静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

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冬馬君は彼女のために……

冬馬君は地味な生徒を卒業する

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 ピピピッ!!ピピピッ!と目覚ましの音がする……。

「……ふぁーあ、よく寝たな。さて、いよいよか。あー……前髪が目にかからん。後ろも、以前は肩ぐらいまであったからなぁ……」

 きちんと髪を切るのなんか、何年振りだ?
 今までは、自分で切っていたからな……。

 俺は部屋を出て、一階へ降りる、

 そして、洗面所の鏡の前立つ。

「違和感……これは、慣れるまで時間がかかるな」

 その後歯磨きを終え、リビングに入る。

「あっ!お兄!おはよ!……うん!カッコいいよ!」

「おっ、冬馬。おはよう、さっぱりしたなぁ」

「おはよう、二人共。いまのところ、違和感半端ないけどな」

「ふふふ……綾ちゃんが惚れ直しちゃうね!」

「だと、良いんだがな……だが、本番はこれからだ」

「冬馬、気張れよ?」

「ああ、親父。では、飯を食い、準備に入る」

 俺は、急いで朝ご飯を食べる。




「さて、まずは電話するか」

 俺は、とある人に電話をかける。

「あ、もしもし。真司さん、おはよう」

「おう、冬馬。覚悟は決めたようだな?」

「まあね。綾のためなら、なんてことない。ようやく、真司さんが言ってたことわかってきたよ」

「だろ?そういうのは、自然とわかるものさ。で、許可は取ってあるが、どうする?」

「真司さんがそのまま、自分のところに持っていくことはできるかな?」

「俺がお前から受け取り、そのまま行けばいいのか……おう、いいぜ。今日は、別のところに停めておく」

「ありがとう、真司さん。お金はきちんと払うから」

「そんなのいるか。可愛い弟分の門出の日だ。それくらいさせてくれ」

「真……真兄、ありがとうございます」

「おっ、久々だな。それで呼ばれるのは……ただ、条件がある」

「ん?なんだ?俺にできることなら、出来る限り協力する」

「ふっ、さすがは我が弟分よ。あのなー、今度の体育祭で優勝したクラスの担任がな、他の男の先生達からキャバクラ奢ってもらえるんだよー……冬馬、本気出してくれないか?」

「はい、さよなら。じゃあ、よろしく」

「待てーー!!お前ばっかずるいぞーー!!俺だって、女の子とーー」

 俺は電話を切る。

「全く……せっかく、カッコよかったつーのに……」

 まあ、照れ隠しなのはわかってるけど……いや、あれは本気だったか。



 次に俺は、久々の髪型でヘアセットをする。
 そしてスプレーで固める。
 でないと、潰れてしまうからな。

「よし、これでいいか」

 もうすでに、親父と麻里奈は家を出ている。
 俺は家を出る前に、母さんのところに行く。

「母さん、おはよう。うん、髪型変えたよ。大事な女の子が、俺が不甲斐ないせいで、周りから色々言われてるみたいなんだ。その子は何も気にしないけど、俺が嫌なんだ。だって、その子には心から笑っててほしいから。俺は、その笑顔を好きになったんだから……うん、じゃあ行ってくるよ」

 俺は家を出て、バイクに乗って出発する。





 学校近くまで来た。

 そして、そのままゆっくりと校門の中に入っていく。

「な、なんだ!?あのカッコいいのは!?」

「カワサキだ!!あれ、最低でも40万はするぜ!?」

「だ、誰かしら!?」

 俺は、真司さんがいるところまですすむ。
 そして、メットを脱ぐ。

「おっ!懐かしいな!さっぱりして……うんうん、いいんじゃないか?」

「はは、まだ違和感あるけどね。じゃあ、お願いします」

「おうよ。帰る時間になったら、俺のところに来い」

 バイクは真司さんに預ける。
 でないと、イタズラとかされそうだからな。

 よし、ここからだな。
 俺は、自分の容姿が整っているとは思っていない。
 よくて、上の下だろう。
 だが、やりようはいくらでもある。

 髪の量を軽くし、サイドを残しつつ、天辺にボリュームを出す。
 前髪も、おでこが軽く出るようにした。
 えりあしは、刈り上げない程度に残しておく。

 あとは姿勢だ。
 背筋を伸ばし、胸を張る。
 顎を引き、堂々と歩く。
 これだけで、大分変わるはずだ。

「ねえねえ!!あの男前は誰!?」

「あんな人、うちにいた!?」

「なんか、強そうだな……」

「あんな気合いの入った奴いたっけ?」

 ……とりあえず、上々のスタートといったところか。
 すると、聞き慣れた声がする。
 そいつに、肩を組まれる。

「よっ!冬馬!おいおい!さっぱりしたな!」

「よっ、アキ。まあな……お前に聞きたい。これで、少しは平気か?」

「良い男だな、お前は。ああ、ばっちしだ。十分男前て通じるさ。この、超絶イケメンの俺が保証する」

「なら、安心だ。じゃあ、行ってくるわ」

「おうよ。ククク……これで、俺も遠慮なく絡めるな」

「……ほどほどにな」

 そのまま視線を感じながら、校内に入る。
 そして、入り口付近の順位表を見る。
 うちの学校は、学年50位までは張り出されるからな。

「……よし。これならば……」

 俺の順位は、学年で5番目に入っていた。
 そして……。

「おいおい……綾には本気を出せとは言ったが……」

 なんと、綾は学年トップになっていた。
 だが、5位ならなんとか釣り合いもとれるだろう。

 その時、俺の心が動く声が聞こえる。

「と、冬馬君……?」

 そちらを見ると、目を見開いた状態の、俺の大好きな女の子がいた……。
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