123 / 185
冬馬君は遅れたものを取り戻す
文化祭一日目~その一~
しおりを挟む
学校に着いた俺達は、それぞれ急いで着替えに行く。
女子は別の部屋、男子は教室で着替える。
「うわー!冬馬君、カッコいいね!」
「そうか?啓介も似合ってるぞ?」
……何というか、弱々しい感じが逆に。
小百合辺りが見たら喜びそうだな……材料にされる前に口を塞いておくか。
「そ、そうかな……?」
「ああ、お姉さんが来るんだろう?見せてやるといいさ」
「うぅー……絶対笑われるよ……冬馬君は?」
「妹と親父が来ることになってるよ。あっ——会ったことあったっけ?」
「話したことはないけど、顔はわかるよ。この間の運動会に来てたもんね?」
「そういや、そうだったな。さて……俺達は給仕係か……」
「うん、そうだよ。裏で料理を作ってくれる人……まあ、メインの食べ物はレンジで温めたりするヤツだけど……コーヒーとか紅茶、ジュースなんかを運んだりするね」
「俺はこういう行事に参加したことがないから勝手がわからん。啓介は一年の時は何をしたんだ?」
バイトのラーメン屋とか違うだろうしな……。
これはあくまでもイベントというか……。
「……そうなんだね。僕は外の屋台で飲食店をしてたよ。たこ焼きとか焼きそばとか」
「じゃあ、先輩だな。俺は、綾に群がる男を蹴散らせばいいのか?」
「ダメだよ!いや、ダメじゃないのかな?それくらいしないと……僕、確認してくる!」
そう言って責任者の博に話しかけている。
……すっかり、リア充と呼ばれている奴にも平気で話しかけるようになったな。
……俺も、最近になって気づいたが……。
別に趣味嗜好や性格や見た目が違うからって、仲良くできないわけじゃないんだよ。
リア充と非リア充とか、陰キャとか陽キャとか分けるからおかしくなるんだよな。
「いやはや……啓介も変わっていってるな……人のこと言えないけど……あっ——」
し、しまったぁぁ——!!
綾のストーカーの件ですっかり忘れてたっ!
博と黒野、俺と綾でダブルデートをするって約束をしてた……!
これは後で謝らないとなぁ……。
その後、綾達も教室へ戻ってきて最終確認となる。
もちろん、その際にひとしきり眺めたことは言うまでもない。
「あぅぅ……」
「悪かったよ、綾」
「み、見過ぎだよぉ~」
「……すまん——やめられそうにない」
「ふえ?」
「はい、アナタ達。もうすぐ始まるからね」
「黒野……俺は何処までなら殺ってもいい?」
「今、絶対に字が違ったわよね?ハァ……まあ、お触りはもちろんつまみ出す。ナンパも嫌がってるならダメ。会話くらいは許しなさい。写真はダメ、色々と問題も多いから。まあ、眺められるのは……我慢しなさい。そんな怖い顔しないでよ……わ、私が決めたわけじゃないし」
「クッ!?会話を許すと……?眺める……我慢できるだろうか?」
「と、冬馬君……」
綾が心配そうな表情をしている……バカか!
綾が楽しければ、俺の感情など二の次だっ!
「綾、平気だ。ただ、少しでも嫌だと思ったら言うといい。生きていることを後悔させてやる」
「え、えっと……ほどほどにね……?」
そして、文化祭が幕を開けた。
すぐさま、戦場となる。
「ご主人様、いらっしゃいませ」
「うわぁー!?めっちゃ可愛いメイドさんだ!ねえねえ!?君、電話番号を」
「お客様——当店はそのような場所ではございません」
「ヒィ!?」
「と、冬馬君……」
「節度を守ってくれますか?」
「はいっ!守らせて頂きます!な、眺めるのは……?」
「……節度を持つならば」
「もちろんです!」
次のは……手強そうだな。
大柄でガラの悪そうな男が入ってきた。
「おい、良い女がいるな」
……はい、失格。
「おい、貴様は帰れ」
「あぁ!?こっちは客だぞ!?」
「あぁ?ハァ……」
肩を掴む……ゆっくりと力を入れて……!
「ガッ!?」
「まあまあ、お客さん」
「ガァァ!?い、いてぇ!?」
「ほらほら、他のお客さんに迷惑ですから」
「イテテッ!?わ、わかったから!」
「はい?何がですか?」
「あ、謝るから!ご、ごめんなさい!」
「はい——平和が一番ですからね」
「ヒィ!?」
最後にドスを効かせると、男は去っていった。
……ちとやり過ぎたか?
「にいちゃん!カッケー!」
「そうだ!そうだ!」
「メイド喫茶舐めんなー!」
……どうやら、概ね好評のようだ。
メイド喫茶というものにも、最低限のマナーはあるようだな。
「あ、あの……」
俺の執事服の端っこを摘みながら、綾が頬を染めている。
……可愛いな、おい……なんだこれ。
「お嬢様、ご無事でなによりです」
「ひゃい!?は、はぅぅ……」
「メイドさんがデレたぞ!?」
「羨ましい!だが、ナイスだ!」
「けしからん!」
「あぅぅ……恥ずかしぃ……」
……いつもなら蹴散らすところだが、今日は勘弁してやるか。
というか……俺の彼女が可愛すぎしないか?
その後も、綾は大人気で指名がばんばんやってくる。
もちろん、迷惑な奴らは排除している。
そして……テロが起きた。
「えっと……おいしくなぁ~れっ!」
「グハッ!?」
「ゴフッ!?」
「カハッ!?」
綾の萌えに、男達が悶える。
……俺?俺は歯を食いしばって耐えている……!
……俺も、後でやってもらおうっと……。
ただ……その後、何故が予想外の展開になってしまった。
「いらっしゃいませ、お嬢様。お席にご案内いたしますね」
「は、はぃ……」
「か、カッコいい……男前の執事さん……」
「むぅ……ほら、こうなる。冬馬君、カッコいいもん……」
そう、メイド喫茶として出店しているのだが……。
もちろん、それ目当ての客が多いのだが……。
先程から、何故が女性客が増え始めたのだ。
「安心しろ、綾——俺の目にはお前しか映らない」
「ふえ?……あ、ありがとうございます……」
「きゃー!?」
「発言まで男前だわ!?」
「彼女持ちって書いてあったけど……良い!」
「大事にされたいっ!」
「私、あの人に投票する!」
「はい?お嬢様方、どういうことでしょうか?」
「え?あ、あの!ミスターコンテストに出るんですよね!?」
「ええ、そうですね」
「入り口に写真が貼ってあって……それ見てきました!」
……なるほど、小百合のやつか。
そういえば、宣材写真がどうとか言っていたな。
後で、確認しに行くとするか。
休憩時間になったら、親父と麻里奈を迎えに行くしな。
女子は別の部屋、男子は教室で着替える。
「うわー!冬馬君、カッコいいね!」
「そうか?啓介も似合ってるぞ?」
……何というか、弱々しい感じが逆に。
小百合辺りが見たら喜びそうだな……材料にされる前に口を塞いておくか。
「そ、そうかな……?」
「ああ、お姉さんが来るんだろう?見せてやるといいさ」
「うぅー……絶対笑われるよ……冬馬君は?」
「妹と親父が来ることになってるよ。あっ——会ったことあったっけ?」
「話したことはないけど、顔はわかるよ。この間の運動会に来てたもんね?」
「そういや、そうだったな。さて……俺達は給仕係か……」
「うん、そうだよ。裏で料理を作ってくれる人……まあ、メインの食べ物はレンジで温めたりするヤツだけど……コーヒーとか紅茶、ジュースなんかを運んだりするね」
「俺はこういう行事に参加したことがないから勝手がわからん。啓介は一年の時は何をしたんだ?」
バイトのラーメン屋とか違うだろうしな……。
これはあくまでもイベントというか……。
「……そうなんだね。僕は外の屋台で飲食店をしてたよ。たこ焼きとか焼きそばとか」
「じゃあ、先輩だな。俺は、綾に群がる男を蹴散らせばいいのか?」
「ダメだよ!いや、ダメじゃないのかな?それくらいしないと……僕、確認してくる!」
そう言って責任者の博に話しかけている。
……すっかり、リア充と呼ばれている奴にも平気で話しかけるようになったな。
……俺も、最近になって気づいたが……。
別に趣味嗜好や性格や見た目が違うからって、仲良くできないわけじゃないんだよ。
リア充と非リア充とか、陰キャとか陽キャとか分けるからおかしくなるんだよな。
「いやはや……啓介も変わっていってるな……人のこと言えないけど……あっ——」
し、しまったぁぁ——!!
綾のストーカーの件ですっかり忘れてたっ!
博と黒野、俺と綾でダブルデートをするって約束をしてた……!
これは後で謝らないとなぁ……。
その後、綾達も教室へ戻ってきて最終確認となる。
もちろん、その際にひとしきり眺めたことは言うまでもない。
「あぅぅ……」
「悪かったよ、綾」
「み、見過ぎだよぉ~」
「……すまん——やめられそうにない」
「ふえ?」
「はい、アナタ達。もうすぐ始まるからね」
「黒野……俺は何処までなら殺ってもいい?」
「今、絶対に字が違ったわよね?ハァ……まあ、お触りはもちろんつまみ出す。ナンパも嫌がってるならダメ。会話くらいは許しなさい。写真はダメ、色々と問題も多いから。まあ、眺められるのは……我慢しなさい。そんな怖い顔しないでよ……わ、私が決めたわけじゃないし」
「クッ!?会話を許すと……?眺める……我慢できるだろうか?」
「と、冬馬君……」
綾が心配そうな表情をしている……バカか!
綾が楽しければ、俺の感情など二の次だっ!
「綾、平気だ。ただ、少しでも嫌だと思ったら言うといい。生きていることを後悔させてやる」
「え、えっと……ほどほどにね……?」
そして、文化祭が幕を開けた。
すぐさま、戦場となる。
「ご主人様、いらっしゃいませ」
「うわぁー!?めっちゃ可愛いメイドさんだ!ねえねえ!?君、電話番号を」
「お客様——当店はそのような場所ではございません」
「ヒィ!?」
「と、冬馬君……」
「節度を守ってくれますか?」
「はいっ!守らせて頂きます!な、眺めるのは……?」
「……節度を持つならば」
「もちろんです!」
次のは……手強そうだな。
大柄でガラの悪そうな男が入ってきた。
「おい、良い女がいるな」
……はい、失格。
「おい、貴様は帰れ」
「あぁ!?こっちは客だぞ!?」
「あぁ?ハァ……」
肩を掴む……ゆっくりと力を入れて……!
「ガッ!?」
「まあまあ、お客さん」
「ガァァ!?い、いてぇ!?」
「ほらほら、他のお客さんに迷惑ですから」
「イテテッ!?わ、わかったから!」
「はい?何がですか?」
「あ、謝るから!ご、ごめんなさい!」
「はい——平和が一番ですからね」
「ヒィ!?」
最後にドスを効かせると、男は去っていった。
……ちとやり過ぎたか?
「にいちゃん!カッケー!」
「そうだ!そうだ!」
「メイド喫茶舐めんなー!」
……どうやら、概ね好評のようだ。
メイド喫茶というものにも、最低限のマナーはあるようだな。
「あ、あの……」
俺の執事服の端っこを摘みながら、綾が頬を染めている。
……可愛いな、おい……なんだこれ。
「お嬢様、ご無事でなによりです」
「ひゃい!?は、はぅぅ……」
「メイドさんがデレたぞ!?」
「羨ましい!だが、ナイスだ!」
「けしからん!」
「あぅぅ……恥ずかしぃ……」
……いつもなら蹴散らすところだが、今日は勘弁してやるか。
というか……俺の彼女が可愛すぎしないか?
その後も、綾は大人気で指名がばんばんやってくる。
もちろん、迷惑な奴らは排除している。
そして……テロが起きた。
「えっと……おいしくなぁ~れっ!」
「グハッ!?」
「ゴフッ!?」
「カハッ!?」
綾の萌えに、男達が悶える。
……俺?俺は歯を食いしばって耐えている……!
……俺も、後でやってもらおうっと……。
ただ……その後、何故が予想外の展開になってしまった。
「いらっしゃいませ、お嬢様。お席にご案内いたしますね」
「は、はぃ……」
「か、カッコいい……男前の執事さん……」
「むぅ……ほら、こうなる。冬馬君、カッコいいもん……」
そう、メイド喫茶として出店しているのだが……。
もちろん、それ目当ての客が多いのだが……。
先程から、何故が女性客が増え始めたのだ。
「安心しろ、綾——俺の目にはお前しか映らない」
「ふえ?……あ、ありがとうございます……」
「きゃー!?」
「発言まで男前だわ!?」
「彼女持ちって書いてあったけど……良い!」
「大事にされたいっ!」
「私、あの人に投票する!」
「はい?お嬢様方、どういうことでしょうか?」
「え?あ、あの!ミスターコンテストに出るんですよね!?」
「ええ、そうですね」
「入り口に写真が貼ってあって……それ見てきました!」
……なるほど、小百合のやつか。
そういえば、宣材写真がどうとか言っていたな。
後で、確認しに行くとするか。
休憩時間になったら、親父と麻里奈を迎えに行くしな。
1
お気に入りに追加
191
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
俺の高校生活がラブコメ的な状況になっている件
ながしょー
青春
高校入学を前に両親は長期海外出張。
一人暮らしになるかと思いきや、出発当日の朝、父からとんでもないことを言われた。
それは……
同い年の子と同居?!しかも女の子!
ただえさえ、俺は中学の頃はぼっちで人と話す事も苦手なのだが。
とにかく、同居することになった子はとてつもなく美少女だった。
これから俺はどうなる?この先の生活は?ラブコメ的な展開とかあるのか?!
「俺の家には学校一の美少女がいる!」の改稿版です。
主人公の名前やもしかしたら今後いろんなところが変わってくるかもしれません。
話もだいぶ変わると思います。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしてもモテない俺に天使が降りてきた件について
塀流 通留
青春
ラブコメな青春に憧れる高校生――茂手太陽(もて たいよう)。
好きな女の子と過ごす楽しい青春を送るため、彼はひたすら努力を繰り返したのだが――モテなかった。
それはもうモテなかった。
何をどうやってもモテなかった。
呪われてるんじゃないかというくらいモテなかった。
そんな青春負け組説濃厚な彼の元に、ボクッ娘美少女天使が現れて――
モテない高校生とボクッ娘天使が送る青春ラブコメ……に見せかけた何か!?
最後の最後のどんでん返しであなたは知るだろう。
これはラブコメじゃない!――と
<追記>
本作品は私がデビュー前に書いた新人賞投稿策を改訂したものです。
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる