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それぞれの未来へ

遊園地は兄弟と姉妹で

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 終業式を終え、それから三日間はバイトに励み……。

 いよいよ、クリスマスイブの日を迎える。



「ほれ、行くぞ」

 昼飯を食べ終え、出かける準備を済ませる。

「い、いいのかな? 邪魔じゃないかな?」

「綾はそんな女の子じゃないさ。それに、俺だってお前を邪魔に思うわけがないだろうが」

「お兄……えへへ、仕方ないな~。ブラコンのお兄に付き合ってあげます!」

「へいへい、ありがとうございます」

 当初の予定を変更して、クリスマスイブのデートはそれぞれの兄妹を連れて行く。
 あの後、家に帰ってから気づいた……今日が平日だということに。
 うちは母親がいないし、親父は仕事で帰りが遅いし、麻里奈はまだ中学生だ。
 いつもは俺が一緒に過ごしていたからな。

「綾ちゃんの弟さんもくるんだよね?」

「ああ、一回あったろ? お前はお姉さんなんだからしっかりしないとな」

「わぁ~楽しみだなぁ。あの子、可愛かったもん」

 綾も帰ってから気づいたらしい。
 お母さんも仕事だし、お父さんは転勤、いつも綾が一緒に過ごしていたと。
 小学生だし、放っておくわけにはいかないしな。






 というわけで、待ち合わせ場所の駅に向かう。

「兄ちゃん!」

「おっと……でかくなったな?」

 走ってきた誠也を抱き上げる。

「ほんと!?」

「ああ、出会った頃より成長したな」

「にいちゃんみたいになれる!?」

「きちんと規則正しく生活して、好き嫌いをなくせばなれるんじゃないか?」

 俺は175センチだから、別に特別大きいわけではないし。

「ほら、誠也。先に挨拶でしょ? 麻里奈ちゃん、こんにちは」

「綾さん、こんにちは。今日はすみません」

「ううん、謝ることないよ」

「こ、こんにちは!」

「こんにちは、誠也君。今日はよろしくね」

「ふふ、誠也ったら照れちゃって」

「お、お姉ちゃん!?」

「安心しろ、誠也。精神年齢はお前とほとんど変わらん」

「お・に・い?」

「わ、悪かった」

「にいちゃんが押されてる……すげぇ」

「冬馬君、いこ」

 全員で電車に乗って、遊園地に向かう。






 遊園地に到着し、まずは散策をする。

「わぁ……何気に楽しみかも」

「お前も、来るのは久々か?」

「お母さんが死んでから来るの初めてかも」

「それもそっか……すまんな。俺が連れて行ってやるべきだった」

「べ、別に……お兄は、ちゃんと遊んでくれたし」

「ふふ、麻里奈ちゃん可愛い」

「あ、綾さん!」

「よーし! 今日は私がお姉ちゃんです!」

「えっ、えっと……お、お姉ちゃん」

「はぅ……冬馬君、これもらってもいい?」

 麻里奈を抱きしめながら、そんなことを言っている。

「おい? 小百合みたいなこというなよ」

「にいちゃん!」

 満面の笑みで誠也が抱きついてくる。

「へいへい、にいちゃんですよ」

「じゃあ……今日は兄弟と姉妹だね!」

「わ、わたし……お姉ちゃん欲しかったんです」

「僕もお兄ちゃん欲しかった!」

 ……まあ、無理もないよな。
 年頃の麻里奈が相談できる相手はいない。
 俺達は力になってやりたいが、女の子では恥ずかしいこともあるだろうし。

 誠也もお父さんがいない今は、男の子一人だ。
 色々と思うところはあるだろうな。

「安心しろ、誠也。俺がお前のにいちゃんになってやる」

「ほんと!? やったぁ!」

「と、冬馬君……それって」

「ひゅー! お兄格好いい!」

「ほら、とっとと行こうぜ」



 その後はアトラクションを楽しむ。

 ジェットコースターから始まり、空中ブランコ……。

 コーヒーカップで目を回し……休憩する。

「うげぇ……」

「と、冬馬君平気?」

「お、おう」  

「意外だったなぁ。冬馬君三半規管とか強そうなのに」

「それとはまた別らしいぞ?」

「そうなんだね……えへへ、こういうのも悪くないね」

 視線の先では、誠也と麻里奈が戯れている。

「綾、ありがとな」

「えっ?」

「普通の女の子だったら、クリスマスデートに妹なんか連れてきたら怒るって言われたよ」

「そんなこと……私だって、弟を連れてくるなんて聞いたことないって言われた」

「でも、誠也がいなくても……綾は良いって言ってくれるそうだ」

「それは……そうかも。でも、冬馬君だって言ってくれるでしょ?」

「まあ、そうかもな」

「あのさ……冬馬君が言ってくれたよね?」

「うん?」

「私達は、いわゆる一般的な高校生カップルとは違うかもって」

「ああ、言ったな」

「実はね、少しだけ悩んだことがあって……」

「ふむ……」

「あのね、別に嫌とかではないんだよ? ただ、これで良いのかなぁとか、周りと違くて変なのかなぁとか」

「いや、それは俺も思ったから。早く、その、なんだ……男女の関係になった方が良いんじゃないかとか。周りの話を聞いて焦ったりとか」

「そ、そうだったんだ」

「途中まではそう思ってたけど……今は、割と良いかなと思ってる。麻里奈も誠也も、俺の大事な人に変わりはない」

「私も……そういう冬馬君を好きになったんだって思ったから」

「俺もそうだよ」

「えへへ」

「お兄ー!? 次に行くよー!」

「お姉ちゃん! 早く早く!」

「やれやれ、ガキンチョは元気だねぇ」

「ふふ、私達だってまだまだ若いですよ」

 二人で手を繋いで、二人の元に行く。

 きっと、他所から見たら変なカップルなのかもしれない。

 だが、お互いに家族を大事にしてる人を好きになったんだ。

 だから、俺達はこれで良いんだと思う。
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