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冬馬君は自重……

冬馬君は定番デートをする

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 昨日、綾にデートを申し込み、無事サプライズも成功した。

 誕生日自体を知ることは容易かった。

 綾のお母さんに聞けばいいだけだからな。

 そこから9月あたりから考え、ネックレスに決めた。

 指輪とか……重たいかなと思ってな。

 それに……それを渡す時は……。

 まあ、そういうことだな。

 だが、男よけに必要かもしれない……。

 そこは、後々考えるとしよう。





 準備をして、綾を迎えに行く。

「冬馬君!おはよう!」

「おう、おはよう……よし、動きやすい格好だな。お洒落したかったかもしれないが、我慢してくれ。ちなみに……俺は、割とそういうの好きだからな?」

 今日は青のジーンズに赤のスニーカー、上は白いモコモコのニットのセーターを着ている。

「えへへ……冬馬君が好きなら良いの。でも、洋服の指定って始めてだったから、それはそれで選ぶの楽しかったよ?冬馬君風に言うと、限られた装備アイテムの中から選ぶ感じかな?」

「そうか、楽しかったならよかった。いや、その例えめちゃくちゃわかりやすいな」

「えへへ、でしょ?冬馬君もシンプルな格好だけどカッコイイね!やっぱり、脚が長いからかな?」

 俺は黒のジーンズに、上は青のパーカーを着ている。

「あ、ありがとな。格好を褒められるのは、あまり慣れないな……」

「ふふ、可愛い。あっ、あまり嬉しくないかな?」

「いや、まあ、でも……綾に言われるなら、不思議と悪くない」

「……そ、そっか……わ、私が特別ってこと……?」

「もちろんだ。綾は、俺の特別な女性だ」

「う、嬉しいです……」

 ……おっといかんいかん。
 上目遣いと照れ顔に、心臓を射抜かれてる場合じゃない。
 まだ、始まってもいないのに。

「ゴホン!では……行くとするか」

「結局、どこに行くの?」

「それは、着いてからのお楽しみだ」

 俺は綾を乗せ、県境を越えていく。
 関東で特別なデートの定番といえば……アレしかない。


「わぁ……遊園地だ!」

 そう、遊園地である。
 恋人や家族連れの定番だな。

「あれだろ?……夢だったと聞いたからな、彼氏とくるのが……」

「え……?り、リサーチしてたってこと……?うわぁ……嬉しい……」

 黒野と森川から聞き出した。
 かなり恥ずかしかったが、こんなに喜んでくれるなら安いものだ。
 ……だが、恥ずいのはここからだ……!
 いけ!俺!可愛い彼女の夢を叶えるんだ!

「さて……お姫様」

 俺は綾の手を取り、ひざまつく。
 そして、手の甲にキスをする。

「ひゃい!?」

「今日一日、綾はお姫様だ。したいこと、やりたいことをなんでも言ってくれ。俺は出来る限り、それに応えよう」

「は、はい……お、王子様……」

 ……流石に恥ずかしいな。
 良かった、人がいなくて。
 なぜなら、振替休日なので、今日は皆にとっては平日だからだ。

 その後チケットを購入し、無事に中へと入る。
 もちろん、俺の奢りである。

「さて……まずは何がしたい?」

「腕を組んで、この中を歩きたいです!」

「お安い御用だ。ほら、どうぞ」

 ……俺の理性よ、今日一日は頑張ってくれよ……!
 やせ我慢でもいいから、カッコつけさせてくれ……!

「えへへー……私の頭がね、ちょうど冬馬君の肩に当たるの……これ、好きかも。身長のバランスが合ってて良かったぁ」

「まあ、10~12センチ違いだからな……その、キスもしやすいしな」

「う、うん……」

 その後楽しくお喋りをしながら、園内を散策した。
 これだけのことが、こんなに楽しいとは……凄いことだな。

「さて……そろそろアトラクション行くか」

「混む前に、ジェットコースター乗りたいかな」

「よし、行こう」

「うん!」

 2人で並ぶことなく、案内される。
 やはり正解だったな。
 我ながらよく考えたものだ。

 そして……。

「キ、キャーーー!!!」

「ウ、ウォーーー!!!」





「す、凄かったね!私、実は来るのも初めてで……いつもの理由で……」

「俺もだな。母さんが身体弱かったからな。一緒に乗れないし。もちろん、母さんは連れてってあげたいって言ったんだが……俺と麻里奈が嫌だったんだよな。母さんと一緒に楽しめないものは……」

「冬馬君……」

「いや、すまんな。綾の誕生日のお祝いなのに……」

「ううん!聞かせて!だって、冬馬君の話なら聞きたいもん!」

「……フッ、良い女だな。ますます惚れてしまうな。そんなに惚れさせて、一体俺をどうする気だ?」

「ふぇ!?ど、ど、どうしよう!?……わ、私に夢中にさせるのです!」

「ハハハ!今更だな!とっくに夢中だというのに」

「はぅ……!わ、私もです……」




 その後小休憩をとり、次のアトラクションを決める。

「わ、私、お化け屋敷が行きたいです……」

「ん?そういうの好きなのか?」

「じ、実は……でも、好きだけど怖がりなの……」

「あー、なるほど。うちの麻里奈と一緒か。あいつも『お兄!一緒に見てあげる!』って言いながら、ブルブルしてたな」

「あっ!わかる!私も誠也に一緒に見てあげる!って言ったことあるもん」

「……その時の誠也の顔が思い浮かぶな。やれやれって顔してなかったか?」

「あれ?なんでわかったの?」

 ……そりゃ、同じ気持ちになったからだろうな。




 お化け屋敷も、そのまま入ることができた。

 そして……定番ですよねー。  

「キャーーー!!!」

「ひゃん!?」

「と、冬馬君!?どこ!?」

「ふぇ!?」

「今!なんかいたよ!?」

「冬馬君~怖いよぉ~」

「はいはい、ヨシヨシ。俺がいるからな」

 結局、楽しいんだか怖いんだがわからんな。
 俺は可愛い綾を見れて、眼福なのですけどね。

「あー!怖かった!でも楽しい!」

「そうか、あれで楽しいのか」

「うん!冬馬君!ありがとう!また一つ夢が叶ったよ!」

「なんか、いっぱいあるらしいな?」

 森川と黒野に聞いたら、昔から言っていたそうだからな。

「う、うん……子供みたいかな?」

「いんや、いいんじゃないか。可愛いよ」

「そ、そうですか……ずっと、いいなぁって思ってたの。好きな人と登下校したり、デートしたり……その、イチャイチャしたり……」

 ……モジモジする綾は正義である。
 もはや、説明などいらない。

「フッ、俺に任せておけ。全て叶えようではないか」

「え?あ、でも、その……ドキドキしすぎちゃうから、手加減してくれると嬉しいです……」

 ……それは……こっちのセリフだーーー!!!

 俺は園内の中心で、心の中で叫ぶのであった。




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