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少年期~前編~

友達の家に訪問する

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 学校にも慣れたある日、俺はいつものように帰ろうとしていた。

 すると、セレナが何か言いたそうにモジモジしていることに気づく。

「セレナ、どうしたのかな?」

「あ、あの!今日のご予定はありますか……?」

「うん?うーん……今日は朝鍛錬したし、平気だよ。何か用があるのかな?遠慮なく言ってごらん」

「えっと……わ!わたしのお家に来ませんか!?」

「あっ、そういえば行ってないね。うん、良いよ。ご両親に挨拶に行くとしよう」

「あ、挨拶……!はぅ……」

 ……何故頬を染める?
 ……最近の若い子は、よくわからない。

「セレナ!拙者は!?」

「もちろん!カグラちゃんも!き、来てくれるかな……?」

「無論なのだ!行くのだ!」

「オルガはどうする?」

「えっ!?僕も良いんですか……?」

「うん、だって友達でしょ?あれ?そう思ってたの……もしかして僕だけ?」

「いえ!しかし、恐れ多いというか……ですが、嬉しいです!」

 ……まあ、皇子に友達扱いされたら困るか。
 あんまり強制すると、ハラスメントになっちゃうし。

「オルガが楽な方で良いからね」

「アレス様……ご配慮に感謝します」

「こっちこそごめんね。無理言っちゃって。で、どうするかな?ちなみに、僕が皇族だから優先とかはなしだからね?先約のが大事だから」

「素晴らしい方……申し訳ないですが、今日は家の用事があるのです。また、誘ってくださいますか……?」

「そっか。うん、また誘うよ」

「ありがとうございます。セレナさん、次は僕も行っていいかな?」

「あっ……もちろんです!あ、あの……!」

「大丈夫、わかっています。誘わなかったわけではなく、誘っていいのか迷っていたことは。アレス様は連れてってと頼んでましたけど、僕は頼んでいませんでしたから」

「そ、そうなんです……つ、次は誘いますね!」

「うん、ありがとう」

 ……うーむ、オルガ君はイケメンだな。
 こういう男なら妹の結婚相手でもいいな。
 ……あっ、妹が出来る予定です。
 今、妊娠3ヶ月のようです。
 あの親父、いつの間……すでに作っていやがったよ。
 今は、カエラが付きっ切りで面倒を見ている。
 もちろん、俺もお手伝いをしている。

「さて……そういえば、カグラは?」

 あの賑やかな子がやけに静かだと思ったが……いないぞ?

「あれ~?いないです……あっ!」

 教室のドアを開け、カグラが泣きそうな顔をしている。

「いっ、いたのだ!!みんなして拙者を置いていったのかと……うぅー……」

「いや、置いていったのはカグラだから。というか、なんで泣きそうなのさ?」

「いると思って喋ってたら……振り返ったらいなかったんです!」

「……ハハハ!!」

「……ふふふ」

「ハハ……」

「なんでだ!?どうして皆笑ってるのだ!?」

「いや、カグラは可愛いなと思ってね」

「えっ!?わ、わたし、いや、拙者が!?そ、そんなこと言われたことなぃ……」

「へぇ、随分と見る目のない奴らが多いんだね」

「はぅ……アレス様はずるいのだ……」

 その後オルガに別れを告げ、俺達3人は馬車へ向かう。
 ちなみに母親が妊娠してからは、カイゼルは護衛に専念している。
 俺の護衛よりも、母上と妹を頼むと。
 なので、御者はダインさんという方になった。
 年齢25歳で、真面目で元気な方だ。
 無論、父上の紹介なので安心である。

「ダインさん、今日はこの子の家に行きたいんだ。いいかな?」

「もちろんです!アレス様!さあ!どうぞ!!」

「あ、ありがとうございます」

「失礼する」

 セレナに道案内されながら、貴族街を抜けて、平民街を進む。
 皇族のマークが付いているので、皆が何事かと眺めている。
 そりゃ、そうだよな。
 あの王妃や皇子達が来るわけないしな。
 貧乏が移るとか言って……クズめ。
 その市民のおかげで生活できていることを何故理解できない?
 ……いや、今はやめておこう。

 そして、とある平屋の家の前に到着する。

「こ、ここです!ありがとうございました!」

「感謝します」

「ダイン、ありがとう」

「いえ!もったいないお言葉!では、2時間後あたりに迎えに上がります!」

 すると、家の中から人が出てくる。

「な、なんの音かしら……?」

「なんだ!?なんだ!?馬車の音が聞こえたぞ!?」

「あっ!お父さん!お母さん!約束通り、アレス様を連れてきたよ!」

「何バカなこと言ってるの?」

「まだ、そんなこと言ってるのか!夢を見るのはやめなさい!」

「あう、いや、でも……」

「すみません、ちょっといいですか?」

「え、ええ。君は……?」

「随分と身なり良い……」

「申し遅れました。僕の名前は、アレス-アスカロンです。一応この国の皇子にあたります。今回はセレナさんのご好意により、お家にお呼ばれいたしました。騒がしくしてしまったことを、謝罪いたします」

「君、そういうこと言ったら捕まっちゃうよ?」

「……いや……この馬車の紋章……皇族に間違いない……」

「え……?ほ、ほんとだわ……」

「ねっ!?だから、言ったでしょ!?」

 2人は顔面蒼白になり、膝を折ろうとする。

「待ってください。謝罪もこうべを垂れなくても良いです。今日は、ただの友達としてきました。気を遣わずにとは申しません。ですが、なるべく普通にしてくれると助かります」

「……セレナの話は本当だったのね……優しくカッコいい皇族の少年だと……」

「お、お母さん!?」

「あ、ああ……そのようだな。不敬罪で死刑でもおかしくないのに……何故、我々は知らないのだ?」

 ……王妃達が口止めをしているのだろうな。
 万が一にも、俺が人気が出ることを恐れて……。

 その後、落ち着きを取り戻したお二人に家の中に入れてもらう。
 ダインには、二時間ほどで迎えにくるように伝えておいた。
 ちなみに、カグラが侯爵令嬢と知ったら仰天していたな。

「ど、どうぞ、狭いところですが……」

「いえ、お構いなく。綺麗で良いお家ですね」

「拙者もそう思います」

「2人とも、ありがとう!」

「なんと……侯爵令嬢と皇子が俺の家に……」

「あなた……でも、とても良い子に見えるわ」

「……そうだな。この子達を見てれば、親がわかる。きっとまともな貴族なのだろう。少し改めないといけないな」

「そうね……」

 ……やはり、貴族に対する平民の認識はそんな感じか。
 うん、これだけでも来た甲斐があったな。

 その後は、2人ともリラックスをし、セレナの学校の様子などに花を咲かせる。



 楽しい時間はあっという間に過ぎ、帰る時間となる。

「今日はありがとうございました」

「ありがとうなのです」

「いえいえ、こちらこそありがとうございます。セレナと仲良くして頂いて。もしよろしければ、これからも仲良くしてくれると嬉しいです」

「私からもお願いします。この子は私達の宝です。なんの定めか魔法の才能に恵まれしたが、普通の子なのです。貴族の中でやっていけるか心配でしたが、安心いたしました」

「もちろんなのだ!」

「ええ、同じく」

「2人とも……えへへ~」

 こうして、初めての友達の家に訪問は無事に終わった。

 同時に、平民の認識や暮らしを知ることが出来た。

 これは、貴重な時間を過ごすことが出来たと思う。

 この方々に生かされているんだということを、肝に命じておこう。
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