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少年期~前編~

実戦訓練

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 しっかりと英気を養った翌日のこと……。

 俺達は準備をして、出発の時間を待っていた。

「さて……実戦では初めてだからなぁ……どうなるか」

「その刀ってやつを使うのですか?」

「ああ、そうだよ。それに……母上から習ったこともね」

「あっ——やってましたね。カグラちゃんが領地に戻ってる間に、わたしは見てましたけど……綺麗だったなぁ~」

「むぅ……気になるのだ」

「ハハ……後で機会があればお披露目するかな」

「約束ですからね!」

 すると……オルガが駆け寄ってくる。
 その後ろからは、ゴーゲンさんも……。
 どうやら、出発の時間のようだ。

「アレス様、おまたせしました。では、行きましょう」

「ええ、わかりました。ゴーゲン殿、よろしくお願いします」

「畏まりました。ただし——某の指示に従ってもらいますぞ?」

 ゴーゲンさんの気配が変わる……戦いを生業とする人の空気に……。

「ええ、もちろんです。ここにいるのは、皇子ではなく……ただの一兵士です」

「貴方には愚問でしたな。では……」

 アラドヴァル家の兵士達と共に、街を出発する。



 ついでに……貴重な経験もさせてもらう。

「うおっ!?カグラ!?速くない!?」

「しっかりと掴まっててくださいね!」

「わわっ!?」

「セレナさん、僕で申し訳ないですね」

「そんなことありませんよ!」

 そう……今、馬に乗っております。
 俺はカグラの後ろに……少し情けない気も。
 セレナは、オルガの後ろに乗っている。
 この二人は地方の出身なので、5歳から学んでいたようだ。
 なので、安心して乗っていいのだが……少し、怖い。



 なんとか?無事に到着し……気持ちを切り替える。
 目の前には……瘴気が漂う草原が広がっている……。

「これは……どうしてこうなっているのですか?」

「50年ほど前の話ですが……ここにて、大きな戦があったようなのです。その際に瘴気が定着してしまい、定期的に魔物が出現するようになってしまったのです」

「なるほど……」

「噂に聞く聖女様でしたら、浄化できるのでしょうが……」

「異世界召喚されるという聖女ですか……」

 一体、どんな方が来るのだろうか?
 俺は会うことが出来るのか?
 聖痕がない俺では、許可が出なそうだな……。

「ええ……ですが、まだ先のことですしな。むっ……来たようですな……この規模は……うむ、ある意味良きタイミングでしたな」

 瘴気が形を変えて……魔物に変化していく……。

「えっと……?」

「瘴気の大きさにより、魔物はある程度判別が可能です。今回は規模が小さいので……ゴブリンとオークですかな」

 ゴーゲンさんの言う通り……瘴気はゴブリンとオークになる。
 オークは毛むくじゃらの人間の身体に、イノシシの顔がくっついたような魔物だ。
 身長は……160超えくらいか?槍を持っているな……。

「ブゴォ!!」

「グキャキャ!」

「僕らは、どうしますか?」

「では、ゴブリンを……今回は、某が補佐しましょう。幸い、オーク程度なら兵士達も問題ありませぬ」

「了解です!カグラ!君が道を切り開くんだ!僕が続く!オルガ!補佐とセレナの守り!セレナは近づいてくる魔物に魔法!いいか!?」

「「「はいっ!!!」」」

「……某は必要ないかもしれませんな」

 カグラがゴブリンの群れに突撃する!

「ヤァ!」

 一皮向けたカグラの剣技は、ゴブリン如き敵ではなかった。
 一刀のもとに斬り伏せていく……!

「さて……負けられないね……!」

 カグラの側面からくるゴブリンを、俺が刀で斬り伏せていく。
 やはり使いやすい……!
 西洋剣とは違い、斬ることに特化した刀は、俺の戦闘スタイルにもあっている。
 俺はパワーよりスピード、直線型ではなく動いて翻弄するタイプだ。

 だが、そのために……仕留め損なうこともあるが……。

「ハァ!」

 オルガの突きが、それを補ってくれる。

「みんな!行きます!」

 全員が意識して、射線上から離れる。

「ウォーターボール!続けて……ウインドカッター!」

 魔法の才能に恵まれてセレナは、連続で魔法を使用できるようにもなった。
 さらには……俺と共に、新技も開発中である。

「ククク……ハーハッハ!愉快なり!若き戦士がいるではないか!兵士諸君!負けてられぬぞ!?」

「「「オォォォ———!!!」」

 ゴーゲンさんの鼓舞により、兵士達も活気付く。
 オーク達を人海戦術により、次々と仕留めていく。
 だが、傷を負う兵士達も増えてきた……が、俺らにはセレナがいる。

「皆さん!いきますねっ!癒しの雨よ!降り注げ!ヒールシャワー!」

 キラキラ光る水の礫が、兵士達に降り注ぐ……。

「おおっ!傷が……!」

「お嬢ちゃん!ありがとう!」

「いえ!兵士の皆さん頑張ってください!」

「聞いたか!?野郎ども!貴重な回復魔法のうえに、暖かい言葉……やる気が出ないわけがないな!?ゆくぞ——!!」

「ウォォォ——!!!」



 そのまま順調に倒していき、しばらく経つと……。

「むっ!瘴気……!」

 ゴーゲンさんの視線の先には……新たな瘴気が発生していた。
 そこから、次々とゴブリンやオークが現れていく……。

「……僕がやってもよろしいですか?」

「……アレス様が?蛮勇ではないでしょうね?勝算は?」

「おそらく、問題ないかと思うます。自惚れではなく、客観的に見て……」

「なれば……万が一に備えて、某が補佐しましょう。ネイル!」

「はいはい、なんですかねー?」

「息子とその友人を補佐しろ。某は、アレス様と共にあれを始末してくる」

「えー?俺っすか?まあ、仕方ないっすね。行ってきまーす」

 ……あの人……軽い口調だけど……強いな。

「すみません。奴の名前はネイルといい……ああ見えて我が兵士達の中でも、腕利きの者なのですが……」

「いえ、態度とは裏腹に……足運びに隙がありませんし、音や気配もほとんどしなかったです。僕が——目指しているスタイルに近いですね」

「うむ、良き目を持っておりますな。では……お手並み拝見といきましょう」

「ええ……いきます……!」

 まずは四肢に魔力を通す……。
 そして剣を下段に構えて、地を這うように疾走する……!

「グギャギャ!」

「フゴー!」

 ゴブリンやオークが攻撃を仕掛けてくるが……俺に当たることはない。

「火炎刃!」

 俺は攻撃を縫うようにして……炎の刀でカウンターを決めてゆく……!

「おおっ!まるで……舞っているかのようだっ!」

 そう……俺が考えた戦闘方法はこれだ。
 刀をもらった日から、踊り子だった母上から舞を習っていた。

「母上から習いましてねっ!」

 俺は肉体強化がそこまで得意ではない。
 おそらく、魔法とは別の才能が必要なのだろう。
 なので、緩急をつける剣技と回避に重点を置くことになる。
 後は一撃の威力……これは魔法剣が解決してくれた。
 舞うことは、俺の戦闘スタイルにドンピシャだったようだ。

「グギャー!?」

「ブモォー!?」

 炎刀により、一撃で沈んでいく……。
 常に動け……!敵に狙いをつけさせるな……!



「ゼェ、ゼェ……やっぱり、鍛錬が足りないな……」

 ほとんどは倒したが……まだ、残っている。
 やれやれ……かっこつかないなぁ……。

「いえ、十分かと思います。後は、某が……いえ、必要ありませぬな」

「え?」

「アレス様ぁぁ——!!拙者にお任せを——!!」

 カグラが魔物に突っ込んでいき……殲滅していく。
 しかも……以前とは違い、周りを確認し、立ち回っている。

「あらら……良いところ持ってかれちゃったな」

 すると、セレナとオルガもやってくる。

「えへへ、カグラちゃんは嬉しいんですよー。アレス様のために戦えるのが……わたしもですよ?」

「そうだと思いますし……僕もですよ」

「そうか……月並みな言葉だが——ありがとう」

 ……ならば、俺は……。

 大切な君達に、そう思ってもらえる自分でいよう。

 そして……そのためにも、もっと強くならなくては……!

 全てを跳ね除けるくらいに……!

 俺と付き合うことで、大切な人が何も言われないように……。



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