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冬馬君の自制心は……

冬馬君は好きの先を知る

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 さて、今日は8月10日。

 あのプール行きたい発言から、2日が過ぎた。

 正直言って、そこからの記憶はあまりない。

 とりあえず了承し、家に帰ったことは覚えている。

 ただ、料理を失敗し、妹に怒られた。



 俺は日に日に増していく、綾への気持ちに少々困っている。

 アイツ、可愛すぎて困る……!

 すでに、俺の忍耐力は限界に近い……。

 二回目のデートをしたが、もう可愛すぎて大変だった……。
 洋服を見てあげたら、どれも似合ってるし。
 荷物を持っただけなのに、輝くような笑顔でお礼言うし。
 手を繋いで欲しそうに、チラチラ見てくるし。

 ……まあ、数えたらキリがない。

 そして、いよいよ今日……最大の試練が待ち受けている。

 俺は綾の魅力に負けずに、自分を律することができるだろうか?

 ……よし!気合い入れていくぜ!!






 俺は準備をして、地元の駅へバイクで向かう。

 迎えに行こうか?と聞いたら、何故か断られたからだ。

「冬馬君!お待たせ!」

「いや、今来たところだ。珍しいな?綾の方が遅いとは」

「エヘヘ、我慢したよ。だって、一度お待たせって言ってみたかったから……なんか、恋人っぽいかなって……」

 出だしからコレか……俺の精神よ!踏ん張りところだぞ!?

「なるほど、だから迎えに来なくて良いってことか。じゃあ、行くか」

 俺はバイクに跨り、エンジンをかける。

「うん!」

 綾も、メットを被って後ろに乗る。

 ゆっくりと走り出し、大きいプール施設へ向かう。

 背中に柔らかなものを感じながら……。






 さて、施設に到着し、手を繋いでプールへ向かう。

「わー!プールなんて久しぶり!嬉しい!」

「ん?どういう意味だ?」

「あ、あのね……少し、お話しても良いかな?」

「ああ、良いぞ。じゃあ、あそこのベンチに座るか。今、周りに人いないし」

「ありがとう……」

 うーん、なにやら暗い顔しているな。
 俺で力になれることなら、なんでもするのだがな。

 とりあえず、2人でベンチに座る。
 俺は、綾が言い出すのをじっと待つことにする。




「あ、あのね……私、中学生くらいになったらね……そ、その身体が発育しますというか……」

 なるほど、言い辛いわけだ。

「いや、大体わかった。そこは飛ばして良いぞ」

「と、冬馬君……優しい……ありがとう!それで、男の人から見られることが多くなってきて、恥ずかしいからプールとかにも行けなくて……それならまだしも、ナンパとかもされるし……一緒にいた友達まで迷惑かけちゃうこともあって、行きたいけど行けなかったの」

「まあ、正直……気持ちはわかるがな。綾みたいな可愛い女の子がいたら、見てしまうだろうな。だが、相手が嫌がるほど見るのはいけないことだな。それに求めていないナンパとかもな」

「と、冬馬君は、見て良いからね……?」

 ゴフッ!!ボディーに刺さる!!

「いや、それは、見たいとは……いや、そうではなくてだな……」

「ふふ、やったぁ。冬馬君、照れてるー」

「おいおい、勘弁してくれ。つまり、俺は見る奴らの目を潰せば良いんだな?」

「違うよ!?」

「え?違うのか?しようがない、死んでもらうか」

「それも違うよ!?」

「冗談だよ。じゃあ、どうすれば良い?」

「本気の目だった気が……うん、あのね……その、側にいて守って欲しいの……もちろん、自意識過剰なのは、わかってるんだけど……冬馬君がそばにいれば平気かなって……そ、それに彼氏とプール行きたかったもん」

 ……これは、難易度高いぞ。
 己の欲を殺しつつ、見てくる奴らを威嚇し、綾が楽しめるようにする。
 ……無理ゲーじゃね?
 だが、やるしかあるまい……!

「わかった。俺の全てかけて守るとしよう」

「と、冬馬君……ありがとう……その、大好き……」

 





 ……おっといけない、意識が飛んでしまった。

 そして、いつの間にか、更衣室にいる。

 あれ?俺どうやってきたんだ?

 とりあえず、綾より先に行かなくては!

 急いで着替え、表に出る。

 そし、待つことに数分後……天使が現れた。

「お、お待たせ。ど、どうかな?」

 そこには、水色のビキニ姿の可愛い彼女がいた。
 上の方にはボリュームとハリのある胸、下には眩しい脚線美。
 ヤバイ……視線がそらせない……言葉が出ない……。
 そして、不思議と男のしての本能は働かなかった。
 ただ、ただ見惚れてしまう。


「と、冬馬君……は、恥ずかしいよぉ……」

「すまん……予想を上回る可愛さだったからな。つい、見惚れてしまった。よく似合っているよ」

「う、うん……ありがとう……ねえ!いこ!」

「おい!引っ張るなよ!」

 手を引かれ、プールの中へ向かう。

 男達からの嫉妬と羨望の眼差しを受けながら……。
 ……もちろん、ガン見する奴は、殺すつもりで威嚇した。

「わー!久しぶり!気持ちいいね!」

「言われてみれば、俺も中学生の頃以来か」

「そうなんだ!じゃあ、お揃いだね!」

 うむ、楽しそうで何よりだ。
 なんだろうな、この気持ちは。
 心が温かくなるというか……わからないが、とても良い気分だな。

「ねえ!スライダーやろう!あれ、2人乗りなんだよ!」

「ああ、良いぞ……2人乗り?」



 ……まあ、こうなるわけか。

 ボートに乗り、綾を俺の前に座らせる。
 綺麗なうなじと肩が目に入り、ドキドキする。
 それに、視線の先には谷間が……フゥ、精神統一だ……。

「ド、ドキドキするね!色々な意味で……」

「そ、そうだな。色々な意味で……」

 そして、店員に押され動き出す。

「キャーー!!」

「ウォォーー!!」

 2人とも、大はしゃぎである。




「あー!楽しかったね!次は泳ご!」

「いいだろう。インドアの底力を見せてやる」

「いや、どう見てもそうは見えないよ?お、お腹とかバッキバキだし……さ、触ってもいい?」

「ん?ああ、良いぞ」

「し、失礼します……うわぁー、凄いね……かたい……」

「まあ、日々鍛えているからな。健全なインドアには、健全な肉体が必要だ」

「ふふ……そうなの?冬馬君、面白いね」

「そうか?俺にとっては普通なんだがな」

 その後ひとしきり泳ぎ、最後に温かいプールに行く。

 そこは身体を冷やさないように、温かいお湯が入っているのだ。

 2人並んで手を繋ぎ、のんびりする。

「あー!楽しかった!そういえば、全然視線が気にならなかったなぁ。やっぱり、好きな人が隣にいるからかな?」

「まあ、めちゃくちゃ見られていたがな。その度に、視線だけで殺したがな」

「エヘヘ、ありがとう……わ、私のナイト様……」

 ……うん、わかったかもしれない。
 男のしての本能を感じつつも、それとは別の何かを感じる。

 多分、これは……愛しいという感情なのかもしれない。





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