静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

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冬馬君は友達のために

冬馬君は再び……

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 ……さて、全員揃ったか。

 今の俺で、どこまでやれるかだな。

 俺らは部屋を移動して、三階の特殊な部屋に集まっている。

「さて、覚悟はいいな?」

「へへへ、腕がなるぜ!」

「まさか、伝説のレッドウルフと戦えるとは……!」

「久々だな!冬馬!手加減しねえからな?」

「ケッ!良い女連れやがって……殺す!」

「と、冬馬君……だ、大丈夫なの?」

「綾、安心してくれ。俺はお前が側にいれば負けることはない……!」

「と、冬馬君……うん!私も頑張って応援するね!」




 ……そして、負けられない戦いが始まる……!

「おい、殺すつもりでやるから覚悟しろよ?」

「ええ、どうぞ。相変わらずでかいしゴツいですね、小次郎さん」

「やっちまえー!」

「小次郎さーん!」

「静かに!!」

 淳さんの声により、皆が静まる。

「冬馬!ここは音も漏れない!良いか?逃げるなら今のうちだぞ?」

「ハッ!愚問だぜ!淳さん!いいぜ!全員ぶっ潰してやるから……かかってこいやぁー!」

「あれ……?これって……?もしかして……」

 特殊な台座で、腕と腕が組み合う!

「綾!みてろよ!今度こそ負けはしない……!」

「ケッ!可愛い彼女の前で恥かかせてやるぜ!」

「いくぞ……レディーゴー!」

「あれ?なんか、勝負って聞いたから……また腕相撲なの!?」

「ウォォォ!!!」

「ガァァァ!!!」

 身長差、体格差は歴然……!
 だが、負けるわけにはいかない……!

「オラァ!!」

「グァ!?ま、負けただと!?……強くなったな」

「小次郎さん……ありがとうございます!」

 その後、次々と倒していく。

 ……そして、いよいよ……。

「さて、冬馬?やるからには本気で行くけど……いいかな?」

「ハァ……ハァ……ええ、もちろんです」

「では、冬馬の彼女に頼むかな?で、勝利者にはキスをお願いしようかな?」

「なんだと……?淳さん……俺を本気にさせましたね?」

「もう!よくわかんない!えーい!レディーゴー!」

「グォォーー!!」

「ハァァーー!!」

 綾の掛け声で負けるわけにはいかない……!

「クッ!?こ、これは……!強くなったな!?」

「ええ……!この間、真司さんに負けたんでね!それから鍛え直したんですよ……!」

「し、真司さんか……!あの人も元気か……?」

「ええ!というわけで……セィ!!」

「グァ!?」

「し、勝負ありです!冬馬君の勝ちです!」

「パネェーー!!」

「これがレッドウルフですか!」

「ハァ、ハァ……綾、俺に勝利のご褒美を……」

「ふえっ?え?こ、ここで……は、はい!」

 綾の柔らかな唇が、俺の頬に触れる……。
 これはこれで……とても良い……!

「やれやれ……これは負けるわけだね……負けられない理由が出来たんだじゃね」




 その後ギャラリーは解散して、二階の部屋に戻る。

「で、これからどうするんだい?」

「もう時間も時間なので、一度家に帰ることにします」

 もう既に、外は暗くなっていた。

「そうか……俺が強いボスじゃないから、舐められてるんだよな。だから、奴らが幅をきかせているんだよなー」

「淳さんは優しい人ですから。でも、俺は好きですよ?真司さんの真実を教えてくれましたし」

「あっ!冬馬君、この人がそうなの?」

「そうだ。リンチの件を教えてくれた人なんだ。昔から気配りやさんで、周りをよく見てる人なんだ」

「よせやい、照れるから。冬馬、俺は派閥とかどうでも良いんだ。ただ、ここは家庭の事情や学校で馴染めない奴らの逃げ場所なんだ……俺はレッドキングのボスとして、そこだけは譲れない。俺がここで救われたように……」

「ええ、同感です。もちろん、根っから悪い奴もいますが……ほとんどのやつは、元から悪いわけではないですから。どうしようもない感情の捌け口を探しているだけだと……俺がそうだったように……」

「冬馬君……」

「だな……よし!何かあれば力を貸す!いつでも連絡してくれ!むしろ、力を借りるかもしれないが」

「ええ、俺に出来ることなら。それが、この街に対する恩返しにもなります。もちろん、警察沙汰にならない程度にですがね」

「それはお互い様だ。ただ、大した抗争でなければ見逃される筈だ。上の方さえ潰せればいい」

「了解です、その辺りは変わりないようですね。では、失礼します」

「し、失礼します!」

「ああ、気をつけてなー」




 その後俺達は夕飯を食べ、今は公園のベンチに座っている。

「な、なんか……凄い世界だね?」

「んー……俺も最初はビビったけどな。でも、悪い奴らばかりじゃないんだよ。今の学校には生き辛い人が集まる場所でもあるんだ」

「気持ちわかるなぁ……私も、中学の時そうだった……女子達から無視されてたから……」

「俺もだ……母さんが死んだことで、皆が可哀想な目で見てくるんだ……アキ達が庇ってくれたが……当時の俺は、それすらも嫌だった……可哀想な奴と思われるのが……」

「私はね……愛子に救われたの。1年生の時にね、二年生の女子から呼び出されたんだ……その時に、愛子と加奈が助けてくれたの。愛子は物理的に、加奈は相手の弱みを握ってきて……だから、今度は私が……」

「わかるよ……俺もアキがいなければ、再び友達と仲直りできたか……。何より、綾。お前がいてくれて良かった。お陰で俺は、大事な気持ちを思い出した。大切な人がいるという気持ちを……」

「冬馬君……」

「こちらこそ、いつもありがとう。俺は綾に出会えて良かった。出会ってから、世界の色が変わったんだ」

「わ、私も……世界が変わったの……例えばね……前はね、露出のある服が着れなかったの。男の人の視線が嫌だったの……男の子なんて、皆そうだと思ってた……でも、冬馬君が変えてくれた。今はね、冬馬君になら見せたいなとか……冬馬君が守ってくれるから安心して着れるんだよ?」

「そうか……まあ、俺はドキドキして大変だけどな?」

「ふえっ?そ、そうなんだ……えへへ」

「ちなみに……今もドキドキしている」

「え?……わ、私も……」

 誰もいない公園で、2人の唇が重なる……。

「んっ、やっ、舌が……」

「おっと、悪い。つい高まってしまったな」

「もう……で、でも……イヤじゃないよ……?」

 ……おっといけない。

 また、してしまいたくなるところだった。

 ……さて、明日から行動開始だな。

 大事な子の、大事な人を守るために頑張るとしますか。

 俺はこれからのことを考え、気合いを入れるのだった。
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