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冬馬君は彼女のために……

冬馬君は彼女の家でご飯を食べる

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 さて、綾の家に到着したのだが……。

「あらあら!?こんなに素敵になって!綾、大変ね!」

「そうなの!加奈や愛子まで、良いかもとか言うの!」

「あら?やっぱり?モテモテになっちゃうわね……綾!お母さんが伝授を授けます!」

「うん!わ、私、頑張るよ!他の子に、ま、負けないんだからーー!!」

 何やら、2人は盛り上がっている……。
 俺は、綾以外に興味ないのだが……。
 こればかりは、言っても通じないということか。
 理解するまで攻めるとしよう。

「にいちゃん!!カッコいい!!スゲーー!!」

「ありがとな、誠也。とりあえず、俺とゲームするか?最近、遊んであげてないしな」

「え!?いいの!?やったーー!!」

「フッ……可愛い奴だ。で、何がいい?」

「んー……バイオハザー○がいい!お姉ちゃん、下手くそなんだ」

「あー……そういや、そうだったな……よし、いいだろう」

 2人で、ゲームに夢中になる。

「おっ!誠也、上手いな」

「ほんと!?へへ、やった……にいちゃんに褒められた」

「だが、まだまだだな……見てろよ……今!」

 四方から迫り来るゾンビを、巧みなコントローラー捌きで、殲滅する!

「スゲーー!!ノーダメージだ!」

「フッ、基本ソロプレイの俺を舐めちゃいかんぜよ」

「あー!ずるい!私も、冬馬君独り占めしたい!」

 ……なんつー可愛いことを……誠也とお母さんがいて良かった……。

「あら?でも、もう夕方よ?冬馬君は、帰らなきゃじゃない?」

「あっ……そっか」

「にいちゃん、もう帰るの?」

 ……可愛いのが、2人おる……!
 ……今日は、半休で親父がいるな……麻里奈は1人にならない。

「ちょっと、待ってな……あっ、もしもし。ああ、そうだ。綾の家で……あん?……出来た妹だこと……わかった、わかった。帰りにコンビニ行って、ハーゲンダッ○買ってきてやるよ……あいよ、じゃあ親父によろしく」

「冬馬君、どうしたの?」

「妹に電話したら『お兄の分のご飯ないからね、外で食べてきて』だとさ。どうやら、見越していたらしい」

「あらあら!じゃあ、一緒に食べましょうか!でも、材料を買いに行かないと……」

「お母さん!私と行こう!私、ご飯作る!!」

「え?綾が……?それは……いや、これも訓練が必要ね。良いお嫁さんになるには必要ね!じゃあ、行くわよ!」

「うん!冬馬君!誠也のことお願いね!行ってきます!」

 2人は返事も聞かずに、ドタバタと出かけていった……はい?

「にいちゃん、ごめんね。いつも、こんな感じなんだ」

「そうか……誠也、苦労してるんだな」

 中々、ハイテンション親娘のようだからな。

「へへ、僕は長男だからね。パパにも、お母さんとお姉ちゃんを頼むって言われたし」

 俺は、思わず頭を撫でてしまう。

「偉いな、誠也は。俺とは段違いだ。お前は良い男になるな。俺が保証する」

「ほんと!?僕も、にいちゃんみたいになれる!?」

「きっと、俺よりも良い男になれるさ。その気持ちを忘れなければな」

「うん!わかった!」






 その後、三十分くらいで、2人が帰ってきた。

「よーし、頑張るぞ!」

「あ、綾?お母さん手伝った方が……」

「冬馬君に!手料理を食べてもらうの!じゃないと!他の子に負けちゃう!」

「いや、だからな……」
 
「ダメだよ、にいちゃん。もう、止まらないよー」

「……まあ、これはこれで可愛いからいいか」

「ごめんなさいね、今日はまともな食事は出ないかもね……」



 誠也は、今のうちにお風呂に行った。

「そういえば……お名前を聞いていませんでしたね」

「あら?……そうね、お母さんじゃあれよね。玲奈って言うわ」

「では、今後は玲奈さんとお呼びして良いですか?」

「……いやだ、ドキってしちゃうわね」

「ちょっと!?お母さんまで!?」

「いやいや、冗談に決まってるだろ。綾、料理は集中してやった方がいいぞ?」

「う、うん……美味しくなかったら、ごめんなさい……き、嫌いにならない?」

「そのくらいでなるかよ。いいさ、どんなものでもどんとこい」

「と、冬馬君……よーし!頑張るぞー!」

「あらあら、良い男の子だこと」

 その後、玲奈さんと話していたのだが……。
   ……これは、見てられないな。
 俺は、キッチンにいる綾の背後に立つ。

「綾、失礼するぞ」

 綾の両手を、軽く握る。
 ……これ、後ろから抱きしめてるみたいだな。
 どうしよう……めちゃくちゃ良い匂いがする……。

「と、冬馬君!?こ、腰が……手、手が……」

「ほら、動かすぞ?とん、とん、とん……」

「う、うん……とん、とん、とん……」

「あらあら!初めての共同作業ね!写真撮らなきゃ!」

「ほら、出来た。綾は力が入りすぎだ。もう一回やるぞ?もっと力を抜いて……そうだ」

「で、出来た……綺麗に切れた!冬馬君、ありがとう!」

「おうよ。これでも、料理してるからな」

 ……よく耐えた、俺の下半身よ……。





 その日のメニューはカレーだった。
 え?カレーって失敗することあるの?

「頂きます……うん?普通に美味いぞ?」

「ほんと!?良かったぁー。今日はね!裏を見て作ったの!」

「綾……!成長したわね!冬馬君、ありがとうございます!」

「にいちゃん……!ありがとう!」

「えぇーー……そういうことか。まるで見ないで作ってたのか……」

 そりゃ、不味くもなるわな……。




 その後、食事とお茶を頂き、家に帰る時間になる。

「どうも、お邪魔しました」
  
「僕、お見送りするー!」

「誠也はダメよ。お風呂入ったんだから」

「私、お見送りするね!」



 玄関を出て、バイクのエンジンをかける。

「冬馬君、今日はありがとう。その……今までも」

「なんのことだか……俺は、俺のしたいようにしているだけだ」

「ふふ……いつものセリフだね。でも、不安だなぁ……」

「綾、こっちを見ろ」

 綾の顎に触れ、キスをする。

「え?あっ……んっ、ちょ、あっ……」

 ゆっくりと、唇を離す。

「わかったか?」

「ひゃい……わ、わかりましたぁ……す、凄かったぁ……」

「なら、いい。では、また明日な」

 急いでバイクに乗り、出発する。

 ………い、いかん!彼女の家の前で、なんつーことを!

 思わず、舌を入れてしまった……。

 ……付き合って、約二ヶ月か……もう少し、耐えてくれ……!
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