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冬馬君は彼女のために……

冬馬君は激昂する

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 さて、始業式から翌日のこと。

 今日も綾と待ち合わせをし、学校へ向かう。

「昨日よりはマシか……」

「そうだね、視線や悲鳴は減ったかも」

「これで、少しずつ認知されていけばいいかな」

「……ごめんなさい、面倒だよね……」

「おい、怒るぞ?俺がいつそんなこと言った?大好きな彼女のためなら、こんなの面倒なうちに入らん」

「と、冬馬君……大好きって言ってくれた……」

「あれ?あんまし言ってないっけ?」

 そういや、大事とか大切とかが多かったか?
 うむ……照れるが、綾が喜ぶなら頑張るとしよう。

「う、うん……嬉しいです……」


「なんだ!?あれ!?」

「あまーい!!ってか!!」

「クソーー!!いいなーー!!」

 ……やっぱり、まだ収まらないようだ。




 そしてその日の放課後、綾が用事があるというので、教室で待っていた。

 短縮授業だし、このまま遊びたいと言われたからだ。

 いわゆる、初めての制服デートというやつだな。

 教室にはまだまだ人が残っていて、その中に田中君もいた。

 なので俺は、田中君とライトノベルについて語り合っていた。

 どうやら、この田中君は良い人のようだ。
 ネタバレや、押し売りはしてこない。
 遊んだりはしないだろうが、学校にいる分には話すことにした。

「吉野君は、他にどんなもの読むの?」

「そうだな……昔の作品だが、フルメ○やスレイヤー○なんかも好きだぞ?」

「あっ!ほんと!?僕も好きだよ!いいよね!ライトノベルの金字塔だもんね!」

 すると教室のドアが開き、知らない男が俺に話しかけてくる。
 ジャニー○系の容姿で、いかにもなイケメンだな。

「お前か!吉野とか言う奴は!清水さんと付き合っているのは本当か!?」

「ああ、そうだよ。ところで、お前誰だ?」

「はぁ!?俺を知らないだと!?澤田拓海だ!さすがに知ってるだろ?」

「しらん」

「なーー!!なんでこんな奴と!?こんな地味な奴なんかと!しかも、友達はキモいオタクの非リア充かよ!清水さんは、お前には勿体ない!」

「おい、貴様。今、何と言った?」

 俺は怒りに震える……こんなに怒るのはいつぶりだろうか……!

「な、なんだよ……勿体ないって言ったんだよ!」

「そこじゃない。綾が俺には勿体ないくらいの、可愛く、綺麗で、性格も良くて、家族思いで……何より、人の気持ちに寄り添える素敵な女の子なのは百も承知だ」

「チッ!惚気かよ!!」

「ああ、そうだ。だが、今はそこじゃない。何故、田中君が非リア充なんだ?」

「はぁ!?当たり前だろ!ラノベやアニメ見てるやつは非リア充だろ!」

「その当たり前とはなんだ?誰が決めた?お前か?」

「み、みんなそう言うだろ!」

「そのみんなとは誰だ?連れてこい、論破してやる。ところで、お前の趣味はなんだ?」

「なんだ、急に……まあ、ギターとかアウトドア系かな」

「それで、お前はリア充なのか?」

「はぁ?当たり前だろ?モテるし、スポーツもできる。趣味もイケてるだろ?」

「それはお前の好きなことだな?」

「そりゃ、そうだ」

「じゃあ、何故同じ好きなことなのに、ライトノベルやアニメは非リア充になる?同じことだろう?ただ、趣味が違うだけだ。お前がリア充であることを否定しない。だが、田中君も
 間違いなくリア充だ。だって好きなことをして、楽しく過ごしているのだから。何故差別をする?マウントをとりたいのか?」

「な、なんなんだよ!?はぁ!?わけわかんねーし!もういいよ!」

 そう言い残し、その男は去っていった。
 チッ!!まだまだ言いたいことは沢山あった言うのに!

「吉野君……!ありがとう!僕、感動したよ!」

「いや、別に当然のことを言ったまでだが……」

 すると、一部から拍手が起きる。

「よく言ってくれた!!」

「そうだよな!俺らだってリア充だよな!」

「好きなことしてるんだもんな!」

 ……なんかよくわからないが、まあいいか。

「冬馬君!!」

「おっ、綾。終わったのか?」

「うん!帰ろ!」

 綾はなんでか知らないが、満面の笑顔だ。

「ああ、帰るか。田中君、またな」

「うん!じゃあね!」



 廊下に出ると、綾の友達の2人がいた。

「へえー、やるじゃん。綾の彼氏と知った時はアレだったけど」

「そうね。でも、案外お似合いかもね。よく見ると、男前ですし」

「それはどうも。一応自己紹介をしておくか。綾の彼氏だ」

「もう!2人とも!冬馬君!いこ!」

「わかった、わかったから引っ張るなよ」

 そのまま綾に手を引かれ、学校を出る。
 そして、駅に向かい歩き出す。

 綾は、何やらずっとにやけている……可愛い。

「なんか、嬉しそうだな?」

「え!?か、顔に出てたかな!?」

「ああ、ニヤついてるぞ?まあ、可愛いから別にいいんだが」

「……あのね!……その……」

「綾?」

 今度はモジモジしている……ヤバイな、抱きしめたくなる。

「う、嬉しかったの!冬馬君!ありがとう!」

 そう言うと、俺の腕にしがみつく!

「ちょっ!?綾!それはよくない!非常にマズイ!」

 当たってるから!
 柔らかいモノが!!

「で、でも、こうすれば喜ぶって……加奈達が……」

 何教えてんのーー!?
 いや、喜んでますけど!?
 ありがとうございます!いや、ちがーう!!

「アイツらめ……で、何がどうした?」

「あのね……さっきの話聞いてたの。加奈達と一緒に。ただ、あの人苦手だから出て行けなくて……」

「ああ、なるほど。まあ、しつこそうではあったな。もしアレなら、殺るが?」

「ダメだよ!?でも、その気持ちが嬉しい……あの時、冬馬君が言ってくれたことが嬉しかったの……私の見た目だけじゃなくて、中身を好きになってくれたことが……あっ!もちろん、わかってはいたんだよ!?ただ、私のいないところで、きちんと言葉にしてくれたのが嬉しくて……」

「そうか……まあ、見た目も中身も好きだな。俺は綾といると、いつも幸せな気持ちになる」

「エヘヘ……一緒だぁ……あのね!加奈達に言われてたの!身体目的じゃないか?とか、そういうことを……でも、アレを聞いて認めてくれたみたい」

「まあ、仕方あるまい。良い友達じゃないか。心配したってことだろ?」

「そう言ってくれる冬馬君大好き!!」

「おい!だから!押し付けるなって!ヤバイから!」

「エヘヘ、冬馬君大好き!」

 結局、腕を組まれたまま、駅まで行くのであった。

 ……ハァ、俺の忍耐よ、すまないがもう少し踏ん張ってくれ……。





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