静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

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冬馬君は平和な日々を取り戻し……

冬馬君は背中を押す

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……多少変な空気になったが、その後ひとまず元通りになる。

「さて……冬馬、次はどうする?」

「ここには、ウサギと触れ合あえる広場があるみたいだよ。だから、そこに行こうかと。確か……綾も弥生さんも好きだったよね?」

「あらー……恥ずかしい……でも好きやわ」

「う、うさぎさん……!好き……!」

「こ、これがたまに出る京都弁……!た、たまらん……!」

「う、うさぎさん……!何という可愛いセリフを……!」

「……ねえ、この2人って血が繋がってるのかなー?」

「そんなわけないじゃない。それだと私に弟がいることになるわ……でも、確かに似ているわよね……」



その後、触れ合い広場に到着したのだが……。
正直言って、俺にはうさぎより可愛いのがいて……目が離せない。

「うわぁ……!ふわふわ……!モフモフ……!可愛いよぉ~」

「グハッ!?お、落ち着け……!ここは公共の場……!幼い子供達が見ている……!」

うん、可愛いのはお前だな。
綾がうさぎを抱っこしている……!
人がいなかったら抱きしめてるところだ。
そして……この人も同じようだ。

「あら~、可愛い……やっぱりええなー」

「グハッ!?し、心臓の鼓動が……!ぐぬぬっ……!静まれい……!」

「ねえ?ホントに?どっかで血が繋がってない?」

「……自信がなくなってきたわね……」



その後触れ合いに満足したのか、女子達は一度お花を摘みに行った。
ちなみに、俺は綾の可愛い姿を写真に収めて大満足である。
……そして、これは良いタイミングかもしれない。

「真兄、少しいいかな?」

「うん?どうした?弥生さんと清水の可愛さを語らうって言うなら負けはしないぞ?」

「それなら、俺も負ける気がしないけど……それやったら日が沈むよ。いや、黒野のこと」

そう、これが俺のもう一つの目的だ。
真兄と黒野のことに首を突っ込むことには少し迷っていたが……。
ここらで言っておいてもいいかと思う。
でないと、黒野も自分の恋愛どころじゃないし。
それすなわち、博の恋愛もどうにもならないということだ。
何より……俺だって真兄の力になりたい。

「……ああ、俺もわかってる……さっきの、弥生さんの話を聞いて尚更にな」

「俺はさ……真兄本人じゃないからさ。気持ちまではわからないけど……でも、俺と違って母親は生きてるよね?もちろん、生きているからと言ってそれが幸せなことかはわからないけど……ニュースなんかでも、ろくでもない親が存在するのも事実だし……」

「……ああ」

「でも……少なくとも、黒野にとっては良いお母さんなんじゃない?それに、女手一つで育ててきたんでしょ?そんな人が、真兄を捨てたくて捨てたとは思えないんだ。もちろん、理由があるからしていいってわけじゃないけどさ……ダメだな、上手く言えない」

「冬馬……いや、伝わってる……言葉一つ一つに、俺に寄り添う気持ちが……」

「そうかな?なら良いけど……だから、一度会ってみたら?それがどんな結果を生むかわからないけど……もしかしたら後悔するかもしれないけど……でも、死んでからじゃ後悔も出来ないと思うんだ」

「そうか……」

「それで会ってみてさ……ホントにダメなら仕方ないし、黒野も諦めがつくと思う。それに……兄貴は妹を大事にしなきゃね?」

「ククク……何故だろうな……言う人でこうも違うのか……そんな月並みな言葉、散々言われてきたんだがな……きっと……お前だからなんだろうな……」

「真兄はさ、怖がってるんだよね?また傷つけられると思って……でも、それじゃ一生このままだよ?だから……今度は俺が、背中を押してあげるよ。それでも、もし傷ついたら……そしたら、俺が弟分として慰めてあげるし。どこへでも付き合うからさ」

「生意気なこと言いやがって……あの小僧だったお前が……冬馬、お前は一歩踏み出した……なら、兄貴として……俺がビビってる場合じゃねぇな……!」

「フフフ……話はまとまったかしら?」

「あっ——」

いつのまにか全員が揃っていた。
どうやら、話に夢中で気づかなかったようだ。

「真司さん、私も母を亡くしています。そっからは、父が男手ひとつで育ててくれました。それはそれは苦労の連続で……頼れる親族がいなく、余裕もなく2人で寄り添いながら生きてきました。きっとお母様も、苦労なさってたと思います……もしかしたら、真司さんを気遣う余裕がないほどに……ね?加奈さん?」

「兄さん……お母さん、毎日必死で働いてて……お洒落もしたことなくて……手もボロボロでガリガリで……でも、私はひもじい思いなんてしたことなくて……学校にも行かせてもらって……いつも寝言で、真司ごめんねって……」

「加奈……もういい」

「兄さん……そうだよね……いくら綺麗事言っても事実は変わらないよね……」

「違う!そうじゃない!」

「兄さん……?」

「……正直言って、俺は今でも憎んでいる。事情がどうであれな」

「うん……」

「ただ、俺だって妹は大事だ。それに……俺に憧れてるという弟分の前で、カッコ悪いところは見せられない」

「え……?」

「家に帰ったら……お袋に言っておけ。今度、三人で飯でもどうだって……」

「兄さん……!ゔん……!」

「加奈……良かったよぉ~」

「ア、アタシ……帰ったら、きちんと両親にお礼の言葉伝えようかな……」

……良かった。
こんなガキの俺でも、真兄の力になれることがあって……。
真兄には返しきれないほどの恩が沢山あるから……。

……きっと真兄は……そんなの気にするんじゃねえ!って言うんだろうな……。







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