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冬馬君の自制心は……

冬馬君はガンバル

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 さて、夏休みに入り8月5日を迎えた。

 あの初デートから、3日といったところか。

 ……めちゃくちゃ楽しかったな……すこぶる可愛いし。

 ちなみに、あれ以来は会っていない。

 お互いに、そればかりになってはいけないからな。

 もちろん、会いたいとは思うが……。

 それに……俺とは違い、綾は人気者だ。

 友達などの付き合いもあるだろう。

 それを邪魔してはいけない、それではあまりに自己中だ。

 ちなみに、俺はアキにだけは付き合ったことを伝えてある。

 めちゃくちゃ笑われたがな……。

 だから言ったろ!?とか、ハハハ!ほれみたことか!とか……。







「さて、部屋の片付けはこんなものかな」

 今日は、いよいよ綾が俺の部屋にくるのだ。
 ……まあ、俺も健全な男子なので、色々と隠さなきゃいけないしな。

「お兄ー!?そろそろくるんじゃないのー!?」

「ああ!わかってる!今、終わったところだ!」

 俺は一階に戻り、リビングに入る。

「と、冬馬!俺はどうしたらいい!?」

「なんで、親父がテンパってるんだよ……普通でいいよ」

「何を言うか!息子の初めての彼女だぞ!?そして、お前の傷を癒してくれた子だぞ!?父として、きちんとしたいではないか!」

「親父……有り難いが、普通で頼む。親父がそうやって構えていたら、綾の方が緊張しちまうよ」

「むむ……それも、そうか。では、少し落ち着けてくる」

 親父は和室に行き、母さんになにかを言っているようだ。

「お兄に彼女かー……」

「なんだ?寂しいのか?」

「ち、違うし!お兄が幻滅されて振られないか、心配なだけだし!」

「うんうん、可愛い妹よ。大丈夫だ、彼女は彼女。妹は妹、別腹だ」

「よく言ってる意味がわからないんだけど……」

「大丈夫だ、俺もわかっていない」

「……もしかして、お兄……緊張してる?」

「……バレたか。実はそうだ。手汗が止まらない……」

 心臓の鼓動も早いしな……まだ、来てもいないのに大丈夫か?これ。

 その時、インターホンの音が聞こえる。

「あっ!お兄!!」

「ああ、行ってくる」

 俺は玄関に向かい、ドアを開ける。

 そこには、とてつもなく可愛い女の子が立っていた。

「おい、綾……ちょっと、可愛すぎるぞ?」

「こんに……えぇ!?ど、どういうこと!?」

 普段はおろしているロングヘアーを、ポニテにしている。
 もちろん、左右に触覚ありの状態だ。
 今日は白のワンピースタイプの服装のようだ。
 上には薄い生地の、水色のカーディガンを羽織っている。
 なんていうか……眩しい……清楚系な感じだ。

「うん、よく似合ってる。それに、ポニテがめちゃくちゃ可愛い」

「あぅ……あ、ありがとう……その……嬉しいです……」

 うむ、照れ顔は眼福である。
 ご飯三杯はいけそうだ。

「お兄がデレデレだ!」

「うんうん、俺も母さんにああだったな……」

「こ、こんにちは!本日はよろしくお願いします!」

「まあ、とりあえず上がんな」

「うん!お邪魔します!」





 その後、母さんに挨拶をし、リビングのテーブルに座る。

「冬馬君のお父さん、初めまして。清水綾といいます。と、冬馬君の彼女……です」

「うんうん、初々しくていいね。こちらこそ初めまして。冬馬の父で辰馬といいます。色々極端で面倒くさい息子だが、よろしく頼むね」

「はい!こちらこそよろしくお願いします!」

「はい、もういいだろ。部屋行こうぜ」

「えー!?お兄!私、話してないよー?」

「これから来ることもあるから、その時にしてくれ。俺が居た堪れない」

「あれ?お兄、照れてるのー?」

「おやおや、息子の照れ顔なんか初めてだな」

「ふふ……冬馬君、可愛い」

「あー……勘弁してくれ。ほら、行くぞ」

「うん!すみません、失礼します」

「冬馬ー、いくら可愛いからって襲うなよー?」

「……ガンバルよ」

「え?え?えぇー!?」

「お兄!ガンバ!!」




 そして、俺の部屋に入る。

「お、お邪魔します……」

「お、おう。まあ、座んな」

「う、うん……さっきのは……?」

「うん?ああ、気にしなくていい。綾が可愛すぎるから、俺が襲わないか心配しただけだろ」

「ふぇ!?お、お、お……」

「まあ、落ち着いてくれ。そんなことしないから。親父と妹いるし」

「そ、そうだよね!ご、ごめんなさい……」

「……今日、親父と妹いて良かったな……」

「え?」

「いや、なんでもない。さて、どうする?」

「お、お部屋見てもいいかな?」

 ……大丈夫なはず……あれらは隠してある。

「ああ、良いぞ。大したものはないが」

「やったぁ!ありがとう!エヘヘ、好きな男の子の部屋だー」

 ヤバイな、可愛いぞ。
 俺、ガンバレ。

「へぇー、なんか不思議……誠也とは違う……それに、匂いが……あっ!この本知ってる!あっ!これも!」  
  
 匂い?臭かったのか?どういう意味だ?

「ねえねえ!ちょっと見てもいいかな!?」

「ああ、いいぞ」

「緊張のせいかな? 少し暑くて……ハンガーあるかな?」

 そう言い、カーディガンを脱ぎたしたのだが……。

「……すまん、綾。冷房の温度下げるから着ててもらえるか?」

「え?ど、どうして?ワンピースだけだと、み、みっともないかな……?」

「違う。魅力的すぎて、俺の理性がもたない」

 今すぐベッドに押し倒したくなる……!
 肩出てるだけなのに……!
 何故に、こんなに衝動に駆られる……!
 俺!ガンバレ!

「理性……?あっ……えっと……その、着てますぅ……」

「頼む……ドキドキしすぎて、俺にはまだ早い。ごめんな」

「で、でもね!う、嬉しかった!その、私がそういう対象になるって……」

 何を言っているんだ?この可愛い奴は?

「当たり前だろ。俺は健全な男子高校生だ。好きな女の子には……その、なんだ。ドキドキするわけよ」

「で、でも冬馬君、あまりそういう視線向けないから……私、そういうのには敏感だったから……だから、どうすればドキドキしてもらえるかなって……」

 ……いかんいかーん!!耐えろ!!おれ!!

「それは、そうだろう。興味がないといえば嘘になるが、それでは失礼だろうに。そんなことは、俺の信念に反する。その、なんだ……綺麗事かもしれないが、俺は綾の中身もきちんと好きなわけで……もちろん、身体も魅力的で……でも、好きだからこそ……あー、すまん……上手くまとまらない」

「う、ううん!伝わってきたよ!そ、その……とっても、嬉しいです……エヘヘ……私、冬馬君が彼氏で幸せ者だなぁ……」

 いや、どう考えても俺の方が幸せだと思うが?

「そ、そうか。その、なんだ……俺も、綾が彼女で幸せだよ」

「エヘヘ、凄いね。こんなことってあるんだね」





 その後、しばらく話していたが、俺の精神力に限界が訪れた。

 なので、リビングに戻り、親父と妹を交えてお喋りに花を咲かせた。

「あのですねー、お兄がですねー……」

「へぇー!そうなんだ!」

 今は、妹と話している。
 俺の小さい頃の話のようだな。

「なあ、冬馬。綾ちゃんは良い子だな」

「ああ、そう思う。俺には勿体ないくらいだ」

「ハハ!まさか、息子から聞けるとは……冬馬、わかってるな?」

「ああ、もちろんだ。大事にする。出来るだけ、節度ある行動をする」

「なら、よし。まだ、高校生だからな。だが……まあ、いいか」

 その後、夕方を迎え、綾をバイクで駅まで送っていく。

 ちなみに、来る時に迎えに行かなかったのは、綾がそう望んだからだ。

 よくわからないが、自分で俺の家まで行って、挨拶をしたかったらしい。

「冬馬君、ありがとう!わざわざ、家まで送ってくれて……」

「いや、いいさ。心配だしな」

「え?まだ、夕方だよ?」

「可愛い彼女がいると心配なんだよ」

「か、彼女……慣れないね……ずっと嬉しい」

「そうだな……俺もだ。じゃ、じゃあな!」

「うん!またね!今日は楽しかった!」

 再び、バイクを走らせる。


 俺も、可愛さに慣れそうにもないな。
 むしろ、増してきている。

 とりあえず言えることは、今日の俺ガンバった!
 よく耐えた!自分を褒めてやりたい!

 ……当分の間、自分の部屋には入れないようにしよう。

 俺の理性が持ちそうにない……。
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