静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中

文字の大きさ
上 下
124 / 185
冬馬君は遅れたものを取り戻す

文化祭一日目~その2~

しおりを挟む
その後も、客を撃退しつつ、接客を続ける。

そして、お昼の前に少し休憩を取ることになった。

「綾はどうする?」

「わ、私は……裏で休憩してるね……」

綾は人気がえげつなかったので、その疲労度は他の人とは桁が違う。
なので、疲れてしまったようだな。

「そうか……俺は確認と、妹達を迎えに行ってくる。俺が戻るまでに、表に出るんじゃないぞ?」

「うん、わかった……」

あらら……相当疲れてるな。
何か、飲み物でも買ってくるとするか。
皆にその場を任せて、俺は教室から出る。



……なんか、めちゃくちゃ見られてるな……。

「ねえねえ!あれって!?」

「そうだよねっ!私あの人に入れたよ!」

「最近いないタイプの男前だよね!」

「うんうん!ガタイも良いし!」

「でも、やっぱり……」

「「「「「彼女一筋の硬派な男って素敵!!!!!」」」」」

……居心地が悪いな。
いや、しかし……これも綾のためだ。
俺がコンテストでそこそこの結果が出せれば、周囲も認めてくれるだろう。


一階の入り口に着くと……。

「おいおい……恥ずいな……」

俺の執事服姿の写真がデカデカと張り出されていた。
確か選考委員会っていうのがあって……残った10名から選ばれるんだっけ?
周りのざわつきを無視して、それらを眺めてみる……。

「おっ……以前、俺に絡んできた奴もいるな」

確か、綾に何度もしつこく告白した奴だ。
名前は……澤田拓海といったか?
しかも……あいつ——俺の悪口を書き込んだ張本人らしい。
証拠はないけど、小百合が調べた感じではそうだったらしい。

「もしや……あいつがストーカーなのか?」

最近は、近寄らなくなったとは聞いていたが……。
悪口も書き込めず、綾には近づけないから……とか?
いやしかし……それだけでは……まあ、用心はしておくとするか。

「さて……おかしいな。さっき着いたって連絡があったんたが……」

「やめてください!」

ん?なんだ?後ろを振り返ると……。
ガラの悪そうな連中に、女子が絡まれているが……あれは……。

「いいじゃんよー。こんなところに一人で来てるんだからさー」

「そうだぜ?ナンパしてくれって言ってるようなものじゃん?」

「はぁ!?私は弟に会いに……」

瞬時に判断した俺は、そいつらに近づき……。

「おい」

「あぁ!?イッ——!?」

肩に手を置き……力を込める!

「ここはナンパする場所じゃねえぞ?他の客に迷惑だ」

「な、なんだ!?てめーは!?」

「俺と待ち合わせしてる女性だが?」

「え?え?」

「悪かった!なっ!?」

「何ビビってんだよ?」

「バカ!こいつ力が……イテテ!?」

そいつは耐えきれずにしゃがみ込んだ。

「さあ?どうする?」

「わ、わかった!謝るから!」

「す、すみませんでした!」

「ほら、さっさと——消えろ」

「ヒィ!?」

「こいつなんか毛色が違うぞ!?」

そう言い残して、そいつらは帰って行った。

「か、カッコいい——!!」

「にいちゃんすげー!!」

「あれって写真の人だよね!?入れちゃおう!」

……どうやら目立ちすぎたな。

「あ、あのぅ……?」

「啓介に会いに来たんですよね?」

「え?弟のこと知ってるの……?いや、その前に……助けてくれてありがとうございました」

「いえいえ、同じバイトの人間ですからね」

「え?…………吉野君!?」

「ええ、そうです。どうも、恵美さん」

「へぇ~……男前さんなんだね……あれ?あの写真の人……」

「恥ずかしながら、ミスターコンテストに出るもので……」

「じゃあ、私も入れちゃおうっと」

「ど、どうもです……内緒にしてくださいね?」

「友野さんとか店長さんに?」

「ええ、からかわれるので……」

「うーん……無駄だと思うけど……」

「はい?」

「ううん、わかったわ。私は言わない」

………何か含みのある言い方だなぁ……。
ん?メールがきたな……。
お父さんがトイレに行ってるから、私も行ってきます。
お父さんはアレなそうなので、少し時間がかかるそうです。

「なるほど……じゃあ、クラスに案内しますよ」

「え?いいの?」

「ええ、またナンパされたら大変ですからね。大事な友達のお姉さんですし」

「ふふ……啓介も言ってたし、店長さんや友野さんも言ってたけど……本当に良い男ね?」

「何を言っているんだか……まあ……可愛い彼女のために、そうでありたいとは思っていますけどね」

「あっ、聞いてるわよ。啓介から……とっても可愛くて。いつもラブラブだって」

「ハハ……あんにゃろうめ……」

そんな会話をしつつ、教室へ戻っていると……。

「あっ——!!冬馬!!」

「けげっ!?飛鳥!?」

「知らない女……浮気だっ!」

「違うわ!ボケェ!」

「綾ちゃんに言わなきゃ……!綾ちゃーん!!」

「待て待てい!!」

だが、陸上部エースのスピードは凄まじく……。
あっという間に消えて行った……。

「えっと……ごめんなさいね?」

「いえ、お構いなく。ああいう奴なんで」

恵美さんを置いていくわけにはいかないし……。
まあ、綾も信じたりしないだろうよ。



と、思っていましたが。

「と、と、冬馬君!?その可愛い人は誰なの!?」

俺は襟を掴まれ……締められています。

「お、落ち着けって!なっ!?」

「なんかヒーローみたいに守ったって!名前で呼んで歩いてたって!」

「飛鳥——!!てめー!」

「へへー、バイバーイ!」

「どうなの!?」

これは疑ってるとかではないな……。
興奮して、よくわかってない感じだ。
ならば……これしかあるまい。

「どうもしねぇ——俺が好きなのはお前だけだ」

「ふえっ?……あっ——」

耳元で囁くと……綾が崩れ落ちた。

「さて……落ち着いたか?」

「う、うん……あぅぅ……ごめんなさい!あ、あのね、別に」

「わかってる。綾が疑ってないことは。俺としては——可愛い綾が見れて大満足だ」

「はぅ……ずるいです」

「はわぁ~……すごいわね」

「ほら、この方が新しいバイトの人だ。そんでもって啓介のお姉さんでもある」

「そ、そうだったんだ……ごめんなさい!えっと……初めまして、清水綾っていいます」

「こちらこそごめんねー。田中恵美です」

「で、肝心のあいつは?」

「えっと……確か、材料が足りなくて……」

「なるほど……恵美さん、ここで待っていると良いですよ」

「そうですよ!こんな可愛い方ですもんね!」

「本気で言ってそうね……そうさせてもらうわ。ありがとうございます」

「では、俺は妹達を迎えに行ってきます」

俺は再び、待ち合わせ場所に向かうのだった……。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

どうしてもモテない俺に天使が降りてきた件について

塀流 通留
青春
ラブコメな青春に憧れる高校生――茂手太陽(もて たいよう)。 好きな女の子と過ごす楽しい青春を送るため、彼はひたすら努力を繰り返したのだが――モテなかった。 それはもうモテなかった。 何をどうやってもモテなかった。 呪われてるんじゃないかというくらいモテなかった。 そんな青春負け組説濃厚な彼の元に、ボクッ娘美少女天使が現れて―― モテない高校生とボクッ娘天使が送る青春ラブコメ……に見せかけた何か!? 最後の最後のどんでん返しであなたは知るだろう。 これはラブコメじゃない!――と <追記> 本作品は私がデビュー前に書いた新人賞投稿策を改訂したものです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

かつて僕を振った幼馴染に、お月見をしながら「月が綺麗ですね」と言われた件。それって告白?

久野真一
青春
 2021年5月26日。「スーパームーン」と呼ばれる、満月としては1年で最も地球に近づく日。  同時に皆既月食が重なった稀有な日でもある。  社会人一年目の僕、荒木遊真(あらきゆうま)は、  実家のマンションの屋上で物思いにふけっていた。  それもそのはず。かつて、僕を振った、一生の親友を、お月見に誘ってみたのだ。  「せっかくの夜だし、マンションの屋上で、思い出話でもしない?」って。  僕を振った一生の親友の名前は、矢崎久遠(やざきくおん)。  亡くなった彼女のお母さんが、つけた大切な名前。  あの時の告白は応えてもらえなかったけど、今なら、あるいは。  そんな思いを抱えつつ、久遠と共に、かつての僕らについて語りあうことに。  そして、皆既月食の中で、僕は彼女から言われた。「月が綺麗だね」と。  夏目漱石が、I love youの和訳として「月が綺麗ですね」と言ったという逸話は有名だ。  とにかく、月が見えないその中で彼女は僕にそう言ったのだった。  これは、家族愛が強すぎて、恋愛を諦めざるを得なかった、「一生の親友」な久遠。  そして、彼女と一緒に生きてきた僕の一夜の物語。

将棋部の眼鏡美少女を抱いた

junk
青春
将棋部の青春恋愛ストーリーです

自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話

水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。 そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。 凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。 「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」 「気にしない気にしない」 「いや、気にするに決まってるだろ」 ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様) 表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。 小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...