静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

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冬馬君は遅れたものを取り戻す

アキに提案

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 翌日、早速行動に移すことにする。

 期末試験も近いし、早めに動いた方が良さそうだ。


 昼休みにアキを連れて、例の教室で昼飯を食べることにする。

 気を使って、綾は教室で黒野と森川と食べるそうだ。

「なんだ? 珍しいこともあるもんだな?」

「よう、アキ。いや、ちと小耳に挟んでな」

「何かあったっけ?」

「ミスターコンテストの結果で、また告白されたんだろ?」

「一位のやつに言われたくないが……まあ、そうだな」

 ちなみに俺は告白されていない。
 おそらく、そういう扱いではない感じなのだろう。
 綾を大事にしてるというのがポイントだったらしいし。

「全部、断ったんだって?」

「まあな……前も言ったが、少し懲りたし」

「良いことだ。お前は女の子を傷つけないとはいえ、少々やりすぎだったからな」

「うっ……まあ、お前にはいう権利があるわな。助けてもらったし、お前は綾ちゃんに一途だしな」

「今年はどうするんだ? いつもならクリスマスになるとデートのハシゴが大変とか言ってたが?」

「あっ——そうか! 今年はなにもないのか! ……それはそれで楽かもな」

「ほう?」

「いや、実際に一人になったらよ……意外と楽なんだわ。ラインもそんなに見なくて良いし、電話もしなくて良いし。土日は時間ができたから、色々なことに挑戦できるしな」

「なるほど、何に挑戦してるんだ?」

「ひとまず、ジムに通い始めたぜ。冬馬にばっかり頼るのもよくないからな」

「お前はヒョロイからなぁー」

「ヒョロイとかいうな! 細身と言え!」

「へいへい、羨ましいこって。まあ、良いことだな」

「あとは、お前が好きだっていうアルザール戦記?だっけ?」

「おお、それがどうした? 興味あるなら貸そうか?」

「いや、自分で買ってみた。お前が言ってたろ? その一冊が次巻への影響を与えるってよ」

「アキ……! そうだよっ! たかが一冊、されど一冊だっ!  新刊を買うことで、部数が増えて、本の積み具合も変わり、本屋も潤い、また発注をし、重版されるんだっ!」

「お、おう」

「その結果! 作者はモチベーションが上がり、そして続巻も発売され、刊行ペースも上がりかもしれない! 本屋にも活気が出て、少しは潤うかもしれない! 知ってるか!? 二十年前から今日まで、二万二千あった本屋は半分らしいぞ!?」

「わ、わかった! わかったから!」

「さらには! 電子書籍の売り上げは関係ないらしい! 大事なのは紙媒体の売り上げだと!」

「か、紙を買う! 本屋で買う!」

「なら良し! ……あっ——すまん」

 つい熱くなってしまった。
 でも作者のあとがきに書いてあったんだ。
 紙が売れないと続刊が出ないって……。
 すでに好きな作品のいくつかが、それで打ち切りになっている。

「全く、お前も変わったよな。中学はスポーツマンで、カーストトップにいたってのに」

「あん? そうだったのか?」

「まあ……お前は、そんなの気にするタイプじゃなかったもんな。つるんで楽しい奴らと、ただ居ただけだし。というか、当の本人達って意外と気にしてないけどな。周りが勝手に決めつけてるだけだし」

 ふむ……これは使えるかもしれない。

「なあ、アキ」

「ん?」

「つまり、クリスマスとクリスマスイブが空いていると?」

「そうだよ。なんだよ、自慢か? 可愛い彼女と過ごすって」

「綾が可愛いことは間違いないし、イブは過ごすと思うが……中学の連中とクリスマスパーティーでもしないか?」

「それは剛真や智、飛鳥に小百合とかってことか?」

「ああ、そのメンツだな」

「まあ……悪くはねえな」

「原因の俺が言うのも何だが、今年になって仲直りっつーか……まあ、そんな感じだろ?」

「クク、そうだな」

「笑うなよ……でだ、来年になったら受験でそれどころじゃないだろうし。ここらで一回集まってワイワイやらないかと思ってな」

「あぁー、確かに。もうそんな機会はそうそうないか。ましてや六人が集まるとなると」

「まだ聞いてみないことにはわからないが、アキはそれで良いか?」

「おう、俺は全然良いぜ。どうせ暇してるしな」

「よし、決まりだな」

「おっと、早く食べようぜ。時間なくなっちまうよ」

 俺たちは急いで昼飯を食べる。



 そして部屋を出る前に、それぞれに連絡を入れておく。

 教室の席に戻ると……返信が来ていた。

『うむ! 了解したっ! とても良き提案だっ!』

 剛真よしと。

『まあ、良いでしょう。こんな機会もないですからね。楽しみにしてます』

 智も良しと。

『ヤッホー! 良いね良いねー! そういうの待ってたっ! 盛り上がっちゃうぞー!』

 飛鳥も問題なしと。

 そして……。

『冬馬、私のためよね? 早速行動に移してくれるなんて、相変わらず律儀な人ね。惚れちゃいそうよ……とまあ、冗談はさておき、本当にありがとう。まさか、クリスマスにアキに会える日が来るなんて思ってなかったから。それも、こんなに早くに。口実もいい感じだし、嘘はついてないし、素晴らしい提案だと思うわ。もちろん、私もアキだけでなく、みんなとバカをやれるのを楽しみにしているわね」

 ……よし、これで良いだろう。

 俺も、みんなとバカをやれるのを楽しみにしてるよ。
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