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冬馬君は友達のために

冬馬君と清水さんは相打ちする

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 さて……流石に俺の顔は覚えていないはず。

 それに、ここは中立地帯だ。

 ここでの争いはリングの上だけと決まっている。

 本当なら、詳しい情報を集めたいとこだが……。

 ただ、近づくのは危険だな。

 俺がレッドウルフだとバレると、流石に気付くだろうし。

 何より……今は、大切な彼女の綾がいる。

 綾を守りながらでは厳しいし、俺に対する恨みもあるだろう。

 それが綾に向けられることが恐ろしい……。

 つまりは……。

「綾……静かにこの場を去るぞ……」

「え?う、うん……」

 綾の手を引き、奴らの反対側から入り口へ戻る。
 そして……なんとかバレずに、人の通りが多いとこまで戻ってこれた。

「フゥ……危ないところだったな」

「あ、あれって……」

「ああ、アキを脅迫していた奴らだ。つまりは……どちらにせよ、潰す必要があったということだ。アキと森川の話が繋がった以上な」

「青い服着てたね?てことは、同じグループってこと?」

「そういうことだ。よし、あとはどうするかだな……少し考えなくてはいけないな」

「わ、私は何をしたらいいかな……?」

「森川の様子を見てやってくれ。そして、さり気なくデート日とかも聞いておいた方がいいな」

 ……奴らが、いつ決行するかわからないからな。

「わ、わかった……!」

「じゃあ、帰るとしよう」

「そういえば……バイトは良いの?土日休みにしちゃったよね……?私が無理言ったから……」

「いや、それなら問題ない。むしろ、働きすぎだから休んでくれって言われたよ。このままだと、年間100万超えちゃうからって。そうすると親父の税金も上がっちゃうしな」

「あっ、なるほど!でも、お店は平気なの?」

「ああ、店長の奥さんが復帰したからな。上の子が中学生になって、もう平気だからって」

「ホッ……良かったぁ~……私のせいで、冬馬君の印象悪くなったらヤダもん」

「相変わらず良い女だ」

「ふえっ!?そ、そうかな?ありがとぅ……」

「そして可愛いな」

「え?え?……あー!笑ってる!もう!」

「クク、バレたか。つい、可愛い顔するもんだからな」

「うぅ~……」

「いつもの仕返しだ。照れ顔も可愛いな?」

「はぅ……そ、その辺で……ご勘弁を……」

「はいはい……ほら、いくぞ」

 綾の手を引き、駅へむかう。




 そして、無事に綾の家の前に到着する。
 時間も9時なので、余裕があるな。

「さて……じゃあ、帰るな。お母さんによろしくな」

「あ、あのね!」

「ん?どうした?」

「その、あの……キスしてほしいなって……はぅ……」

「……ゴフッ!?」

 俺は思わず、膝から崩れ落ちる!!

「と、冬馬君!?」

「な、なんつー台詞を……!俺を殺す気か……!」

「な、何か変なこと言ったかな……?ただ、今日少し怖かったから……大好きな冬馬君にキスしてもらえたら、どっかに飛んでってくれるかなぁって……」

「待て待て……!ストップ……!萌え死ぬ……!もういい……!」

 これ以上喋らせてはいけないと思い、キスで口をふさぐ……。

「あっ……んっ……」

「ま、まいったか?」

 まいっているのは俺ですけどね!

「は、はぃ……ビリビリする……エヘヘ、どっか行ったよ?」

 本当に可愛すぎてまいってしまいますね!

「そ、それなら良い……じゃ、じゃあな!」

 これ以上はまいってしまいますからね!

「うん!送ってくれてありがとう!気をつけてねー!」

 だめだこれ……完全にまいってるわー。

 今日のところは相討ちということで、勘弁してやるぜ!

 俺は変なテンションのまま、家路を急ぐのであった……。



 俺は家に帰ると、ある人物に連絡をする

「おう、剛真。今、平気か?」

「おうよ!どうした!?」

「声がでかいって。あのよ……」

「なんでも言え!俺はお前には借りがある!」

「剛真……サンキュー、じゃあ……」

 もしもの時のために、剛真にある頼みごとをしておいた。

「なるほど……直接は手伝わなくて良いのか?」

「お前は部活があるだろう?大会出場停止とか笑えないからな。抑止力にさえなればいい……もちろん、いざという時は頼む」

「わかった!お安い御用だ!任せておけ!」

「助かるぜ……お前も、今度うちに来いよ。母さんに会わせたいしな」

「冬馬……ああ!行かせてもらおう!」

「じゃあ、そういうことで。またな」

「おう!」

 電話切り、次の人に電話をする。

「アキか?」

「どうしたんだ?珍しい……」

「なあ、明日の放課後って暇か?」

「……まあ、時間はあるな」

「遊びに行かないか?」

「どういう風の吹き回しだ……?」

「たまには良いかもと思ってな。まあ、無理にとは言わないさ」

「いや……良いぜ、付き合う。俺も少し息抜きが必要だしな……」

 ……まあ、そりゃそうだろうな。

「決まりだな。じゃあ、明日の放課後に下駄箱でな」

「あいよー、じゃあな」

 電話を切ると……ん?綾のお母さんからメールが……。

「何かあったのか?……オイオイ……!」

『帰ってきた綾の顔が真っ赤になってたんだけど……ずっとニヤニヤしてるし……何かしたのかしら?もしかしてホテル行ったのかしら?でも、連絡は来てたし……」

 ……ホテルは行ってないけど、キスはしました……。

 なんて書けるわけがないだろうがーー!!

 綾め……!想像がついて、めちゃくちゃ可愛いじゃねえか!

 会っていないのに、俺を翻弄するのか……!

 結局、俺は無難な返事を書いて送るのであった……。


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