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冬馬君は自重……

冬馬君の友達出現で清水さんは焦る

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 そして、綾を保健室に連れて行ってる間に、授業の時間は終わった。

 幸い、綾の足は軽度の怪我で済んだ。

 テーピングや包帯も巻くこともなく、安静にしていればすぐに治るようだ。

「と、冬馬君、もう大丈夫だよ……?」

「ダメだ、教室まで運ぶ」

「で、でも……もう、お昼休みだから人がたくさん……」

「ねえねえ!アレってお姫様抱っこじゃない!?」

「キャーーー!!少女漫画みたい!良いなぁー」

「……そうだな。じゃあ、せめて教室の前まで運ぶな」

「は、はぃぃ……はぅ……」




 綾を教室の前で降ろす。

「あ、ありがとう……ち、力持ちだね。階段も上がっちゃうなんて……」

「まあな、綾ぐらいなら楽勝だ」

 その時、後ろから何かが来る!!

「ドーン!!冬馬ー!!冬馬だーー!!わーー!!懐かしい!!」

「てめー!!その声は飛鳥だな!?俺の背中に飛び乗るんじゃねえ!降りろ!」

「ヤダー!!私はここに住む!!」

「住むな!相変わらずの馬鹿力め!」

「え!?えぇ!?あの子って……」

「おい!アレって、運動部のアイドルと言われてる飛鳥ちゃんだろ!?」

「どういうことだ!?アイツ、清水さんだけじゃないのか!?」

 周りにざわざわと、人が集まってくる。

「クソ!おい!ストッパーはどこだ!?智也はどうした!?」

「はいはい、ここにいますよ。全く、騒がしいことです」

「オメーが止めねーからだ!」

「仕方ないですよ。僕らだって、2年も我慢してたんですよ?」

「そうだよー!冬馬が『高校では俺に関わるな』って言うから、我慢したのに……」

「そりゃ……すまなかった、俺が完全に悪いな」

「そうだ!もっと謝れ!いきなり逆高校デビューからの、再度高校デビュー?……ああ!もう!サッパリわかんない!いきなり、可愛い子彼女にしてるし!」

「はいはい。飛鳥、降りなさい」

「むー!わかったよー」

「フゥ……智也、久しぶりだな。お前は相変わらずだな」

「冬馬こそな。ようやく、吹っ切れたんだな?」

「ああ、この子のおかげでな」

「え?え?ど、どういうこと?」

「綾、紹介する。俺と同じ中学のダチで……」

「芹沢智也です。よろしくね、清水さん。今回のテストはやられたよ。次は、負けないように頑張るよ」

「よ、よろしくです。あっ、学年2位の芹沢君?」

「そういうことです。あーあ……冬馬のせいで、三年間学年トップがパァだよ」

「……なんで、俺のせいになる?」

「だって、国語教えたでしょ?」

「……謝らないぞ?」

「もちろんだ。むしろ、張り合いがあって良いしね」

「はいはーい!私は、足立飛鳥!冬馬の元カノです!!」

「……えぇーー!!??と、冬馬君!!いや、でも、いてもおかしくないよね……スン」

「あ・す・か・?」
 
  顔面にアイアイクローをかます!

「イタタターーー!!!顔潰れちゃうよ!」

「俺は、女には手をあげない主義なんだがな……いつ、お前が元カノになった?」

「わかった!ごめんなさい!」

 俺は手を離してやる。

「ふぅー、痛かった」

「飛鳥、今のはやりすぎだ。しっかり謝るんだ」

「はーい……清水さん、ごめんね。元カノじゃないよ。冬馬はモテたけど、少なくとも彼女はいなかったから」

「あっ、そうなんだ。ホッ……」

「ふふふーん……ただ、私が冬馬のこと好きだっただけだから」

「ふぇ?……えぇーー!?と、と、冬馬君!?」

「あー……それは、本当だな。まあ、即断ったがな」

「ホント!こんな可愛い女の子が告白したのに、バッサリと断るんだから!今からでも、付き合う?」

「ダメーー!!わ、私は冬馬君大好きなの!わ、私の彼氏だもん!」

「こら!腕を組むな!」

「ムムム……!なんだ!冬馬!おっぱいか!おっぱいなのかー!?私にはないからかー!」

「おっぱいかー……じゃねえ!智也!」

「はいはい。飛鳥、帰るよ。昼休み終わっちゃうからね。冬馬、今度時間作れるかい?」

「ああ、必ず作る。他の奴にも、連絡頼めるか?」

「仕方ない、任せてくれ。じゃあ、またね」

「あー!楽しかった!冬馬!またねー!」

 2人は去っていく……さて、どうしたものか。

「むー!むむむ!ぎゅー!」

「ぎゅーじゃないから!綾、落ち着け!」

「私の彼氏だもん……渡さないもん……!もん!」

 ……飛鳥、あとで褒めてやろう。
 綾がめちゃくちゃ可愛い……もんって……可愛すぎるだろ!





 その後、なんとか綾を落ち着かせ、いつもの空き教室に行く。

「は、恥ずかしいよぉー……みんなの前で……」

「すまんな、俺のダチが。あれでも、気のいい奴らなんだ。俺が悪いんだ。不義理をしてしまったからな……」

「……それって、中学の時に……お母さんのこと?」

「ああ、そうだ。あれがあった後、俺は何もかもが嫌になってな。母さんを知っている奴らに会いたくなかったんだ。よく、家に来てたからな。その後、高校入る前に言ったんだ。俺に関わるなと……アキだけは、聞かなかったけどな。だから、全面的に俺が悪い」

「そうなんだ……仲良さそうだったもんね?」

「まあ、否定はしない。他にも何人かいるから、今度紹介するよ」

「……女の子、他にもいる……?」

「……あと1人いるな。まあ、気にするな」

「むー!気になります!よーし!私、負けないように頑張るね!」

 ……こういうところが、やっぱり好きだな。

 俺に、その人達との付き合いをやめてと言わないのだから……。
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