静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

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それぞれの未来へ

修学旅行最終日

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 その後、宿に帰り……。

 飯を食って、ダチとゲームをして遊んで……。

 最後の夜は、楽しくてあっという間に過ぎていく……。






「なんというか、あっという間だったな」
「だよな! もっと遊びたかったぜ!」
「じゃあ、今度は普通に旅行しようか。受験でも終わったらさ」
「ぼ、僕もいいかな?」
「当たり前だろ」
「そうだぜ!」
「もちろん」
「あ、ありがとう」

(そうだよな……もうすぐ三年生になるんだよな)

「そういや、以前も聞いたけど進路は決まってるか? それとも変化したか?」
「俺は変わらず進学だね。上の私立大学に行こうかと思ってる。できれば、黒野と同じところに受かりたいしね」
「あれ? 黒野はお金がどうとか言ってたけど……」
「兄さんが払ってくれるってさ。だから、行きたいところに行けって言われたらしいよ」

(そうだった、こいつらには内緒だったな。それにしても……真兄の奴、相変わらずかっこいいな。それでこそ、俺の憧れる男だ)

「僕は国公立の大学かなぁ……今のままの成績をキープできればだけど」
「お前は真面目だし、平気だと思うがな。お前には公務員になってもらわんと」
「ハハ……頑張るね。というか、元々そっち方面に進むつもりだったから」

(まあ、良い意味で啓介らしいわな。公務員なら、万が一……万が一、義弟になっても麻里奈を養えるだろうし)

「俺は専門に行こうかと思ってたけど……頑張って大学に行こうかと思ってるぜ」
「へぇ? 何か理由が?」
「キャンパスライフだよ! 俺だって可愛い彼女を作ってイチャイチャしたい!」
「うん、ある意味健全だな。清々しいくらいに真っ直ぐだし。しかし、お前の成績で平気なのか?」
「うっ……それなんだよなぁ」
「まあ、マサはラッキーだったな」
「あん?」
「ここに学年トップクラスが三人いるからな」

 啓介もクラスでは上の方に入るし、俺と博はトップクラスファイブに入っている。

「まさか……教えてくれるのか!?」
「俺はそのつもりだが? もちろん、真面目にやるならな」
「同感だね。きちんとやるなら教えるよ。復習にもなるしね」
「僕でよかったら!」
「ウォォォォ! ありがとよ!」
「ええい! 暑苦しいわ!」

 抱きつこうとするマサを布団に放り投げる!

「やったな! そうだ! お前とは一度やってみたかったぜ!」
「ほう? 良いだろう、かかってくるが良い」
「さて、啓介。俺たちは窓際の椅子に座ってお茶でもしようか」
「うん、そうだね」

 こうして……最後の夜は更けていく……。







 そして、翌朝……みんなで少し早めに起きる。

「ふぁぁ……ヤベェ」
「中々気持ちいいね」
「うん! 朝風呂って良いね!」
「だろ? 早めに起きて正解だったろ?」

 昨日羨ましがられたので、提案したわけだ
 少し早めに起きて朝風呂をしないかと。
 今日は帰るだけだから、多少眠くとも問題ない。
 というか、帰りの電車は毎年静からしい……みんな寝てしまうから。








 スッキリして風呂から出たら、最後の朝食を済ませて……。

 帰りの支度をして、帰りの新幹線に乗り込む。

 そして、案の定……静かな車内になった。

「ん……まだ、みんな寝ちまってるな……さて、どうするかね」

 俺は眠気覚しに、車両の間の洗面所に向かう。

「あれ? 冬馬君?」
「おっ、綾も眠気覚しか?」
「うん、そんなところ」

 二人で並んで、外の景色を眺める。

「楽しかったなぁ……すごく」
「ああ、俺もだ」
「みんな、良い人たちで……離れたくないね」
「綾……」
「ご、ごめんね……」
「いや、良いんじゃないか。それだけ、思い出に残ったということだ」
「……そうかも。愛子と加奈と話してたら、色々なことを思い出しちゃって……結局、三人で泣いちゃって……」

 俺は綾の涙を拭いて、大人しく話を聞く。

「そうか」
「高校でできた、初めての友達で……これからも、ずっと友達でいようって言ってくれて……嬉しかった」
「ああ、そうだな」
「冬馬君が浮気をしないように見張りは任せろとか、寄ってくる女は排除するとか」
「おい?」
「ふふ、もちろん冗談だよ?」
「なら良い」
「冬馬君の友達もいい人ばかりで……」
「ああ、そう思う」
「先生も良い人で……弥生さんたちも……」
「ああ、そうだな」
「……私だけ、別々になっちゃうね……みんなはいいなぁ……三年生になっても、一緒にいられて……」

 俺は優しく綾を抱きしめる。

「大丈夫さ、みんな待ってる。卒業式は一緒に出れるんだろう?」
「うん……来年の三月に帰って来れるって……」
「そしたら、卒業旅行でも行こう。そして、みんなで高校生最後の思い出を作ろう」
「冬馬君……うん!」

 そう言って、ようやく綾は笑ってくれた。

 そして肩を寄せ合い……二人で黙って外を眺めるのだった。
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