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少年期~前編~

この大陸について

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 セレナの家に訪問してから、10日ほど経過した。

 あれから、授業でカイゼルと戦ったり……。
 ギリギリ負けはしなかったが……かなり強かったな。
 あいつは槍の達人であるゲイボルグ家だからなぁ。
 俺と違い体格も良いし、身長もある。

 あとは、魔法の授業をしたり……これはセレナには驚いた。
 なんと、水と風の二つの属性を持っていた……なるほど、両親が心配するわけだ。
 平民では、色々と困ることがあるだろう。
 できる限り、力になってあげたいと思う。

 さて……そんな日々を過ごし、今日は休みを迎えた。

 明日、とある重大な授業があるので、今日は家でのんびり過ごすことにした。

 もちろん、恒例行事は欠かさず行う。

「アレス様!剣とは腕の力にあらず!この間も申したはずです!身体全体で振るうのです!」

「わ、わかってる!」

「貴方は強くなりたいのでは?そんなことでは……守りたい者を守れませんぞ……!これから妹君ができるのでしょう!?」

「も、もう一回、お願いします!妹ができるんだ……!僕は……もう二度と妹を悲しませたくない……!」

 今度こそ、俺が兄として……結衣のような目に遭わせない……!
 きっと妹も……母上の子ということで、理不尽な目にあうだろう……。
 だが、何があっても俺が守り抜く……!
 そして、俺も生き残ってみせる……!

 その後も、散々にしごかれた……が、有り難いことだ。



「あー……疲れた……」

「ふふ、お疲れ様です。はい、飲み物をどうぞ」

「カエラ、ありがとう……プハァ!生き返る……」

「なんか、最近凄いですね?意気込みというか……」

「まあね……僕が母上と妹を守らなきゃだかね。カイゼルばかりに任せるわけにはいかないし」

「ご立派です!私もお手伝いいたしますね!」

「カエラには、十分助けられてるよ。いつも、ありがとうね。やっぱり、女性じゃないと色々わからないし」

「て、照れますね……でも、嬉しいです。それとなんだか雰囲気が……大人っぽくなりました?やっぱりお兄さんになるからですかね?」

 ……もしかしたら、妹が出来たことで和馬としての意識が強くなったのかもな。
 俺は、本来ならいい歳の大人だったからな……。
 結衣……今頃、どうしてるだろうか?
 俺はなんとか元気でやってるよ……結衣はどうかな?
 俺は今でも、お前が幸せに生きてくれることを願っている……。

「さて……ところで、母上は?」

「今は寝てるはずですね」

「そっか……じゃあ、カエラには鍛錬に付き合ってもらおうかな」

「え?今さっきまでやってましたよね……?」

「まあ。そうだけど……来週には初めての魔物退治もあるからさ。避ける練習とかもしておきたいかな。カエラは弓が使えるから、射ってみてよ」

「危ないですけど……ハァ、言っても聞かなそうですね……」

「わかってるね、僕のこと。それでこそ、カエラだ」

「もう!調子がいいんですから!」



 その後避ける鍛錬や、魔法の鍛錬もしっかりこなす。
 俺が、初めての魔物退治で恥をかくと……母上が何を言われるか……。
 早く強くなって、大切な人を守れる強さを……!


「ハァ、ハァ……もうダメだ……」

「わ、私もです……これじゃ、腕が筋肉痛ですよ。弓に慣れてるとはいえ……」

「そう言えば……カエラは、迷い人の国と呼ばれるノスタルジアの出身だよね?」

「はい、そうですね。授業で習いましたか?」

「もちろん、ある程度は知ってだけど。この間、詳しくね……」

 このガーナ大陸には四つの国と、魔界ドラゴニールがある。
 まずは、最大の広さを誇る我が国アスカロン帝国。
 北に位置していて、右側には魔界ドラゴニールがある。

 そこから真下に位置するのが、グロリア王国。
 我が国とは戦争こそないが、ライバル的な国だ。
 右側には我が国ほどではないが、魔界ドラゴニールに接している。

 我が国の左側には、ノスタルジア州がある。
 この国は……地球からの迷い人により作られた国らしい。
 ごくたまに、異世界の穴が開き、そこから人が迷い込んでくる。
 どうやら、何処かで繋がってるらしい。
 ただ、理由は解明されてない。
 まあ、そんな国なので……もちろん、日本人もいたらしい。
 カエラは、その血を濃く継いでいるから、東洋系の顔をしているということだ。

 そのノスタルジアの下には、聖マリアンヌ教国がある。
 聖女と勇者の召喚の儀を取り仕切っている。
 なので広さこそないが、その影響力は計り知れない。

 以上が、この大陸ということだ。


「不思議ですよねー、私にも異世界人の血が流れてるなんて……」

「ハハ……」

 俺はどうなる?
 血は流れてない……記憶はある……精神のみ転生?
 ダメだ……これは考えてもキリがない。


「アレスー!カエラー!ご飯よー?」

 あれ!?寝てたんじゃなかったの!?

「ちょっと!?母上!?」

「エリナ様!?いつの間に!?起きても動いてはダメって言ったじゃないですか——!?」

「あら平気よ、これくらい。少しくらい動かない方が身体に悪いわよ」

「何を言ってるですか!?私がやるから大人しくしててって言ったじゃないですか!?」

「母上……カエラ、落ち着いて。まあ、確かに……そういうことを聞いたことあるな」

 前世の知識からすると、確かじっとしすぎも良くないとか……。
 じっとしすぎだと、母体にストレスもかかるし……。

「え?どこでですか?」

 ……しまった……どう説明すれば……いや、これで行こう。

「この間、平民街に出かけたからね。彼らは生活の知恵として、色々なことを知ってるんだよ。例えば妊娠してても、貴族はお付きの人などが世話してくれるけど、平民の方々はそうはいかないじゃない?だから、色々考えたり工夫したりするんだと思う」

「あっ——そうですね……普通はお付きのに人はいませんよね……私もすっかり慣れてしまいましたね……」

「あら?そうなの?じゃあ、平気ね」

「ただ、無茶だけは絶対ダメですからね?」

「はーい……アレスが、ますますしっかりしてきたわね」

「母上は、少し子供っぽくなりましたかね?」

「フフフ……だって、愛してもらえたし……新しい子もできたもの……」

「ハハ……なるほど……」

「アレス……ありがとう」

「母上?」

「貴方が、私とこの子のために頑張ってること……嬉しいけど、貴方も私の大事な子よ。だから、無茶だけはしないで……」

「いや、でも……」

「あら?私には無茶するなって言うのに、私は言ってはダメなの?」

「それは……」

「ふふ、アレス様の負けですね。そうですよ、アレス様に何かあったら……私も悲しいです」

 ……でも、俺は……強くならなきゃ……二度と、家族を失いたくない……!

「アレス様」

「カイゼル……いつの間に……」

「ご安心を、貴方は必ず強くなれる。その気持ちがあれば……それまでは私がお守りいたしましょう……私を頼ってくださいませ」

「そうですよ!私も頑張ります!」

「カ、カイゼル……カエラ……」

「フフフ……あらあら……」

 ……そうか。
 俺はいつの間にか、一人でどうにかしようとしていたのか。
 そうだ……一人でできることなんてたかがしれている……。
 そんな当たり前の事を忘れていたとは……。
 妹と結衣が被って、焦ってしまったのかもな……。

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