静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

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それぞれの未来へ

修学旅行~その1~

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 そして二月に入り、修学旅行の日がやってくる。

 四、五、六の二泊三日の旅で、行き先は京都だ。





 ひとまず、集合場所の駅に到着すると……。

 同じ制服の高校生たちが集まっていて……。

 その中から、真兄が近づいて来る。

「おっ、来たな。班の全員が揃ったら、俺の所に来てくれ」

 どうやら、担任ごとにクラス名簿があり、来たらそれに○を班長がつけるらしい。

「わかった」
「清水。準備はどうだ?」
「はい、順調に進んでいます。先生、色々とありがとうございました」
「なに、気にするな。これでも、担任の先生だ。何より、可愛い弟分の頼みだからな」
「ふふ、そうですよね」

(本当に真兄はよくしてくれた。自分の結婚式のことで忙しかったのに)

「なに言ってんだが……ほら、書いたよ」
「クク、照れるなよ」
「えへへ」
「はぁ? 照れてないし。それより、この間言ってた結婚式は決まったの?」
「ああ、三月の初めに決まった。弥生さんと話し合って……清水、お前も出られるようにな」
「先生……」
「親父さんと弥生さんが、どうしてもお前に出て欲しいってさ」
「でも、私……急にバイト辞めて……まだ半年も経ってないのに……」
「ばかやろ、そんなのは関係ねえよ。だいたい、冬馬が一人ぼっちで可哀想だろうが」
「そうそう、俺が可哀想だ。黒野だって、博を連れて行くらしいし」
「そうなの?」
「ああ。そういや、綾には色々と決まってから言うことになってたな」
「ふふ……嬉しい。先生、ありがとうございます!」





 その後、真兄は次々と生徒に声をかけていく。

「立派な先生だよね?」
「ああ、見た目はともかくな」
「えへへ、そうかも……私、このクラスで良かったなぁ」
「ん?」
「だって、先生がいなければ……冬馬君とこうなることもなかったかもしれないし」

(……あぁー、そういや……真兄が、俺の住所を教えて……そこから始まったんだっけ)

「もう、10ヶ月も前なのか……なんか、あっという間に過ぎたな……楽しすぎて」
「うん……そうだね」
「綾~!」
「わぁ!?」
「何しみじみしてるの?」
「もう! びっくりしたよ!」

 綾の背中に、森川が乗っかっている。
   その横には黒野もいる。

「やあ、冬馬」
「おす、冬馬」
「おはよう、冬馬君」
「おう、これで揃ったな」

   博、マサ、啓介も揃ったので……。
 俺は真兄の元に行き、○をつける。





 そして、新幹線に乗り……いよいよ、出発である。

「イェーイ!」
「だからうるさい」
「うるさいね」
「はは……でも、貸し切りだしね」
「そうだよな!」

 向かい合わせになっている四人席で、俺たちは座っている。
 通路を挟んで向こう側には、女子達が座っている。

「なあなあ……」 
「ん?」
「清水さん、留学しちゃうんだろ?」
「ああ、そうだな」
「寂しくなるね……」
「うん……」
「おいおい、お前達が暗くなるなよ」
「意外と、お前は冷静なんだな?」
「この先もずっと一緒いたいと思ってるからな」
「はは……参ったね」
「冬馬君らしいや」
「確かに! お前、男前すぎんぞ!」
「ええい! 首を絞めるな! 暑苦しい!」

 すると……隣から笑い声が聞こえる。

「ふふ、綾の顔が真っ赤ね」
「綾! もはやプロポーズだよ!」
「はぅ……いや、その、あの……」

 流石にプロポーズされたことは言っていないらしい。
 本人達から漏れるとかではなく、単に恥ずかしいだけらしいが……。
 この旅行中に伝えるとか言ってたな。





 そして席替えをしつつ、トランプなどをして、あっという間に京都に到着する。
 いわゆる、楽しい時間は過ぎるのが早いってやつだな。

「お前ら! 迷子になるなよ! しっかりついてこい!」

 真兄に先導され、皆でワイワイ移動する。

「冬馬君。私、京都初めてだから楽しみ!」
「そういや言ってたな」
「関東の人は、普通は中学の時に来るんだよね?」
「まあ、定番だからな。埼玉県民は大体そうだろ。たまたま綾は違ったらしいが」
「えへへ、じゃあ……案内してもらおっと」

 そう言って、腕を組んでくる。
 最近、特にスキンシップが多い。

(嬉しいのだが……約束した手前、手を出すことはできない。かといって、寂しいであろう綾を我慢などさせられない。故に、俺が全身全霊の力でもって、これに耐え抜くしかない)

 あと二ヶ月、厳しい戦いになりそうだ……。





 そのままバス停の前まで行き……。

 みんなが集まるまで、ジュースを買って待っていると……。

 綾がヒソヒソと話しかけてくる。

「ねえねえ、いつ言ったら良いかな?」
「綾のタイミングでいいんじゃないか?」
「でも、冬馬君だって知られちゃうよ?」
「まあな……俺は色々と言われそうだなぁ」

(アキや剛真、智や飛鳥、小百合には、先に言っておいた方が良いか。あいつらには、本当に世話になったからな)

 この一ヶ月、あいつらは俺を励ましてくれた。
 アキは、三年になったら遊ぼうぜ!と。
 智は、一緒に勉強しましょうと。
 剛真は、運動で発散しようと。
 飛鳥と小百合は、俺に女の子が寄ってこないようにするって綾に伝えていたな。


「ふふ、みんな驚いちゃうね?」
「俺はさっさと知らせたいよ——綾は俺の奥さんになるって」
「ふえっ!?」
「こんなに可愛いんだ、色々と心配だしな。この旅行でも、俺の側を離れるなよ?」
「は、はぃ……」

 寒い空気の中、俺たちは身を寄せ合う。

 しかしそうすると……不思議と、寒さは感じなかった。
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