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少年期~前編~

兄弟との……

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 あの実戦の日は、帰ってから大変だった……。

 母上もカエラも号泣しちゃうし……。

 カグラは土下座するし……。

 父上まで飛んでくるし……。

 まあ……嬉しかったけどね……。



 そして……翌日のこと、クラスに奴らがやってきた。

「おやおや!生きていましたよ!兄上!」

「はっ!出来損ないは死んでも困らなかったのにな!」

 教室や廊下がざわざわする。
 無理もない……上級生であり、第一皇子と第二皇子の登場だからな。

「これはこれは……ライル長兄に、ヘイゼル次兄ではありませんか。何の用ですか?」

「はっ!情けないお前の顔を見に来たんだよ!この恥さらしが!ゴブリン如きに死にそうになるとは……皇族の恥め!」

「なっ——!?あ、アレス様は、私を庇って……!」

「ライル兄上、こやつブリューナグ侯爵家の娘です……あの口煩い奴の……」

「あの親父の娘か……女の癖に生意気に戦場に出るからだ!女なら大人しく着飾って男に媚びを売ってろ!」

「うぅ……」

「全くですね!それより……こいつ、我々に口ごたえしましたよ?」

「おっ、そうだな……侯爵家とはいえ、ただでは済まないよなー?」
  
「土下座でもさせますかね?」

「あ、あぅぅ……」

 もう、我慢ならん……!

「おい、クズ共」

「……はぁ?」

「なんて言った……?」

「クズ共って言ったんだ。僕のことを悪くいうのは百歩譲ってやる。だが……僕の大切な仲間を侮辱することは許さない……!」

「な、なんだよ!?」

「ち、近づくな!」

「戦いにも出たことない奴が、偉そうな口をきくな。カグラはミスこそしたが、立派に戦った。それに、女性が戦って何が悪い?女性だろうが、平民だろうが、貴族だろうが関係ないだろ」

「う、うるさい!」

「出来損ないが生意気なんだよ!」

 奴の胸が光りだす!

「聖痕発動……?」

馬鹿か!?こんな場所で聖痕発動するとは!?

「くらえ!出来損ないが!」

「力に振り回される奴に言われたくはない!」

 避けた拳は……壁をぶっ壊した!?
 こいつの聖痕の力は、肉体強化系か!

「チィ!避けるんじゃねえ!」

「良いだろう。避けないからかかってこい」

「ふ、ふざけんな——!!」

 魔力を手足に集中……。
 あとは、拳の威力に逆らわずに……!

「セィ!!」

「グハッ!?」

「あ、兄上!?」
 
「な、なにをした?俺の拳が受け止められた?こんな出来損ないに……?」

「受けて止めていない、ただ受け流したたけだ」

 俺の手のひらに拳が触れた瞬間に、力を横にずらしたたけだ。
 その後に、もう片方の手で奴をぶん殴った。

「な、なんだ!?それは!?」

「鍛錬を一から出直してこい」

「くっ!」

「アレス——!!」

「兄上!?姉上が来ます!」

「チッ!行くぞ!覚えてろよ!?」

 そう言い残し2人が去った後……突撃アタックを受けとめる。

「アレス——!無事で良かったわ!」

「ハハ……ご心配をおかけしました」

「ホントよ!都市の巡回から帰ってきたら、アレスが倒れたって聞いたんだから!」

 姉上は自ら志願して、都市を巡回しているのだ。
 自分達の生活を支えている人たちを見たいという理由で……。
 さらには、自分が行くことで人々が活気付き喜んでくれるから……。
 こういう方に皇位を継承してもらいたいが……女性ではなれないからな。

「すみません。ですが、心配してくれてありがとうございます」

「これよ!これ!素直でよろしい!全く!アイツらとは大違いね!」

「あ、あの!お話中、申し訳ありません!」

「ん?……ブリューナグ家のご息女ね?」

「は、はい!今回は、私の所為で弟君を危険に晒したことを、深くお詫びいたします!」

「カグラ……ヒルダ姉さん」

「わかっているわ、アレス。カグラと言ったわね?顔をあげなさい」

「は、はい……」

「アレスが許しているなら、私から言うことはないわ。ただ、貴女の気が済みそうにないわね……。では、強くなりなさい。もう、アレスが庇うこともないほどに。そして、アレスを守れるように。良いわね?」

「かしこまりました!必ずや強くなり、アレス様をお守り致します!!」

「良い目ね……流石は、融通がきかないけど実直な人柄で有名なブリューナグ家ね」

「きょ、恐縮です……」

「で、アレス……この子が奥さん候補なのかしら?それとも、後ろで心配そうに見てる青い髪の子?」

「せ、拙者が……?そ、そ、そんな!恐れ多いです!」

「ふえっ?……わ、私……?え、えぇ——!?」

「あらあら、真っ赤になっちゃって……アレスも罪作りな男の子ね!」

「ヒルダ姉さん、あんまりからかわないでくださいよ……」

「なによ!姉として可愛い弟のお嫁さんは気になるわ!」

「俺、まだ8歳ですよ?」

「貴族や皇族なら、そのくらいから婚約者ができるわよ?」

 ……そういやそうだ、そういう世界だった。
 ついつい、前世に引っ張っられることがあるな……。

「……まあ、俺には色々ありますし」

「……そうね。腹が立つことにね……!なによ!アレスはこんなに可愛くて良い子なのに!お母様も、大臣達も……!」
 
「ヒルダ姉さん……ありがとうございます。僕は、そのお気持ちが嬉しいです」

「で、でも……なんでアレスばっかり……」

 やれやれ……嬉しいけど、落ち込ませたまま帰らせたくないなぁ。
 少し恥ずかしいけど……この人のためなら良いか……。

「……ヒルダ……お姉ちゃん」

「え……?」

「元気出してください。僕は、元気なお姉ちゃんが好きですよ?」

「あ、アレスゥゥ——!!」

「抱きしめすぎですよ!皆、見てますから!」

 ……やれやれ、世話の焼ける姉上だこと。

 でも、有り難いことだ。

 この方がいるから、俺は兄弟全てを嫌わずに済んでいる。

 新しく生まれる妹も、きっと可愛がってくれるだろう……。







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