上 下
47 / 185
冬馬君は彼女のために……

冬馬君は地味な生徒を卒業する

しおりを挟む
 ピピピッ!!ピピピッ!と目覚ましの音がする……。

「……ふぁーあ、よく寝たな。さて、いよいよか。あー……前髪が目にかからん。後ろも、以前は肩ぐらいまであったからなぁ……」

 きちんと髪を切るのなんか、何年振りだ?
 今までは、自分で切っていたからな……。

 俺は部屋を出て、一階へ降りる、

 そして、洗面所の鏡の前立つ。

「違和感……これは、慣れるまで時間がかかるな」

 その後歯磨きを終え、リビングに入る。

「あっ!お兄!おはよ!……うん!カッコいいよ!」

「おっ、冬馬。おはよう、さっぱりしたなぁ」

「おはよう、二人共。いまのところ、違和感半端ないけどな」

「ふふふ……綾ちゃんが惚れ直しちゃうね!」

「だと、良いんだがな……だが、本番はこれからだ」

「冬馬、気張れよ?」

「ああ、親父。では、飯を食い、準備に入る」

 俺は、急いで朝ご飯を食べる。




「さて、まずは電話するか」

 俺は、とある人に電話をかける。

「あ、もしもし。真司さん、おはよう」

「おう、冬馬。覚悟は決めたようだな?」

「まあね。綾のためなら、なんてことない。ようやく、真司さんが言ってたことわかってきたよ」

「だろ?そういうのは、自然とわかるものさ。で、許可は取ってあるが、どうする?」

「真司さんがそのまま、自分のところに持っていくことはできるかな?」

「俺がお前から受け取り、そのまま行けばいいのか……おう、いいぜ。今日は、別のところに停めておく」

「ありがとう、真司さん。お金はきちんと払うから」

「そんなのいるか。可愛い弟分の門出の日だ。それくらいさせてくれ」

「真……真兄、ありがとうございます」

「おっ、久々だな。それで呼ばれるのは……ただ、条件がある」

「ん?なんだ?俺にできることなら、出来る限り協力する」

「ふっ、さすがは我が弟分よ。あのなー、今度の体育祭で優勝したクラスの担任がな、他の男の先生達からキャバクラ奢ってもらえるんだよー……冬馬、本気出してくれないか?」

「はい、さよなら。じゃあ、よろしく」

「待てーー!!お前ばっかずるいぞーー!!俺だって、女の子とーー」

 俺は電話を切る。

「全く……せっかく、カッコよかったつーのに……」

 まあ、照れ隠しなのはわかってるけど……いや、あれは本気だったか。



 次に俺は、久々の髪型でヘアセットをする。
 そしてスプレーで固める。
 でないと、潰れてしまうからな。

「よし、これでいいか」

 もうすでに、親父と麻里奈は家を出ている。
 俺は家を出る前に、母さんのところに行く。

「母さん、おはよう。うん、髪型変えたよ。大事な女の子が、俺が不甲斐ないせいで、周りから色々言われてるみたいなんだ。その子は何も気にしないけど、俺が嫌なんだ。だって、その子には心から笑っててほしいから。俺は、その笑顔を好きになったんだから……うん、じゃあ行ってくるよ」

 俺は家を出て、バイクに乗って出発する。





 学校近くまで来た。

 そして、そのままゆっくりと校門の中に入っていく。

「な、なんだ!?あのカッコいいのは!?」

「カワサキだ!!あれ、最低でも40万はするぜ!?」

「だ、誰かしら!?」

 俺は、真司さんがいるところまですすむ。
 そして、メットを脱ぐ。

「おっ!懐かしいな!さっぱりして……うんうん、いいんじゃないか?」

「はは、まだ違和感あるけどね。じゃあ、お願いします」

「おうよ。帰る時間になったら、俺のところに来い」

 バイクは真司さんに預ける。
 でないと、イタズラとかされそうだからな。

 よし、ここからだな。
 俺は、自分の容姿が整っているとは思っていない。
 よくて、上の下だろう。
 だが、やりようはいくらでもある。

 髪の量を軽くし、サイドを残しつつ、天辺にボリュームを出す。
 前髪も、おでこが軽く出るようにした。
 えりあしは、刈り上げない程度に残しておく。

 あとは姿勢だ。
 背筋を伸ばし、胸を張る。
 顎を引き、堂々と歩く。
 これだけで、大分変わるはずだ。

「ねえねえ!!あの男前は誰!?」

「あんな人、うちにいた!?」

「なんか、強そうだな……」

「あんな気合いの入った奴いたっけ?」

 ……とりあえず、上々のスタートといったところか。
 すると、聞き慣れた声がする。
 そいつに、肩を組まれる。

「よっ!冬馬!おいおい!さっぱりしたな!」

「よっ、アキ。まあな……お前に聞きたい。これで、少しは平気か?」

「良い男だな、お前は。ああ、ばっちしだ。十分男前て通じるさ。この、超絶イケメンの俺が保証する」

「なら、安心だ。じゃあ、行ってくるわ」

「おうよ。ククク……これで、俺も遠慮なく絡めるな」

「……ほどほどにな」

 そのまま視線を感じながら、校内に入る。
 そして、入り口付近の順位表を見る。
 うちの学校は、学年50位までは張り出されるからな。

「……よし。これならば……」

 俺の順位は、学年で5番目に入っていた。
 そして……。

「おいおい……綾には本気を出せとは言ったが……」

 なんと、綾は学年トップになっていた。
 だが、5位ならなんとか釣り合いもとれるだろう。

 その時、俺の心が動く声が聞こえる。

「と、冬馬君……?」

 そちらを見ると、目を見開いた状態の、俺の大好きな女の子がいた……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R15】【第一作目完結】最強の妹・樹里の愛が僕に凄すぎる件

木村 サイダー
青春
中学時代のいじめをきっかけに非モテ・ボッチを決め込むようになった高校2年生・御堂雅樹。素人ながら地域や雑誌などを賑わすほどの美しさとスタイルを持ち、成績も優秀で運動神経も発達し、中でもケンカは負け知らずでめっぽう強く学内で男女問わずのモテモテの高校1年生の妹、御堂樹里。親元から離れ二人で学園の近くで同居・・・・というか樹里が雅樹をナチュラル召使的に扱っていたのだが、雅樹に好きな人が現れてから、樹里の心境に変化が起きて行く。雅樹の恋模様は?樹里とは本当に兄妹なのか?美しく解き放たれて、自由になれるというのは本当に良いことだけなのだろうか? ■場所 関西のとある地方都市 ■登場人物 ●御堂雅樹 本作の主人公。身長約百七十六センチと高めの細マッチョ。ボサボサ頭の目隠れ男子。趣味は釣りとエロゲー。スポーツは特にしないが妹と筋トレには励んでいる。 ●御堂樹里 本作のヒロイン。身長百七十センチにIカップのバストを持ち、腹筋はエイトパックに分かれる絶世の美少女。芸能界からのスカウト多数。天性の格闘センスと身体能力でケンカ最強。強烈な人間不信&兄妹コンプレックス。素直ではなく、兄の前で自分はモテまくりアピールをしまくったり、わざと夜に出かけてヤキモチを焼かせている。今回新たな癖に目覚める。 ●田中真理 雅樹の同級生で同じ特進科のクラス。肌質や髪の毛の性質のせいで不細工扱い。『オッペケペーズ』と呼ばれてスクールカースト最下層の女子三人組の一人。持っている素質は美人であると雅樹が見抜く。あまり思慮深くなく、先の先を読まないで行動してしまうところがある。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

プレッシャァー 〜農高校球児の成り上がり〜

三日月コウヤ
青春
父親の異常な教育によって一人野球同然でマウンドに登り続けた主人公赤坂輝明(あかさかてるあき)。 父の他界後母親と暮らすようになり一年。母親の母校である農業高校で個性の強いチームメイトと生活を共にしながらありきたりでありながらかけがえのないモノを取り戻しながら一緒に苦難を乗り越えて甲子園目指す。そんなお話です *進行速度遅めですがご了承ください *この作品はカクヨムでも投稿しております

人違いで同級生の女子にカンチョーしちゃった男の子の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

俺の家には学校一の美少女がいる!

ながしょー
青春
※少しですが改稿したものを新しく公開しました。主人公の名前や所々変えています。今後たぶん話が変わっていきます。 今年、入学したばかりの4月。 両親は海外出張のため何年か家を空けることになった。 そのさい、親父からは「同僚にも同い年の女の子がいて、家で一人で留守番させるのは危ないから」ということで一人の女の子と一緒に住むことになった。 その美少女は学校一のモテる女の子。 この先、どうなってしまうのか!?

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

家政婦さんは同級生のメイド女子高生

coche
青春
祖母から習った家事で主婦力抜群の女子高生、彩香(さいか)。高校入学と同時に小説家の家で家政婦のアルバイトを始めた。実はその家は・・・彩香たちの成長を描く青春ラブコメです。

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

処理中です...