24 / 46
森へ
しおりを挟む
住民達に見送られ、街から出て行く。
そこで俺は、改めてナイルに感謝を告げる。
「ナイル、お前達が来てくれて助かった」
「えっ? ど、どうしたんです?」
「お前達が来てくれなかったら、こんなに早く大掛かりな狩りをすることは出来なかった。それは、民が耐える時間を増やすことだ」
俺とて、この問題は早めに解決したかった。
しかしいかんせん、戦える人数が少ない。
俺一人では限界があり、狩りだけをしているわけにもいかない。
「いえ、こちらこそ先輩のお役に立てたならよかったです」
「俺は良き部下を持ったな……」
「それは、先輩が良き上官だったからですよ。ここに来た者は、みんなそう思ってます。まあ、たまに悪態をついてますが」
「俺はそんなに大した上官ではなかったさ。そう言えば、鍛錬の時にも悪態をついていたな……まあ、あれくらいなら可愛いものだ」
「内心では、先輩に構ってもらえて嬉しいはずですよ」
「それはそれで微妙な気持ちになるのだが……」
いい歳した男達が、それでいいのかと。
人の事は言えないが、全員独身だし。
「まあまあ、そこは我慢してください」
「そう言えば、お前の家族は平気だったのか? その、ここに来ることに関して。おそらく、縁談とかもあっただろう?」
「まあ、それなりには一悶着ありましたね。ただ、最終的には俺の熱量に折れてくれましたよ。縁談に関しては……今の所、結婚とかは考えていないので」
「それならいいが……お前は軍の中でも人気だったし、引く手数多だろうに」
「今は先輩の側で働くことが楽しいからいいんですよ。もちろん、良い方がいたらそういうのも良いですけど。とりあえず、先輩が結婚するのを見届けてからですね」
「おいおい、それじゃ一生できないではないか」
「では、俺のためにしてくださいよ」
「まったく、無茶を言う奴だ」
その後、皆は用意された馬に乗り込む。
さらに荷馬車を用意し、そちらは運搬用に使う。
俺だけはギンに跨り、セレナ様を迎える。
「さあ、セレナさん。すまないが、俺の後ろに乗ってもらおう」
「い、いえ! こちらこそすみません。その、私は馬に乗れなくて」
「それは意外だったな」
「むぅ、どういう意味です?」
「いや、最近はお転婆だと思ってきたのでな」
どうやら、馬には乗れないらしい。
なので、俺が後ろに乗っけることになった。
ギンならば、馬よりは乗り心地が良いだろう。
「そ、そんなこと……あります?」
「ああ、しかしそれでいいと思う。貴女は少し大人になり過ぎたのかもしれない」
「……子供みたいに甘えても良いってことですか?」
「ああ、ここでなら良いと思うが」
「それじゃ、失礼しますっ」
俺の手を取り、ギンの後ろに跨る。
そして、ぎゅっと抱きつく。
「あぁー……そんなに引っ付かなくても平気だ。今回は、そんなにスピードは出さない」
「ア、アイク様が甘えて良いって言ったんですからね!」
「それはそうだが……まあ良い。ナイル! お前が先頭だ! 出発してくれ!」
「はっ! では皆さんついてきてください! ……やっぱり、そう遠くはないと思いますがね」
「どうした!? 最後に何か言ったか!?」
「いえ何も! それでは先行します!」
そして、予定地である森に向かう。
道中は特に問題なく進み、森の手前に到着する。
小屋に馬を預けて、最終確認をする。
「さて、今回は俺を含めて十人いる。先頭はナイル達で、その後に新人達が続け。最後尾には俺とセレナさんがつく。何かあれば、助けや指示に入る」
「ウォン?(我はどうする?)」
「さっきも言ったが、ギンには大事な役目がある。先に森に入って、魔獣の群れを見つけたら追い込みをかけてくれ。それを敵襲と想定しつつ、同時に狩りを行う」
「ウォン(そういうことか。我が見つけて追い込み、主人に念を送ればいいと)」
「そういうことだ。というわけで、先に森に入ってくれ。お前なら心配いらないとは思うが、気をつけるんだぞ?」
「ウォン!(誰に言ってるのだ! 我は最強の魔獣フェンリルなり!)」
そう言い、森の中へ駆けだした。
「いや、確かにそうなのだが……」
「ギン君は、なんて言っていたのですか?」
「いや、自分はフェンリルだから心配いらないと……ただ、最近のあいつを見ているとな。実は、大きなわんちゃんにしか見えない自分もいたり」
「ふふ、すっかり子供達の人気者ですもの。まさか、あんなに人懐こいなんて。これも、アイク様の育て方が良かったのですね」
「そうだといいのだが……さて、俺たちも行こう」
そうしてナイルを中心にして、森へと入っていくのだった。
そこで俺は、改めてナイルに感謝を告げる。
「ナイル、お前達が来てくれて助かった」
「えっ? ど、どうしたんです?」
「お前達が来てくれなかったら、こんなに早く大掛かりな狩りをすることは出来なかった。それは、民が耐える時間を増やすことだ」
俺とて、この問題は早めに解決したかった。
しかしいかんせん、戦える人数が少ない。
俺一人では限界があり、狩りだけをしているわけにもいかない。
「いえ、こちらこそ先輩のお役に立てたならよかったです」
「俺は良き部下を持ったな……」
「それは、先輩が良き上官だったからですよ。ここに来た者は、みんなそう思ってます。まあ、たまに悪態をついてますが」
「俺はそんなに大した上官ではなかったさ。そう言えば、鍛錬の時にも悪態をついていたな……まあ、あれくらいなら可愛いものだ」
「内心では、先輩に構ってもらえて嬉しいはずですよ」
「それはそれで微妙な気持ちになるのだが……」
いい歳した男達が、それでいいのかと。
人の事は言えないが、全員独身だし。
「まあまあ、そこは我慢してください」
「そう言えば、お前の家族は平気だったのか? その、ここに来ることに関して。おそらく、縁談とかもあっただろう?」
「まあ、それなりには一悶着ありましたね。ただ、最終的には俺の熱量に折れてくれましたよ。縁談に関しては……今の所、結婚とかは考えていないので」
「それならいいが……お前は軍の中でも人気だったし、引く手数多だろうに」
「今は先輩の側で働くことが楽しいからいいんですよ。もちろん、良い方がいたらそういうのも良いですけど。とりあえず、先輩が結婚するのを見届けてからですね」
「おいおい、それじゃ一生できないではないか」
「では、俺のためにしてくださいよ」
「まったく、無茶を言う奴だ」
その後、皆は用意された馬に乗り込む。
さらに荷馬車を用意し、そちらは運搬用に使う。
俺だけはギンに跨り、セレナ様を迎える。
「さあ、セレナさん。すまないが、俺の後ろに乗ってもらおう」
「い、いえ! こちらこそすみません。その、私は馬に乗れなくて」
「それは意外だったな」
「むぅ、どういう意味です?」
「いや、最近はお転婆だと思ってきたのでな」
どうやら、馬には乗れないらしい。
なので、俺が後ろに乗っけることになった。
ギンならば、馬よりは乗り心地が良いだろう。
「そ、そんなこと……あります?」
「ああ、しかしそれでいいと思う。貴女は少し大人になり過ぎたのかもしれない」
「……子供みたいに甘えても良いってことですか?」
「ああ、ここでなら良いと思うが」
「それじゃ、失礼しますっ」
俺の手を取り、ギンの後ろに跨る。
そして、ぎゅっと抱きつく。
「あぁー……そんなに引っ付かなくても平気だ。今回は、そんなにスピードは出さない」
「ア、アイク様が甘えて良いって言ったんですからね!」
「それはそうだが……まあ良い。ナイル! お前が先頭だ! 出発してくれ!」
「はっ! では皆さんついてきてください! ……やっぱり、そう遠くはないと思いますがね」
「どうした!? 最後に何か言ったか!?」
「いえ何も! それでは先行します!」
そして、予定地である森に向かう。
道中は特に問題なく進み、森の手前に到着する。
小屋に馬を預けて、最終確認をする。
「さて、今回は俺を含めて十人いる。先頭はナイル達で、その後に新人達が続け。最後尾には俺とセレナさんがつく。何かあれば、助けや指示に入る」
「ウォン?(我はどうする?)」
「さっきも言ったが、ギンには大事な役目がある。先に森に入って、魔獣の群れを見つけたら追い込みをかけてくれ。それを敵襲と想定しつつ、同時に狩りを行う」
「ウォン(そういうことか。我が見つけて追い込み、主人に念を送ればいいと)」
「そういうことだ。というわけで、先に森に入ってくれ。お前なら心配いらないとは思うが、気をつけるんだぞ?」
「ウォン!(誰に言ってるのだ! 我は最強の魔獣フェンリルなり!)」
そう言い、森の中へ駆けだした。
「いや、確かにそうなのだが……」
「ギン君は、なんて言っていたのですか?」
「いや、自分はフェンリルだから心配いらないと……ただ、最近のあいつを見ているとな。実は、大きなわんちゃんにしか見えない自分もいたり」
「ふふ、すっかり子供達の人気者ですもの。まさか、あんなに人懐こいなんて。これも、アイク様の育て方が良かったのですね」
「そうだといいのだが……さて、俺たちも行こう」
そうしてナイルを中心にして、森へと入っていくのだった。
489
お気に入りに追加
1,203
あなたにおすすめの小説
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
伯爵家の次男に転生しましたが、10歳で当主になってしまいました
竹桜
ファンタジー
自動運転の試験車両に轢かれて、死んでしまった主人公は異世界のランガン伯爵家の次男に転生した。
転生後の生活は順調そのものだった。
だが、プライドだけ高い兄が愚かな行為をしてしまった。
その結果、主人公の両親は当主の座を追われ、主人公が10歳で当主になってしまった。
これは10歳で当主になってしまった者の物語だ。
貧乏男爵家の四男に転生したが、奴隷として売られてしまった
竹桜
ファンタジー
林業に従事していた主人公は倒木に押し潰されて死んでしまった。
死んだ筈の主人公は異世界に転生したのだ。
貧乏男爵四男に。
転生したのは良いが、奴隷商に売れてしまう。
そんな主人公は何気ない斧を持ち、異世界を生き抜く。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
アラフォー料理人が始める異世界スローライフ
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
ある日突然、異世界転移してしまった料理人のタツマ。
わけもわからないまま、異世界で生活を送り……次第に自分のやりたいこと、したかったことを思い出す。
それは料理を通して皆を笑顔にすること、自分がしてもらったように貧しい子達にお腹いっぱいになって貰うことだった。
男は異世界にて、フェンリルや仲間たちと共に穏やかなに過ごしていく。
いずれ、最強の料理人と呼ばれるその日まで。
「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~
平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。
三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。
そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。
アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。
襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。
果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
異世界転移して5分で帰らされた帰宅部 帰宅魔法で現世と異世界を行ったり来たり
細波みずき
ファンタジー
異世界転移して5分で帰らされた男、赤羽。家に帰るとテレビから第4次世界大戦の発令のニュースが飛び込む。第3次すらまだですけど!?
チートスキル「帰宅」で現世と異世界を行ったり来たり!?
「帰宅」で世界を救え!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる