静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中

文字の大きさ
上 下
153 / 185
それぞれの未来へ

綾視点

しおりを挟む
 ……今、なんて?

 冬馬君は、なんて言ったの?

「俺は、この先もお前以外に好きな女性ができるとは思わない。だから、もし綾が良ければ……予約をさせてもらえないか?」

「えっ……あれ? どうして……」

「綾」

「ち、違うの……嬉しくて、びっくりして……涙が」

 気がつけば、わたしは涙を流していました。
 嬉しい、すごい嬉しい……すごいびっくりしたから。

「ああ、わかってる。俺は落ち着くまで待つから」

「ひぐっ……あぅぅ……!」

「おいおい……ったく」

 泣いているわたしを、冬馬君が優しく抱きしめてくれました。

「は、鼻水ついちゃうよ……?」

「いいさ、それくらい」

「あ、ありがとぅ……う、嬉しいです」

「そっか、なら良かったよ」

「わ、わたし、料理もできないよ?」

「別にこれから時間はあるさ。それに、二人でやればいい」

「冬馬君に迷惑かけてばっかりだし、これからもかけちゃうよ……?」

「いいさ、それで。惚れた女に頼られるなんざ、男冥利に尽きるじゃないか」

「嫉妬だってしちゃうし、わたしめんどくさい女の子だよ……?」

「それを言ったらお互い様だろ。俺は、お前が良いんだ。優しくて、人の気持ちに寄り添える綾が……人と関わることを恐れてた俺を……唯一綾だけが、その心を溶かしてくれた」

「そ、そんなの……それは、わたしのセリフだよ! 男子が怖くて、でも恋がしたくて……でも、みんなわたしの顔や体しか見なくて……もういいやってなってた時……冬馬君に出会ったの。それで過ごす中で、冬馬君がわたしを変えてくれたんだもん」

 そうだ……あの時の気持ちは今でも覚えている。
 ドキドキして、夜も眠れなくて……顔を見るだけで、なんだがふわふわして……。
 初めて話せた時、一緒に帰った時、デートした時……全部、覚えてる。

「なら、良いんじゃないか? 俺も大概めんどくさい男だし。今時の若者らしくないし、品行方正とは言えない」

「ふふ、それはそうかも。でも、わたしもそうかも」

「それでだな……返事を貰えると助かる」

 そう言った冬馬君の顔は、視線を上に向けて照れています。
 ……えへへ、こういうのを可愛いって思えるんだよね。
 だから多分……これが、好きなんだって思える。

「あ、あの……よろしくお願いします」

「ハ、ハァァァァ——」

「と、冬馬君!?」

 冬馬君が膝から崩れ落ちちゃった!

「す、すまん……ずっと、気を張っていたからな。き、緊張したぜ……生きた心地がしなかった」

「こ、断られると思ってたの?」

「いや、そんな事はないが……それでも緊張するだろ。仮にとは言え、結婚を申し込むようなものだ」

「えへへ、可愛い」

「勘弁してください……」

「冬馬君!」

 わたしは冬馬君の手を引いて、起き上がらせます。

「おっと、どうし——」

 そして……わたしからキスをします。

「ん……えへへ」

「ま、参ったな……あぁー! もう!」

「と、冬馬君?」

「嬉しすぎて、色々と段取りが吹っ飛んだ!」

「えっと……?」

「これ……一応、クリスマスプレゼントだ」

「ふえっ? ……そ、そう言えば、そうだったね」

「まったく、格好がつかん」

「冬馬君はかっこいいよ?」

「へいへい、ありがとな」

 そう言うと、頬をぽりぽりしています。

「えへへ~可愛い」

「いや、どっちだよ?」

「うーん……両方!」

「全く……ほら、一応確認してくれ」

 紙袋の中は……あれ?

「ふふふ……」

「お、おい?」

「もう! こんなところまで似なくても良いじゃない!」

「あん?」

「わたしは——これです!」

 カバンから、とあるものを取り出します。

「……なるほど」

「まさか、両方ともマフラーなんてね」

 わたしには、青いマフラー……冬馬君のは、黒のマフラー。

「はは……ほんとだな。いや、迷ったんだよ。指輪のサイズはわからんし、まだそれを渡すのは早いし……まあ、定番ですまん。なんというか、告白の方に色々と持ってかれてな」

「う、うん……嬉しいよ……だって、一番のクリスマスプレゼントだもん」

 でも……貰ったら飛び跳ねちゃうなぁ、嬉しくて。

「綾はどうして?」

「もちろん、冬だからっていうのもあるし……冬馬君って持ってないよね?」

「ああ、あんまりしないかもな」

「やっぱり。でも、首を冷やしたらいけないんだよ?」

「わかった。綾のプレゼントじゃ、しないわけにいかないな」

「そういうことです」

「さて……帰るとするか」

「うん……少し名残惜しいけど」

「ああ、そうだな……でも、まだ先は長いんだ。今は、それくらいの方が良いのかもしれない」

「うん、そうかも」

 明日は会えるかな?とか。
 次はいつデートかな?とか。
 もう帰っちゃうんだとか。
 もっと一緒にいたいとか……。
 きっとそれは……今しか味わえないことなのかも。

「それが過ぎたら……また、新しい発見があるんじゃないか?」

「例えば?」

「そ、そりゃあ……同棲とか、新婚生活とか……」

「はぅ……」

「お、おい? 聞いた本人が照れるなよ!」

「し、仕方ないもん!」

 えへへ……楽しいなぁ。

 ずっと、このまま……こうしていられたら……。









 そう……それだけで良かったのに。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

どうしてもモテない俺に天使が降りてきた件について

塀流 通留
青春
ラブコメな青春に憧れる高校生――茂手太陽(もて たいよう)。 好きな女の子と過ごす楽しい青春を送るため、彼はひたすら努力を繰り返したのだが――モテなかった。 それはもうモテなかった。 何をどうやってもモテなかった。 呪われてるんじゃないかというくらいモテなかった。 そんな青春負け組説濃厚な彼の元に、ボクッ娘美少女天使が現れて―― モテない高校生とボクッ娘天使が送る青春ラブコメ……に見せかけた何か!? 最後の最後のどんでん返しであなたは知るだろう。 これはラブコメじゃない!――と <追記> 本作品は私がデビュー前に書いた新人賞投稿策を改訂したものです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

かつて僕を振った幼馴染に、お月見をしながら「月が綺麗ですね」と言われた件。それって告白?

久野真一
青春
 2021年5月26日。「スーパームーン」と呼ばれる、満月としては1年で最も地球に近づく日。  同時に皆既月食が重なった稀有な日でもある。  社会人一年目の僕、荒木遊真(あらきゆうま)は、  実家のマンションの屋上で物思いにふけっていた。  それもそのはず。かつて、僕を振った、一生の親友を、お月見に誘ってみたのだ。  「せっかくの夜だし、マンションの屋上で、思い出話でもしない?」って。  僕を振った一生の親友の名前は、矢崎久遠(やざきくおん)。  亡くなった彼女のお母さんが、つけた大切な名前。  あの時の告白は応えてもらえなかったけど、今なら、あるいは。  そんな思いを抱えつつ、久遠と共に、かつての僕らについて語りあうことに。  そして、皆既月食の中で、僕は彼女から言われた。「月が綺麗だね」と。  夏目漱石が、I love youの和訳として「月が綺麗ですね」と言ったという逸話は有名だ。  とにかく、月が見えないその中で彼女は僕にそう言ったのだった。  これは、家族愛が強すぎて、恋愛を諦めざるを得なかった、「一生の親友」な久遠。  そして、彼女と一緒に生きてきた僕の一夜の物語。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた

久野真一
青春
 最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、  幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。  堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。  猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。  百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。    そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。  男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。  とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。  そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から 「修二は私と恋人になりたい?」  なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。  百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。 「なれたらいいと思ってる」    少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。  食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。  恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。  そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。  夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと  新婚生活も満喫中。  これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、  新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。

将棋部の眼鏡美少女を抱いた

junk
青春
将棋部の青春恋愛ストーリーです

処理中です...