静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

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それぞれの未来へ

修学旅行~その3~

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俺たちは大浴場に入り……。

体を洗ってから湯船に浸かる。

「カァー! 気持ちいいぜ!」
「うるせえ……といいたいところだが、否定はできないな」
「確かに、寒かったしね」
「うん、そうだよね」
「そういや、露天風呂もあるってよ!」
「じゃあ、行ってみるか」



ある程度してから、露天風呂に行くと……。

「きゃっ!?」
「やめてよー!」

女子達のきゃっきゃした声が聞こえてくる。
男子達は、何故か顔を合わせて……。

「な、なんか照れるな」
「別に何も見えていないけどな」
「非日常感って感じだね」
「ぼ、僕は出ようかな」

(幸い、綾の声は聞こえない。アブナイアブナイ……もし聞こえたら、ここにいる奴らを追い出すところだった)

「ふぅ……寒いことが、逆に気持ち良さを実感するな」
「そうだね」
「この後はどうすんだ?」
「自由時間だったはずだよ」
「うし! じゃあ、遊ぶか!」
「あぁー……すまんがパスだ」
「ん? どうし……いや、そうだな。冬馬は清水さんといないとな」
「悪いな、マサ」 
「いいって……思い出があった方が良いもんな」
「あっ、俺もパスで」
「博……お前はいつでも会えるじゃねえか!」
「うおっ!? 揺さぶらないでくれ!」
「マサくん、僕が付き合うからね?」
「啓介……うぉぉぉ!!」
「ちょっと!? 暑苦しいよ!」

(……まあ、こういう時間も悪くないけどな)




その後風呂から出て、外に出てみると……。

「ん? 何やら、人だかりができているな」

(なんだ? やたら男が多いが……まさか!)

すぐに人だかりに向かうと……。

「冬馬君!」

そこには——天女がいた……違う、浴衣を着た綾がいた。

「そりゃ、そうだよな……」
「あんな可愛いんじゃ男いるよな……」
「しかも、男前かよ……」
「はぁ……神は不平等だ……」

そう言いながら、男達が立ち去っていく。

(……ふむ、今更だが見た目を変えておいて良かったな)

これが以前のままだったら、文句をつけられていたに違いない。
そうすれば、余計ないざこざになるところだった。

「綾、何をしている?」
「ご、ごめんなさい……」
「ごめんねー、吉野。声をかけてくるわけじゃないから、どうして良いかわかんなくて」
「そうなのよ。あの人達、ただ見てくるだけだから」
「いや、謝ることはない。二人とも、ありがとな」
「じゃあ、ナイト様も来たし」
「私達も行くわよ」
「二人とも、後でねー」

黒野は風呂から出てきた博と行き……。
森川は、おそらく剛真と合流するのだろう。

「と、冬馬君」

俺はまじまじと綾を見つめ……。
火照った身体からは、色香が溢れている。
しっとりとした黒髪はサイドテールに纏められ、首筋がエロい。
浴衣は体のラインがわかるので、そのお椀型のDさんが強調されている。
はい……眼福です。




「あぅぅ……見られてるよぉ」
「はぁ……可愛すぎか」
「ふえっ!?」
「もう少し自覚してくれ。そんなんじゃ、俺は色々心配だ」

(日本人はモテるっていうしなぁ……大和撫子タイプの綾は大変だ)

「は、はぃ……でも、大丈夫だよ。お父さんが知り合いのいる学校にしたっていうから」
「そういや、言ってたな。まあ、あの親父さんが言うなら平気か」
「ふふ、私は冬馬君一筋だもん。むしろ、冬馬君が心配だなぁ~。私の彼氏さんはかっこいいですからねー?」

そう言いながら、下から覗いてくる。
ということは……見えそうなんですけど?

「待て!」
「ひやっ!?」

俺は急いで綾の紐を締め、胸元に隙間のないようにする。

「み、見えたらどうする!?」
「えへへ——見せたって言ったら?」
「……へっ?」
「ふふ、冬馬君、顔真っ赤だね?」
「か、からかうなよ」
「だって、今のうちに楽しんでおかないとね」
「綾……」
「暗い顔しないで、冬馬君……ねっ?」
「……ああ、そうだな」
「じゃあ、行こう!」
「おいおい、どこに行くんだよ?」
「なんか、卓球台とか、ゲームセンターがあるって」
「ああ、聞いたな」
「とりあえず、言ってみよ!」

綾に手を引かれ、俺は歩き出す。





その道中で……。

「やっぱり似合うね」
「うん?」
「肩幅あるし、意外とがっちりしてるから」
「ああ、そういうことか。まあ、これでも鍛えてるしな。いつでも綾を守れるように」
「あ、ありがとう……えへへ」

手を離し、今度は腕を組んでくる。
つまり——ダイレクトアタックですね。

「こ、これって……」
「つ、つけてないよ? 浴衣だもん」
「し、知ってるが……」
「冬馬君は、私にデレデレですね?」
「勘弁してください……」
「こういうのは……嫌かな?」
「いや、ヤバイ。だからこそマズイ」
「ふふ、カタコトだったね。だって、いっつも私ばかりドキドキさせてもらったから。だから、私がドキドキさせたいの」
「十分ドキドキしてますけど?」
「じゃあ……大成功だね!」

その笑顔の破壊力は凄まじく……。
俺は膝から崩れ落ちそうになるのを必死で堪える。

(……マズイ、これはまずい。可愛い、エロいの最強コンボだ)

……果たして、俺の精神力は保ってくれるのだろうか?

……自信がない。
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