静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

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それぞれの未来へ

年末は忙しい

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 翌日からは、大忙しだった。

 まずは、家の大掃除から始まり……。

 年末ということで、ほぼフルタイムでバイトに行くことになり……。

 あっという間に、年末を迎える。






 そんな中、ノーゲスのままバイトをしていると……。

 六時前に、店のドアが開く。

「いらっしゃいませ! ……あれ?」

「おっ、いたいた」

「あら~、冬馬君、こんばんは」

「えっ? 真兄に、弥生さん?」

「おう、暇そうだな?」

「まあ、年末だからね」

 みんな家にいるか、誰かと過ごしているだろうし。

「それにしても、初めて来たよね? どうしたの?」

「いや、まあ……正式に付き合うことになってな……その、アレだ……結婚を前提にってやつだ」

「おおっ!? ほんと!? 」

(そうか……良かった。こんなに嬉しい知らせはない)

「それで、今年中に知らせようかと思ってな」

「今日も綾ちゃんがバイトしてて、冬馬君は夜までバイトって聞いたのよ」

「なるほど、そういうことですか」

「冬馬、まずは座ったもらったらどうだ?」




 見かねた友野さんが声をかけ、奥の席に案内する。

「お前も、こんな年末までバイトで偉いな」

「いや、その予定はなかったんだけど……」

「ふふ、綾ちゃんから聞いたわよ。店長さんの奥さんが、つわりをしてて、代わりに働いてるのよね?」

「なるほど、なおさら偉いな」

「いや、よくお世話になってるからさ。あと、来年からは中々バイト出来ないし」

「そうか……お前も、もうすぐ高校三年になるか」

「ふふ、早いわね。あんなに小さかったのに。おばさんになるわね」

「何を言うのですか! まだまだお若いです!」

「ふふ……真司さん、ありがとう」

(……うん、上手くいってるみたいで良かった。紹介した手前、ずっと気にはなっていたし)

「じゃあ、メニュー決まったらよんでください。ちなみに、今日は俺の奢りなんで、好きなものを頼んでください」

「そんな、悪いわ」

「いや、弥生さん。ここは、冬馬の男気を買いましょう」

「そういうことです」

「あら……良いわね、男の子って。じゃあ、ご馳走になるわね」




 その後、二人に食事を持っていき……。

「聞いて良いかわからないけど……結婚の挨拶ってどうした?」

(俺も、人ごとではないからなぁ)

「うん? まあ、一発ぶん殴られたぜ」

「もう、お父さんったら。ごめんなさいね、真司さん」

「い、良いんですよ! こんな可愛いお嫁さんをもらうんですから! トラックに轢かれるくらいはできます!」

「ふふ、困りますよ。怪我しちゃったら悲しいですからね?」

「は、はいっ!」

(完全に掌の上って感じだな……でも、幸せそうだからいいのか)

「私もご挨拶に行ったわよ~。お母さんと、妹さんに」

「へぇ? ……母親とは、会ってるの?」

「まあ……ちょくちょくな。まさか、泣かれるとは思ってなかったが」

「お母さん、ずっと後悔していらしたみたいで……私に、よろしくお願いしますって」

「けっ……調子のいいこと言いやがって」

 そう言いながらも……どこか晴れやかな表情を浮かべている。

「そっか……良かったね、真兄。弟として、嬉しいよ」

「おうよ。だから、挨拶に来たんだよ」

「じゃあ、冬馬君は私の弟ね。ふふ~嬉しいわぁ」

「あ、いえ、まあ……あねさんと呼ばせていただきます」

「おい? 俺は一般人だぞ?」

「ふふ、それも素敵やわぁ」

「ゴハッ……!」

 機嫌が良い時に出る京都弁に、真兄がノックアウトされた。

 ……二人とも、お幸せに。




 その後、食事を済ませ、二人は帰っていった。

 そして八時に店を閉め、俺も上がりの時間になる。

「冬馬君、お疲れ様。ごめんね、年末まで働いてもらって……」

「すまんな、お前しか頼れる奴がいなくてな」

「いえ、気にしないで良いですよ。友野さんに頼られるなんて、これほど嬉しいことはないですし」

「あれ? 僕は?」

「はいはい、嬉しいですよ」

「扱いが雑だよっ!」

「まあ、いいじゃないですか。では、帰りますね。今年もお世話になりました、良いお年を」

「うん、こちらこそお世話になりました。冬馬君も良いお年を」

「世話になったな。来年もまたよろしく頼む」

「ええ、では失礼します」





 急いで家に帰り……。

「お兄、お帰り!」
「おう、ただいま」
「冬馬、間に合うのか?」
「多分……まあ、急がないとね。二人とも、悪いが……」
「もう! 平気だって! お父さんの面倒は見るから!」
「まあ、そういうわけだ。お前は楽しんでこい。相手のご家族によろしくな」
「ああ、わかった。じゃあ、準備をするわ」



 軽く飯を食って、風呂に入り、着替えを持ったら……。

「げっ、もう十時過ぎたか。麻里奈、親父、行ってくる!」

「気をつけてねー! 綾ちゃんによろしくねっ!」

「事故に遭うなよー!?」

「ああ、わかってる。じゃあ、良いお年を!」

 家を出て、バイクに乗って……。





 綾の家の前に到着する。

 すると……すぐに綾が玄関から出てくる。

「と、冬馬君、いらっしゃい」

「お、おう……今日は世話になる」

 そう……今日は、綾の家にお泊りすることになっていた。

(ていうか……ピンク色のパジャマか……可愛いな、おい)
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