176 / 185
それぞれの未来へ
アキとの話
しおりを挟む
それから数日後の放課後……。
俺はアキに呼び出される。
「よう、アキ」
「……おう」
「どうした?」
「綾ちゃんとの貴重な時間を奪って悪いが……少し付き合ってもらえるか?」
「ああ、問題ない。綾と居たいのは俺だけじゃないからな」
今日は森川や黒野と遊ぶと言っていた。
それもまた大事なことだと思うし……。
本当に大事に思うなら、束縛なんかしてはいけないしな。
「なるほど、相変わらず出来た男だ……俺とは違って」
「おいおい、らしくないこと言うなよ」
「……とりあえず、歩きながら話すか」
「ああ、そうするか」
ひとまず、一緒に帰ることにする。
校門を出て……駅まで歩き……。
地元に着いてからも、アキはずっと黙ったままだったが……。
ある程度歩いて、俺の家とアキの家の中間くらいに来ると……。
「そこの公園寄って行かね? 寒いから、人もいねえし」
「ああ、そうするか」
缶コーヒーを買って、二人でひと気のない公園のベンチに座る。
「なあ、知ってたのか?」
「うん?」
「……小百合のことだよ」
「……気づいたのは、ごく最近だけどな。誰も気づいていない……いや、飛鳥辺りはどうかわからないが」
「そうか……俺も、全く気づいてなかったし……はぁ、どうしたもんか」
「いつ言われたんだ?」
「あの日……罰ゲームで負けた日にな。ずっと、一日中付き合って……いつもみたいに言い合いをして……なんだかんだ楽しんでいる自分に……楽だと思う自分に気がついた時だった……最後に、とんでもない爆弾を落としていきやがった……相変わらず食えない女だぜ」
(……ふむ、この感じは珍しいな)
大体女の子に告白されたら、喜んで付き合うか……。
なるべく傷つけないように、穏便に事を済ませるタイプだが……。
やはり、相手が相手ということなのかもしれない。
「どうしたもこうもないだろう——付き合うか、付き合わないかだ」
「簡単に言ってくれるぜ……でも、そうなんだよなぁ」
(……自分でも、心の整理がついていないのかもしれないな)
「告白されて、どう思ったんだ?」
「……青天の霹靂ってやつだな。ありえない、そんな馬鹿な、なんの冗談だ、カメラはどこだ……気がつけば、そんな言葉を吐いていた」
「可哀想に……とも言えんか。小百合の普段の態度を思えば」
「そうだよ。あいつがツンデレとか知らんし……そもそも、ツンが99,9パーセントで……最後の最後にデレるとか……あいつ、顔を真っ赤にして言いやがった」
「ふむふむ……それで、返事は?」
「それが……即答できなかった。俺にもよくわかんねえ……すぐにふざけんな、お前みたいな女と付き合えるかって言おうとしたんだが……何故か、言葉が出てこなかった」
(アキ自身も戸惑っているってことか……さて、俺にできることは)
「じゃあ、保留中ってことだな?」
「まあ……そういうことだ」
「珍しいよな、お前にしては」
「そうなんだよなぁ……何で断らなかったんだ」
「嫌いなのか?」
「……いや、そんなことはない。なんだかんだで付き合いは長いし……良いやつだっていうのも知ってる」
(ふむ、まあ……これは伝えてもいいか。本人も、薄々気づいているだろうし)
「実はな、お前が問題を抱えていた件……あいつ、知ってたぞ?」
「やっぱりか……この間の台詞はそういうことか」
「しかも、お前を助ける気でいたぞ?」
「……なに? どういうことだ?」
「俺が気づかなかったら、あいつがどうにかしたと思う」
「そんなことが……いや、あいつなら出来そうだ。あらゆるツテがあるからな」
(我が学校全員の弱みを握ってると噂されるくらいだからなぁ)
「まあ、俺に言えるのは……お前みたいな男と付き合えるのはあいつくらいだな。女子が嫉妬しようが、あいつには通じないし。むしろ、お前が嫉妬されるかもな?」
「はははっ! 確かに! そうか……あいつ、そのことは言わなかったな」
「よく似てるよ、お前らは。意地っ張りで素直じゃないし……お調子者で、自分を偽って……それでも、根っこの部分は優しい奴だ」
「冬馬……」
「ふっ……それじゃあ、よく考えるんだな」
俺は少し気恥ずかしくなり、ベンチから立ち上がる。
「ああ、サンキュー」
「なに……ダチだしな」
「良いダチを持ったもんだな、俺も……」
俺は背を向けて手を振り、その場を後にする。
(……お節介はこのくらいにしとかないとな。あとは、本人たちがどうするかだ)
その日の夜……。
「へぇ~そんなことがあったんだね」
「小百合いわく、俺と綾を見たから決心したそうだ」
「そうなの?」
「ああ、いつどうなるかわからないこと……あと、自分も前に進まないといけないってさ」
「そうなんだ……えへへ、なんか嬉しいね」
「うん?」
「私達が付き合ったことで、みんなに変化を与えてて……今日も、二人に言われたんだ。冬馬君と私のおかげで、自分達も成長できたって……」
「そうか……あいつらも上手くやってるみたいだしな」
「ふふ、色々大変みたいだけどね?」
(そうか……俺と綾が付き合うことで、色々な変化があったんだな)
俺は心地良い声を聞きながら、そんなことを思った……。
俺はアキに呼び出される。
「よう、アキ」
「……おう」
「どうした?」
「綾ちゃんとの貴重な時間を奪って悪いが……少し付き合ってもらえるか?」
「ああ、問題ない。綾と居たいのは俺だけじゃないからな」
今日は森川や黒野と遊ぶと言っていた。
それもまた大事なことだと思うし……。
本当に大事に思うなら、束縛なんかしてはいけないしな。
「なるほど、相変わらず出来た男だ……俺とは違って」
「おいおい、らしくないこと言うなよ」
「……とりあえず、歩きながら話すか」
「ああ、そうするか」
ひとまず、一緒に帰ることにする。
校門を出て……駅まで歩き……。
地元に着いてからも、アキはずっと黙ったままだったが……。
ある程度歩いて、俺の家とアキの家の中間くらいに来ると……。
「そこの公園寄って行かね? 寒いから、人もいねえし」
「ああ、そうするか」
缶コーヒーを買って、二人でひと気のない公園のベンチに座る。
「なあ、知ってたのか?」
「うん?」
「……小百合のことだよ」
「……気づいたのは、ごく最近だけどな。誰も気づいていない……いや、飛鳥辺りはどうかわからないが」
「そうか……俺も、全く気づいてなかったし……はぁ、どうしたもんか」
「いつ言われたんだ?」
「あの日……罰ゲームで負けた日にな。ずっと、一日中付き合って……いつもみたいに言い合いをして……なんだかんだ楽しんでいる自分に……楽だと思う自分に気がついた時だった……最後に、とんでもない爆弾を落としていきやがった……相変わらず食えない女だぜ」
(……ふむ、この感じは珍しいな)
大体女の子に告白されたら、喜んで付き合うか……。
なるべく傷つけないように、穏便に事を済ませるタイプだが……。
やはり、相手が相手ということなのかもしれない。
「どうしたもこうもないだろう——付き合うか、付き合わないかだ」
「簡単に言ってくれるぜ……でも、そうなんだよなぁ」
(……自分でも、心の整理がついていないのかもしれないな)
「告白されて、どう思ったんだ?」
「……青天の霹靂ってやつだな。ありえない、そんな馬鹿な、なんの冗談だ、カメラはどこだ……気がつけば、そんな言葉を吐いていた」
「可哀想に……とも言えんか。小百合の普段の態度を思えば」
「そうだよ。あいつがツンデレとか知らんし……そもそも、ツンが99,9パーセントで……最後の最後にデレるとか……あいつ、顔を真っ赤にして言いやがった」
「ふむふむ……それで、返事は?」
「それが……即答できなかった。俺にもよくわかんねえ……すぐにふざけんな、お前みたいな女と付き合えるかって言おうとしたんだが……何故か、言葉が出てこなかった」
(アキ自身も戸惑っているってことか……さて、俺にできることは)
「じゃあ、保留中ってことだな?」
「まあ……そういうことだ」
「珍しいよな、お前にしては」
「そうなんだよなぁ……何で断らなかったんだ」
「嫌いなのか?」
「……いや、そんなことはない。なんだかんだで付き合いは長いし……良いやつだっていうのも知ってる」
(ふむ、まあ……これは伝えてもいいか。本人も、薄々気づいているだろうし)
「実はな、お前が問題を抱えていた件……あいつ、知ってたぞ?」
「やっぱりか……この間の台詞はそういうことか」
「しかも、お前を助ける気でいたぞ?」
「……なに? どういうことだ?」
「俺が気づかなかったら、あいつがどうにかしたと思う」
「そんなことが……いや、あいつなら出来そうだ。あらゆるツテがあるからな」
(我が学校全員の弱みを握ってると噂されるくらいだからなぁ)
「まあ、俺に言えるのは……お前みたいな男と付き合えるのはあいつくらいだな。女子が嫉妬しようが、あいつには通じないし。むしろ、お前が嫉妬されるかもな?」
「はははっ! 確かに! そうか……あいつ、そのことは言わなかったな」
「よく似てるよ、お前らは。意地っ張りで素直じゃないし……お調子者で、自分を偽って……それでも、根っこの部分は優しい奴だ」
「冬馬……」
「ふっ……それじゃあ、よく考えるんだな」
俺は少し気恥ずかしくなり、ベンチから立ち上がる。
「ああ、サンキュー」
「なに……ダチだしな」
「良いダチを持ったもんだな、俺も……」
俺は背を向けて手を振り、その場を後にする。
(……お節介はこのくらいにしとかないとな。あとは、本人たちがどうするかだ)
その日の夜……。
「へぇ~そんなことがあったんだね」
「小百合いわく、俺と綾を見たから決心したそうだ」
「そうなの?」
「ああ、いつどうなるかわからないこと……あと、自分も前に進まないといけないってさ」
「そうなんだ……えへへ、なんか嬉しいね」
「うん?」
「私達が付き合ったことで、みんなに変化を与えてて……今日も、二人に言われたんだ。冬馬君と私のおかげで、自分達も成長できたって……」
「そうか……あいつらも上手くやってるみたいだしな」
「ふふ、色々大変みたいだけどね?」
(そうか……俺と綾が付き合うことで、色々な変化があったんだな)
俺は心地良い声を聞きながら、そんなことを思った……。
1
お気に入りに追加
179
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる