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少年期~前編~
新たな友達と父親の気持ち
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それから幾日か過ぎ、母上のお腹も目立つようになってきた。
カエラは付きっきりになり、お世話をしている。
カイゼルは、なおさらのこと警戒を強めている。
最近は襲撃もないみたいだけど、こういう時が一番危ないことを知っているのだろう。
俺も注意を払いつつ、生活を送っている。
何より、俺自身が強くなることで皆の負担が減る。
なので、鍛錬にもさらに身が入るということだ。
剣技も褒められるようになってきたし、魔力の総量も上がってきた。
それに新しい魔法も覚えたし……今日は、その解禁日を迎える。
「ここなら平気かな……?」
俺は1人で、ひと気のない場所に来ていた。
闇の衣をまとい、誰にもつけられないように。
ここは捨てられた廃墟で、近くに人が住んでいないことは確認済みだ。
「……よし……気配もなし……」
(出ておいで)
(キュイ?)
(外には出たくないの?)
(キュイ……キュイ!)
(出たくないけど、仕方ないって感じかな?)
(キュイキュイ!)
すると……影から飛び出してくる!
「うわっ!?」
そのまま胸に飛び込んできたが……。
「……おっきくなってない?」
「クゥー?」
20センチくらいだったのに、30センチくらいになっている。
やはり、俺の魔力を吸っているからか?
それに、相当俺の影の中が気に入ったようだな。
「さて……君は、僕のなんだい?」
嫌悪感や敵意も全く感じないし……。
むしろ、親愛を覚えるし……どう見ても好かれている……。
これのどこが……悪魔の化身なのだろうか?
可愛いじゃないか……!
「キュイ?」
「……わかるわけがないよね。うーんと……僕のこと好きなのかい?」
「キュイー!!」
「そ、そうか……じゃあ、これからも一緒にいるかい?」
「キュイ!!」
「じゃあ、万が一の時のために魔法をかけておくね……ディスガイズ」
「クゥー?」
「窓を見てごらん」
「クゥー……キュイ!?」
「ハハ……どうだい?それなら、万が一バレても平気でしょ?」
変装の闇魔法により、犬の姿に変えた。
僕以外には犬に見えてるし、声もそうなっているはずだ。
これなら街を歩いても問題ないし、万が一見つかっても問題ない。
影に入るところや、出るところは見られちゃいけないけどね……。
あと、僕の魔力次第だし……。
「キュイ!」
「よし!外に出て遊ぶか!」
「キュイーン!」
廃墟を出て、皇都を走り回る。
ほんとに、犬の散歩のようだな。
「楽しいかい?」
「キュン!」
「たまになら出してあげるからね」
「キュイー!」
……まあ、ほとんど寝てるみたいだし。
俺の影が気に入ってるなら、そんなに気にしなくて良いかもな。
散歩を終えて、人波から外れる。
「よし……人の気配はなし。だけど、念のために……闇の衣……」
俺が意識して生き物に触ると、その対象も闇の衣に包まれる。
「キュイ?」
「さて……名前はどうする?僕がつけるかい?」
「キュイーン!!」
「うーん……何がいいかな……?ドラゴン、リュウ、タツ……色で言うと、クロ、コク……アレスと同じ三文字がいいかな……クロスとか……?」
「キュイー!」
「え!?それでいいの!?」
「キュイ!」
「じゃあ、今日から君の名はクロスだ。よろしくね、クロス」
「キュイーン!」
新たな友達?が出来たな。
いつまでかわからないけど、しばらくはお世話することにしよう。
———————————————
~皇帝陛下視点~
アレスが部屋から去った後、俺はブリューナグ家からの手紙を読んでいた。
「さて……クロイスからの手紙は……アレスを褒め称えてるな……文にこそしないが、継がせないのか?と聞かれているようだ。アレスめ……奴ほどの男にそう思わせるとは……まあ、気持ちはわからんでもない……」
アレスは優秀だ。
他の兄弟とは、立ち振る舞いも何もかもが違う。
俺とて皇帝として、父として、他の子供達を愛していないわけではない。
ただ……母親が、というより、その父親の侯爵が関わるのを意図的に阻止している。
だから、中々教育に口を出せることがなく……ああなってしまった。
俺も突然皇帝になったことで、そんな余裕もなかったということもあるが……。
アレスは母親が良かったのか、真っ直ぐで良い子に育ってくれた。
愛するエレナとの子だ。
可愛くないわけがない……出来れば、人柄的にも皇帝を継いで欲しいが……。
それは、この国では叶わぬこと……。
ただ、今はそれでいいと思えるようになった。
皇帝なんかロクでもない……ただのお飾りにすぎん。
もちろん、俺とて踏ん張ってはいるが……。
国を離れて継ぐ気もなかった俺には、味方が少ないからなぁ。
「ハァ——どうしたもんかね……」
「如何しましたか?」
「ゼノ、アレスをどう思う?」
誰にも聞かれる心配のない執務室で問いかける。
「……人柄、実力共に——皇の器かと存じます」
「やはりか……だが、その場合……」
「ええ、間違いなく争いになります。国内にて……長い歴史の中では、聖痕が持たない人が皇帝になったこともありますが、そんなことは奴らは許しませんな……」
「だよなぁー……まあ、継がせないから良いけどな」
「おや?どういう心境の変化ですかな?」
「結界の揺らぎがある以上、国内で争ってる場合じゃないからな」
「そうですな……あと20年あれば違ったのでしょうが……」
「それもあるが……アレスには皇帝は勿体ないかと思ってな。そんなのに収まる器とも思えん」
「……クハハ!いや、失礼しました……しかし……そういう面もありますね」
……アレス、お前にはロクなこともしてやれない弱い父ですまない。
だが、せめて……お前が強くなり、自分の意思で将来を決めて大人になる頃まで……。
お前が不自由な生活を送らずにすむように、このろくでもない俺がなんとかしよう。
あの大臣や侯爵家が何を言ってこようともな……。
それが——愛するお前に出来る、俺の精一杯のことだ……。
カエラは付きっきりになり、お世話をしている。
カイゼルは、なおさらのこと警戒を強めている。
最近は襲撃もないみたいだけど、こういう時が一番危ないことを知っているのだろう。
俺も注意を払いつつ、生活を送っている。
何より、俺自身が強くなることで皆の負担が減る。
なので、鍛錬にもさらに身が入るということだ。
剣技も褒められるようになってきたし、魔力の総量も上がってきた。
それに新しい魔法も覚えたし……今日は、その解禁日を迎える。
「ここなら平気かな……?」
俺は1人で、ひと気のない場所に来ていた。
闇の衣をまとい、誰にもつけられないように。
ここは捨てられた廃墟で、近くに人が住んでいないことは確認済みだ。
「……よし……気配もなし……」
(出ておいで)
(キュイ?)
(外には出たくないの?)
(キュイ……キュイ!)
(出たくないけど、仕方ないって感じかな?)
(キュイキュイ!)
すると……影から飛び出してくる!
「うわっ!?」
そのまま胸に飛び込んできたが……。
「……おっきくなってない?」
「クゥー?」
20センチくらいだったのに、30センチくらいになっている。
やはり、俺の魔力を吸っているからか?
それに、相当俺の影の中が気に入ったようだな。
「さて……君は、僕のなんだい?」
嫌悪感や敵意も全く感じないし……。
むしろ、親愛を覚えるし……どう見ても好かれている……。
これのどこが……悪魔の化身なのだろうか?
可愛いじゃないか……!
「キュイ?」
「……わかるわけがないよね。うーんと……僕のこと好きなのかい?」
「キュイー!!」
「そ、そうか……じゃあ、これからも一緒にいるかい?」
「キュイ!!」
「じゃあ、万が一の時のために魔法をかけておくね……ディスガイズ」
「クゥー?」
「窓を見てごらん」
「クゥー……キュイ!?」
「ハハ……どうだい?それなら、万が一バレても平気でしょ?」
変装の闇魔法により、犬の姿に変えた。
僕以外には犬に見えてるし、声もそうなっているはずだ。
これなら街を歩いても問題ないし、万が一見つかっても問題ない。
影に入るところや、出るところは見られちゃいけないけどね……。
あと、僕の魔力次第だし……。
「キュイ!」
「よし!外に出て遊ぶか!」
「キュイーン!」
廃墟を出て、皇都を走り回る。
ほんとに、犬の散歩のようだな。
「楽しいかい?」
「キュン!」
「たまになら出してあげるからね」
「キュイー!」
……まあ、ほとんど寝てるみたいだし。
俺の影が気に入ってるなら、そんなに気にしなくて良いかもな。
散歩を終えて、人波から外れる。
「よし……人の気配はなし。だけど、念のために……闇の衣……」
俺が意識して生き物に触ると、その対象も闇の衣に包まれる。
「キュイ?」
「さて……名前はどうする?僕がつけるかい?」
「キュイーン!!」
「うーん……何がいいかな……?ドラゴン、リュウ、タツ……色で言うと、クロ、コク……アレスと同じ三文字がいいかな……クロスとか……?」
「キュイー!」
「え!?それでいいの!?」
「キュイ!」
「じゃあ、今日から君の名はクロスだ。よろしくね、クロス」
「キュイーン!」
新たな友達?が出来たな。
いつまでかわからないけど、しばらくはお世話することにしよう。
———————————————
~皇帝陛下視点~
アレスが部屋から去った後、俺はブリューナグ家からの手紙を読んでいた。
「さて……クロイスからの手紙は……アレスを褒め称えてるな……文にこそしないが、継がせないのか?と聞かれているようだ。アレスめ……奴ほどの男にそう思わせるとは……まあ、気持ちはわからんでもない……」
アレスは優秀だ。
他の兄弟とは、立ち振る舞いも何もかもが違う。
俺とて皇帝として、父として、他の子供達を愛していないわけではない。
ただ……母親が、というより、その父親の侯爵が関わるのを意図的に阻止している。
だから、中々教育に口を出せることがなく……ああなってしまった。
俺も突然皇帝になったことで、そんな余裕もなかったということもあるが……。
アレスは母親が良かったのか、真っ直ぐで良い子に育ってくれた。
愛するエレナとの子だ。
可愛くないわけがない……出来れば、人柄的にも皇帝を継いで欲しいが……。
それは、この国では叶わぬこと……。
ただ、今はそれでいいと思えるようになった。
皇帝なんかロクでもない……ただのお飾りにすぎん。
もちろん、俺とて踏ん張ってはいるが……。
国を離れて継ぐ気もなかった俺には、味方が少ないからなぁ。
「ハァ——どうしたもんかね……」
「如何しましたか?」
「ゼノ、アレスをどう思う?」
誰にも聞かれる心配のない執務室で問いかける。
「……人柄、実力共に——皇の器かと存じます」
「やはりか……だが、その場合……」
「ええ、間違いなく争いになります。国内にて……長い歴史の中では、聖痕が持たない人が皇帝になったこともありますが、そんなことは奴らは許しませんな……」
「だよなぁー……まあ、継がせないから良いけどな」
「おや?どういう心境の変化ですかな?」
「結界の揺らぎがある以上、国内で争ってる場合じゃないからな」
「そうですな……あと20年あれば違ったのでしょうが……」
「それもあるが……アレスには皇帝は勿体ないかと思ってな。そんなのに収まる器とも思えん」
「……クハハ!いや、失礼しました……しかし……そういう面もありますね」
……アレス、お前にはロクなこともしてやれない弱い父ですまない。
だが、せめて……お前が強くなり、自分の意思で将来を決めて大人になる頃まで……。
お前が不自由な生活を送らずにすむように、このろくでもない俺がなんとかしよう。
あの大臣や侯爵家が何を言ってこようともな……。
それが——愛するお前に出来る、俺の精一杯のことだ……。
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