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冬馬君は遅れたものを取り戻す

綾の気持ち

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 無事に文化祭も終わり、後夜祭を迎えました。

 そんな中、私はとあることに気付かされます。

「えっ!?」

「しー! 声が大きいって!」

「愛子、貴女の声のが大きいわ」

「やばっ……コホン、そういうわけで言ってみようかと思うんだ」

「へぇ~いつの間にそんなことに……」

 なんと、愛子が……剛真君に告白をすると言うのです。

「いや、アタシもさ~こんなことになるとは思ってなくて……」

「どこで意識したのかしら? 例の事件の後だって、そんなに変わってはなかったわよね?」

「まあねー……今回さ、文化祭を一緒に回らないかって誘われなかったんだよね」

「ん? ……誘われなかったの?」

 あれ? でも、一緒に回ったって……。

「そういうことね……計算だったのかしら?」

「いや、そんなわけないし。だったら少し怖いし」

「ごめんね、二人共……私、全然わかんない」

「つまりは、剛真君があえて誘わないことで、愛子の気を引こうとしたということね」

「あっ、そういうことね。でも、違ったの?」

「うん、自分のクラスの出し物や見廻り組のトップだったからねー。そっちまで意識がいかなかったみたいなー」

「へぇー、ということは……」

「うん、アタシから誘ったよー。その時に、なんかムカついてさー。なんで誘わないの!?って……まあ、そしたら自分の気持ちに気付いたっていうか……」

「愛子、可愛い!」

 普段見せない表情に、私は思わず抱きしめてしまいます。
 少しだけ、百合子さんの気持ちがわかるかも……なんてね。

「う、煩いし! 綾のが可愛いしっ! なんだ!? このマシュマロオッパイは!?」

「ちよっ!? やめてよぉ~!?」

「男子が近くにいなくてよかったわね」

「もう! えっと……なんの話をしてたんだっけ?」

「剛真君が、計算で誘わなかったわけじゃないってことよ」

「綾は計算とかしないもんねー」

「吉野も頭は回るけど、基本的には真っ直ぐなタイプだものね」

「えっと……褒められてるの?」

「「もちろん」」

「綾には、ああいう立ち回りが出来る人じゃないと無理だよねー。綾の気持ちを考慮しつつ、大胆な行動に出れるし」

「きっと、吉野以外だったら上手くいかないわ。まず、周りの圧力に潰されるわね」

「だよねー。もしくは脅されたり……でも、その心配もないし」

「むしろ返り討ちね」

「えっと……急にどうしたの?」

 今までも褒めてくれることはあったけど……。

「いや~流石に、あんなもの見せられちゃねー」

「不覚にも、恋愛がしたくなったわ。あのミスターコンテストの吉野には」

「あっ——あぅぅ……」

 お、思い出したら恥ずかしくなってきちゃった……。

「アタシも迷ってたんだけど……あれを見てたら勇気出てきてさ。あんな大勢の前で、しかも動画まで撮られて……綾に愛の告白をするなんて、正直言ってカッコいいじゃん」

「私も、思わずカッコいいって思ったわ。今時、ああいう男の人っていないし」

「う、うん……すっごく嬉しかった」

「そうだよねー、あれは女子として嬉しいよねー。まあ、そんなわけでアタシも告白でもしてこようかと思ってさ」

「そ、そうなんだ」

 冬馬君はすごい。
 私を喜ばせるだけでなく、愛子にも勇気を与えてくれた。
 私はしてもらってばっかりで、冬馬君に何をしてあげられるかな?
 今回のストーカーの件だって、冬馬君が守ってくれた……。
 だから、私は不安だったけど怖くはなかった。
 冬馬君が守ってくれるって信じてたから。

「今ならちょうどジンクスもあるし、告白するにはうってつけよね」

「それもあるけど……あの人、アタシが告白しないと進まない気がして……それに、最初に好きって言ってくれたから……それが、どれだけの勇気がいったのか……だから、次はアタシの番でしょってね」

 冬馬君だって言ってた。
 俺だって照れ臭いって……それでもきちんと言ってくれた。
 いつだってそう……きちんと言葉にしてくれる。
 私は言えてる? きちんと伝えられてる? すごく好きってことを……。

「愛子……そうだよね。ところで、ジンクスって?」

「後夜祭に告白して成功したカップルは、ずっと一緒にいられるっていう伝説があるのよ」

「へぇ……素敵だね」

 冬馬君とずっと一緒……えへへ、そうなったらいいなぁ。
 冬馬君も、そう思ってくれてたら良いなぁ。

「というわけで……アタシは突撃してくるねー!」

 愛子は自分の両頬を叩き気合いを入れ、剛真君の元に走っていきました。

「……私も恋愛しようかな」

「へっ?」

「まずは勉強して良い大学入ってからにしようと思ってだけど……綾とかを見ていると、きっと今しかない瞬間なのよね……それに綾や吉野は成績も上がってるし。お互いに高めあえればいいのよね」

「お、応援するよっ!」

「ふふ、ありがとう。少し考えてみるわ」

「うんっ! ……告白かぁ」

「どうかしたの?」

「私って告白したことなくて……」

「ああ、しようと思ったら先にされたって言ってたわね」

「うん、それはそれで嬉しかったんだけど……」

「……言ってきたら?」

「ふえっ?」

「別に付き合っていたって告白しても良いじゃない。ジンクスのこともあるし、吉野は喜ぶわよ?」

「そ、そうかな?」

「あいつ、綾にベタ惚れだからね」

「そ、そんな風に見える……?」

「もちろんよ——みんなが思ってるわ」

「あぅぅ……」

「ほら、今がチャンスよ。兄さんと話してるけど、近づけば空気を読むでしょう」

「わ、わかった! 私、言ってくるね!」

 私も両頬を叩き気合い入れ、冬馬君の元に駆け出します。

 冬馬君、貴方に好きって告白をします。

 これからもずっと一緒いたいって気持ちを込めて……。
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