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冬馬君は遅れたものを取り戻す

冬馬君は末っ子になる

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 駅前のロータリーに到着すると……。

「おーい!冬馬!」

「あっ、真兄!」

「乗れ乗れ!もう2人ともいるからよ!前に乗ると良い!」

「はいよ!」

 俺は駆け足でワゴン車に乗り込む。

「よっ、冬馬」

「冬馬~、この間振りの再会だね」

「蓮二さん、淳さん、チワッス」

「さて、いくとするか。まずはカラオケとしけ込むか!」

「フゥ~!良いぜ!日頃のストレスを発散だー!あのクソハゲ上司が!」

「良いですね~。俺も今日は羽根を伸ばせそう」

「ハハ……公務員も大変そうだね。淳さんは普段はリーダーだから、あんまり羽目を外せないもんね」

 そんな会話をしつつ、ワゴン車は走り出した。


 ワゴン車が走り出して5分ほど経つと、真兄が俺に話しかけてきた。
 ちなみに、後ろでは淳さんが蓮二さんのおもちゃにされている。
 あの2人は兄弟に近い関係だからなぁ。

「なあ、冬馬。加奈は最近どうだ?」

「はい?なに、そのふわっとした言い方は?」

「いや……あの年頃は難しいんだよ。なんか、最近機嫌がいいから彼氏でも出来たのか?って聞いたら『兄さんのバカ!!』って言われてよ」

「……それは真兄が悪いと思う。相変わらず、なんてデリカシーのない人だ」

「はぁ?俺がなにしたっていうんだ?」

「機嫌が良いのは、俺と綾がいれば真兄と出掛けられるからだろ?早く予定立てちゃってよ。じゃないと機嫌が悪くなるよ?」

「……なるほど、そういうことだったのか」

「わはは!バカめ!お前はそんなんだからモテないんだよ!」

「ああぁ!?うるせえよ!蓮二!!テメーだってモテねえくせに!」

「まあまあ、2人とも落ち着いてくださいよ~」

「お前は黙ってろ!このイケメンめ!」

「そうだそうだ!こうしてやる!」

「ちょっと!?蓮二さん!?首絞めないでください!」

「良いぞー!やれやれー!」

「真兄!前!前見て!」

 ……なんか、懐かしいなぁ。
 こういう馬鹿な感じ。
 まだまだガキの俺がいうのもアレだけど、若返った気がするな。
 昔に戻った感じで……。



 なんとか?無事に到着し、カラオケで盛り上がる。

「冬馬ー!俺の歌を聞けー!」

「マクロ○か!」

「アハハ!冬馬とのカラオケは楽しいな!お前は俺らの年代について来れるからな!」

「そうだよねー。幽遊白○とかドラゴンボー○とかわかるもんね」

「まあ、真兄によく連れて行かれましたからね。DVDも見せられましたし」

「ふっ、英才教育というやつだ。冬馬を歳上殺しに育てたのは俺だー!」

「なに!?その異名は!?大体レッドウルフだって真兄が……!」

「でも、冬馬はほんと歳上から好かれるからな」

「そうですよね~。まあ、今時珍しく真の通った男の子ですからね」

「……なんか調子狂うな……」

 ……でも、お兄ちゃん達に囲まれるのも悪くないか……。



 一頻り歌い終わった時、すでに6時を回っていた。
 なので、個室付きの懐石料理店で夕飯を食べる流れになったのだが……。
 店の前で、思わぬ人物に出会う。

「あれ?綾、どうしているんだ?」

「ごめんね、邪魔しちゃって……」

「何を言う?綾が邪魔なことなどあるわけがない」

「そ、そうなんだ……えへへ」

「あの?私もいるのだけど?」

「よう、黒野。いや、すまん。綾しか目に入らなかったようだ」

「はぅぅ……」

「殴っても良いかしら?」

「ほら!お前ら!とりあえずは部屋行くぞ!」


 個室に通された後、事情を聞いてみる。

「で、何がどうなったの?」

「いや、蓮二と淳が加奈に会ってみたいって言うからよ。元々、呼んではいたんだ。ただ、昼間は森川と三人で遊ぶって聞いてたしな。じゃあ、夕飯だけ食べるかという流れになったわけだ」

「えっと……綾はなんで?」

「俺ら三人が、改めてお礼を言いたかったからだ。だから加奈に連れてきてもらった」

「ふえっ?わ、私ですか……?」

「綾ちゃんって言うんだよな?冬馬の傷を癒してくれたこと、感謝する。コイツは、俺にとっては弟のようなものだから」

「蓮二さん……」

「清水さん、俺からも。冬馬を元の冬馬にしてくれてありがとね~。俺にとっても可愛い後輩だからね」

「淳さん……」

「さて……最後は俺か。清水……教師ではなく、ただの1人の兄貴分として感謝する。コイツの心を解いてくれたこと感謝する」

「真兄……んだよ……三人とも……」

「冬馬君……涙が……いえ、私は何も……」

「いや、コイツが再び人と関わろうとしたのは、間違いなくお前のおかげだ。おかげで何も遠慮することなく、俺達は懐かしいメンツで集まることが出来た」

「全く、コイツは意外と頑固だからな。アンタ、苦労するぜ?」

「でも、それが冬馬のいいところだね~」

「ったく……うるせえよ……」

「はい、では受け取らせていただきます。でも、私の方が色々助けられています。そして、お三方にも……私の友達を助けるために、手助けしてくれてありがとうございました!」

「へっ、いいってことよ!可愛い弟分のためだ!」

「当然のことだね~」

「まあ、俺は途中まで知らなかったんだがな?全く、気を遣いやがって……」

「まあまあ、兄さん。教師が暴力沙汰はまずいでしょ?」

「いや、知らせたのお前だからな?」

 俺が部屋の窓際に行くと、綾がついてきた。

「はい、冬馬君」

 綾から、ティッシュが手渡される。

「わりぃ……だせえな」

「ううん、そんなことないよ。嬉しい時は泣いていいんだよ?私にも……そ、その、もっと甘えてくれても良いんだよ……?冬馬君は情けないとか思ってるのかもしれないけど、そんなことないんだから……」

「綾……」

「も、もちろん、頼りないかもしれないし……冬馬君にばかり負担かけてるかもしれないけど……依存はダメだと思うの。だから、私にも何かできることがあればしたいです!なんでも言って欲しいです!だって……こ、恋人ってそうじゃないの?」

「……いや、綾の言う通りだ。俺がカッコ悪いところを見せたくなかっただけだな……。わかった、これからは気をつける」

「うん!えへへ、アレだね!普段はおにいの冬馬君も、ここでは末っ子だね!」

「否定はできないな……皆、頼りになる兄貴分達だ」



 その後は、皆で楽しい食事の時間となる。

「なあ、加奈ちゃんって言ったっけ?俺と付き合う?」

「バカか!大事な加奈をお前なんぞにやれるか!ていうか、お前の発言は問題ありすきるわ!」

「に、兄さん……照れるわね……」

「真司さん、俺は~?」

「お前はモテるからダメだ!ていうか、お前も淫行になるから!」

「全く……何やってんだか……」

「えへへ、でも……楽しいね?」

「………だな」

 俺は大事な子の隣で、その光景を眺めながら感じていた。

 心が温かなものに包まれるのを……。








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