上 下
35 / 257
少年期~前編~

実戦訓練

しおりを挟む
 しっかりと英気を養った翌日のこと……。

 俺達は準備をして、出発の時間を待っていた。

「さて……実戦では初めてだからなぁ……どうなるか」

「その刀ってやつを使うのですか?」

「ああ、そうだよ。それに……母上から習ったこともね」

「あっ——やってましたね。カグラちゃんが領地に戻ってる間に、わたしは見てましたけど……綺麗だったなぁ~」

「むぅ……気になるのだ」

「ハハ……後で機会があればお披露目するかな」

「約束ですからね!」

 すると……オルガが駆け寄ってくる。
 その後ろからは、ゴーゲンさんも……。
 どうやら、出発の時間のようだ。

「アレス様、おまたせしました。では、行きましょう」

「ええ、わかりました。ゴーゲン殿、よろしくお願いします」

「畏まりました。ただし——某の指示に従ってもらいますぞ?」

 ゴーゲンさんの気配が変わる……戦いを生業とする人の空気に……。

「ええ、もちろんです。ここにいるのは、皇子ではなく……ただの一兵士です」

「貴方には愚問でしたな。では……」

 アラドヴァル家の兵士達と共に、街を出発する。



 ついでに……貴重な経験もさせてもらう。

「うおっ!?カグラ!?速くない!?」

「しっかりと掴まっててくださいね!」

「わわっ!?」

「セレナさん、僕で申し訳ないですね」

「そんなことありませんよ!」

 そう……今、馬に乗っております。
 俺はカグラの後ろに……少し情けない気も。
 セレナは、オルガの後ろに乗っている。
 この二人は地方の出身なので、5歳から学んでいたようだ。
 なので、安心して乗っていいのだが……少し、怖い。



 なんとか?無事に到着し……気持ちを切り替える。
 目の前には……瘴気が漂う草原が広がっている……。

「これは……どうしてこうなっているのですか?」

「50年ほど前の話ですが……ここにて、大きな戦があったようなのです。その際に瘴気が定着してしまい、定期的に魔物が出現するようになってしまったのです」

「なるほど……」

「噂に聞く聖女様でしたら、浄化できるのでしょうが……」

「異世界召喚されるという聖女ですか……」

 一体、どんな方が来るのだろうか?
 俺は会うことが出来るのか?
 聖痕がない俺では、許可が出なそうだな……。

「ええ……ですが、まだ先のことですしな。むっ……来たようですな……この規模は……うむ、ある意味良きタイミングでしたな」

 瘴気が形を変えて……魔物に変化していく……。

「えっと……?」

「瘴気の大きさにより、魔物はある程度判別が可能です。今回は規模が小さいので……ゴブリンとオークですかな」

 ゴーゲンさんの言う通り……瘴気はゴブリンとオークになる。
 オークは毛むくじゃらの人間の身体に、イノシシの顔がくっついたような魔物だ。
 身長は……160超えくらいか?槍を持っているな……。

「ブゴォ!!」

「グキャキャ!」

「僕らは、どうしますか?」

「では、ゴブリンを……今回は、某が補佐しましょう。幸い、オーク程度なら兵士達も問題ありませぬ」

「了解です!カグラ!君が道を切り開くんだ!僕が続く!オルガ!補佐とセレナの守り!セレナは近づいてくる魔物に魔法!いいか!?」

「「「はいっ!!!」」」

「……某は必要ないかもしれませんな」

 カグラがゴブリンの群れに突撃する!

「ヤァ!」

 一皮向けたカグラの剣技は、ゴブリン如き敵ではなかった。
 一刀のもとに斬り伏せていく……!

「さて……負けられないね……!」

 カグラの側面からくるゴブリンを、俺が刀で斬り伏せていく。
 やはり使いやすい……!
 西洋剣とは違い、斬ることに特化した刀は、俺の戦闘スタイルにもあっている。
 俺はパワーよりスピード、直線型ではなく動いて翻弄するタイプだ。

 だが、そのために……仕留め損なうこともあるが……。

「ハァ!」

 オルガの突きが、それを補ってくれる。

「みんな!行きます!」

 全員が意識して、射線上から離れる。

「ウォーターボール!続けて……ウインドカッター!」

 魔法の才能に恵まれてセレナは、連続で魔法を使用できるようにもなった。
 さらには……俺と共に、新技も開発中である。

「ククク……ハーハッハ!愉快なり!若き戦士がいるではないか!兵士諸君!負けてられぬぞ!?」

「「「オォォォ———!!!」」

 ゴーゲンさんの鼓舞により、兵士達も活気付く。
 オーク達を人海戦術により、次々と仕留めていく。
 だが、傷を負う兵士達も増えてきた……が、俺らにはセレナがいる。

「皆さん!いきますねっ!癒しの雨よ!降り注げ!ヒールシャワー!」

 キラキラ光る水の礫が、兵士達に降り注ぐ……。

「おおっ!傷が……!」

「お嬢ちゃん!ありがとう!」

「いえ!兵士の皆さん頑張ってください!」

「聞いたか!?野郎ども!貴重な回復魔法のうえに、暖かい言葉……やる気が出ないわけがないな!?ゆくぞ——!!」

「ウォォォ——!!!」



 そのまま順調に倒していき、しばらく経つと……。

「むっ!瘴気……!」

 ゴーゲンさんの視線の先には……新たな瘴気が発生していた。
 そこから、次々とゴブリンやオークが現れていく……。

「……僕がやってもよろしいですか?」

「……アレス様が?蛮勇ではないでしょうね?勝算は?」

「おそらく、問題ないかと思うます。自惚れではなく、客観的に見て……」

「なれば……万が一に備えて、某が補佐しましょう。ネイル!」

「はいはい、なんですかねー?」

「息子とその友人を補佐しろ。某は、アレス様と共にあれを始末してくる」

「えー?俺っすか?まあ、仕方ないっすね。行ってきまーす」

 ……あの人……軽い口調だけど……強いな。

「すみません。奴の名前はネイルといい……ああ見えて我が兵士達の中でも、腕利きの者なのですが……」

「いえ、態度とは裏腹に……足運びに隙がありませんし、音や気配もほとんどしなかったです。僕が——目指しているスタイルに近いですね」

「うむ、良き目を持っておりますな。では……お手並み拝見といきましょう」

「ええ……いきます……!」

 まずは四肢に魔力を通す……。
 そして剣を下段に構えて、地を這うように疾走する……!

「グギャギャ!」

「フゴー!」

 ゴブリンやオークが攻撃を仕掛けてくるが……俺に当たることはない。

「火炎刃!」

 俺は攻撃を縫うようにして……炎の刀でカウンターを決めてゆく……!

「おおっ!まるで……舞っているかのようだっ!」

 そう……俺が考えた戦闘方法はこれだ。
 刀をもらった日から、踊り子だった母上から舞を習っていた。

「母上から習いましてねっ!」

 俺は肉体強化がそこまで得意ではない。
 おそらく、魔法とは別の才能が必要なのだろう。
 なので、緩急をつける剣技と回避に重点を置くことになる。
 後は一撃の威力……これは魔法剣が解決してくれた。
 舞うことは、俺の戦闘スタイルにドンピシャだったようだ。

「グギャー!?」

「ブモォー!?」

 炎刀により、一撃で沈んでいく……。
 常に動け……!敵に狙いをつけさせるな……!



「ゼェ、ゼェ……やっぱり、鍛錬が足りないな……」

 ほとんどは倒したが……まだ、残っている。
 やれやれ……かっこつかないなぁ……。

「いえ、十分かと思います。後は、某が……いえ、必要ありませぬな」

「え?」

「アレス様ぁぁ——!!拙者にお任せを——!!」

 カグラが魔物に突っ込んでいき……殲滅していく。
 しかも……以前とは違い、周りを確認し、立ち回っている。

「あらら……良いところ持ってかれちゃったな」

 すると、セレナとオルガもやってくる。

「えへへ、カグラちゃんは嬉しいんですよー。アレス様のために戦えるのが……わたしもですよ?」

「そうだと思いますし……僕もですよ」

「そうか……月並みな言葉だが——ありがとう」

 ……ならば、俺は……。

 大切な君達に、そう思ってもらえる自分でいよう。

 そして……そのためにも、もっと強くならなくては……!

 全てを跳ね除けるくらいに……!

 俺と付き合うことで、大切な人が何も言われないように……。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

貴方がLv1から2に上がるまでに必要な経験値は【6億4873万5213】だと宣言されたけどレベル1の状態でも実は最強な村娘!!

ルシェ(Twitter名はカイトGT)
ファンタジー
この世界の勇者達に道案内をして欲しいと言われ素直に従う村娘のケロナ。 その道中で【戦闘レベル】なる物の存在を知った彼女は教会でレベルアップに必要な経験値量を言われて唖然とする。 ケロナがたった1レベル上昇する為に必要な経験値は...なんと億越えだったのだ!!。 それを勇者パーティの面々に鼻で笑われてしまうケロナだったが彼女はめげない!!。 そもそも今の彼女は村娘で戦う必要がないから安心だよね?。 ※1話1話が物凄く短く500文字から1000文字程度で書かせていただくつもりです。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

hisa
ファンタジー
 受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。  自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。  戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?  教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!! ※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく! ※第5章に突入しました。 ※小説家になろう96万PV突破! ※カクヨム68万PV突破! ※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

その聖女は身分を捨てた

メカ喜楽直人
ファンタジー
ある日突然、この世界各地に無数のダンジョンが出来たのは今から18年前のことだった。 その日から、この世界には魔物が溢れるようになり人々は武器を揃え戦うことを覚えた。しかし年を追うごとに魔獣の種類は増え続け武器を持っている程度では倒せなくなっていく。 そんな時、神からの掲示によりひとりの少女が探し出される。 魔獣を退ける結界を作り出せるその少女は、自国のみならず各国から請われ結界を貼り廻らせる旅にでる。 こうして少女の活躍により、世界に平和が取り戻された。 これは、平和を取り戻した後のお話である。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

婚約破棄されたので暗殺される前に国を出ます。

なつめ猫
ファンタジー
公爵家令嬢のアリーシャは、我儘で傲慢な妹のアンネに婚約者であるカイル王太子を寝取られ学院卒業パーティの席で婚約破棄されてしまう。 そして失意の内に王都を去ったアリーシャは行方不明になってしまう。 そんなアリーシャをラッセル王国は、総力を挙げて捜索するが何の成果も得られずに頓挫してしまうのであった。 彼女――、アリーシャには王国の重鎮しか知らない才能があった。 それは、世界でも稀な大魔導士と、世界で唯一の聖女としての力が備わっていた事であった。

処理中です...