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少年期~前編~

初めての戦闘授業

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さて……あっという間に時間は過ぎていく。

気づけば、入学してから二週間が経っていた。

クラスの中は、二つに分かれていた。
俺、カグラ、セレナ、オルガ。
ザガン、ロレンソ、アスナ、エルバ。

俺は仲良くしたかったんだけど、やっぱり最初のザガンとのアレがマズかったみたいだ。
表向きは丁寧に接するけど、子供だから隠しきれていない。
ロレンソはザガン腰巾着だし。
アスナは、親がザガンの親の直属の部下らしいし。
エルバの親も、取引先のお得意様がザガンの親らしい。

こっちはこっちで問題はある。
カグラの親とザガンの親は仲が悪いみたいだし。
セレナは平民ということで、ザガン達は見下すし。
オルガの家も男爵なので、自分より下だと思って接するし。
俺のことも親から聞いたのだろう。
嘲笑うかのような視線を時折向けてくる。

「ハァ……まあ、みんな仲良くは無理があるよね。争いに発展してないだけマシと思わなきゃいけないね」

「どうしたのですか!?溜息などついて!」

「カグラ……君は元気でいいね。そうだね、暗くなっても仕方ないよね。ありがとう、カグラ。君の元気には、いつも癒されるよ」

「ひゃ、ひゃい!せ、拙者はこれで!」

……あれ?なんで顔真っ赤になって逃げるんだ?
ごくごく普通のことしか言ってないんだけど……。

「えへへ、カグラちゃんってば。照れてましたね」

「そうだね。アレス様は、無自覚に嬉しくなる台詞を言いますから」

「お礼を言っただけなんだけど……?」

「それが珍しいのです。皇族の方が下の者にお礼を言うことが」

「……ああ、そういうことね」

……と言っても、俺も日本人としての前世の記憶を持っているからな。
悪いことしたら謝る、偉いと思ったら褒める、何かをしてもらったならありがとう。
この辺りは、常識的なことだし。
もちろん、近年ではそういう人も減ってはいたけどね。
でも、自分はそういう風に生きていきたいと思う。



そして、いよいよである。
今日は、初めての戦闘訓練の授業があるのだ。
まずは、模擬戦をするようだ。

「は~い!皆さん!怪我をしないように……とは言いません!皆さんはいずれ優秀な人材として、戦いに赴くこともあるでしょう!そのために痛いことや辛いことを経験することは必須です!もし怪我をしても、先生が治しますからね~!」
    
……そっか、先生も二種類の属性使いだもんな。
水と土だって言ってたな。

「アレス様!拙者と戦ってくれますか!?」

「うん、良いよ。同じく剣を使うしね」

「セレナさん、僕で良いかな?」

「はい!オルガ君!私全然武器使えないですけど……」

「セレナは魔法があるからね。ただ、最低限はやっておいた方が良いと思うよ。魔力が尽きた時や、使えない場面用にね」

「アレス様……はい!頑張ります!」

そして木剣を構え、カグラと対峙する。

「征きます!!」

「いつでも!」

「セィ!!」

「ハァ!!」

木剣がぶつかり合い、カンカン!と甲高い音が響く。

「むぅ……押し切れない。さすがはアレス様」

「いやいや、カグラほうこそ。僕の剣を受け止めてるじゃないか。まいったなぁ、結構頑張ってきたんだけど……」

女性差別をするつもりはないけど、同い年の女の子と互角ではな。
俺は誰よりも強くならなきゃいけない……!
……ただ、良い機会かもな。
カイゼルでは力量に差がありすぎて、切磋琢磨というわけにはいかない。
カグラなら、良いライバルになれるかもしれない。

「拙者とて毎日稽古をしてますからね!魔力強化もしてますし!だから……本気でお願いします!」

「へぇ?凄いね……そっか、じゃあ手加減はいらないね。少しペース上げるから、覚悟してね?」

「……ゾワッしました……これは父上と稽古の時に感じる……はい!どうぞ!」

魔力を全身に行き渡らせ、身体強化を成す。
もちろん、まだ身体が出来上がっていないので無理はしない程度で。

「いくよ!」

足に力を入れて、素早く間合いを詰める!

「うわっ!?」

カグラは辛うじて、俺の剣を受け止めた。

「よく反応したね!いくよ!」

連続して剣を繰り出す!

「ク、速い……!追いつかない……!」

「そこっ!!」

剣道の技である小手のように、手の甲を打ち付ける!

「イタッ!?」

カグラは剣を取りこぼしてしまう。
……しまった!つい、やり過ぎてしまった……。
ダメだな……段々と子供に戻っていってる気がする。

「カグラ!ごめん!大丈夫!?」

「だ、大丈夫です……それに嬉しいです。本気でやってくれて……男の子は、いつも本気でやってくれないのです。女子には本気出せないと言って……そもそも、女がそんなに強くなってどうするって……」

……戦う女性がいるとはいえ、大半の人は魔法部隊か後続部隊に配属される。
前線で戦う女性は少ない。
男性社会という点もあるが、女性は子供を産まなくてはならないからだ。
この厳しい世界では、子供が生まれないとすぐに人口が減少してしまう。

……だが、そんな建前は知ったことか。
俺はカグラの気持ちに応えてやりたい。

「カグラ……わかった。僕でよければいつでも相手になる……本気でね」

「え……?」

「もちろん、君の方が強くなってもだ。まあ、負けるつもりもないけどね」

「アレス様……うぅー……」

「あっ!手が痛いよね!?セレナ!治療を頼む!」

「は、はい!」

セレナが患部に触れ、ヒールをかける。

「グスッ……ありがとう、セレナ」

「ううん!嬉しかったんだよね?」

「うん……アレス様は、か、カッコいいのだ……」

「私もそう思うよ!」

「……とりあえず、ありがとうと言っておくよ」

「アレス様!僕ともやってもらえますか!?」

「オルガ……うん、良いよ。さあ、やろうか」

「はい!ありがとうございます!」

「おっ!速いな!」

「アレス様こそ!」

お互いに剣を打ち合うことなく、お互いの剣撃を避ける!
カグラはパワータイプで、オルガはスピードタイプってところか。
俺と同じタイプではあるが……!

「軽いな……!ハァ!!」

スピードとパワーを合わせ、体重を乗せた一撃を放つ!

「っーー!!」

剣を取りこぼしたオルガの首に、剣を添える。

「どうする?」

「ま、まいりました……噂などあてになりませんね」

その後はセレナと模擬戦をし、初めての戦闘訓練の時間は終わりを迎えた。

え?戦いの様子?倒れた際にパン……うん、明記しないでおこうと思う。

セレナの名誉のために……。
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