静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中

文字の大きさ
上 下
29 / 185
冬馬君の自制心は……

冬馬君は彼女が可愛いが止まらない~中編~

しおりを挟む
 さて、ようやく出発できたのだが……。

 俺はすでに、自制心が崩壊寸前だった……。

 さっきから、ギュッと抱きつかれているからだ……。

 だが、なんとか耐えている。

 俺は背中に当たるモノを意識しないように、運転に集中する。

 大事な女の子を乗せているのだから、怪我をさせるわけにはいかない。




「凄いねー!気持ちいいねー!」

「そうか!そいつは良かった!」

 ちなみに今は、俺の地元に向かっている。
 しみ……綾が、何やら行きたいと言ったからだ。
 理由はまだ知らないがな。


 そのまま走り続け、俺の地元の駅に到着する。

「あー!楽しかった!と、冬馬君!ありがとう!」

 まあ、名前呼びは慣れが必要だな……実は、俺も。

「なら、良かったよ。で、綾はどうしたい?」

「綾……う、うん、その……できたらでいいんだけど、普段冬馬君が行っている場所を教えてほしいなって……その!違うんだよ!?冬馬君の大事な時間の邪魔をするわけじゃなくて!……ただ、どんなところで過ごしているのか知りたいなぁ……と思って……」

 最後の方は尻窄みになりながら、綾が言った。

「なんだ?そんなことで良いのか?良いぞ」

「そうだよね、図々しいよね……え!?良いの!?」

「ん?どういう意味だ?」

「だって……冬馬君は、自分の時間が大事な人でしょ?私、邪魔したくないもん。そ、それに嫌われたくないもん……」

 ……な・ん・だ・こ・の・か・わ・い・さ・は……?
 ……どうしてくれようか……!!
 今すぐ抱きしめてやろうか!?

 綾は上目遣いをし、不安そうに俺をチラチラ見てくる……。
 すぐに答えなくてはいけないのに……!
 うぉぉぉ!!可愛いんだが!!

「と、冬馬君……?」

 ……よし、ひとまず鎮静化に成功した。

「ゴホン!……えっとだな、少し勘違いしているから、言っておく。俺は、自分が好きなことをするための時間が欲しいわけだ。そして、その時間が大事なわけだ。ここまで良いか?」

「う、うん……」

「でだ……俺は綾が好きだ、そして大事だ。一緒にいたいと思う」

「ふぇ?……え!?」

「つまりは、自分が好きな事の中に、綾が入っているわけだ」

「ひゃい……」

 どんどん顔が紅く染まっていくが、今言っとかないと遠慮されそうだしな。

「ということは……綾と過ごす時間は、俺にとって大事な自分の時間に値するわけだ」

「……邪魔じゃない?めんどくさくない?」

「ああ、そんなことはない」

「エヘヘ……そっか……嬉しい……!」

「なら、良かった。綾には、笑顔が良く似合う」

「あ、ありがとう……」

「……とりあえず、歩くか」

 良かった……あまり人がいなくて。
  流石の俺も、これは恥ずい……。
 
「う、うん」

 2人で駐輪場を出て、歩き出す。

「あっ!あのね!と、トイレ行ってきてもいい……?」

「ん?あ、ああ、構わんが。すぐそこの駅中にあるし……」

「すぐに帰ってくるから!」

……なんだ?トイレって言うのが恥ずかしかったのか?
言葉通りにすぐに戻ってきたのだが……眩しいものが目を覆い尽くす……。

「えへへ……ど、どうかな……?ミニスカート……着替え持ってきたの……だって可愛い格好でデートしたいもん」

……グハッ!?萌え死ぬ……!
色々な意味で……!
発言も可愛いし、赤いミニスカートから黒タイツ……どストライクだ!

「可愛い、ずっと見てられるくらいに……」

「ふえっ!?そ、そんなに……?えへへ~、頑張って良かったぁ」

いかん、早く動こう。
でないと、このまま抱きしめてしまいそうになる……!

「ゴホン!!……とりあえず、本屋か。あと……言いたいことや、してみたいことがあれば言ってくれ。もちろん、俺も察するように努力はするが」

「う、うん!エヘヘ、優しい……してみたいこと……」

 綾は、手をブラブラし始めた。
 ……これは、そういうことか?

「綾、手を繋ぐか?」

「……エヘヘ、気づいてもらえた」

 ヤバイな……冷静を装っているが、今すぐに壁をぶん殴りたい気分だ。
 もしくは、思いきり抱きしめたい……!

「ほら、どうぞ」

「う、うん。失礼します」

 手と手が繋がれる。
 その瞬間、感じたことのない衝撃が走る……!
 なんだ?これは?嬉しい?……幸せか?
 そして、ムズムズする……!
 気恥ずかしいのか?
 ……よくわからないが、綾が喜んでるから良いか。

「エヘヘ、嬉しい。ずっと、こういうのしたかったの」

「そうか。まあ、良いものだな」

 2人手を繋いだまま、行きつけの矢倉書店へ入る。

「いらっしゃいませー……あら?吉野君、今日は発売日じゃないわよね?それに、女の子連れて珍しいわねー」

「矢倉さん、こんにちは。すみません、今日は買いに来たわけではないんです。その、彼女が出来まして……ここに来たいと言われまして。冷やかしで申し訳ありません」

「あららー!そういうことなのね。フフ、あの冬馬君に彼女かー……歳をとるわけね」

「何を言うんですか。まだまだ、お若いですよ。ほら、綾」

 理由はわからないが、綾はポカンとしていた。

「え!?う、うん。清水綾といいます。よろしくお願いします」

「綾ちゃんねー。あら、可愛い子ね。冬馬君も隅に置けないわー。そういうの興味なさそうだったのに」

「俺も、そう思ってたんですけどね……まあ、心境の変化ということです」

「若いって良いわねー。変われるものね。じゃあ、ごゆっくりどうぞー」

「ありがとうございます。お仕事中に、失礼しました」

 その後、店内を一周して、自分の好きな作家や作品などを教える。

 そして、冷やかしで申し訳ないので、すぐに本屋を出る。

 ところで……気になることがある。

「なあ、綾」

「………むー……」

 何やら膨れている……可愛いのだが、どうしたんだろうか?

「機嫌悪いのか?俺が何かしたか?」

「……ごめんなさい!冬馬君は悪くないの……ただ、あの綺麗な大人の女性と仲よさそうだったから……少し、嫉妬しちゃって……ごめんね、めんどくさいよね……」

 ちょっと可愛すぎないか?
 なにこれ?どうすんの?
 俺、耐えられる自信無くなってきたんだが?

「いや、嬉しいが。だから、気にしなくていい」

「え!?いいの……?そうなんだ……エヘヘ」

「そりゃそうさ。好きな子に嫉妬されるなんて、男冥利に尽きるじゃないか」

「す、好きな子……」

「ほら、次行くぞ。手繋ぐか?」

「うん!」

 次は、喫茶店アイルで昼食を食べる予定だ。

 さて、デートはまだまだこれからだ。

 そして、己の自制心との戦いも、まだまだこれからだ。

 何故かというと、アイルの後にはアレが待っているからだ。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

どうしてもモテない俺に天使が降りてきた件について

塀流 通留
青春
ラブコメな青春に憧れる高校生――茂手太陽(もて たいよう)。 好きな女の子と過ごす楽しい青春を送るため、彼はひたすら努力を繰り返したのだが――モテなかった。 それはもうモテなかった。 何をどうやってもモテなかった。 呪われてるんじゃないかというくらいモテなかった。 そんな青春負け組説濃厚な彼の元に、ボクッ娘美少女天使が現れて―― モテない高校生とボクッ娘天使が送る青春ラブコメ……に見せかけた何か!? 最後の最後のどんでん返しであなたは知るだろう。 これはラブコメじゃない!――と <追記> 本作品は私がデビュー前に書いた新人賞投稿策を改訂したものです。

幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた

久野真一
青春
 最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、  幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。  堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。  猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。  百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。    そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。  男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。  とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。  そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から 「修二は私と恋人になりたい?」  なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。  百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。 「なれたらいいと思ってる」    少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。  食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。  恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。  そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。  夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと  新婚生活も満喫中。  これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、  新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...