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それぞれの未来へ

入籍、そして……

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 皆にもみくちゃにされ……。

 真兄がきて、いい加減帰れと言われ……。

 ようやく、俺達も帰ることにする。

「ふぅ……参ったな」
「えへへ、ほんとだね」
「さて……じゃあ、出しに行くか?」
「えっ?」
「いや……婚約届けだよ。今なら役所もやってるしな」

(というか、一刻も早く結婚したい)

「こんな可愛い嫁さんとか、すぐにでも結婚したい」
「ふえっ~!?」
「あれ? ……声に出てたか?」
「は、はぃ……」
「まあ、良いか。別に本当のことだし」
「あぅぅ……」

(うーん……オロオロしてて、実に可愛いな。しかし、今日は遠慮はしない)

「おいおい……これくらいで照れてどうする?」
「え、えっと……?」
「その、あれだ……もっと凄い事をする予定だ」
「……ガ、ガンハリマス」
「クク……まあ、一応気をつけるけどな。ほら、行くぞ」
「う、うん!」





 俺たちは手を繋いで、校門の前にくる。

 そして、一度だけ振り返る。

「ここを一歩出たら……もう、高校生じゃなくなるんだな」
「そうだよね。楽しかったなぁ……もちろん、三年も一緒に居たかったと思うけど……その分、二年の時の思い出が強い気がするの」
「ああ、わかる気がする。三年の時よりも、二年の時の方が鮮明に覚えてる」

 そして、俺たちは——未来へ向けての一歩を踏み出した。






 そして電車に乗り、俺の地元で降り……。

 駅中で立ち食いうどんを食べて……。

 そのまま区役所に向かう。

「ド、ドキドキするね……」
「あ、ああ……」
「冬馬くん、手の汗すごいよ?」
「わ、悪い……柄にもなく緊張してるらしい」
「ふふ、私は解れたけどね?」
「綾は……俺がダメなところ見せると喜ぶよな?」

(別に嫌というわけではないが……)

「うーん……可愛いって思えるんだ」
「そういうものか」
「女の子にとっては大事なことなんです」

 そんなことを話しつつ、受付に向かい……。

「お願いします」
「これ、卒業証書です」
「はい、婚姻届ですね……書類は揃ってますし、親御さんの署名もありますね。では、少々お待ちくださいね」

 それだけ言い、すぐに下がっていく。

 そして、二人共緊張からか……黙って待っていると……。

「吉野さん、いらっしゃいますか?」
「は、はいっ!」

 再び、二人で受付に向かう。

「はい、確かに承りました。ご結婚、おめでとうございます」
「「あ、ありがとうございます」」
「ふふ、お若いご夫婦ですね。それでは、こちらがパンフレットになります。あとでご確認ください」
「「は、はい」」

 ……それだけで、何ともあっさりと終わる。

 俺たちは何とも言えない気持ちのまま、役所を後にする。

「……なんか、あれだな」
「……うん、あっさりだよね」
「えっと……よ、吉野になったんだよな?」
「う、うん……多分」
「いまいち、実感が湧かないよなぁ……」
「そうだよね……」
「ふむ……とりあえず、お互いに電話するか」
「うん、そうだね」

 俺達は携帯を取り出し、電話をする。

「あっ、親父? ああ、入籍してきたよ。それがさ、あっさりと終わって……そうそう! ……みんな、そんなもんなんだな……そういうことか……わかった、とりあえず帰るわ」

 俺が電話を切ると、綾も同士に終わったらしい。

「何だって?」
「お母さんが、実感ないでしょ? って……」
「俺もだよ。温度差があるだろって……まあ、役所仕事だからってな。ここから、一緒に暮らしたり……その、あれだ、子供とかを作って……そのうちに実感するって」
「う、うん……私は、苗字が変わったから……吉野さんって呼ばれるうちに実感するって」

(そうか……男と女じゃ、色々と違うのか)

「さて……じゃあ、俺の家に行くか。というか、もう綾の家でもあるけど」
「そ、そうなんだね……不思議……」
「確かに……」

 俺たちは目を合わせ……静かに微笑み合う。

 そして、再び手を繋いで歩き出す。






 俺の家に到着して……まずは、母さんに挨拶をする。

 二人で正座をして、語りかける。

「母さん、俺……結婚したよ。まだ実感はないけど……母さんと父さんのような、幸せな家族を作りたいと思ってる。今日から、綾をよろしくお願いします」
「お義母さん、お久しぶりです。清水……吉野綾です。なんだか不思議な感じですね……お義母さんも、結婚した時はこんな感じだったのですか? ……なんだか、夢を見ているようで……ふわふわします。私も冬馬君と幸せな家庭を作りたいと思います。これから、よろしくお願いします」

 そこで、綾が俺に振り返る。

「本当に良いのかな?」
「ああ、母さんも喜ぶと思う」
「お義母さん、有り難く使わせて頂きます」

 綾の荷物は、母さんが使っていた部屋に置いてある。
 つまり、今日からは綾の部屋でもある。

「じゃあ、少し部屋を確認してくるね」
「ああ、行ってくるといい」

 綾は立ち上がり、階段を上っていく……。

(さて……いよいよか……どうする? 優しくできるか心配だ……)

 その時——俺の頭に……。

『冬馬! 女の子には優しくって言ったでしょ! 自分本位にやったら……怒るわよ?』

 そんなわけはないのに、そんな声が聞こえたような気がした……。

「うん、わかってる……大事にするよ、だって——掛け替えのない女の子だから」





 俺は五分ほど自分を落ち着かせ……綾の元に向かう。

「綾、どうだ?」
「うん……全部ありそうかな」

(とはいえ……どうすればいいんだ?)

「冬馬君?」

 下から綾が覗き込んでくる。

(ええい! 男、冬馬! しっかりしろ!)

「綾、覚悟はいいか?」
「ふえっ? ……あっ——はぃ……」

 俯いてモジモジしてる綾を目の前にして……俺のスイッチが入る。

「きゃっ!?」
「さて、俺の部屋に行くか」





 俺は綾をお姫様抱っこして、自分の部屋のベッドに押し倒す。

「ま、待って……お、お家の人は?」
「麻里奈は卒業式だし、親父はそれを見に行ってる。そのままお別れ会があって、帰りも遅くなるそうだ」
「そ、そうなんだ……でも、シャワーとか……私、昨日から入ってなくて……」

(いや、それはそれで……待て! 母さんのセリフを忘れたのか!?)

「それもそうか……すまん、性急すぎたな」
「う、ううん……浴びてきてもいい……?」
「ああ、もちろんだ。俺はここで待ってる。覚悟が決まったら入ってくれ」
「は、はぃ……」

 そう言い、綾が部屋を出て行く……。

「っ~!! ……ハァ……危ないところだった」

(母さんのセリフを思い出さなかったら……やばかったな)

「せっかくの思い出なのに、綾が嫌な思いをするところだった……もしや、そのために?」

(母さん、ありがとうございます)






 俺は座禅を組んで、静かに……その時を待つ。

 そして……足音が聞こえてくる。

「は、入ります……」
「お、おう……っ~!!」

 そこには、タオルを巻いただけの綾がいた。
 その長く綺麗な脚は艶めかしく……タオルの隙間から谷間が見えている。

「は、恥ずかしいね……」
「綾、大事にする——お前の全てを俺にくれ」
「は、はぃ……全部、冬馬君にあげます……優しくしてくださぃ……」

 そこで、俺の理性は飛んだ。








 と、普段の俺ならなっていただろう。

 しかし、俺は有言実行の男であり、母の言葉もある。

 優しくベットに押し倒したら……入念に準備をする。

「んっ……やぁ……」
「平気か?」
「は、はぃ……」

 手や口を使って、しっかりと……。





 そして……いよいよ、俺のアレがやばいことになる。

「と、冬馬君……その——もう我慢しないで良いよ……?」

 その時——脳が弾けた。









 ……すげぇ……何だ、これ?

(幸福感が半端ない……気持ちいいとか、そういうものを超えている……)

「えへへ……嬉しぃ」

 隣には、生まれたままの姿で微笑む綾がいる。

「その、あれだ……痛くなかったか?」
「うん……だって、優しくしてくれたもん」
「そ、そうか」
「ふふ、覚悟しておけなんて言って……結局優しいんだから」

 そう言い、俺の頬をツンツンしてくる。

(なにこの子? めちゃくちゃ可愛くない? えっ? 俺の奥さんなの?)

「まあ……母さんが語りかけてきた気がしてさ」
「そっかぁ……」
「でも、もう約束は果たした」
「ふえっ?」
「覚悟しろよ——次は手加減できない」

 先程のツンツン攻撃により、すでに息子が臨戦態勢に入っている。

「ぁ……すごい……さっきしたばっかりなのに」
「優しくできないかもしれないが……」
「ううん——良いよ、冬馬君なら……」

 そうして再び……俺たちは身体を重ねる。

   言葉では言い表せない幸福感に包まれながら……。
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