上 下
135 / 185
冬馬君は遅れたものを取り戻す

祭りの後の話

しおりを挟む
 文化祭の翌日、いつもの時間に駅へと到着する。

「あっ——冬馬君、おはよう」

「おう、おはよう。どうだった?」

「うん、後はお母さんがやるから気にしなくて良いって」

「そうか。まあ、専門家でもあるからな」

「こ、怖かったよ~! お母さんが、必ず後悔させてやるって……」

「うわー、そりゃ怖いわ。そういや、親父さんには? あと誠也は?」

「言わないでおこうって。心配するだろうし、もう終わったことでもあるからって」

「そっか……まあ、話し合って決めたら俺から言うことはないな」

「あっ、お母さんが冬馬君の予定を聞いてって……」

「ん?」

「是非、お礼がしたいって……」

「「いらんわ、そんなもん」」

「………おい?」

「えへへー、言うと思ったもん」

「まいったな……」

 まあ、綾が楽しそうだから良いか。



 電車を降りて、いつものように学校へ歩いていく。

「そういや、今更だが……」

「なぁに?」

「いや、一度も怖いって言ってなかったよな?」

 不安そうではあったが。

「ふえっ? ……ふふ、意外と鈍いところもあるんだね?」

「あん?」

「そんなの——冬馬君がいたからに決まってるよ」

 そう言い、目が眩むような笑顔を見せてくる。
 俺の脳内を刺激し、頭がクラクラしてくる……。

「そ、そうか」

「おや? 照れてますねー?」

「はいはい、照れてますよー」

 全く……敵わんぜ。


 学校に到着すると……。

「冬馬——!!」

「ウルセェ——!」

「いや、お前も煩いから」

「ったく、どうした?」

 アキと剛真という珍しい組み合わせだ。

「いや、たまたま一緒になってな。冬馬に話があってよ。剛真、お前からで良いぜ」

「あっ、もしかして……」

「ん?」

「ううん、どうぞ」

「ゴホン!……愛子さんとお付き合いをすることになった」

「「はい??」」

 俺とアキの声が重なる。

「う、うむ! 俺とてよくわからないのだが……後夜祭の後、家まで送ってくれと言われて……告白されてしまったのだっ!」

「「………まじか」」

「まじだ」

「ププッ! へんな三人! そっかぁ……あの後言えたんだ」

「いや、俺たちからしたらなぁ?」

「衝撃だよ! 事件だよ! かぁー! どいつもこいつも!」

「で、それを報告に?」

「う、うむ! 元はと言えば冬馬のおかげだからな。知り合ったのも、その先のアドバイスも……感謝する」

「そんなのお前が頑張ったからだよ。俺は何もしていない。ほら、頭を上げろって」

「ふっ、相変わらずの男よ。それでこそ、俺が認める数少ない男だ」

「ちなみに俺は?」

「答えた方がいいか?」

「いや、やめておく……ハァ、俺も彼女作るかね」

 ……小百合に聞いてみるか?
 まだ確信はないが……。


 そして、剛真はそれだけいうと走っていった。

「で、お前は?」

「ほら、行こうぜ。主役2人の登場だ」

「あん?」

「あっ——冬馬君! いこ!」

「おい、引っ張るなって!」


 綾に連れていかれ……下駄箱の先を見ると。

「あっ、忘れてた」

「お前って奴は……まあ、目的は果たしてるもんな」

「わぁ……! 冬馬君、おめでとう!」

「おう、ありがとな」

 そこにはミスターコンテスト優勝者として、俺のポスターが真ん中に貼られていた。

 すこし、いや、かなり恥ずかしいが……これで、煩い奴も減るだろう。

「冬馬君! すごいねっ! ぶっちぎりだよ~!」

「やれやれ、参ったぜ。二位の俺より1.5倍かよ」

 すると森川と黒野もやってくる。

「凄いじゃん!」

「まさかと思ったけど。綾、良かったわね?」

「うんっ! あっ——愛子っ! もう! すぐに言ってよ~!」

「そうよ。私だって、今さっき知ったんだから」

「いや~少し気恥ずかしかったというかー余韻に浸ってたというか……」

 そのまま三人で話しているので、俺はそっと離れる。

 すると……。

「あら、来たのね」

「おう、小百合」

「げげっ!」

「相変わらずアキは失礼ね。こんな美少女が現れたっていうのに」

「自分で言うなっ!」

「貴方だって自分でイケメンとか言ってるじゃない。ププッ……負けてるけどね」

「ぐぬぬ……!」

 相変わらず、こいつらは仲が良いんだか悪いんだか。
 小百合の件は、俺の気のせいだったか?

「でも、賭けは私の勝ちね?」

「くそっ! 優勝できなかったからな……!」

「おい? なにを勝手に巻き込んでいる?」

「いや、こいつが冬馬のがカッコいいしモテるって言うからよ……」

「あん?」

「ふふ、今回はお手柄だったわ。これで、何か一つ言うことを聞いてもらえるから」

「……まさか、そこまで計算していたとは」

 本当になんというか、抜け目がないな。
 利用された形だが……まあ、なんでもするって言ったのは俺だしな。
 それに、俺にも利はあったし。

「で、何がいいんだよ?」

「それは後でのお楽しみよ。ふふ、恐怖に怯えていなさい」

「クッ! 冬馬、どうやら俺の命はここまでのようだ。ハァ……教室行くわ」

「おう、骨は拾ってやる」

「冬馬?」

「おっと……」

「全く……さて、貴方に相談があるわ。乗ってくれるのよね?」

「ん? ああ、もちろんだ」

「じゃあ、あとで連絡するわ」

「あいよ、俺にできることならやるさ」

「こんな相談、貴方にしか出来ないわよ」

 そう言い、小百合も去っていった。

 俺も綾と合流して、教室へと向かう。

 さて……あの二人はどうなることやら。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R15】【第一作目完結】最強の妹・樹里の愛が僕に凄すぎる件

木村 サイダー
青春
中学時代のいじめをきっかけに非モテ・ボッチを決め込むようになった高校2年生・御堂雅樹。素人ながら地域や雑誌などを賑わすほどの美しさとスタイルを持ち、成績も優秀で運動神経も発達し、中でもケンカは負け知らずでめっぽう強く学内で男女問わずのモテモテの高校1年生の妹、御堂樹里。親元から離れ二人で学園の近くで同居・・・・というか樹里が雅樹をナチュラル召使的に扱っていたのだが、雅樹に好きな人が現れてから、樹里の心境に変化が起きて行く。雅樹の恋模様は?樹里とは本当に兄妹なのか?美しく解き放たれて、自由になれるというのは本当に良いことだけなのだろうか? ■場所 関西のとある地方都市 ■登場人物 ●御堂雅樹 本作の主人公。身長約百七十六センチと高めの細マッチョ。ボサボサ頭の目隠れ男子。趣味は釣りとエロゲー。スポーツは特にしないが妹と筋トレには励んでいる。 ●御堂樹里 本作のヒロイン。身長百七十センチにIカップのバストを持ち、腹筋はエイトパックに分かれる絶世の美少女。芸能界からのスカウト多数。天性の格闘センスと身体能力でケンカ最強。強烈な人間不信&兄妹コンプレックス。素直ではなく、兄の前で自分はモテまくりアピールをしまくったり、わざと夜に出かけてヤキモチを焼かせている。今回新たな癖に目覚める。 ●田中真理 雅樹の同級生で同じ特進科のクラス。肌質や髪の毛の性質のせいで不細工扱い。『オッペケペーズ』と呼ばれてスクールカースト最下層の女子三人組の一人。持っている素質は美人であると雅樹が見抜く。あまり思慮深くなく、先の先を読まないで行動してしまうところがある。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

俺の家には学校一の美少女がいる!

ながしょー
青春
※少しですが改稿したものを新しく公開しました。主人公の名前や所々変えています。今後たぶん話が変わっていきます。 今年、入学したばかりの4月。 両親は海外出張のため何年か家を空けることになった。 そのさい、親父からは「同僚にも同い年の女の子がいて、家で一人で留守番させるのは危ないから」ということで一人の女の子と一緒に住むことになった。 その美少女は学校一のモテる女の子。 この先、どうなってしまうのか!?

プレッシャァー 〜農高校球児の成り上がり〜

三日月コウヤ
青春
父親の異常な教育によって一人野球同然でマウンドに登り続けた主人公赤坂輝明(あかさかてるあき)。 父の他界後母親と暮らすようになり一年。母親の母校である農業高校で個性の強いチームメイトと生活を共にしながらありきたりでありながらかけがえのないモノを取り戻しながら一緒に苦難を乗り越えて甲子園目指す。そんなお話です *進行速度遅めですがご了承ください *この作品はカクヨムでも投稿しております

人違いで同級生の女子にカンチョーしちゃった男の子の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

家政婦さんは同級生のメイド女子高生

coche
青春
祖母から習った家事で主婦力抜群の女子高生、彩香(さいか)。高校入学と同時に小説家の家で家政婦のアルバイトを始めた。実はその家は・・・彩香たちの成長を描く青春ラブコメです。

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

処理中です...