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それぞれの未来へ

自分の気持ち

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 フラフラして、俺は公園のベンチに座る。

 家に帰ったら、親父と麻里奈に聞かれるからだ。

 どうして帰ってきたの?と……。

「情けねぇ……何が泣かせないだ、何が悲しませないだ」

(他でもない俺が泣かせて悲しませてるじゃねえか……くそっ!)

「でも……俺は、自分に嘘をついたつもりはない」

(本来なら、家族は一緒にいるべきなんだ。それが一番良いに決まってる)

「なのに……胸が苦しい」

(俺がもっと大人だったら……何で、俺は高校生のクソガキなんだっ!)







 あれから、どれくらい経っただろうか?

 あれ……もう暗くなってきたのか?

 ……意識がぼやけてくる。

「ん? 冬馬?……おい! どうした!?」
「あれ? ……真兄? どうして?」
「冬馬君、平気!? こんなに冷たくなって……」
「弥生さんまで……」
「しっかりしろ! 弥生さん! 俺が担ぎます!」
「ええっ!」




 俺は真兄に背負われて……車に乗せられる。

「ほれ! 飲め!」
「あ、ありがとう……ふぅ……あったまる」

 どうやら、俺の身体は冷え切っていたようだ。

「お前なぁ! 寒さで人は死ねるんだぞ!?」
「ごめん、真兄……」
「……何があった? お前がそんなになるなんて……」
「………なにも」
「冬馬君、今日は綾ちゃんの家に行ったのよね?」
「あん? そういや、お前スーツだな……振られたのか?」
「だったら、まだマシだったんだけどね……」
「とにかく、うちに行きましょ。私、お父さんに電話しとくわ」
「よし、俺が運転する」
「二人に悪いよ……デート中だったんじゃないの?」
「ばかやろー、可愛い弟分のが大事……い、いえ、そういうわけではなくて……」
「ふふ、良いんですよ。私は、そういう貴方を好きになったのですから」

(……少し羨ましいなぁ。俺も本当なら、今頃は二人みたいに……)

 暖かくなって安心したのか……意識が沈んでいく……。







 ……んっ……ここは?

「むっ、起きたか」
「クマ……善二さん?」
「誰がクマだ。まったく……ほれ、起きられるか?」
「は、はい」

 起き上がって辺りを見回すと……どうやら、矢倉書店の二階の部屋のようだ。
 俺は、そのソファーの上で寝かせられていたようだ。

「冬馬……俺にできることはあるか?」
「真兄……弥生さん」
「何があったの?」
「俺は席を外そう」
「いえ……もしよければ、善二さんにも聞いてほしいです」
「……わかった、では話してみると良い。お前が、何故弱りきっているのか」




 そして、俺は一通りのことを三人に話した……。
 きっと、誰かに聞いて欲しかったんだと思う。
 それに、俺と似たようなモノを抱えているこの人達なら……。

「そうか……冬馬、辛えな」
「うむ……親父さんも気持ちもわかる」
「そうね……私達も出来ることなら、家族は一緒が良いもの」

 真兄は、両親は生きているけど、一度家族がバラバラになってる。
 善二さんは早くに奥さんを亡くし、弥生さんと二人で生きてきた。
 このタイミングで会うことに、なんだか意味があるような気がする。

「真兄、俺は間違ったかな?」
「いや……間違ってはいない。もし出来るなら、家族は一緒にいる方が良い。しかし、言い方が良くないかもしれん。お前の言い方では、押し付けになってしまうからだ。清水の気持ちを無視している」

(言われてみれば……俺は、あの時一人で決めて……勝手に発言していた)

「多分、冬馬君は心情的にお父さん側にいっちゃったのね。お父さんが、家族と離れ離れで寂しいって……」
「……そうなのかもしれません」
「あのね……綾ちゃん、すっごく今日を楽しみにしててね」
「へっ?」
「嬉しそうに私に言うのよ。明日、冬馬君が来るんですって……きっと、物凄く楽しみだった分、悲しくなっちゃったんじゃないかな?」
「そうだったんですね……」

(そうだったのか……俺は緊張し過ぎて、そのことに気づかなかった)

「冬馬」  
「はい、善二さん」
「俺も、バイト中に彼女から話は聞いていた。しかし、俺たちは環境は似ていても、あくまでも違う人間だ。考え方はそれぞれ違うし、立場も違う」
「はい……俺はガキで、どうする事も出来ないです」

(俺達が大人だったら……俺たちは高校生のガキで、親の庇護下にある。そんな俺らが、好き勝手にやって良いわけがない)

「そうだな、お前達は子供だ。そう……
「へっ、親父さん……そうだぜ、冬馬——お前は子供なんだよ」
「ふふ、そうね……冬馬君、貴方は子供なのよ」
「な、何ですか……三人共同じこと言って……そんなのは、俺が一番わかってます」

(やっぱり、諦めろってことか? 俺には力がない。今すぐに綾を養うことも、しっかり責任を取ることも……)

「冬馬、お前は出来た男だ。しかし、まだ十代のクソガキだ。だから、もっとわがままで良いんだ。大人みたいに物分かりのいいフリをしなくていい」
「……真兄?」
「ふん……そいつの言う通りだ。もっと、素直になれ……自分の気持ちにな」
「ふふ、そうよ。貴方の良いところでもあり……悪いところでもあるわ。もっと、綾ちゃんを頼ったり、甘えたり……しっかりとお話をしたほうがいいわ」
「善二さん……弥生さん……」

(そうなのか? 俺はわがままを言って良いのか?)

「あ、綾と離れたくないです……!」

 気がつけば、俺は言葉を発していた……涙と同時に。

「そう、それで良いんだ。結果はわからないが、ひとまず伝えてやれ」
「ああ、それが良い」
「うん、きっと待ってるわ」
「わかりました……ありがとうございました……!」

 俺がそう言うと、三人は照れ臭そうに微笑む。

 まるで、気にするなとでも言うように……。
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