静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

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冬馬君は友達のために

冬馬君は彼女の力になりたい

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 翌朝、綾と会ったが……もう、平気だった。

 1日経ったことが良かったのか、お互いに相談したからかはわからないが。

「でね、愛子の彼氏が……」

「ふむふむ、なるほど……きな臭いな。で、綾はどうしたいんだ?」

「わ、私は……愛子には悪いけど、調べてみたいの。なにも無かったらそれで良いし、愛子と彼氏にもきちんと謝るつもり。でも……何か嫌な感じがして……」

「わかった。俺に任せろ」

「だから冬馬君に……あれ?私、何も言ってないよ?」

「気になるんだろ?そういう場所なら綾1人では心配だ。カモがネギを背負ってくるようなものだ」

「うっ!うぅ~……愛子にも同じこと言われた……で、冬馬君に言いなさいって……」

「ほう?相変わらず、できた奴だな。では、俺も感謝しなくてはな」

「で、でも……良いの?私のただのワガママだよ?無駄足かもしれないし……」

「何を言う。綾の大事な友達なら、俺にとっても大事な人だ」

「と、冬馬君……そ、そう言ってくれるんだ……エヘヘ……嬉しいなぁ……」

 そう言うと、ぎゅっと腕を組んできた。

「お、おい?電車内だぞ?」

「良いの……と、冬馬君、大好き……ありがとう……」

「お、おう……」

 結局、教室に着くまでその状態であった。

 ……男共からの射殺すような視線を感じたことは……言うまでもない。




 
 そして、放課後を迎える。

 今は体育祭も終わり、文化祭の準備にはまだ早い時期だ。

 テストもないし、そこそこの時間はある。

 なので、早速調べることにした。

 もちろん、調べるなら早い方がいいという理由もある。

「さて……どこで知り合ったかわかるか?」

「えっと……所沢の駅周辺で知り合ったって言ってたよ」

「なら、俺の庭だな。少しは力になれそうだ。よし、まずは着替えに帰る。で、俺が迎えに行くから、なるべく大人っぽい格好で頼む。場合によっては遅くなるからな」

「え?あっ、そうだよね。補導されないようにだね!」

「そういうことだ。幸い、俺も綾も童顔ではないからな。そうそうバレることはない。今日は金曜日だし、多少は遅くても平気だろう。もちろん、俺が綾のお母さんには連絡しておく」

「え?お、お母さんに?」

「遅かったら心配するだろう?俺が責任を持って帰すと言うさ。安心しろ、事情は言わない。俺が綾といたいだけと言えばいい……嘘じゃないしな」

「あ、ありがとう……た、頼りになる彼氏で幸せです……あ、あとね……いつも大事にしてくれてありがとう……」

「なんだ?急に……大事なのは当たり前だろう」

「当たり前……えへへ……に、にやけちゃうなぁ~」

「ほ、ほら、帰るぞ」

 でないと、そろそろ暴動が起きる……!
 いくら俺でも、何十人の男子の相手はキツイ!
 イチャイチャしやがって!!という視線を感じつつ、教室を後にした。




 その後家に帰り、準備を済ませる。

 そして綾を迎えに行き、所沢駅に到着する。

「まずはどうしたら良いかな?」

「まずは……挨拶に行くか」

 綾の手を引き、とあるところに行く。

「え?ここ?こ、交番だよ?」

「多分、まだいるはず……」

 交番に入ると……いた。
 ガラの悪そうな男が。

「あん?なんだ?カップルがどうした?イチャイチャ罪で捕まえるぞ?」

「えぇ!?え?ど、どうしよう!?冬馬君、私達捕まるの!?」

「おい、落ち着け。たまに出るポンコツをここで出すなよ。可愛いが止まらなくなるだろうが……お久しぶりです、蓮二さん」

「あん?誰だ……冬馬君?……冬馬か!」

「ええ、その節はお世話になりました」

「なんだよー!懐かしいな!真司の弟分か!」

「と、冬馬君?警察の知り合いいたの?」

「正確に言うと、警察になる前に知り合った人かな。以前は……よく、なれましたね?」

「まあな、でも俺も補導歴はないしな。ただ、この辺で遊んでただけだ」

「真司さんと同じですもんね。あと、秩序の維持のために見逃されてた感はありますよね」

「あー……それはあるな。俺がここに配属されたのも、それを期待してのことだし。で、どうした?可愛い彼女の自慢にきたのか?」

「可愛い彼女でしょ?俺の大事な女の子です」

「はぅ……」

「……そうか、見つかったんだな。ふっ、良かったな」

「ありがとうございます」

「で、どうした?」

「………」

「よし、裏に行くか。ついてこい」

 蓮二さんについていき、人気の無いところに行く。

「で、何か問題か?で、揉み消せば良いのか?」

「いえ。そんなことは言いませんし、してはいけないです」

「ハッ、変わらずだな。安心したぜ」

「今って、この辺はどんな感じですか?」

「……ちょい、悪くなったかもな。お前達のいた頃より……。正面からぶつかるんではなく、あの手この手で相手を潰してる感じだな。だから、こっちも把握しきれない」

「レッドキングは?ブルーエンペラーは?」

「もうボスが変わってな……ブルーの方がヤバイ奴かもな。一応マークはしてる。そして、お前の探し人はラーメン屋の駅ビルにいる。俺に言えるのはここまでだ」

「ありがとうございます。では、行ってみますね」

「おう、気をつけてな。綾ちゃんって言ったか?」

「は、はい!」

「冬馬をよろしくな、俺にとっても可愛い弟分なんだ」

「はい!」

「うん、素直で良い子そうだ。冬馬……揉み消しはできないが、時間稼ぎくらいはする。何かあれば連絡しろ」

「蓮二さん!?」

「なに、それくらいはさせてくれ」

 そう言い、去っていった。
 ……全く、あの人もカッコいい大人だよ。

「な、なんか凄いね?警察官と知り合いとか、漫画の世界みたい……」

「いや、結構多いぞ?ヤンチャしてた人がなるパターン。1本筋の通った男に限るけどな」

「そ、そうなんだ……」

 ……むしろ、漫画みたいのはここからだからな。

 ……どうしよう……綾を連れてくのやめる?

 ……いや、本人が確認したいならさせてあげたい。

 いざとなれば、俺が全力で頑張ればいい話だな。

 俺は覚悟を決めて、久々の場所に訪《おとず》れるのだった……。













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