子アレスとして命ずる!カイゼルよ!俺を父上の元まで連れて行け!!」
「御意!」
カイゼルに背負われて、俺は皇城へと向かっていく。
頼む……間に合ってくれ……!
これは……伯父上の家か?
「ねえねえ、お父さん」
「どうした?」
「なんか……最近、変な夢見るの……」
「ん?どんな夢だ?」
「うーんと……知らない世界が見えて、そこでは魔法とかが存在して……」
「ハハ!」
「わ、笑わないでよ……」
「すまん、すまん。それで?お前が魔法少女にでもなってるのか?」
「もう! ううん……知らない男の子がいて、その子が遊んだりしている夢……でも、何故か……」
「ん?」
「頭がおかしいと思うんだけど……姿も年齢も何もかもが違うのに——和馬さんに似てるの……」
「……お前……」
「か、可哀想な目で見ないで……もちろん、私だってわかってるし……お母さんには言わないよ……早く忘れた方が良いって言うし……でも……」
「いや……荒唐無稽な話だが……そういうのだったら素敵だな」
「え?」
「和馬が何処かで生まれ変わって、幸せに生きてくれたら……俺は、それを願っている……」
「お父さん……」
「母さんの気持ちもわかるがな……忘れたほうが、いや……思い出にしてしまった方が良いということはな……血が繋がっていない母さんが薄情なわけじゃないぞ?」
「うん、わかってる。私達のためにそう言ってくれてるんだよね……」
「わかってるならいい……1年なんかあっという間に過ぎるな……」
「和馬さん……貴方は……何処かで生きているのですか……?」
映像が遠ざかっていく……。
……これは本当に夢なのか?
あまりに鮮明でないか?
会話も具体的だし……。
……だとすると……何故、こんな映像をみることが出来る?
俺は死んでいるし、あっちの世界の映像が見れるのはおかしい……。
それに……結衣が見た夢は……もしかして……。
「様、レス様……アレス様!」
「ん……?ああ、カグラか。それに、セレナも……何を泣きそうな顔をしているんだい?」
「アレス様が気を失うからですっ!」
「わ、わたしの所為で……ごめんなさい!」
「面目無い……セレナ、怪我はないかい?」
「は、はい……」
「なら良かった……カグラ、膨れてどうしたんだい?」
「むぅ……拙者にはないのですか?そ、そういうの……」
「君が怪我をするとは思ってないからね。僕は、カグラの力を信頼しているから」
「ず、ずるいのだ……」
「オルガは?というか……ここは?」
ベットにいた俺は、起き上がってみると……。
「ここ……僕の部屋だな……」
「あっ!そうですよ!」
「忘れてたのだ!拙者が知らせてくるのだ!」
カグラは部屋を飛び出していく……。
「えっと……?」
「あの後、皇帝陛下と近衛の方々で傭兵を退治してくれました。そのまま、一緒に皇都に帰ってきて、アレス様の自宅まで来たんですよ。それで、アレス様が目覚めるまで、皆で交代で様子を見てたんです」
「なるほど……そういうことか。父上は……?」
「何やら……怖い顔をして、皇城に向かっていきましたけど……」
「いつだ!?」
「ふえ?い、今さっきですけど……怖い顔をしてますよ……?」
「すまない!だが……!」
「動いちゃダメですよ!」
「行かなきゃいけない……!」
父上は……ゲルマを殺す気だ……!
もちろん、俺とて殺してやりたい気持ちはあるが……!
姉上は……ヒルダ姉さんが悲しむのも嫌だ!
それに……憎しみに任せて殺すのは、後々に響くことになる……!
最悪殺すことになったとしても……そのやり方だけはダメだっ!
「わ、わかりましたから!手伝います!」
セレナに肩を貸してもらい、階段を下りていくと……。
オルガとカグラに……家族がいた。
「アレス!」
「アレス様!」
「母上に、カエラ、心配をおかけして申し訳ない。だが、話は後にしましょう。僕は、父上を止めなくてはいけない……!」
「そ、そうなの!ラグナが……物凄い怖い顔をして……」
「誰も止められなくて……」
……母上が止められないとなると、相当頭に血が上っているな。
「カグラ!オルガ!」
「はいっ!」
「なんでしょうか?」
「俺の家族を任せる。いいな?」
「はっ!」
「お任せを!」
「セレナは中にいて、様子を見てやってくれ」
「わ、わかりましたっ!」
「ありがとう、みんな……では、行ってくる」
玄関を開けると、目の前でカイゼルが仁王立ちをしていた。
「カイゼル、退いてくれるかい?」
「皇帝陛下に言いつけられてまして……」
やっぱりそうか。
父上は……俺がくる前に、全てを終わらせる気だ。
俺が止めることをわかっていたから……。
「カイゼル——俺を父上の元まで連れて行ってくれ」
意識的に俺という言葉を使いつつ、意を持ってカイゼルを見つめる……。
虚勢にしかならないだろうが、それでも俺の精一杯の意思を示す……!
「……良き目です。懐かしくもあり、寂しくもある……自分のためではなく、誰かのために本気になれる亡き先帝陛下にそっくりです……」
「カイゼル……」
カイゼルが泣いている……。
「ククク……ラグナよ、お前の息子は手強いぞ……アレス様、覚悟はよろしいか?ここからは、大人の世界。様々な思惑が絡み合う魔境ですぞ?貴方が行ったところでなんの役にもたたないかもしれないですぞ?」
「……ああ!覚悟は出来ている!」
俺にどこまで出来るかはわからないが……最悪の結末だけは回避してみせる……!
そして……俺だけが持つ唯一の力で——楔を打つ!
「……では、ご命令を。私は、今から貴方に忠誠を誓いましょう。皇帝陛下でもなく、先帝陛下でもなく——アレス様……貴方だけに!」
「……感謝する、カイゼル……ふぅ……第3皇子アレスとして命ずる!カイゼルよ!俺を父上の元まで連れて行け!!」
「御意!」
カイゼルに背負われて、俺は皇城へと向かっていく。
頼む……間に合ってくれ……!
44
お気に入りに追加
2,767
あなたにおすすめの小説
アラサー独身の俺が義妹を預かることになった件~俺と義妹が本当の家族になるまで~
おとら@ 書籍発売中
ライト文芸
ある日、小さいながらも飲食店を経営する俺に連絡が入る。
従兄弟であり、俺の育ての親でもある兄貴から、転勤するから二人の娘を預かってくれと。
これは一度家族になることから逃げ出した男が、義妹と過ごしていくうちに、再び家族になるまでの軌跡である。
底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。
運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。
憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。
異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。
外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。
地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。
俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。
だけど悔しくはない。
何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。
そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。
ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。
アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。
フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。
※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!!
僕は異世界転生してしまう
大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった
仕事とゲームで過労になってしまったようだ
とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた
転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった
住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる
◇
HOTランキング一位獲得!
皆さま本当にありがとうございます!
無事に書籍化となり絶賛発売中です
よかったら手に取っていただけると嬉しいです
これからも日々勉強していきたいと思います
◇
僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました
毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる