静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

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それぞれの未来へ

クリスマスパーティー

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 翌日の午前中、俺はリビングにて準備を進めていた。

 飾り付けをしたり、テーブルをくっつけたり……。

 今日は久々に全員が揃うので、俺も気合いが入ってるのかもしれない。



「お兄! わたし、もう出かけるね!」

「おう、気をつけろよ。知らない人についていくなよ?」

「もう! 子供じゃないんだから!」

「なにを言ってる? まだまだ子供だよ」

「むぅ……とにかく、行ってきます!」

「おう、行ってらっしゃい」

 麻里奈の方も、友達とクリスマスパーティーをするそうだ。
 きちんと夜までには帰ってくるので、そこまで問題ないだろう。





 そして、お昼過ぎになった頃……チャイムの音が聞こえてくる。

「おっ、来たか」

 少しそわそわしつつ、玄関のドアを開けると……。

「「「「「メリークリスマス!」」」」」

 そこにはアキ、智、剛真、飛鳥、小百合の五人が揃っていた。

「おう、メリークリスマス。まあ、上がってくれ」

 それぞれがお邪魔しますと言い、家に上がってくる。

「さて、手洗いうがいをしたら……まずは、全員で挨拶をしてくれるか?」

 全員が黙って頷き、手洗いうがいを済ませ……和室にやってくる。

「母さん、ようやく全員が揃ってうちに来てくれました。今日は騒がしくなるかもしれないけど、大目に見てください」





 全員で挨拶をしたら、リビングに移る。

 そして、お菓子を食べつつ……。

「イェーイ!」
「イェーイ!」
「「盛り上がってるかい!?」」

 騒がしい二大巨頭のアキと飛鳥が盛り上げ……。

「やれやれ、相変わらず騒がしい人たちですね」
「あら、そんな飛鳥ちゃんが好きな男の子は誰かしら?」
「くっ!? 」
「まあ、嫉妬する気持ちはわかるわ」
「はっ? ……どういうことだい?」
「そりゃ、私の飛鳥ちゃんと仲良くしてることよ」
「でしょうね!」

 冷静な二人は静かに見守りつつ、話に花を咲かせている。

「んで、剛真……森川とかどうだった? お前達も、昨日はデートだったんだろ?」

「う、うむ……と、冬馬……キスとは、いつして良いのだ?」

「なに?……難しい質問だな。相手を三秒以上見つめてみろ、それで目を逸らされなかったら平気かもしれん」

「なるほど……俺が逸らしてしまうな」

「おいおい! そこは俺に聞くべきだろ!」

 アキが、俺の肩を組んでくる。

「貴方に聞いても意味ないわよ。どうせ、ろくなこと言わないんだから」

 その目の前に、小百合がいる。

「あのね! 私はね、智が——ムゥ~!」

 飛鳥が前のめりになって、話をしようとし……。

「は、話すなよ!?」

 智が、急いで口をふさぐ。

 その光景に、俺は思わず……。

「ハハッ! ……また、こうやってバカやれるなんてな」

 中学時代によく見た光景だ。
 俺が剛真と話す出すと、アキが絡んできて……。
 小百合がやってきて、何かしら突っ込んで……。
 なになに!?と飛鳥がやってきて……。
 それを智がストッパーの役割を担って……。
 そんな日々を過ごしていたな。

「へっ……二年もかかっちまったけどな」

「うむ……感慨深いものがある」

「そうですね……悪くないですね」

「ウンウン! 楽しいねっ!」

「ふふ、みんな大分変わったけれどね」

「みんな、俺のせいで随分遅れちまったけど……これからも、よろしく頼む」

 それぞれが頷き、笑顔を見せてくれる。

 月並みなセリフだが……友達って良いもんだな。




 そして、話は恋愛方面へ向かう……。

「小百合! 聞いてよ! 智ったら、クリスマスなのに手を出さないの!」

「あらあら、ヘタレね」

「ちょ、ちょっと!? おい! 冬馬!?」

 止めようとする智を、俺が羽交い締めにする。

「まあまあ、しっかり聞こうぜ」

「ほうほう、面白そうじゃん」

「うむ、興味深いな」

「わたしは、キスから先を待ってたのに……そう、ヘタレよ!」

「ぐぅ……しかし、冬馬だって」

「えっと……すまん、詳しくは言えないが、それよりは進んでる」

「ぬぅ……俺は耳が痛い」

「やれやれ、俺がレクチャーしてやろうか?」

「それはやだよー! エロいこと教えるでしょ!?」

「あだぼーよ! というか、それを求めてるじゃないのか?」

「違うの! そういうんじゃなくて……ゴニョゴニョ」

 恥ずかしそうに、俯いている姿はまさしく女の子である。
 変われば変わるものなんだな……それは俺もか。

「クク、すっかり女の子になって。飛鳥、俺がいうのもなんだが……よかったな」

「冬馬……うんっ! わたしも良かったっ! 冬馬と友達に戻れて!」

「それにしても……はぁー、あの飛鳥がねぇ」

「ふふん! 私だって花の女子高生だもん! これで、小百合とアキだけだね?」

 ……おっ、良いところに切り込んだぞ。

「はっ、そこの女と一緒にすんなよ。俺は作らないだけだし」

「あら、心外ね? 私だって作らないだけよ。釣り合う男がいなくて」

「ハァ? お前は性格悪いからだろ?」

「なるほど、私にケンカを売ると? ……よし、覚悟しておきなさい。年明けには、貴方の恥ずかしい記事を書いて学校に張り出すから」

「はい、ごめんなさい」

「どうせ、性格悪いですよ」

「そんなことありません。小百合様はヤサシイデス」

「もう、二人が付き合えば良いのに」

「「ハァ!?」」

「なに赤くなってんだよ!」

「な、なってないわよ! 勘違いしないで!」

「やれやれ、昔と変わりませんね」

「ははっ! 相変わらず仲が良いな!」

「「よくないっ!」」

「いや、シンクロしてるし」

 ……この二人は、前途多難そうだな。

 まあ、気長に様子を見た方が良さそうだ。

 それにしても……真兄の言った通りだったな。

 昔からの友達は大事にしろって……後になって、後悔するからと。

 俺はこいつらを失ったまま、もし年を重ねていたら……。

 きっと、後悔していたに違いない。
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