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冬馬君の自制心は……

2回目のデート

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 今日は8月8日。

 綾との2回目のデート日である。

 今日は、綾の住む町で遊ぶことになった。

 今日は、俺が夕飯当番の日なので、14時から18時まで遊ぶことになった。

 ちなみに、俺はきちんとした格好をして、バイクで向かっている。

 髪や格好を整えるのは面倒だが、綾のためなら苦にならない。

 それに、綾は俺のために頑張って可愛くあろうとしている。

 ならば、俺もそれに応えなくては男がすたるというものだ。

 何より、綾に恥をかかせるわけにはいかない。

 俺は周りのことは気にしないが、「え!?あんなのが彼氏なの!?」とか綾が言われたら、困るかもしれないしな。

 もちろん、綾はそんなこと一言も言わないがな。






「冬馬君!こんにちは!」

「おう、綾。今日も、髪型も服装も可愛いな」

 今日の綾は、薄い白のロングスカートに、白のV字Tシャツに水色のパーカーを着ている。
 髪型も普段は後ろの方に下ろしているが、今日は右側だけシュシュでくくり、前の方に持っていきている。

「ほんと!?良かったぁー……嬉しいな。あのね!昨日、雑誌を見ててね!これなら、冬馬君好きかな?とか、可愛いって言ってくれるかな?って考えてたの!」

 ゴハッ!!マ、マズイ……!!
 被害は甚大である……!俺の精神が……!
 なんだ、この可愛い女の子は……!
 しかも、自然と萌え袖になってやがる……!

「そ、そうか。うん、そうだな」

 ダメだ!上手く言葉が出てこない!
 俺の方がタジタジになっている!!

「冬馬君?どうかしたの?」

 下から覗き込むな……!
 上目遣いしないでくれ……!

「いや、大丈夫だ。俺は至って冷静だ」

「そ、そう?なら、いいんだけど……もしかして、具合悪いとか?私、今日を楽しみにしてたけど……それなら……」

「待て、違うから。すまん、心配かけた。とりあえず、行こうか」

「うーん……うん、わかった!でも、無理しないでね?」

「ああ、それは大丈夫だ」

 何という優しい女の子だ……惚れ直してしまうな。
 俺はただ……その、なんだ、男としての本能が疼いただけなのに……。
 いかんな……綾が気を使わなくていいように、俺の精神を鍛えなくては!





 と、思った俺だが……早くも、ギブアップ寸前である。

「は、初めてだね……男の子と、2人でプリクラ撮るの……」

「……そうか、俺も初めて……というか、プリクラが初めてか」

 ていうか、まだこういうのあったんだな……。
 さて、何故ギブアップ寸前かというと……。
 今、腕を組んでいる……つまり、柔らかいモノが密着しているということだ。
 ……ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ……!
 俺の中の男よ!静まれい!!

「エヘヘ、こうやって腕組んで……か、彼氏と撮るの夢だったんだー」

「……なら、良かったよ。ただ、俺はよくわからないぞ?」

「冬馬君は、そのままでもいいよー。カッコいいもん。それに、これは私のワガママだもん。一緒に撮ってくれるだけで嬉しいよ?」

 すると、機械が動き出す。
 冬馬!!彼女の些細なワガママに付き合わずして、彼氏を名乗れると思っているのか!!
 よし!恥は捨てろ!!

 俺は綾に合わせ、必死にポーズをとる!
 ピースしたり、笑ってみたり、色々とやってみる!

「え!?冬馬君!?」

「シャッター押すの早すぎないか!?」

 そしてあっという間に終わり、俺は一息つく。
 ……フゥ、なんとか乗り切ったか。
 さすがに、落書きはお任せすることにした。

「エヘヘ……撮れた」

「俺、変な顔してるな……綾は、こんなに可愛いのに」

「え!?そ、そんなことないよ!冬馬君もかっこいいよ!」

「そうか?うーん、どういう顔していいかわからん」

 その後、デパートでウインドウショッピングをすることになった。

「あ、あの……手を……繋ぎたいなって……」

「ああ、いいよ。ほら」

「うん!」

 2人で手を繋ぎながら、デパート内を散策する。
 ただそれだけのことで、何故こんなにも楽しいのだろうか?
 なんとも言えない、不思議な感覚だな……。

「洋服見てもいいかな?あ、でも男の人には退屈かな?」

「いや、大丈夫だ。妹で慣れてるからな。それに、綾と一緒なら退屈なことなどない」

「冬馬君……その、私もです……」

 とある店に入り、試着をすることになったのだが……。
 言葉では言いつつも、若干の不安を抱えていたが、杞憂だったようだ。
 だって、めちゃくちゃ可愛いから、ずっと見ていられる。

「これ、どうかな?」

「可愛い」

「え?いや、その、嬉しいんだけど……」

「すまん、頭がそれで埋め尽くされた。似合っているぞ。長くて綺麗な脚してるから、ホットパンツもよく似合う」

「綺麗……エヘヘ、嬉しい……その、冬馬君は……どういうのが好きかな?」

「綾が好きだな」

「えぇ!?ち、違くて、いや、違わなくて……はぅ……」

「まあ、綾が着てればなんでも好きだが、そういうことではないよな。うーん……意外とシンプルが好きかもな。夏だったら、ミニスカートにV字Tシャツとか。ワンピースだけとか。ちなみに、今の格好も好きだよ」

「そ、そうなんだ……シンプル……うん、帰ったら研究しなきゃ……」

「おーい、帰ってこーい」

「はぇ!?き、聞いてたかな……?」

「いや、聞こえなかったよ」

 いや、聞こえていたけどな。
 ここは、これが正解だろう。
 それにしても、俺のために……可愛いなぁ。




 その後、カフェに行ってお喋りをする。
 そして帰る時間が近づくと、綾がこんなことを言う。

「次、いつ会えるかな……?」

 帰したくない。
 ……いやいや!違うから!
 くそー、可愛いヤツめ……!
 俺を、何度殺す気だ……!

「明日は1日バイトだしな……明後日なら平気だと思う」

「あ、あの、その、えっと……」

 綾の顔が、どんどん紅く染まっていく。
 今にも、湯気が出そうなほどに。

「どうした?何でも言ってくれ。きちんと聞くから」

「冬馬君……うん!あのね!わ、私と一緒にプールに行って欲しいの!」

 ……どうやら、付き合い始めてからの、最大のピンチを迎えたようだ。

 俺は、もう、ダメかもしれない……。


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