上 下
24 / 257
少年期~前編~

セレナと魔法の訓練

しおりを挟む
 セレナと合流した俺は、ついでに火属性も調べることにする。

 二人で並んで椅子に座り、お互いの話をする。

 ここは談話スペースとなっているので、ある程度の声で話しても平気だ。

「セレナはどうだ?」

「えっと……ウォーターボールと、シャワーヒールってやつを覚えようかと」

「そうだね……確か、先生も言っていたよね。あんまり数だけ覚えてもダメだって。二、三個を覚えて、それをモノにしてから次に行きなさいって……」

 だから俺も、闇魔法は少しずつ覚えたんだし……。

「はい、そうですよね。アレス様は?」

「火属性は威力が高くて扱いが難しいからね……ゴブリンくらいなら、ファイアーボールで倒せるから……これかな?」

「ファイアーアローですか……弓?」

「そのイメージで合ってるよ。炎の弓ってところかな。これなら、乱戦や森の中でも使えることもあるし。一点に集中するから、威力も高いしね」

「……私、水魔法で良かったです」

「え?」

「アレス様、遠慮なく炎を使ってください。いざとなったら——私が消します」

「……言ったね?それは、つまり……僕より威力がなくちゃいけないよ?」

「が、頑張ります……!」

 良い目をしてる……何かを決めた……。
 やれやれ……成長が早いな……。
 俺も、ますます負けてられないな……!



 ならばということで、早速稽古をしてみる。

 俺の家に移動して、庭にて対峙する。

「カイゼル、もしもの時は頼むよ?」

「御意。受けきれないと判断したら、私が弾きます」

「お願いね。嫁入り前の女の子に、火傷を負わせるわけにはいかないから」

「あら?どこで覚えたのかしら?」

「アレス様は、たまにじじ臭いというか……大人みたいですよねー」

 おっといけない。
 僕は子供、僕は子供……よし。

「さて……いくよ?ファイアーボール!」

「ウォーターボール!」

 火の玉と水の玉がぶつかり、双方が弾ける。

「やっぱり、かなりの才能があるんだな。一発で出来るなんて」

 風も使えるし、これは一流の魔法使い……賢者になれるかもな。
 どちらも応用力に優れている魔法だし……。

「えへへ~ありがとうございます!うーん……見たら大体わかるんです!」

 ……やべぇ。
 こりゃ……天才の類だ。
 Sクラスに入れるわけだ……。

「それは凄いな。じゃあ、威力を上げるからね」



 その後もファイアーボールを放つが……全てが相殺される。
 少し、自信がなくなるほどに……。
 ま、まあ、俺は魔法剣士だし?闇魔法もあるし?
 やれやれ……俺も、やっぱり子供だな。
 少し、やり返したくなってきた……!

「カイゼル!準備を!」

「御意」

「セレナ!強いのいくから気をつけてね?」

「は、はい!嬉しいです!わたしにも——本気で来てください!!」

 ……参ったな。
 どこかで、セレナを下に見てた自分がいる……。
 カグラと同じく、この子も強い子だ……。
 ならば……手加減はしない……!

「貫け!ファイアーアロー!」

 矢を射るように構えて——火の矢を放つ!

「ウォーターボール!」

 火と水がぶつかるが——俺の矢は水を貫く!

「わわっ!?」

「カイゼル!」

「承知!」

 カイゼルが素手で掴んで消した……おいっ!?

「か、カイゼル!大丈夫!?」

 いくらカイゼルだからって、素手で火の矢を掴むなんて……。

「ええ、問題ありません。少し、火傷をしましたが。これが確実でしたから」

「ご、ごめんなさい!えっと……この者を癒したまえ——ヒール!」

「むっ……温かい……お嬢ちゃん、ありがとう」

 あれ?なんか目が優しい……?
 そこら辺にいるおじいちゃんみたいに……。
 もしや……女の子には甘いのかも……。

「いえ!こちらこそ、ありがとうございます!」

「うむ……良い子だ。それに……末恐ろしい才能……アレス様、わかっておりますか?」

「もちろんだ、カイゼル。セレナは、最早僕の大切な人。誰が来ようと守ってみせる」

「え?えぇぇ——!?」

 おそらく——貴族や軍から誘われるだろう。
 本人が、望む望まないに関わらず……。
 その場合……平民であるセレナの家では逆らえまい……。
 俺が後ろ盾になり、セレナの好きにさせてあげよう。



 ただ、軽く説明はしておかないとね。
 言質を取られたりしないように。
 素直で良い子だから、その辺は危ないかもしれないし……。

「あっ——そ、そういう意味なんですね……」

「うん、覚えておいて。その力は規格外だ。きっと色々なところから勧誘を受けるだろう……勧誘ならまだ良い……最悪の場合、強硬手段に出るかもしれない」

「そ、それって……?」

「言い辛いけど……両親を脅したりとか」

「こ、困ります!わ、私の両親は普通の人なんです!ただでさえ、私みたいな子で大変なはずなのに……!」

 そうか……やはり、苦労してきていたか。
 貴族である俺らに、相当警戒してたし……。
 学校にも、無理矢理入らされた可能性も……。

「安心して良い。僕が必ず守る」

「アレス様……」

「ただし……それだけではいけない。守りたいなら強くなることだ。どんな不条理なことからも、大切な人を守れるように……だから、それまでは僕が手配をしておくよ」

「……はい!!強くなって両親やアレス様達を守りたいです!」

「うん、その意気だ。僕と一緒に強くなろう。大切な人を守れるようにね?」

「はい!頑張ります!」

 その後も訓練を続け、一緒に夕飯を食べて、きちんと家まで送り届けた。

 ……母上は『これでセレナちゃんが一歩リードかしら?でも、カグラちゃんも良い子だし……』とか言ってたけど……。

 ……うーん……俺の意識としては、子供に見えるから恋愛対象ではないんだよな。

 当たり前の話だけど……。

 ただ……身体は子供だからなのかわからないけど、ドキドキすることはある。

 ……そのうち、アレスと和馬が完全に一体となる日も近いのかもしれない……。
しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

アラサー独身の俺が義妹を預かることになった件~俺と義妹が本当の家族になるまで~

おとら@ 書籍発売中
ライト文芸
ある日、小さいながらも飲食店を経営する俺に連絡が入る。 従兄弟であり、俺の育ての親でもある兄貴から、転勤するから二人の娘を預かってくれと。 これは一度家族になることから逃げ出した男が、義妹と過ごしていくうちに、再び家族になるまでの軌跡である。

底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。  運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。  憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。  異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!! 僕は異世界転生してしまう 大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった 仕事とゲームで過労になってしまったようだ とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた 転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった 住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる ◇ HOTランキング一位獲得! 皆さま本当にありがとうございます! 無事に書籍化となり絶賛発売中です よかったら手に取っていただけると嬉しいです これからも日々勉強していきたいと思います ◇ 僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました 毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

処理中です...