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少年期~前編~

母上は早くも姑気分のようだ

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 校門を出ると、カイゼルが馬車を引き待っていた。

「カイゼル、ありがとう。さあ、2人共乗って」

「い、いいのかな?こんな豪華なの……」

「どうした?セレナ。そなたが乗らないと、拙者が乗れないぞ?」

「ご、ごめんね。お、お邪魔します」

「うむ、拙者も失礼する」

 3人を乗せ、馬車は動き出す。

「うわー……馬車なんて初めてです!」

「なら、良かったよ。また乗りたかったら言いなよ」

「え!?い、良いんですか?」

「うん、友達を乗せるのに理由はいらないでしょ?」

「わ、私が皇子様の友達……?」

「うん、嫌かな?」

「そんなことないです!嬉しいです!」

「うむ!これで、3人で友達だな!」 

 そのまま馬車は進み、家の前到着する。

「ただいまー!」

「アレスー?帰ってきたのね……あらあら!まあまあ!!」

「アレス様、お帰りなさいませ……これは、これは……」

 2人共、ニヤニヤしている。

「こ、こんにちは!セレナといいます!」

「拙者はカグラと申します。王妃様、よろしくお願い申し上げます」

「まあ!そんなこと言われたの初めてだわ!」

「母上、カグラは……」

「アレス、わかっているわよ。嫌味で言っていないことは。それにしても……隅に置けないわね?入学式でいきなり2人も女の子を連れてくるなんて……」

「さすがはアレス様ですね。将来が心配ですけど……」

 2人共、そういう目で見ているのか……。
 ……俺からしたら、ただの子供だしな。
 普通の友達感覚だし。



 お昼ご飯がまだなので、皆で食事をとることにする。

「わ、私までご一緒でいいんですか……?」

 セレナは平民だしな……普通は、あり得ないからな。

「いいのよ、気にしないで。お食事は多い方が楽しいわ」

「セレナちゃん、気持ちはよくわかりますよ。私もそうでしたから……でも、この方達はその方がお喜びになるかと。もちろん、他の貴族の方にはしてはいけませんよ?」

「そ、そうなんですね。わ、わかりました!気をつけます!」

「ほら、これ美味しいよ?食べてごらん」

「え?……うわぁー!ホントだ!美味しい!」

「良かった、笑ってくれた。緊張でガチガチだったからね」

「ふえ?は、はぃ……」

「これは、我が息子ながら心配だわ……まあ、アレスなら女の子を泣かすようなことはしないと思うけど……」

「アレス様!拙者はどれを食べたら良いですか!?」

「カグラはね、これかな?」

「……美味!何より楽しいな!うちでは、静かでつまらないのだ!」

 まあ、普通のマナーならそうだろうな。
 だが、うちは食事は楽しく美味しくがモットーだからな。

「ムムム……これは、どちらがお嫁さんかしら?それとも両方?アレスの器量なら、問題はないけれど……うーん、複雑だわ………」

 いや、気が早いから!
 まだ、8歳だから!

 その後、食事を済ませると、カイゼルがやってくる。

「アレス様、稽古の時間です」

「アレス様?今日もやるのですか?お客様がいますが……」

「うん、やるよ。カグラ、セレナごめんね。これサボると、取り戻すのに3日かかるんだ」

 この後は魔法の稽古もあるし、勉強をしなきゃだからな。
 聖痕がないことは仕方ないが、それ以外で馬鹿にされないように……。
 母上が肩身狭い思いをしないように……!

「拙者も見ていいだろうか!?」

「わ、私も!」

「うん?いいけど、結構激しいよ?」

「それなら、尚更のこと!」

「私も!」

 そのまま皆で、庭に移動する。
 そして模擬剣を持ち、カイゼルと対峙する。

「まあ、なら良いけど……カイゼル?」

「私も問題ありません……が、手心は加えませんぞ?」

「そんなことしたら……一生恨むよ……!」

「それでこそ、アレス様です。では、いざ!!」

「ハァ!!」

 俺はカイゼルを攻める!
  カンカンカン!!と庭に音が響き渡る。

「甘い!腰が入っていません!もっと身体全体で振るうのです!」

「わかった!……こうか!」

「そうです!身体が小さくともその威力があれば、魔力を込めずともゴブリン程度なら斬れます!」

「ハァ!!」

「攻めはよしとしましょう。では、こちらから行きますぞ?」

「どんとこい!」

「セィ!」

 その攻撃は、子供にやるには苛烈すぎるものだった。
 防御しきれるわけがなく、身体中に痛みがはしる……!

「どうしました!?もう、終わりにいたしますか!?」

「いや!まただ!まだ、やれる!」

「よろしい!それでこそです!」

 そして10分ほど耐え抜き、ようやく攻撃がやむ。
 俺は立っていられず、庭に仰向けの状態になる。

「ハァ……ヒィ……フゥ……ヘェ……ホォー」

 別に、バイキン○○のマネじゃないからね?
 ただ、疲れただけですよー。

「まあ、良いでしょう。では、これで」

「ありがとうございました!」

 カイゼルは涼しい顔で去っていく。
 クソー、いつか顔色変えてやる!

「アレス様!凄いな!あんなに強いのですね!」

「だ、大丈夫ですか!?」

「うん、大丈夫だよ。いつものことだから。でも、心配してくれてありがとね」

「わ、私回復魔法使えます!」

「え?そうなの?なるほど、だからか……」

 今の学園で平民がSクラスだから、何かあるとは思ったけど……。
 回復魔法は貴重な才能だ。
 聖女が使えるという光魔法を除けば、水属性に高い適正のある者しか使えないからだ。

「えっと……かの者の傷を癒したまえ、ヒール!」

 身体が温かいものに包まれる……すげぇ気持ち良いな、これ。
 そして、痛みが引いていく……。

「お、痛くない!ありがとう、セレナ!」

「エヘヘ、良かったです。お役に立てて……」

「凄いな!セレナ!私は強化しか使えん!」

 ……カグラは、まんまだな。

「うーん……とりあえず、セレナちゃんが一歩リードかしら?でも、平民の子だし大変よね。うん!姑として、私が力になってあげないと!」

 ……だから母上……気が早いから。

 どうやら、もう姑気分のようだ。
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