143 / 185
冬馬君は遅れたものを取り戻す
アキに提案
しおりを挟む
翌日、早速行動に移すことにする。
期末試験も近いし、早めに動いた方が良さそうだ。
昼休みにアキを連れて、例の教室で昼飯を食べることにする。
気を使って、綾は教室で黒野と森川と食べるそうだ。
「なんだ? 珍しいこともあるもんだな?」
「よう、アキ。いや、ちと小耳に挟んでな」
「何かあったっけ?」
「ミスターコンテストの結果で、また告白されたんだろ?」
「一位のやつに言われたくないが……まあ、そうだな」
ちなみに俺は告白されていない。
おそらく、そういう扱いではない感じなのだろう。
綾を大事にしてるというのがポイントだったらしいし。
「全部、断ったんだって?」
「まあな……前も言ったが、少し懲りたし」
「良いことだ。お前は女の子を傷つけないとはいえ、少々やりすぎだったからな」
「うっ……まあ、お前にはいう権利があるわな。助けてもらったし、お前は綾ちゃんに一途だしな」
「今年はどうするんだ? いつもならクリスマスになるとデートのハシゴが大変とか言ってたが?」
「あっ——そうか! 今年はなにもないのか! ……それはそれで楽かもな」
「ほう?」
「いや、実際に一人になったらよ……意外と楽なんだわ。ラインもそんなに見なくて良いし、電話もしなくて良いし。土日は時間ができたから、色々なことに挑戦できるしな」
「なるほど、何に挑戦してるんだ?」
「ひとまず、ジムに通い始めたぜ。冬馬にばっかり頼るのもよくないからな」
「お前はヒョロイからなぁー」
「ヒョロイとかいうな! 細身と言え!」
「へいへい、羨ましいこって。まあ、良いことだな」
「あとは、お前が好きだっていうアルザール戦記?だっけ?」
「おお、それがどうした? 興味あるなら貸そうか?」
「いや、自分で買ってみた。お前が言ってたろ? その一冊が次巻への影響を与えるってよ」
「アキ……! そうだよっ! たかが一冊、されど一冊だっ! 新刊を買うことで、部数が増えて、本の積み具合も変わり、本屋も潤い、また発注をし、重版されるんだっ!」
「お、おう」
「その結果! 作者はモチベーションが上がり、そして続巻も発売され、刊行ペースも上がりかもしれない! 本屋にも活気が出て、少しは潤うかもしれない! 知ってるか!? 二十年前から今日まで、二万二千あった本屋は半分らしいぞ!?」
「わ、わかった! わかったから!」
「さらには! 電子書籍の売り上げは関係ないらしい! 大事なのは紙媒体の売り上げだと!」
「か、紙を買う! 本屋で買う!」
「なら良し! ……あっ——すまん」
つい熱くなってしまった。
でも作者のあとがきに書いてあったんだ。
紙が売れないと続刊が出ないって……。
すでに好きな作品のいくつかが、それで打ち切りになっている。
「全く、お前も変わったよな。中学はスポーツマンで、カーストトップにいたってのに」
「あん? そうだったのか?」
「まあ……お前は、そんなの気にするタイプじゃなかったもんな。つるんで楽しい奴らと、ただ居ただけだし。というか、当の本人達って意外と気にしてないけどな。周りが勝手に決めつけてるだけだし」
ふむ……これは使えるかもしれない。
「なあ、アキ」
「ん?」
「つまり、クリスマスとクリスマスイブが空いていると?」
「そうだよ。なんだよ、自慢か? 可愛い彼女と過ごすって」
「綾が可愛いことは間違いないし、イブは過ごすと思うが……中学の連中とクリスマスパーティーでもしないか?」
「それは剛真や智、飛鳥に小百合とかってことか?」
「ああ、そのメンツだな」
「まあ……悪くはねえな」
「原因の俺が言うのも何だが、今年になって仲直りっつーか……まあ、そんな感じだろ?」
「クク、そうだな」
「笑うなよ……でだ、来年になったら受験でそれどころじゃないだろうし。ここらで一回集まってワイワイやらないかと思ってな」
「あぁー、確かに。もうそんな機会はそうそうないか。ましてや六人が集まるとなると」
「まだ聞いてみないことにはわからないが、アキはそれで良いか?」
「おう、俺は全然良いぜ。どうせ暇してるしな」
「よし、決まりだな」
「おっと、早く食べようぜ。時間なくなっちまうよ」
俺たちは急いで昼飯を食べる。
そして部屋を出る前に、それぞれに連絡を入れておく。
教室の席に戻ると……返信が来ていた。
『うむ! 了解したっ! とても良き提案だっ!』
剛真よしと。
『まあ、良いでしょう。こんな機会もないですからね。楽しみにしてます』
智も良しと。
『ヤッホー! 良いね良いねー! そういうの待ってたっ! 盛り上がっちゃうぞー!』
飛鳥も問題なしと。
そして……。
『冬馬、私のためよね? 早速行動に移してくれるなんて、相変わらず律儀な人ね。惚れちゃいそうよ……とまあ、冗談はさておき、本当にありがとう。まさか、クリスマスにアキに会える日が来るなんて思ってなかったから。それも、こんなに早くに。口実もいい感じだし、嘘はついてないし、素晴らしい提案だと思うわ。もちろん、私もアキだけでなく、みんなとバカをやれるのを楽しみにしているわね」
……よし、これで良いだろう。
俺も、みんなとバカをやれるのを楽しみにしてるよ。
期末試験も近いし、早めに動いた方が良さそうだ。
昼休みにアキを連れて、例の教室で昼飯を食べることにする。
気を使って、綾は教室で黒野と森川と食べるそうだ。
「なんだ? 珍しいこともあるもんだな?」
「よう、アキ。いや、ちと小耳に挟んでな」
「何かあったっけ?」
「ミスターコンテストの結果で、また告白されたんだろ?」
「一位のやつに言われたくないが……まあ、そうだな」
ちなみに俺は告白されていない。
おそらく、そういう扱いではない感じなのだろう。
綾を大事にしてるというのがポイントだったらしいし。
「全部、断ったんだって?」
「まあな……前も言ったが、少し懲りたし」
「良いことだ。お前は女の子を傷つけないとはいえ、少々やりすぎだったからな」
「うっ……まあ、お前にはいう権利があるわな。助けてもらったし、お前は綾ちゃんに一途だしな」
「今年はどうするんだ? いつもならクリスマスになるとデートのハシゴが大変とか言ってたが?」
「あっ——そうか! 今年はなにもないのか! ……それはそれで楽かもな」
「ほう?」
「いや、実際に一人になったらよ……意外と楽なんだわ。ラインもそんなに見なくて良いし、電話もしなくて良いし。土日は時間ができたから、色々なことに挑戦できるしな」
「なるほど、何に挑戦してるんだ?」
「ひとまず、ジムに通い始めたぜ。冬馬にばっかり頼るのもよくないからな」
「お前はヒョロイからなぁー」
「ヒョロイとかいうな! 細身と言え!」
「へいへい、羨ましいこって。まあ、良いことだな」
「あとは、お前が好きだっていうアルザール戦記?だっけ?」
「おお、それがどうした? 興味あるなら貸そうか?」
「いや、自分で買ってみた。お前が言ってたろ? その一冊が次巻への影響を与えるってよ」
「アキ……! そうだよっ! たかが一冊、されど一冊だっ! 新刊を買うことで、部数が増えて、本の積み具合も変わり、本屋も潤い、また発注をし、重版されるんだっ!」
「お、おう」
「その結果! 作者はモチベーションが上がり、そして続巻も発売され、刊行ペースも上がりかもしれない! 本屋にも活気が出て、少しは潤うかもしれない! 知ってるか!? 二十年前から今日まで、二万二千あった本屋は半分らしいぞ!?」
「わ、わかった! わかったから!」
「さらには! 電子書籍の売り上げは関係ないらしい! 大事なのは紙媒体の売り上げだと!」
「か、紙を買う! 本屋で買う!」
「なら良し! ……あっ——すまん」
つい熱くなってしまった。
でも作者のあとがきに書いてあったんだ。
紙が売れないと続刊が出ないって……。
すでに好きな作品のいくつかが、それで打ち切りになっている。
「全く、お前も変わったよな。中学はスポーツマンで、カーストトップにいたってのに」
「あん? そうだったのか?」
「まあ……お前は、そんなの気にするタイプじゃなかったもんな。つるんで楽しい奴らと、ただ居ただけだし。というか、当の本人達って意外と気にしてないけどな。周りが勝手に決めつけてるだけだし」
ふむ……これは使えるかもしれない。
「なあ、アキ」
「ん?」
「つまり、クリスマスとクリスマスイブが空いていると?」
「そうだよ。なんだよ、自慢か? 可愛い彼女と過ごすって」
「綾が可愛いことは間違いないし、イブは過ごすと思うが……中学の連中とクリスマスパーティーでもしないか?」
「それは剛真や智、飛鳥に小百合とかってことか?」
「ああ、そのメンツだな」
「まあ……悪くはねえな」
「原因の俺が言うのも何だが、今年になって仲直りっつーか……まあ、そんな感じだろ?」
「クク、そうだな」
「笑うなよ……でだ、来年になったら受験でそれどころじゃないだろうし。ここらで一回集まってワイワイやらないかと思ってな」
「あぁー、確かに。もうそんな機会はそうそうないか。ましてや六人が集まるとなると」
「まだ聞いてみないことにはわからないが、アキはそれで良いか?」
「おう、俺は全然良いぜ。どうせ暇してるしな」
「よし、決まりだな」
「おっと、早く食べようぜ。時間なくなっちまうよ」
俺たちは急いで昼飯を食べる。
そして部屋を出る前に、それぞれに連絡を入れておく。
教室の席に戻ると……返信が来ていた。
『うむ! 了解したっ! とても良き提案だっ!』
剛真よしと。
『まあ、良いでしょう。こんな機会もないですからね。楽しみにしてます』
智も良しと。
『ヤッホー! 良いね良いねー! そういうの待ってたっ! 盛り上がっちゃうぞー!』
飛鳥も問題なしと。
そして……。
『冬馬、私のためよね? 早速行動に移してくれるなんて、相変わらず律儀な人ね。惚れちゃいそうよ……とまあ、冗談はさておき、本当にありがとう。まさか、クリスマスにアキに会える日が来るなんて思ってなかったから。それも、こんなに早くに。口実もいい感じだし、嘘はついてないし、素晴らしい提案だと思うわ。もちろん、私もアキだけでなく、みんなとバカをやれるのを楽しみにしているわね」
……よし、これで良いだろう。
俺も、みんなとバカをやれるのを楽しみにしてるよ。
2
お気に入りに追加
193
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

どうしてもモテない俺に天使が降りてきた件について
塀流 通留
青春
ラブコメな青春に憧れる高校生――茂手太陽(もて たいよう)。
好きな女の子と過ごす楽しい青春を送るため、彼はひたすら努力を繰り返したのだが――モテなかった。
それはもうモテなかった。
何をどうやってもモテなかった。
呪われてるんじゃないかというくらいモテなかった。
そんな青春負け組説濃厚な彼の元に、ボクッ娘美少女天使が現れて――
モテない高校生とボクッ娘天使が送る青春ラブコメ……に見せかけた何か!?
最後の最後のどんでん返しであなたは知るだろう。
これはラブコメじゃない!――と
<追記>
本作品は私がデビュー前に書いた新人賞投稿策を改訂したものです。
かつて僕を振った幼馴染に、お月見をしながら「月が綺麗ですね」と言われた件。それって告白?
久野真一
青春
2021年5月26日。「スーパームーン」と呼ばれる、満月としては1年で最も地球に近づく日。
同時に皆既月食が重なった稀有な日でもある。
社会人一年目の僕、荒木遊真(あらきゆうま)は、
実家のマンションの屋上で物思いにふけっていた。
それもそのはず。かつて、僕を振った、一生の親友を、お月見に誘ってみたのだ。
「せっかくの夜だし、マンションの屋上で、思い出話でもしない?」って。
僕を振った一生の親友の名前は、矢崎久遠(やざきくおん)。
亡くなった彼女のお母さんが、つけた大切な名前。
あの時の告白は応えてもらえなかったけど、今なら、あるいは。
そんな思いを抱えつつ、久遠と共に、かつての僕らについて語りあうことに。
そして、皆既月食の中で、僕は彼女から言われた。「月が綺麗だね」と。
夏目漱石が、I love youの和訳として「月が綺麗ですね」と言ったという逸話は有名だ。
とにかく、月が見えないその中で彼女は僕にそう言ったのだった。
これは、家族愛が強すぎて、恋愛を諦めざるを得なかった、「一生の親友」な久遠。
そして、彼女と一緒に生きてきた僕の一夜の物語。
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話
水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。
そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。
凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。
「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」
「気にしない気にしない」
「いや、気にするに決まってるだろ」
ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様)
表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。
小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。

女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる