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冬馬君は自重……

冬馬君は打ち上げに行きたくない

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 さて、一夜明けて日曜日になった。

 今日は、体育祭の打ち上げをするそうだ。

 もちろん、真司さんの奢りだそうだ。

 キャバクラに行くことを思えば、安いというものだと。

 今朝、ご機嫌に電話してきた。

「冬馬!!サンキュー!!お前の活躍のおかげで優勝できた!!昨日はタダ飯と、タダで良い女と遊べたぜ!!いやー!楽しかったな!お前もそのうち連れてってやるからな!」

 ……いや、良いけどね。
 貴方にはお世話になっているからね。
 ただ……なんだが、釈然としない。

 俺は準備をして、バイクで綾を迎えに行く。





「冬馬君!わざわざありがとう!」

「おう、綾乗りたかったろ?」

「……バレてましたか……エヘヘ、実はそうなのです」

「昨日電話したときに『明日どうやって集合場所行くの?』なんて聞くからな。こりゃ、そういうことかなと思ってな」

「察してくれて、とても嬉しかったです!」

「お、おう……やけに機嫌いいな?」

「え?そ、そうかな……少し近づいた気がしたからかな?」

「え?」

「そ、その……昨日触ってくれたところがね……あ、熱かったの……それで、そのあとに何故か苦しくなってきて……」

「待て!綾、ストップ!」

 これ以上は色々とマズイ!
 俺のアレが!
 集合場所に向かうところじゃなくなる!

「あっ……ご、ごめんなさい!何言ってるかわかんないよね……」

「いや、気持ちはわかる。ぎゅーと締め付けられる感覚だろ?」

「え……?う、うん!そうなの!……良かったぁー……同じ気持ちなんだ……」

 ……もう、行くのやめようかな。
 そんでもって、綾とイチャイチャしたいです。
 ……いかんイカーン!

「さあ!行くぞ!俺の気が変わらないうちに!」

「はぇ?う、うん?よくわからないけど……」

 俺は綾を乗せ、集合場所へ向かう。

 ……そして思う。
 俺……昨日、これを揉んだんだよな……。
 背中に当たる素晴らしい感触を感じながら、俺はバイクを走らせるのだった。






 集合場所に着くと……。

「綾、良いなー!吉野のバイクカッコいいじゃん!」

「愛子、ありがとう!」


「あれ……そうとう高いぞ?」

「クソッ!なんだ!アイツは!?」

 やれやれ……まだまだ五月蝿いのがいるな。
 いい加減に面倒になってきたな……さて、どうしてくれようか。

 俺がそんなことを考えていると……。

「よう、冬馬」

「先生、こんにちは」

「おいおい、よせよ。気持ち悪い」

「いや、これって……プライベート?」

「そうだよ、だから気にするな。それと……うん、状態が良い。この間も思ったが、大事に使ってくれているようだな?」

「そりゃ、もちろん。値段以上に、真司さんが愛着のあったコイツを、俺にくれたんだ。その気持ちを裏切るわけにいかないさ」

「……冬馬、お前にあげて良かったよ。きっと、そいつも喜んでいる」

「先生!」

「ん?どうした、清水?」

「ありがとうございます!先生がくれたおかげで、私は冬馬君の後ろに乗せてもらえてます!大好きな彼氏の後ろに乗るの、夢だったんです……」

「ククク……どういたしまして。冬馬、中々大変そうだな?」

「いや、まあ……否定はしない」

「はぇ?どういうこと?」

「いや、気にしなくていい」

 ……可愛くて、自制心が大変なだけだ。




 その後ボーリングをして、カラオケの流れとなる。

 もちろん大活躍して、他の男どもを蹴散らしてやった。

 さて、次はこちらで……。

「ウマッ!?なになに?吉野って歌まで上手いの!?綾、いいなぁー」

「あ、愛子!?だ、ダメ!私の冬馬君だもん!」

「あらあら……でも、何人か落ちそうね……」

「うぅー!複雑だよぉ~」

 ……少し、張り切りすぎたか?
 でも……うーん、加減が難しい。

「冬馬!!俺と歌うぞ!俺の美声で女子を落としてやる!」

「いや!アンタが落としちゃダメだから!俺がいるからって、昔に戻るんじゃねぇ!」

「え?先生歌うの?」

「でも、あの低い声じゃねー」

「ププ、ウケ狙いかね?」

 ……無知とは恐ろしいものだ。
 真司さんが、ケミスト○ーのデビュー曲を入れる。
 いや……年代が違うよ!わからないよ!俺は知ってるけども!

「よし!俺がバンダナの方な!」

「はいはい、昔と同じね。俺がイケメンの方ね」

 そして歌い出すと……。

 「え!?先生もウマッ!!曲は知らないけど……てか……良い声……」

「か、カッコいい……」

 あのバリトンボイスをくらい、女子たちが沈没していく……。
 いや、これってまずくね?教師として。
 なにより……綾は……。

 綾は俺を見つめ、両手を上下にブンブンとしている。
 口元から察するに、冬馬君カッコいいと言っているようだ。
 ……ホッ、良かった……負けられない……!

「うわぁ……吉野の声、高くて綺麗……」

「よく、あれがでるなー」

「ムムム……!私だけが知ってたのに……!でも、嬉しい気持ちも……あるのです」





 その後カラオケも終わり、夕方なので解散の流れとなる。

 俺は綾を乗せ、とあるところへ向かう。

「うわぁー!綺麗だね!」

「だろ?昔、よく来たんだ」

 そこは隠れスポットで、夕日が沈んでいくのがよく見える場所だ。

「こんなところに……女の子?」

 綾が膨れた表情で、そんなことを言う。
 めちゃくちゃ可愛い……。。

「いや、1人でな。母さんのことを思い出すときに……」

「あっ……そっか」

「連れてきたのは、綾が始めてだな」

「え?そ、そうなんだ……嬉しい……もう、これだけで十分……」

 ……そういうわけにいかないだろうが。

「綾……誕生日おめでとう」

「え……?し、知ってたの?わ、私、言ってないのに……」

「そりゃ、事前に調べたさ。だから、ほんとは今日行きたくなかったんだよ。綾と、一日中一緒にいて祝ってあげたかった。でも、綾は気を使う子だ。周りにも言ってなかったんだろ?」

「う、うん……愛子と加奈以外には……私、自分でいうと催促してるみたいで……中々言えなくて……ごめんなさい」

「いいさ……俺は、綾のそういうところを好きになったんだ」

「冬馬君……」

「で、これを受け取ってもらえるか?」

「あ、ありがとう……うわぁ……!ネックレスだぁ……!綺麗……!」

「大したものじゃないけど……」

「ううん!嬉しい!冬馬君!大好き!」

「おおっと、急に抱きつくと危ないぞ?」

「えへへ、大丈夫だもん!冬馬君が受け止めてくれるもん!」

 めちゃくちゃ可愛いんですけど?

「ゴホン!でだ、綾」

「ん?」

「俺と、明日デートしてくれませんか?一日中……今日できなかったことを、綾にしてあげたいんだ」

「冬馬君……はい!喜んで!」

「綾……」

「冬馬君……」

 抱擁したまま、俺たちは唇を重ねるのだった……。

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