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冬馬君は自重……

冬馬君は借り物競争でテンプレ通りになる

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 午後の競技は、玉入れ、グルグルバット徒競走、大玉ころがし。

 俺が出場する、借り物競争、男女混合リレー、以上となる。

 ただ、その前に……見たいが見せたくないものが始まる。

 そう、チアガールによる応援の時間である。

 可愛い女の子達がボンボンを持ち、華麗なダンスを披露する。

「「「ウォォォ!!!」」」

 野郎どもの野太い声が響き渡る!!

 無理もない、もちろん綾が1番可愛い。

 だが、基本的に見栄えの良い女子が多い。

 見ているだけで、眼福というものだ。

 物凄い盛り上がりを見せる……ただ、俺が複雑なのを除いては。




 そしてダンスを終えた綾が、俺に駆け寄ってくる。

「と、冬馬君!どうだったかな!?」

「顔が可愛い、脚が綺麗、おへそも綺麗、ポニテ可愛い……好きだ」

「……エヘヘ、嬉しい……と、冬馬君に見て欲しくて頑張ったんだよ?」

 大好きな彼女にこんなこと言われて我慢できる男がいるだろうか。
 いや、そんな奴はいない、いたならそれは頭のおかしい奴だ。
 つまり……思わず抱きしめてしまう。

「はぇーー!?と、冬馬君!?あ、あの!ご家族も見てるよ!?」

「いい、抱きしめさせてくれ。いやか?」

「い、いやじゃないです……えへへ」

 周りからヤジが飛ぶが、そんなことはどうでもいい。
 俺は、満足いくまで綾を抱きしめるのであった……。





 さて、いよいよ借り物競争の時間がきた。
   俺は準備をし、定位置につく。

 え?あの後どうしたかって?
 真司さんが来て、思い切り引っ叩かれたよ。
 全く、邪魔しないでいただきたい。

 そして、ピストルが鳴る!

「ウォォーー!!」

 俺はいち早く、お題が入っている箱にたどり着く!
 ナメンナヨ!?こちとら陸上部に勝った男だぜ!

「どんなお題だろうがやってやる!なになに……ほう?こんな簡単なお題で良いのか」

 ククク……今の俺にはもってこいのお題だな。
 周りにも、良いアピールになるであろう。
 お題を理解した俺は、綾の元に行く。

「と、冬馬君??ど、どうしたの?真剣な表情して……」

「綾ーー!!好きだーー!!俺と付き合ってくれーー!!」

「……え?はぇー!?わ、私達、付き合ってなかったのーー!?」

「ポンコツか!!……いや!そうではなくて!お題だ!好きな子に告白して連れてこいという!」

「……こ、こんな、みんないるのに……でも、う、嬉しい……!」

「綾!時間がない!失礼!」

「ひゃあ!?冬馬君!?」

 綾をお姫様抱っこし、お題地点まで戻ってから、再び走り出す!

「おっーと!吉野選手!お題は……一目瞭然ですね!それにしても速い速い!さすがは、今来てる男は違いますねー!彼女ともラブラブのようです。何やら、これを機に一歩進みたいようです。え?彼ですか?俺の親友ですよ」

 ……アキーー!!午後の部を実況してんのお前かよ!!

「ええ、彼はとても良い男です。未だに認めない方々もいるようですが、彼女の顔を見てください!あの両手で顔を隠す恥じらいの姿!それでいて、身を任せている信頼感!ベタ惚れじゃないですか!え?私ですか?生徒会長です。え?知ってる?ああ、そういうことですか。私は、彼と腐れ縁です」

 ……お前もかー!!小百合ーー!!

「冬馬ーー!!私、アンタのこと諦めてあげるーー!!」

「冬馬ーー!!ありがとうございます!おかげで、目が覚めました!」

 ……飛鳥と智也か……どうやら、上手くまとまったようだな。
 これで、少しは不義理を贖罪できたかね。

「ガハハ!昔を思い出すな!」

 やれやれ……剛真か……これも綾のおかげだな。
 綾がいなければ、あいつらとも再び関わることもなかっただろう。
 俺に、再び人と関わる勇気をくれた綾に、感謝をしなくてはな。
 照れ臭いが、きちんと伝えるとしよう。

 俺は綾をお姫様抱っこしたまま、一位でゴールテープをきるのだった。

「綾?大丈夫か?」

「は、はい……ドキドキしたよぉ……」

 綾を降ろすと、小百合がマイクをこちらに向ける。
 ……いつの間に!?これもお前かよ!?

「はい!吉野さん!お題の確認をしますね!……好きな子に告白して、一緒にゴールすること!はい!確かに!この難題をクリアしました!一位です!おめでとうございます!」

「ありがとうございます」

「では、ついてですが……彼女のどこに惹かれたのですか?」

「ひゃい!?」

「……彼女の容姿が優れていることは、誰もが知ってることだと思います。もちろん、それを好きなことは否定しません。ただ、俺は……それ以上に、彼女の優しさに惹かれました。俺は、とても薄情な人間でした。とある事情により自ら壁を作り、心配してくれる友に不義理を働いてしまいました。そして、傷つくことを恐れました。そんな俺の心を、彼女の優しい心が溶かしてくれました。このまま友達との仲を修復しなかったら、俺は将来後悔していたでしょう。一度途切れたものを修復するのは、容易なことではありません。ただ、彼女がその勇気をくれました。綾、ありがとう。お前のおかげで、俺はこいつらと再び友達になれた」

「冬馬君……ううん!私こそ!」

「冬馬……綾さん、ありがとね」

「綾ちゃんーー!!ありがとうーー!!」

「清水さん!ありがとうございます!」

「ガハハ!感謝する!」

「冬馬ーー!これからもよろしくなー!!」



「よくわからないが、感動した!」

「若いって良いな!」

「昔を思い出すわね!」

 ギャラリーから拍手が巻き起こる!

 その後、綾に連れ出され、ひと気のない場所へ行く。

「もうなにがなんだか……」

「ごめんな、ずっと言いたかったんだ。綾がいたから、俺は仲直りする勇気を持つことができた」

「冬馬君……えへへ、嬉しいね。私でも、冬馬君の力になれるんだね。なんか、私ばっかり色々貰ってるみたいで……」

「何を言うかと思えば……いつだって力になっているさ。言っておくが……俺は、綾のことが大好きなんだ。そして好きな子に、誇れる自分でいたいからな」

「冬馬君……」

 目を閉じた綾に、俺は優しくキスをするのだった……。
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