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冬馬君は遅れたものを取り戻す

文化祭一日目~その一~

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学校に着いた俺達は、それぞれ急いで着替えに行く。

女子は別の部屋、男子は教室で着替える。

「うわー!冬馬君、カッコいいね!」

「そうか?啓介も似合ってるぞ?」

……何というか、弱々しい感じが逆に。
小百合辺りが見たら喜びそうだな……材料にされる前に口を塞いておくか。

「そ、そうかな……?」

「ああ、お姉さんが来るんだろう?見せてやるといいさ」

「うぅー……絶対笑われるよ……冬馬君は?」

「妹と親父が来ることになってるよ。あっ——会ったことあったっけ?」

「話したことはないけど、顔はわかるよ。この間の運動会に来てたもんね?」

「そういや、そうだったな。さて……俺達は給仕係か……」

「うん、そうだよ。裏で料理を作ってくれる人……まあ、メインの食べ物はレンジで温めたりするヤツだけど……コーヒーとか紅茶、ジュースなんかを運んだりするね」

「俺はこういう行事に参加したことがないから勝手がわからん。啓介は一年の時は何をしたんだ?」

バイトのラーメン屋とか違うだろうしな……。
これはあくまでもイベントというか……。

「……そうなんだね。僕は外の屋台で飲食店をしてたよ。たこ焼きとか焼きそばとか」

「じゃあ、先輩だな。俺は、綾に群がる男を蹴散らせばいいのか?」

「ダメだよ!いや、ダメじゃないのかな?それくらいしないと……僕、確認してくる!」

そう言って責任者の博に話しかけている。
……すっかり、リア充と呼ばれている奴にも平気で話しかけるようになったな。
……俺も、最近になって気づいたが……。
別に趣味嗜好や性格や見た目が違うからって、仲良くできないわけじゃないんだよ。
リア充と非リア充とか、陰キャとか陽キャとか分けるからおかしくなるんだよな。

「いやはや……啓介も変わっていってるな……人のこと言えないけど……あっ——」

し、しまったぁぁ——!!
綾のストーカーの件ですっかり忘れてたっ!
博と黒野、俺と綾でダブルデートをするって約束をしてた……!
これは後で謝らないとなぁ……。




その後、綾達も教室へ戻ってきて最終確認となる。
もちろん、その際にひとしきり眺めたことは言うまでもない。

「あぅぅ……」

「悪かったよ、綾」

「み、見過ぎだよぉ~」

「……すまん——やめられそうにない」

「ふえ?」

「はい、アナタ達。もうすぐ始まるからね」

「黒野……俺は何処までなら殺ってもいい?」

「今、絶対に字が違ったわよね?ハァ……まあ、お触りはもちろんつまみ出す。ナンパも嫌がってるならダメ。会話くらいは許しなさい。写真はダメ、色々と問題も多いから。まあ、眺められるのは……我慢しなさい。そんな怖い顔しないでよ……わ、私が決めたわけじゃないし」

「クッ!?会話を許すと……?眺める……我慢できるだろうか?」

「と、冬馬君……」

綾が心配そうな表情をしている……バカか!
綾が楽しければ、俺の感情など二の次だっ!

「綾、平気だ。ただ、少しでも嫌だと思ったら言うといい。生きていることを後悔させてやる」

「え、えっと……ほどほどにね……?」




そして、文化祭が幕を開けた。

すぐさま、戦場となる。

「ご主人様、いらっしゃいませ」

「うわぁー!?めっちゃ可愛いメイドさんだ!ねえねえ!?君、電話番号を」

「お客様——当店はそのような場所ではございません」

「ヒィ!?」

「と、冬馬君……」

「節度を守ってくれますか?」

「はいっ!守らせて頂きます!な、眺めるのは……?」

「……節度を持つならば」

「もちろんです!」

次のは……手強そうだな。
大柄でガラの悪そうな男が入ってきた。

「おい、良い女がいるな」

……はい、失格。

「おい、貴様は帰れ」

「あぁ!?こっちは客だぞ!?」

「あぁ?ハァ……」

肩を掴む……ゆっくりと力を入れて……!

「ガッ!?」

「まあまあ、お客さん」

「ガァァ!?い、いてぇ!?」

「ほらほら、他のお客さんに迷惑ですから」

「イテテッ!?わ、わかったから!」

「はい?何がですか?」

「あ、謝るから!ご、ごめんなさい!」

「はい——平和が一番ですからね」

「ヒィ!?」

最後にドスを効かせると、男は去っていった。
……ちとやり過ぎたか?

「にいちゃん!カッケー!」

「そうだ!そうだ!」

「メイド喫茶舐めんなー!」

……どうやら、概ね好評のようだ。
メイド喫茶というものにも、最低限のマナーはあるようだな。

「あ、あの……」

俺の執事服の端っこを摘みながら、綾が頬を染めている。
……可愛いな、おい……なんだこれ。

「お嬢様、ご無事でなによりです」

「ひゃい!?は、はぅぅ……」

「メイドさんがデレたぞ!?」

「羨ましい!だが、ナイスだ!」

「けしからん!」

「あぅぅ……恥ずかしぃ……」

……いつもなら蹴散らすところだが、今日は勘弁してやるか。

というか……俺の彼女が可愛すぎしないか?




その後も、綾は大人気で指名がばんばんやってくる。

もちろん、迷惑な奴らは排除している。

そして……テロが起きた。

「えっと……おいしくなぁ~れっ!」

「グハッ!?」

「ゴフッ!?」

「カハッ!?」

綾の萌えに、男達が悶える。
……俺?俺は歯を食いしばって耐えている……!
……俺も、後でやってもらおうっと……。



ただ……その後、何故が予想外の展開になってしまった。

「いらっしゃいませ、お嬢様。お席にご案内いたしますね」

「は、はぃ……」

「か、カッコいい……男前の執事さん……」

「むぅ……ほら、こうなる。冬馬君、カッコいいもん……」

そう、メイド喫茶として出店しているのだが……。
もちろん、それ目当ての客が多いのだが……。
先程から、何故が女性客が増え始めたのだ。

「安心しろ、綾——俺の目にはお前しか映らない」

「ふえ?……あ、ありがとうございます……」

「きゃー!?」

「発言まで男前だわ!?」

「彼女持ちって書いてあったけど……良い!」

「大事にされたいっ!」

「私、あの人に投票する!」

「はい?お嬢様方、どういうことでしょうか?」

「え?あ、あの!ミスターコンテストに出るんですよね!?」

「ええ、そうですね」

「入り口に写真が貼ってあって……それ見てきました!」

……なるほど、小百合のやつか。
そういえば、宣材写真がどうとか言っていたな。
後で、確認しに行くとするか。

休憩時間になったら、親父と麻里奈を迎えに行くしな。



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