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冬馬君は彼女のために……

冬馬君は勉学に励む

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 さて……客観的に見て、綾と釣り合うと思われるために、俺が何をすべきか。

 まずは、来週にある中間テストだな。
 
 そこで順位を上げて、とりあえず勉強ができるということを証明する。

 もう目立ってしまっているので、手を抜く必要もない。

 というわけで、俺は試験勉強に励むことにする。

 今は、放課後の図書館で、綾と一緒に勉強中である。





「……君!冬馬君!」

「ん?綾、どうした?図書館では静かにしないと……」

「もう、閉まる時間だよ?ほら、見て」

 綾のスマホを見る。
 そして、周りを見渡してみる。

「マジか……ホントだ、誰もいない」

 いつの間ににか、夜の6時前になっていた。
 うちの学校の図書館が、もうすぐ閉まる時刻だ。

「最近、凄いよね?猛勉強してるし、集中力も高いし……冬馬君、何かあったの……?」

「いや、綾がいると捗るんだよ。隣にいると落ち着くしな。もちろん、ドキドキもするがな」

「そ、そうなんだ……う、嬉しいです。わ、私も一緒だよ?」

「そうか、それは幸せなことだな。では、帰るか?」

「うん!帰ろ!」

 二人で、当たり前のように手を繋ぎ、学校内を歩いていく。
 部活終わりの連中が、遠巻きに眺めている。

 ……ふむ、何か言われることはなくなったが、視線はまだまだ感じるな。
 この中の誰かが、書き込みをしているのか?
 おそらくだが、一部の人間で大多数の人間に見せかけているとは思うが……。

 狡い手を使うやつらだ……やるなら、正々堂々とやれってんだ。
 そういうのが、人を追い込むと何故わからない?
 何かあってからでは、遅いというのに……。
 最近は、善悪の区別もつかない奴らが増えてきたな……。
 みんなやってるしという言葉の元に、好き勝手しやがる……!


「どうかしたの……?怖い顔してるよ?」

 おっと、いかんいかん……。

「いや、まだ見てくる奴がいるから威嚇をな……俺の女だと……いや、この言い方は良くないか」

 女性はモノではないからな。

「ううん!そ、その……私は嬉しいです……そういうの好き……」

「……そうなのか。うむ……善処しよう」

「……実は、それも夢でした……また、叶っちゃった……!冬馬君は、私の夢をどんどん叶えてくれるね!」

 綾はそう言い、弾けるような笑顔を見せる。
 ……この笑顔が見れるのなら、俺は苦労など厭わない。





「そういえば、バイトはどうしてるんだ?」

「テスト近いけど、やってるよー。回数は少ないけど、リフレッシュにもなるし。冬馬君は?」

「俺も、今回は綾と似たようなものだ。確かに、リフレッシュになるんだよな」

「やっぱり、煮詰まっちゃうもんね。それにバイト始めたばかりだから、休んだら忘れちゃいそうだから」

「あー、それは言えてるな。俺がそうだった。それで、友野さんに叱られたものだ」

「えぇー!?そうなんだ!?今では、仲良しだよね?」

「まあな……最初は怖かったなぁ……いつも、黙ってるし。まあ、それが今では心地いいんだけどな」

「ふふ、また行きたいな。店長さんには、挨拶してないもん」

「あー、そういや言われたな。『冬馬君!!店長だけ仲間外れなの!?悲しいじゃないか!!』って」

「じゃあ、尚更だね。テスト終わったら行こうね!」

「ああ、そうするか」





 その日の夜……俺は遅くまで勉強をしていた。

 例のことを知ったのが、1週間前だから時間は限られている。
 少しでも良い点数をとり、周りから認められなくてはな。
 テストの点数は、ある意味1番わかりやすいからな。

 それと……例の裏掲示板とやらを、実際に見てみた。
 俺に対する罵詈雑言で溢れかえっていた……。
 死ね!などの、キツイ言葉も出てきたようだ。
 さすがの俺も、ノーダメージというわけにはいかない。
 綾の悪口がないことが、唯一の救いだな……。
 だが、このままだと危なそうだ……よし!やるぞ!


「お兄?まだ、起きてるの?」

「麻里奈か……まあな、少し本気を出すことにした」

「それって綾ちゃんのため?」

「まあな……色々あってな」

「そっか……私、コーヒー持ってくるね」

「おい、お前は……もう行ったのか」

 その後、可愛い妹からのエールをもらった俺は、再び勉強に励むのであった……。






「君……冬馬君!!」

「あれ?綾、どうしてここに?」

「寝ぼけてる……可愛い……じゃなくて!お昼を食べながら、寝ちゃうなんて。ほんとうに、大丈夫?何か無理してない?」

「ああ、してないさ。ごめんな、心配かけて。ちょっと、面白い小説見つけてしまってな。つい、遅くまで見ちゃったよ」

「なら、いいんだけど……まだ、眠いかな?」

「うん?……まあ、そうだな」

「では……学ラン借りるね!」

 脱いであった学ランを敷き、その上で正座をする。

「はい!どうぞ!私には……こ、これくらいしかできないけど……」

 ……まあ、さすがに薄々気づいているか……。
 だが、それを言ってはいけない。

「ありがとな、綾。俺は、お前と付き合えて幸せだ。後悔などしていない、それだけは覚えておいてくれ」

「冬馬君……やっぱり……うん!嬉しいよ!私も、冬馬君と付き合えて幸せだよ!」

 綾の膝枕の気持ち良さに誘《いざな》われ、俺は再び眠りにつくのだった……。





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