静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中

文字の大きさ
上 下
102 / 185
冬馬君は遅れたものを取り戻す

冬馬君は真兄に写真を見せてみる

しおりを挟む
 あの後、俺は誰にも気付かれずにグラウンドへ戻った。

 そして何事もなかったかように振る舞い、そのまま授業を終える。



 昼休みになり、俺は綾に謝る。

「綾。悪いが、今日は一緒には帰れないかもしれん」

「あれ?今日、何か用事あるって言ってたかな?」

「いや、さっきまでなかったんだが……詳しくは言えないが、さっき、啓介から嬉しい言葉を聞いてな。俺はいたく感動したところだ。なので、熱いうちにお礼も兼ねて遊びに行こうかと思ってな。もちろん、アイツの予定が空いてればだが」

「うん、良いよー。えへへー、道理で機嫌が良いと思った。さっき、加奈達と話してたんだ~」

「ん?そんなわかりやすかったか?」

「そんなことないよー、加奈も愛子もどの辺が?って言ってたし。でも、私にはわかるのです!冬馬君のことずっと見てるもん!」

 綾はフンスフンスしながら、そんなことを言う……可愛い。

「道理で視線を感じると思ったよ。そうか、ずっと見てたのか」

「え?……あっ——ち、違くて、違くはなくて……あぅぅ……」

「ククク、相変わらず可愛いな。良いぞ、見ても。好きなだけな」

「むぅ……冬馬君が、なんだかイジワルです……」

「すまんな、つい可愛くてな」

「むぅ~、そう言われたら何も言えないです……」

 モジモジする綾を見るのはとても良い。
 ……あれから進展はないけど、焦らないことにした。
 幸せに満たされてはいるし、俺がそんなんだと逆に進展しないだろうし。
 綾の気持ちの整理がつくまで、頭の隅の方へしまっておくことにする。
 そもそも、こんな可愛い彼女がいる時点で恵まれすぎだ。

「可愛いし、優しいし、スタイル良いし——好きだ」

「ふえっ?え、えーっと……」

「あっ——心の声が出てしまった。まあ、良いや」

「えぇ——!?よ、よくないです!リピートアフターミーです!」

「何故英語?いや、得意分野なのは知ってるけど……」

「リピート!アフター!ミー!」

 鬼気迫る表情に、俺は気圧される……!
 これは、答えないという選択肢はないが……困らせたくなるな。

「可愛い?」

「そこじゃないのー!う、嬉しいけど!」

「優しい?」

「違うのー!でも、ありがとう!」

「スタイル良いし?」

「そ、それも嬉しいけど……もう~!わかってるくせに~!」

「好きだ」

「はぅぅ……あ、あのね、その低い感じのやつ……好き」

 うむ……顔を両手で押さえる綾は、いつ見ても良い!まさしく眼福です。

「……なあ、俺いるの知ってる?」

「あっ——」

「ふえっ——?」

 そこには、苦虫を噛み潰したような表情の真兄がいた。

「たくっ、もう慣れたとはいえ勘弁してくれよ」

「ごめんごめん!忘れてたわ!」

「ご、ごめんなさい!あぅぅ……は、恥ずかしいよぉ~」

「いや、恥ずかしいのは俺だからな?」

「……あっ、そういや写真は良いって?なんか、さっきメール送るとか言ってたよな?」

「え?……あっ——うん、さっきメールしたら良いって。私、店長さんにツーショット写真撮ってもらってたから。弥生さんと2人で、店の前で撮ったんだー」

「あん?なんの話だ?」

「真兄は彼女いないんだよな?」

「よし!冬馬!立てい!吹っ飛ばしてやる!!」
     
 マ、マズイ!逆鱗に触れたっぽい!!
 鬼の形相で迫ってくるぅ——!!

「違う違う!そういうアレじゃなくて……!作り気はあるのって!」

「あぁ!?欲しいに決まってんだろうが!てめー、ちょっと彼女できたからって調子に乗ってんじゃねえぞ!?俺の前でイチャイチャイチャイチャしやがって……!チクショー!俺だってなぁ!!」

「先生!違うんです!お、落ち着いてください!」

「あぁ!?引っ込んでろ!」

 その時、俺の中の何かがキレた。

「……おい?真兄……綾にガン飛ばすとはどういった了見だぁ!?」

「やんのかぁ!?コラァ!?」

「やったろーじゃないかぁ!あぁ!?」

「もう~!!2人とも喧嘩しないで!!」
 


 その後綾の尽力により、なんとか誤解は解けた。

 今では打って変わって、ご機嫌に俺の肩を組んでいる。

「なんだよー、冬馬。女紹介するなら、早くそう言えよー」

「言う前に真兄がキレたんだよ!」

「はは……怖かったぁ」

「すまん!清水!この通りだ!」

「ごめん!綾!これで勘弁してくれ!」
 
「2人して土下座しないで~!なんでそんなにシンクロするの!?」



 ラチがあかないので、さっさと本題に入ることにする。

「たくっ……言っておくけど、紹介するだけだから。それに弄ぶようなことしたら、真兄とはいえ承知しない」

「もちろんだ!紹介したお前の顔を潰すようなことはしないと約束しよう」

「じゃあ、綾。見せてやってくれ」

「うん!はい、先生」

「どれどれ……なんてことだ……」

 真兄から表情が消えた。

「し、真兄……?」

「せ、先生……?」

「冬馬、女神とは存在したのだな。俺は、今それを知った」

「はい?」

「ふえっ?」

「こうしてはおけん!今すぐ花束を持って行かなくては!!」

「待て待てーい!まだ、昼休みだから!」

「俺は早退する!」

「だ、ダメですよ!?」

「いや!ていうか、その前の問題だから!真兄!?待ってぇ——!!」



 なんとか、力づくで押さえこんだ。

「ゼェ、ゼェ、邪魔をするか……!」

「ハァ、ハァ、まずは話を聞けっての……!」

「先生!あ、あのですね……」

 まずは、親父さんの許可がいること。
 紹介するのは、その後になること。
 さらには、真兄の写真が必要なことなどを説明した。


「なるほど……怖い親父さんがいるってわけか。それに、俺だけが写真を見るのはフェアじゃないわな」

「とりあえず、気に入ったってことでいいんだよな?」

「もちろんだ!なんだ!?あの美人は!?冬馬!もっと早く言えよー!」

「いや、俺も弥生さんとそういう話したことなかったからさ」

「じゃあ、私が写真撮りますね~」

「お、おう……」

「真兄?変な顔だけど……」

「お前は失礼だな!」

「いや、そういう意味じゃなくて……真兄は普通にしてればワイルド系の男前なんだから。いまの顔は、強張りすぎだよ」

「し、仕方ないだろ!?ど、どういう顔をすれば……?」

「う~ん……先生の良い顔……あっ——冬馬君!一緒に入って!」

「はい?」

「良いから!ねっ?」

「……わかったよ」

 大人しく真兄の隣に行くと……。
 
「先生!冬馬君と肩を組んでください!」

「お、おう……こうか?」

「真兄、タバコ臭い……弥生さん、タバコ嫌いかもなぁ」

「な、なにぃ——!?わ、わかった!辞める!だから……!」

「まだ確定してないから!揺らさないでー!」

「ふふ、良い顔。やっぱり、仲良しさんですね!」

「あれ?撮ったのか?」

「いつの間に……」

 撮った写真を見てみると……。

「冬馬、良い顔してるぜ?」

「真兄こそ、男前だよ」

 そこには肩を組んだ状態で、笑顔の俺と真兄が写っていた。

「えへへ~、2人とも本当の兄弟みたいですね!」

「誰がこんな生意気な弟!!」

「誰がこんな子供みたいな兄貴!!」

「「あぁ!?やんのかぁ!?」」

「もう~!いい加減にしてください!!」

 ……照れ臭くて言えないけど、本当の兄貴のように思ってるけどな。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた

久野真一
青春
 最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、  幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。  堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。  猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。  百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。    そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。  男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。  とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。  そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から 「修二は私と恋人になりたい?」  なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。  百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。 「なれたらいいと思ってる」    少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。  食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。  恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。  そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。  夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと  新婚生活も満喫中。  これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、  新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転校して来た美少女が前幼なじみだった件。

ながしょー
青春
 ある日のHR。担任の呼び声とともに教室に入ってきた子は、とてつもない美少女だった。この世とはかけ離れた美貌に、男子はおろか、女子すらも言葉を詰まらせ、何も声が出てこない模様。モデルでもやっていたのか?そんなことを思いながら、彼女の自己紹介などを聞いていると、担任の先生がふと、俺の方を……いや、隣の席を指差す。今朝から気になってはいたが、彼女のための席だったということに今知ったのだが……男子たちの目線が異様に悪意の籠ったものに感じるが気のせいか?とにもかくにも隣の席が学校一の美少女ということになったわけで……。  このときの俺はまだ気づいていなかった。この子を軸として俺の身の回りが修羅場と化すことに。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

処理中です...