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冬馬君は自重……

冬馬君は全力疾走する

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 無事に騎馬戦を勝利した俺は、綾の元に駆けつける。 

「綾ーー!!どうだ!?」

「だ、だめーー!!こんなところじゃ……!」

 綾は両腕を交差し、胸を隠そうとする。

「はい?いや、そういうことではなくて……ゴクリ……」

「はぇ!?なに今の!?」

 いや、だって……胸が強調されてるーー!!

「綾、貴女が悪いわ。そんなのしたら、誰だってそうなるわ」

「加奈?どういうこと?」

「……相変わらず、なんて恐ろしい子……!」

「綾、違うから。多分、吉野は活躍したことについて聞いたんだと思うよー」

「え?あ、いや……キャーー!!恥ずかしいよぉーー!!」

「おい!?綾!?どこに行くーー!?」

 結局追いかけていき、耳まで真っ赤な綾を連れ帰るのであった。

 ……褒めて欲しかったが、眼福だったので良しとしよう。

 その後は他の種目なので、皆と観戦をする。




 

 体育祭は順調に進み、次の種目の時間となる。
 いよいよ、400メートルリレーである。
 10クラスなので、5クラスずつやるそうだ。

 くじ引きにより、俺はアンカーということなった。
 メンバーはサッカー部の佐々木と奥村。
 そして、陸上部の藤田の4人だ。
 バトンは藤田から受け取ることになる。

「なあ、藤田。良かったのか?俺がアンカーで……陸上部ったら、リレーは花形だろ?」

「ん?まあ、そうだな。でも、良いんだよ。それに……お前のが速そうだ。本気でやれよ?俺に気をつかうことなく」

「……ああ、そうする。感謝するぜ」

「いや、いいさ。面白そうだし」

「けっ!吉野!俺らの走りを無駄にすんなよ!」

「そうだ!そうだ!帰宅部のお前がアンカーとかおかしいだろ!」

「見てろ。期待は裏切らないつもりだ」

 俺の燃料は満タンだからな………!

 それぞれ配置につき、いよいよスタートの時間だ。

 ピストル音が響く!

「イケーー!!」

「佐々木ーー!」

 クラスから、応援の檄が飛ぶ。
  5人中、3位につけている。

 そして奥村に渡り、少し縮めたが3位のままだ。
 無理もない……ほとんどが陸上部だ。
 バトンを受け取った中野が、なんとか2位に浮上する。

 ……よし、落ち着け。
 確実にバトンを受け取り、流れるように走る……。
 俺はタイミングを図り、ゆっくりと動き出す。

「吉野!!」

「よしきた!」

 絶好のタイミングで、バトンを受け取る!
 バトンを受け取った手を、流れるように前に出し、そのまま振っていく。
 すぐにトップスピードに達して、1位のやつに猛追する!

「冬馬君ーー!!カッコいいよーー!!頑張ってーー!!」

 ……負けられねぇーー!!
 冬馬!男だろ!?惚れた女の前でカッコつけなくてどうする!?

「うおおおーーー!!!」

「なんだ!?あいつ!?差を縮めてるぞ!?」

「おいおい!1位のやつ、県大会で優勝した奴だぞ!?」

 そのまま差を縮め、最終コーナーを曲がり、直線に入る。

「ふ、ふざけんな!帰宅部なんかに!」

「悪いな!負けるわけにはいかねえんだよ……!」

 ほぼ2人同時に、ゴールを決める!

 俺は勢いあまって、そのまま転ぶように地面を転がる。

「ブハッ!?ど、どうなった!?」

「一から出直しだな。帰宅部に負けるとは」

「冬馬君ーー!!すごいよーー!!1位だよーー!!」

「よっしゃーー!!」

 これで、ご褒美に一歩近づいた……!




 そして、昼食の時間となる。

 つまり……こうなるわけだ。

「これは、初めまして。冬馬の父です。いつも、息子がお世話になっております」

「いえ、こちらこそ。冬馬君は今時珍しく、とてもしっかりした子。きっと、ご両親の育て方が良かったのでしょう」

「君が誠也君!?」

「は、はい!」

「てことは……私の弟ね!わー!可愛い!」

「え!?お、お兄さん!?」

「やめい!麻里奈!抱きつくんじゃない!てか、お前の弟じゃないし!」

「はは……なんか、賑やかだね」

 そう、今日は二つの家族が揃った。
 親同士、兄弟同士は初対面ということだ。
 というわけで、一緒にお昼という流れになる。

 親父が綾のお母さんと話している……不思議な感覚だ。
 誠也……すまん!麻里奈の相手をしてくれて!

「なんか……」

「不思議な感じ……」

「「………」」

「ハハ!」

「エヘヘ」

 皆で仲良く、食事をとるのであった。




 結局その後は、一緒に観戦をすることにしたらしい。

 ……あとで、誠也に謝ろう。

 そして、綾にひと気のないところに連れてかれる。

「どうした?」

「あ、あのね!さっきのことなんだけど……」

「さっき?」

「あ、あの……愛子が言ったこと……」

「ああ、アレか。大丈夫だ、わかっている。ただの冗談だろ?」

 そりゃ……めちゃくちゃ触りたいが、綾の気持ちを無視してはいけない。
 好きだからこそ、欲望を押し付けてはいけない……。

「そ、そうなの!あっ!でも!冬馬君が嫌とかじゃなくて……!」

「わかってる。大丈夫だ、俺は待つ。安心してくれ。そんなことくらいで、嫌いになどならない」

 ……やせ我慢だとしても、顔に出すなよ!俺……!

「冬馬君……」

「ほら、行こうぜ」

 綾の手を引き、校庭へ向かう。

「……冬馬君はこんなに……私……」

「ん?どうした?」

「ううん!なんでもないよ!行こ!」

 さて……次は借り物競争である。



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