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森へ

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住民達に見送られ、街から出て行く。

そこで俺は、改めてナイルに感謝を告げる。

「ナイル、お前達が来てくれて助かった」

「えっ? ど、どうしたんです?」

「お前達が来てくれなかったら、こんなに早く大掛かりな狩りをすることは出来なかった。それは、民が耐える時間を増やすことだ」

俺とて、この問題は早めに解決したかった。
しかしいかんせん、戦える人数が少ない。
俺一人では限界があり、狩りだけをしているわけにもいかない。

「いえ、こちらこそ先輩のお役に立てたならよかったです」

「俺は良き部下を持ったな……」

「それは、先輩が良き上官だったからですよ。ここに来た者は、みんなそう思ってます。まあ、たまに悪態をついてますが」

「俺はそんなに大した上官ではなかったさ。そう言えば、鍛錬の時にも悪態をついていたな……まあ、あれくらいなら可愛いものだ」

「内心では、先輩に構ってもらえて嬉しいはずですよ」

「それはそれで微妙な気持ちになるのだが……」

いい歳した男達が、それでいいのかと。
人の事は言えないが、全員独身だし。

「まあまあ、そこは我慢してください」

「そう言えば、お前の家族は平気だったのか? その、ここに来ることに関して。おそらく、縁談とかもあっただろう?」

「まあ、それなりには一悶着ありましたね。ただ、最終的には俺の熱量に折れてくれましたよ。縁談に関しては……今の所、結婚とかは考えていないので」

「それならいいが……お前は軍の中でも人気だったし、引く手数多だろうに」

「今は先輩の側で働くことが楽しいからいいんですよ。もちろん、良い方がいたらそういうのも良いですけど。とりあえず、先輩が結婚するのを見届けてからですね」

「おいおい、それじゃ一生できないではないか」

「では、俺のためにしてくださいよ」

「まったく、無茶を言う奴だ」

その後、皆は用意された馬に乗り込む。
さらに荷馬車を用意し、そちらは運搬用に使う。
俺だけはギンに跨り、セレナ様を迎える。

「さあ、セレナさん。すまないが、俺の後ろに乗ってもらおう」

「い、いえ! こちらこそすみません。その、私は馬に乗れなくて」

「それは意外だったな」

「むぅ、どういう意味です?」

「いや、最近はお転婆だと思ってきたのでな」

どうやら、馬には乗れないらしい。
なので、俺が後ろに乗っけることになった。
ギンならば、馬よりは乗り心地が良いだろう。

「そ、そんなこと……あります?」

「ああ、しかしそれでいいと思う。貴女は少し大人になり過ぎたのかもしれない」

「……子供みたいに甘えても良いってことですか?」

「ああ、ここでなら良いと思うが」

「それじゃ、失礼しますっ」

俺の手を取り、ギンの後ろに跨る。
そして、ぎゅっと抱きつく。

「あぁー……そんなに引っ付かなくても平気だ。今回は、そんなにスピードは出さない」

「ア、アイク様が甘えて良いって言ったんですからね!」

「それはそうだが……まあ良い。ナイル! お前が先頭だ! 出発してくれ!」

「はっ! では皆さんついてきてください! ……やっぱり、そう遠くはないと思いますがね」

「どうした!? 最後に何か言ったか!?」

「いえ何も! それでは先行します!」

そして、予定地である森に向かう。
道中は特に問題なく進み、森の手前に到着する。
小屋に馬を預けて、最終確認をする。

「さて、今回は俺を含めて十人いる。先頭はナイル達で、その後に新人達が続け。最後尾には俺とセレナさんがつく。何かあれば、助けや指示に入る」

「ウォン?(我はどうする?)」

「さっきも言ったが、ギンには大事な役目がある。先に森に入って、魔獣の群れを見つけたら追い込みをかけてくれ。それを敵襲と想定しつつ、同時に狩りを行う」

「ウォン(そういうことか。我が見つけて追い込み、主人に念を送ればいいと)」

「そういうことだ。というわけで、先に森に入ってくれ。お前なら心配いらないとは思うが、気をつけるんだぞ?」

「ウォン!(誰に言ってるのだ! 我は最強の魔獣フェンリルなり!)」

そう言い、森の中へ駆けだした。

「いや、確かにそうなのだが……」

「ギン君は、なんて言っていたのですか?」

「いや、自分はフェンリルだから心配いらないと……ただ、最近のあいつを見ているとな。実は、大きなわんちゃんにしか見えない自分もいたり」

「ふふ、すっかり子供達の人気者ですもの。まさか、あんなに人懐こいなんて。これも、アイク様の育て方が良かったのですね」

「そうだといいのだが……さて、俺たちも行こう」

そうしてナイルを中心にして、森へと入っていくのだった。
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